はじめに
株式会社森の風工房は、省エネで快適な高断熱高気密住宅の普及がまだまだ進んでいない青森で、いち早く一般社団法人 新木造住宅技術研究協議会(新住協)の活動に加わり、断熱気密施工のノウハウを習得。地域密着の工務店として、新築・リフォーム・リノベーション・営繕などを行っている工務店です。
所在地は青森県東津軽郡蓬田村。村内での数多くの実績があり、村内の工事が多いですが、隣接する県庁所在地の青森市内など周辺地域での家づくりも積極的に取り組んでいます。
いえズーム編集部は、北海道の住宅業界専門紙「北海道住宅新聞」を発行する札幌の会社が運営しています。日頃は主に北海道の工務店・ハウスメーカーを取材していますが、森の風工房さんの評判は北海道にも聞こえてきました。今回は森の風工房さんが担当したリノベーション事例と、新築事例、営繕工事などの事例を3本の記事でご紹介します。
青森県青森市の西側にある原別に今回取材にお邪魔したМ邸はありました。М邸は、森の風工房の設計施工でリノベーションによる高断熱高気密住宅を実現した3世代の住宅です。まずはざっと家全体をご紹介します。
玄関の気密郵便受けが重要
リノベーション前のМ邸です。
М邸は2010年にリノベーション。玄関前にはカーポートも併設し除雪の負担を減らしました。
新築時の品質・性能にできるだけ近づける修繕などを行うのがリフォームで、それに加え新築時にはなかった新たな機能や価値を加えるのがリノベーションです。
「家の隙間から雪が入ってきたこともあった」という断熱・気密性能が低かった以前の住宅を、断熱・気密性能を高め、寒さ・結露・光熱費負担・水回りなどの悩みも解決するという新たな価値を創造したのがМ邸のリノベーションです。
玄関ドアの横にある郵便受け。積雪寒冷地の住宅にとって、郵便受けからの冷気侵入は住宅の高断熱高気密化を妨げる弱点の一つになります。
また家の中の全ての部屋から、有害化学物質や不快な臭い、過剰な水蒸気を取り除くためには、住宅内の空気の移動経路や必要換気量を正しく計画しコントロールする必要があります。もし郵便受けなどからの外気侵入が多ければ、換気の計画が狂い、空気がよどむ箇所が生じます。その意味でも気密は大切です。
森の風工房では、省エネで暖かい、室内空気環境も良い高断熱高気密住宅を実現するため、外壁まわりやコンセントボックス、郵便受けなどの気密処理を徹底しています。
部屋のドア上にある小さな窓。これは家全体の空気をフレッシュに保つための換気口です。
家具や家財道具を減らし減築。すっきりした家に
もともと大きな家で、家具など家財道具もたくさんありましたがリノベーションを機にかなり整理。不要なものは処分しました。
リノベーションで一階部分はむしろ家の大きさが小さくなる「減築」を行いました。でも家具や家財道具を減らし、収納は、造作のクローゼットなどに収まるので、広々とした空間になりました。
東日本大震災の停電時、暖房ナシでも暖かい家
大きな窓をLDKに設置したことで明るいダイニングを実現。LED照明を採用することで消費電力も減らせました。全ての窓に断熱ブラインドも設置。
奥さま「リノベーションの翌年に東日本大震災が起きて1日半ほど停電で暖房も止まりましたが、暖房なしでも寒さは感じませんでした」
「窓際だけでなく、キッチンやトイレなども含む家全体が暖かいんです。以前の家なら、冬は部屋ごとのドアは必ず閉めないと寒かったですが、今は開けっ放しでも室温は変わりません。寝る時も寒くないので健康にも良いですね」
玄関ホールとリビングをつなぐドアは、天井の高さまでドアが伸びている「ハイドア」です。
ドアの上の下がり壁がないので、開いた時の解放感、高級感が違います。
2階ホールには、スペースに合わせたカウンターを職人さんが制作。使い勝手の良い空間になりました。知人が制作してくれたねぶたの津軽凧も飾られています。
変えたくない和室は変えない
住宅の性能、間取り、大きさなども含めて大改造し、新たな機能や価値を創造するのがリノベーション。М邸も断熱気密性能や、家の広さ、キッチンやお風呂なども大改造しましたが、一部例外もあります。М邸は3世代の住宅。お母様は、自分の部屋に関しては以前と同じような和の空間で、できるだけ変わらないように、と望まれました。
断熱・気密性能など壁の中は大幅に改造しましたが、銘木を使った床柱や傾斜天井(船底天井)など、建材やデザインは極力以前と同じように再現しました。
手洗いや掃除道具も収納できる棚を設けたトイレ。掃除負担を減らせる小便器、明るい空間にできる採光窓、車いすでも難なく入れるバリアフリー仕様になっています。
ではそろそろМさまご夫妻に、家づくりの体験を伺います。
なぜリノベーションを?
