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壁一面がすべて窓!開放的な大空間と暖かさを両立/札幌市・Nさん

「札幌市内の住宅地に、軒下から床まで窓になっている家があるんですよ!」K記者から飛び込んできた情報に、私が連想したのはギャラリーやカフェレストランで見られるサンルームのような窓。そこで「自宅をお店にしているオーナーさんですか?」と聞けば、普通のお住まいとのこと。さっそく拝見してみたいとオーナーのNさん邸を訪問しました。

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写真1 玄関右手の南面には、軒下まで届く大きな窓があるのです

隣が両親の敷地でいちめん窓の家が実現

大きな通りから少し入った閑静な住宅街。「目立つ家なのでは?」と思っていましたが、Nさんの住宅は落ち着いた家並みに調和して立っていました。グレーのグラデーションが映える傾斜の緩やかな三角屋根。外壁の上部はオフホワイトの塗り壁でその下は道南杉のよろい張りになっています。

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写真2 ご両親の住む家から見たNさん宅。庭が借景となって映える

道南杉の色に合わせた屋根下の破風(はふ)やカーポート、薪ストーブの煙突が周囲の家とは少し違ったナチュラルな印象に。重厚な木のドアから延びるアプローチもレンガの焼き色に独特な風合いがあって、見れば見るほど惹かれるたたずまいです。

さて、玄関から右手に回った南面に、噂に聞いた大きな窓がありました!屋根のすぐ下から、ウッドデッキの延びる床までがいちめん全て窓になっています。しかし、道路側からは少し奥まった位置にあるので、通りから窓が目立ってしまうこともなさそう。

「実は、隣が両親の住む家なんです」とNさんが教えてくれました。大きな窓はご両親の実家のほうを向いているため、プライバシーの心配はしていないそうです。ともに獣医をされているNさんご夫婦は30代、もうすぐ1歳になる娘さんとワンちゃんの3人+1匹暮らしです。「ヨシケンさんが、どうせなら大きな窓を造らないかということで、私たちもいいかなと思いました」。ヨシケンさんとは、今回Nさん邸の設計・施工を手掛けたヨシケン一級建築士事務所の吉田純治さんです。

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写真3 玄関を入ると右横に薪ストーブがあり、暖かい雰囲気に。そして、開放的な大空間が印象的

細かい要望をしなくても暮らしやすい家に

家の中へおじゃますると、「どうぞお入りください」。可愛らしい娘さんを抱っこした奥さんに迎えられてリビングに入ると「わあ!」と思わず声が。まさに全体がサンルームのようで、外から見たときよりも窓の大きさと景色の広がりが実感できます。

その窓のサイズはなんと幅は6M、高さは4Mで、中2階にある踊り場の書斎スペースに立ってもまだ窓からの景色がよく見えるほど。隣のご両親宅にあるガーデンの芝生や木は、まさに借景(しゃっけい)といったところです。「部屋の中がすごく明るくて、気分がいいんですよ」とほほ笑む奥さん。

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写真4 中2階の書斎コーナーから。気持ちのいい眺めでしょ!? 窓から見えるのはご両親の家

淹れたてのコーヒーをいただきながらNさんご夫婦にお話を聞きました。

「どんな家を建てようか相談を始めたとき、木の質感と三角屋根が好きというのが私たちの一致した意見で、そんな中で出会ったのがヨシケンさんでした。完成見学会に初めて行ってみたところ、木を使った感じが良かったし、雪解けのまだ寒い頃なのに家の中が暖かかったんですよ。それが決め手ですね」(Nさん)。その後もヨシケンさんの手掛けた家をいくつか見て契約したそうです。

「デザインもほとんどお任せでした。希望したのはリビングにキッズスペースをつくること、階段の踊り場に書斎を設けること、あとは薪ストーブの設置ぐらいかな」とNさん。「デザイン案を3パターン作成してもらって、その中から選んだ後はほとんどお任せです」。

不安はなかったかと尋ねると、「ヨシケンさんが建てた家を見ているうちに、自分で考えるよりも信頼して任せたほうがいいと思いました」と答えが返ってきました。

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写真5 キッチンから見た写真。引戸の奥がキッズスペースで今はベビーベッドなどが置かれている。真下が引き出し式収納に

