大手メーカーでも工務店でもない、建築家だから実現した満足 札幌市/Yさん


「スベリ台のある家」という名前に、遊び心を持ったおうちと思いお伺いしたY邸。「家でものびのびと子どもたちに走り回ってほしい」というご夫妻の願いがかなえられた、マイホームのシンボルになっています。「3年たっても満足の家です」とオーナーさんが話す通り、Y邸には暮らしやすさと端正なうつくしさがしっかりと計算されていました。

「注文住宅はあきらめて、マンションにしようと思っていました」

そう語るのは、一級建築士事務所 アトリエカーサさんに設計依頼したYさんご夫妻。社宅住まいで、ふたりの息子さんに物音を立てることを遠慮させるような暮らしから「好きなように家のなかを走り回れる生活を」と、思ったのがきっかけでした。とくに奥さまは、ご自身で勉強しながら具体的なプラン図まで描いていたといいます。



ところが、Yさんご夫妻の住宅会社探しは難航を極めました。「大手ハウスメーカーは、用意された標準プランを少しでも変えると、金額が跳ね上がって予算オーバーになってしまう。それならと、工務店に出してもらったプランもイマイチで、正直なところ住むイメージが湧いてこない。何社も巡ってはガッカリして帰る繰り返しで、『どうせお金持ちしか注文住宅ははつくれないんだ!』とマンションに決めようとした、その直前だったんです」、そう語る奥さま。



新築したお友だちから「設計事務所で建てる方法もあるよ」と聞いた奥さま。「正直なところ、“設計事務所って敷居が高くてお値段も高いんでしょ”と思いました。でも、どうせなら見てみようか、と」。

住みたい区名と「設計事務所」のワードをネットで入力して、検索のトップに出たのがたまたまアトリエカーサさんでした。ホームページを開いてみて、ダメ元で思いの丈をぶつけるように自分たちの現状とマイホームへの希望をメールで送ったそうです。

注文住宅にかける気合いを分かってくれる、本気の建築家



「これは、SOSメールだと思いましたね」と話すのは、アトリエカーサを主宰する阿部直人さん。「あれは、日曜日の夜でした。いまでもはっきりと覚えています」。すぐにメールに書かれた内容を検討して、希望するマイホームが予算内で可能であることを返信しました。



「レスポンスが速くてびっくりしました。いけるかも!やっと、そう思ってプラン作成をお願いしました」当時を思い出すように、奥さまの顔がほころびます。「自分で作ってみた設計図も阿部さんに渡したんですが、返ってきたプランはまったく違うものでした。でも、私のよりもずっと良くて、すごく素敵なプランだったんですよ」。



2回目の打ち合わせでは、早くも図面を元にした建築模型も登場してYさんご夫妻を驚かせました。阿部さんいわく、「わたしの中では、ふつうのやり方なんです。平面図だけで打ち合わせるよりも、立体的な模型があった方がお客さまもイメージをつかみやすいですから」。プラン変更があると、完成までの打ち合わせで3~4個の模型を作り直すといいます。



アトリエカーサさんの手掛けた家も見学して「気に入らないところはまったくありませんでした」と話す奥さま。「珪藻土の塗り壁もきれいに塗られているのをチェックして、職人さんの腕も確かだと思いました」

奥さまが話します。「野菜や魚を買うのと違って、家は一生の買い物じゃないですか。こちらの気合い・気持ちを理解してくださる人に、マイホームを創ってほしいと思ったんです」。ご夫妻のこだわりや要望もしっかりと耳を傾けて、より良い形にして返してくれる、そんなアトリエカーサさんに家づくりをお願いすることをご夫妻は決意しました。



大手ハウスメーカーに決めなかった理由のもう1つは、たとえ営業さんの印象が良くても、設計する人や作る人は違うので、自分の要望や意見が直接伝わらないのではないかと疑問があったからです。その点、建築家である阿部さんとは直接やり取りができるし、すぐ答えが返ってくる。ものすごく要望も聞いてもらいました。週1回の現場での打ち合わせで、我が家を創っている人たちといろいろ確認、意見を交わせるのも良かったです」