奥さま 私が子どもの頃から住んでいた実家だった建物で、古いしキッチンもトイレもお風呂も寒い家で、ストーブの前から離れられないような寒さでした。2世帯同居です。
家の寒さがきっかけだったんですね?
ご主人 私たちの子どもの頃って、皆寒い家に住んでいて、ストーブのまわりだけ暖かい、というのが当たり前だったと思います。
ただ、歳を重ねるうちに寒さが辛くなるし、できれば早めに家を何とかしたほうが良いかなと夫婦で話し合っていました。かなり年数の経った家だったので、最初は解体して新築する建て替えを考えていました。
何から始めましたか?
奥さま ハウスメーカーのモデルハウスも見学しましたし、情報収集もしました。住宅雑誌を見ても、その住宅会社を褒めるような内容ばかりで、本当なのか疑問に感じました。
ハウスメーカーにも行ってみましたが、私たちの要望を真剣に受け止めてくれない会社もありました。こちらの要望は既に伝えているはずなのに、その要望がちゃんと反映されていないプランや見積もりが出てくるんです。
営業さんが一生懸命なハウスメーカーもありましたが、プランづくりや住宅ローンの検討など、一つひとつの段取りがなかなか前に進まないような会社もありました。
そんな時、地元の新聞を見たら、森の風工房のキューワン(Q1.0)住宅の見学会のお知らせがありまして、特段断熱などに強い関心や知識があったわけではありませんでしたが、なぜか気になったんです。
それがМさまとの出会いですか?
森の風工房・藤本 淳社長 そうです。2009年頃の話ですが、当時、青森市内の別の現場で、新木造住宅技術研究協議会(新住協)が提唱する超省エネ高断熱住宅=キューワン(Q1.0)仕様の住宅を建てていました。
お客様のご厚意で、構造見学会を開催させていただいていたところ、М様ご夫妻が訪れてくれたのが最初の出会いです。外壁の断熱を高性能グラスウール105ミリ+フェノール樹脂系の断熱材(ネオマフォーム)40ミリを外張りで断熱施工した住宅でした。
どんな印象でしたか?
奥さま アポなし訪問でしたが、壁の中の仕組みを実際に見せてもらいながら丁寧に説明してくれました。キューワン(Q1.0)住宅自体については、難しい内容もあったのでしっかり理解できたわけではありませんが、断熱材が実際にどんな風に入っているのか見れたのはとても参考になりました。大工さんたちが働いている工事中の様子まで見せてもらえるのか、というのも驚きました。
ご主人 藤本社長の自宅が建った時も完成現場見学会に、家族数人で行きました。そこでも藤本社長の断熱気密に関する熱意も感じました。
家づくりの打ち合わせはどんな感じでしたか?
奥さま 大きめの使い勝手の良いキッチンや、好みの建具を採用していただいたり、母の部屋は以前のままの雰囲気にしてほしいとか、大きな家具などの撤去、予算のことなど、藤本さんはとにかく私たちの思いや事情を真剣に聞いてくれました。すごく印象に残っています。
古い家だったので建て替えも考えていましたが、私たちの要望を聞いた上で、藤本社長はリノベーションで使える200万円の補助金も含めたリノベーションの提案もしてくれました。
予算を踏まえると、きっと建て替えだったらもっと小さな家になったと思います。リノベーションだったので予算内に収まったんです。
打合せは、以前の寒い家まで毎回提案を持ってきてくれてじっくり話し合って。でも結論は次回の打ち合わせまでに、という感じで、考える時間をくれるんです。ひとつひとつ決断し納得しながら進めました。
自宅のリノベーション工事は、いつでも来てくださいと言われていましたし、進行状況を電話などで教えてくれたので毎週見に行きました。大工さんたちのプロの仕事を見て安心できました。
工務店やハウスメーカーなど、数社の住宅会社に相談はしていますが、森の風工房さん以外に良い住宅会社なんて無かった気がします。森の風工房さんは、蓬田村の工務店で、この家から車で40分くらいかかります。青森市内の工務店のほうが距離的には近いですが、何度も打ち合わせに足を運んでくれましたし、親身になって対応してくれたので近所の工務店さんという感じです。
いつも夫婦2人で「藤本さんに出会えてよかったよね」って話しているんです。
住み心地はどうですか?
奥さま 夜寝ているときも暖かいし、家全体がどこも暖かいのが嬉しいです。お客さんが来た時も玄関から暖かいので驚かれます。断熱ブラインドはとても効いていると思います。窓際でも全く寒さを感じませんし、断熱ブラインドを上げた時に冷気を感じるので逆に効いているんだと実感します。
子どもたちは自分の部屋ができたし、玄関前のカーポートで焼肉をしたり、リノベーションした家を喜んでいます。キッチンや2階のカウンターなどもとても使いやすくて便利です。
リノベーションしてから10年経ちましたが、2階に小さなキッチンを足したりした程度で大きな直しはなく快適に暮らせています。
2020年03月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。