リビング床よりも一段高くなったキッズスペースの下には引き出し収納が設けられ、玄関とリビングを隔てる目隠しの木製ウォールはアーチ形にして雰囲気を和らげるなど、Nさん邸には随所にヨシケンさんのアイデアが見られます。2階は子ども部屋や客間、壁面クローゼットなどがあり、屋根の傾斜が気にならないように間取りも工夫されています。

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写真6 外から大窓を見ると、柱や梁が窓の奥に透けて見えます。これがカーテンウォールです

開放感あふれる大窓の秘密

この大きな窓が実現できたのには秘密があります。普通、窓といえば柱と柱の間に取り付けるもので、これほどの幅や高さは取れません。そこで「カーテンウォール」という、柱の外に窓を付ける方法を採用しました。「以前に保養施設でカーテンウォールを使ってみたことがあるんですよ。Nさんの家でも、隣がご両親の家なら景色をもらえたほうがいいと思いましてね」(ヨシケン・吉田さん)。もちろん、南面の壁も耐震性は計算済み。特殊な金物を使うことでしっかりとした構造体になっています。

ちなみに窓は国産タモを使った木製サッシで、こちらを手掛けるm.a.p.(札幌)の福見社長とは何度も打ち合わせを重ねたそうです。

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写真7 犬は11歳のミミちゃん。広々とした暮らしに満足そう。窓の下に等間隔で並ぶ小さな穴が寒さを防ぐ工夫(本文参照)

まだ住んでから1カ月というNさんご家族ですが「落ち着くし、明るいし、すごく満足です」と既に馴染んでいるよう。ご両親はどう思われているのかNさんにお聞きすると「建築中から隣で見ていますから、この家をうらやましがっていますよ。でも『窓が大きいと冬は寒いんじゃないか』とは言っていますね」。

実は、窓の下の床にはスリットを開けて床下空間からほんのり暖かい空気が上がるようにしてあります。暖かい空気が窓面を包むので結露の心配もないそうです。

Nさん邸のメイン暖房はサーマスラブという床暖房を採用しています。基礎コンクリートの下にヒーターを埋め込んで通電することで基礎コンクリートが蓄熱し、その熱がジワジワと床下空間に放熱され、床に伝わって室内を穏やかに暖める仕組みです。それで床にスリットを開けるとほのかに暖かい空気が上がってくるのです。開放的な間取りなので2階も十分に暖まる計算だそうですが、念のため補助暖房として2階にはパネルヒーターも設置しています。

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写真8 2階には落ち着いた和室も。独立した部屋なのでパネルヒーターも装備

また、住宅性能面でもNさん邸は北海道独自の「北方型ECO基準」をクリアしています。これは一般的な国の「次世代省エネ基準」よりもさらに高性能。「工夫を凝らして全体のコストを下げても住宅性能にかかわる部分はお金を削りません」と日頃から話しているヨシケンさんに、やはり妥協はないようです。

「日が暮れた後に外から家の大きな窓を見ると、ブラインドのすき間から明かりがチラチラ見える、そんな感じがとても素敵で」とうれしそうに話す奥さん。「わざと夕方に犬の散歩で外へ出たりしちゃいます」と、ご夫婦で顔を見合わせて笑っていらっしゃいました。

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写真9 2階ホールから。部屋の壁はほとんどが珪藻土塗り壁というゼイタク。もちろん、調湿性や質感も考えて選びました

記者の目

初めは住宅街でとても目立つ家なのではと思っていましたが、工夫次第で周囲の家々に馴染みつつもオリジナリティも生かせたおうちができるのだなと感じました。ヨシケンさんは隣が両親の家であることや、ご夫婦のライフスタイル、ニーズなどを計算しながら"建てる側が考える一歩先のデザインができる"ように思います。もし、家を建てたいけれど細かく考えるゆとりがない・・・という場合でも、様々な会社の物件または人を見ることで「これは自分たちに合っていそう」という感覚が持てれば、信頼して任せてみる手もあるかもしれません。

2012年10月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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