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無暖房住宅への挑戦~千歳市・協栄ハウス

30センチを超える外壁の断熱で、住まいの暖房エネルギー消費を4分の1から5分の1に減らす。 そんな協栄ハウスのチャレンジに共感し住まいを購入した馮(フォン)さんファミリーにお話を伺いました。


外観はナチュラルなコテ跡や色むら、屋根の色合いがアクセント


無暖房への挑戦に共感

千歳市にある大手製造メーカー「ダイナックス」の技術者、馮さんとその家族は、この住宅を07年秋に見学したのがこの家に住むことになったきっかけでした。


家族全員、特に息子さんがひと目で気に入ったのが、玄関から入ってすぐの開放感 のあるリビング・ダイニング


そもそも、この住宅は千歳市の地場住宅会社である協栄ハウスが、02年にスウェーデンの建築家ハンス・エーク氏が研究した「無暖房住宅」(北国のスウェーデンでも暖房設備を持たずに生活できる究極の省エネ住宅)のコンセプトを北海道でも実現したいと考え、そのための実験棟として06年12月に建設した建物です。

外壁内に33センチという厚いグラスウール断熱材を施工し、特別発注した木製三層ガラス窓や、熱交換型換気システムの導入など様々な省エネ手法を採用。シミュレーション段階では日射取得や生活、照明、人体からの発熱で暖房をほとんどしなくても室温を一定に維持できる、まさに「無暖房住宅」を目指した住宅です。

熱損失係数(Q値)は約0.7W



徹底した省エネ技術で熱損失係数(Q値)は、同地域での次世代省エネ基準の値1.6Wに対し、約0.7W。実際の生活を踏まえて、室温調整のために暖房機(ヒートポンプ暖冷房エアコン)は設置しています。07年秋にモデルハウスとして公開したところ、趣旨に賛同した馮さん一家が購入することになったのです。

同社では、これまで建設した住宅でもオーナーの了解を得て、いくら光熱費を支払っているか、集計を行っています。今後の住宅建設に活かすことはもちろん、実際の光熱費は、家族の人数や家電の数、省エネ意識を含むライフスタイルによって大きく異なるため、その実態を把握する目的もあります。

電球1個で21℃をキープ


【写真:販売前には人体からの発熱を想定した白熱電球を設置して、無暖房での室温も測定。白熱電球一個で6~8畳の個室が暖まる驚きの結果が


この住宅では、測定と検証を北海学園大学工学部の佐々木博明教授に依頼しました。分かったことは、日中の日射のある時は暖房が必要ないということ。朝の冷え込んだ時でも1時間あたりの暖房熱量が家全体でヘアドライヤー一台より少ない程度の1000Wも必要としません。冬期間でも室内に人体の発熱量を想定して白熱電球1個を設置しておくと、その発熱で室温20℃をキープします。家電などを稼働させていれば人がいなくても暖房なしで室温を維持できるということです。

また、冬期の温風暖房は住宅内に3カ所設置していますが、温風が直接当たらない台所の床の表面温度が常に約21℃をキープしているということです。極めて断熱性能の高い住宅では暖房の方法は問わなくなると いうことです。部屋毎の室温差がほとんど発生しない環境を作ることもできます。では早速、この住宅でひと冬を過ごされた馮さんファミリーにお話を伺ってみましょう。


窓まわりでわかる壁の厚さ。外壁の断熱材が30㎝を超えるため、窓に小物を置けるほど


肌色の内装が暖かい感じ。背の低いソファーで見通しも良い

暖房費は年間2万6000円


07年の秋にこのモデルハウスを見学して、翌月には購入を決めた馮さん一家。3人一緒にモデルハウス巡りをしていて、この物件にも出会いました。

最初に驚いたのはリビングの開放感と、壁際の足下のあたりにストーブなどの暖房機が無かったことでした。「玄関から入ってすぐ目に入る吹き抜けの開放感や室内の明るさ、部屋の暖かさもとても気に入って。他のモデルハウスも見たけど、ここが一番いい、と宣言したのは僕です」と話してくれたのは息子さん。


息子さんの部屋は明るく快適。「でも勉強は図書館のほうが集中できるかも」と一言

息子さんの部屋は明るく快適。「でも勉強は図書館のほうが集中できるかも」と一言


仕事柄、エコにも関心が高かった馮擎(フォン・チン)さん

職場では、環境貢献事業やソーラーパネルなどの環境製品の開発も行っていることもあって、暖房エネルギーを最小限に抑えられるというこの住宅のコンセプトに興味を持ったのはご主人の馮さんでした。

「以前は雇用促進住宅に暮らしていて、狭かったけど暖房費はかなりかかっていました。この家では、冬場のエアコンの設定温度を22℃と低めにしていますが、日射取得があるので、頻繁に23℃以上になります。夜も暖かくて、暖房は切っていますが掛け布団なしの毛布一枚で十分。お友達が泊まりに来たら、彼らの家と違うのでむしろ暑い、と言われるほどです」。

家族3人で決めた住まい


中国語の教師もされている奥さまは

「一番気温が低かった2月でも照明、家電、暖房など光熱費の総額が16000円で済みました。灯油代が急騰していることを考えるとこの家に引っ越せて経済的にも非常に良かった」といいます。

エコ生活が実現できた



馮さんご家族は、建物の断熱性能が高いこととオール電化で月々の光熱費が把握できることを活かして、エコライフを日々楽しんでいます。

まず、冬場は日中の暖房はほぼ必要がなく、夜間も最小限の稼働で済みますが、この点は22℃設定の自動運転なので意識することはあまりありません。夏場で暖かく日射が強い日が窓からの日射侵入を減らすためにオーニングを使います。

23時から6時まで電気代の契約料金が安いことと、早起きの習慣をつけるために早朝に奥様と息子さんがお洗濯をします。使っていない家電は、待機電力を消費しないようにコンセントから抜くことも家族全員が心がけています。ダイニングには6つの白熱電球が設置できる照明がついていますが、3つは取り外して節電を実施しています。テレビも各部屋で見るよりなるべくリビングで一緒に見るようにしています。


家族全員が調理に立つという、使い勝手がよく清潔なキッチン


調理は家族全員ができます。普段のご飯は奥様が主に作りますが、調理師の免許も持っているご主人も本格中華を作ります。日本での食生活に一番馴染んでいる息子さんはチャーハンやパスタ、その他イタリア料理など自分でしっかり作ることができます。


庭にはトマトやきゅうり、ししとうやパクチーなどが育てられています


また家庭菜園でトマトやキュウリ、ししとう、パクチーなどの野菜を家族で作って自然に親しみ、食材を大切にしながらおいしい食生活を目指しています。近くの林からキツネが現れたり、小鳥が遊びにきたりと自然を感じる機会も多いそうです。

もっと環境に優しい暮らしを

「出身地の中国では、住宅の床下に暖房の熱が通過するオンドルがあります。日本人の中には室内に炎があったほうが暖かく感じるという人もいますが、私たちはそういう発想はありません。むしろ暖房機から解放されて、こんなに快適な温度環境で暮らせる、しかもエコライフになるというのが魅力でした」とご主人はいいます。

今後チャレンジしてみたい点についてご家族に聞いてみると、人感センサーで照明が消灯する機器や消費電力の少ないLED照明、野菜作りの上達など、次々に出てきます。

最後に奥様が一言。「せっかく日本にはこんな素晴らしい住宅のテクノロジーがあって、エコや省エネ、家計の面でとっても役に立つのに、まだまだ皆がこういう住宅に住むということにならないのが残念です。お友達や親戚が我が家にたくさん泊まりに来てくれて、いつも褒めてくれます。どれだけ省エネができて家計にもいいか、私たちは体感しながら大満足の暮らしを送っています」


左 玄関にはご両親から贈られた新築祝いの品々が飾られている
中 「寿」という文字が50種類の漢字で書かれた縁起の良い掛け軸。赤が室内のアクセントに
右 熱交換換気システム

2012年04月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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