三方向を囲まれながら、カーテン要らずの窓で明るい暮らし



それでは、ご夫妻と阿部さんが「三人で創り上げた」という、Y様邸を見せていただきましょう。

Y邸でいちばん驚くのが、三方向を建物に囲まれながら、ほとんどの窓にカーテンやブラインドが付けられていないこと。それも外からの視線をかわしながら、たくさんの窓が設けられています。「最初はカーテンを付けなくていいのかと不安でしたね~」と、頭をかくご主人。「でも、暮らしてみたら大丈夫でした。それに、夏は窓を開けると風が抜けて気持ちがいいんですよ」。

絶妙な窓の位置はプラン時の綿密な計算によるものですが、建築中でも住み手の目線で厳しくチェックを行う阿部さん、別の家を施工中、大工さんにお願いして図面よりも5cmほど窓を「ベストの位置に」ずらしてもらったこともあるそうです。



リビングはYさんご夫妻が希望した「吹き抜け空間」もたっぷり。ナラ材の無垢フローリングは、奥さまが強く希望していました。「お友だちの家が無垢床で、木の感触がとても気持ち良かったんですよ。できれば我が家は靴下をはかない暮らしをしたかったので、マイホームを建てるときは絶対これにしよう!と思っていました」。いまでは冬の季節も、自然なぬくもりが伝わる床暖房で、全員がはだしの生活を送っているそうです。

この無垢材フローリング、2階の子ども部屋に使わなかったことが家づくりで唯一の後悔だそう。「トミカのおもちゃなど、落としてキズになるからと思っていたんですが、そういった凹みも無垢材なら味になりますよね。何十万円も差が出るわけじゃなかったのに、今思うと本当に残念!」(奥さま)。

スキップフロアやロフトで空間をフレキシブルに活用



その息子さんたちの部屋は、細長い形になっていますが上部にロフトを設けてスペースを有効に活用しています。いずれは壁を設けて個室にすることも可能。ここまでは普通ですが、ほぼ中央が段差となり、スキップフロアとなっているところが斬新。
「私はプラン構想の段階から平面ではなく立体的にプランを考えています。横の広がりだけでなく、縦方向の広がりも考えて設計しています」と阿部さん。



リビングから上階の家族の気配が感じられるように、張り出した2階の壁にスリット窓も付けました。息子さんたちが行き来するたび、可愛らしい足がのぞきます。ちょうど良く見えるように、開ける位置は阿部さんが施工中に決めたのだとか。



2階ブリッジの壁面は、お子さんたちの作品を飾るコーナーに。壁をくり抜いて造った棚には、お子さんたちの好きな絵本なども並んでいます。



和室との段差にちょこんと座って本を読む弟クン。意外と、こんなところで読みたくなるんですよね。2階は、ウォークインクローゼット付きの寝室ときょうだいの部屋、バルコニーにつながる和室を設けていますが、ホールや通路でもくつろいだり楽しんだりできるような仕掛けがされています。

大人も楽しいすべり台、眺望抜群のミニスペースも



吹き抜けの右手に、隠れ階段のようなものが見えますが、何でしょうか?



家のプラン時に、お兄ちゃんが「欲しい!」と言ったスベリ台を実現しました。滑りやすさを重視し、クルミ材でつくられています。滑ってみるとなかなかのスピード。
阿部さんが、実際に公園のスベリ台で何度も滑ってみては、理想のスピードや角度を確認したのだとか。Yさんご夫妻にも聞いてみると、「はい、私たちも滑ってますよ」とイタズラな笑顔に。

親子連れで友だちが遊びに来るときも、このスベリ台は大好評です。「子どもたちが飽きずに滑っていますね。大人たちは、リビングでゆっくりとおしゃべりできて助かります」と奥さま。

端正なうつくしさを表現する、細部まで行き届いたデザイン



さらに、この家で感心させられるのが、端正なうつくしさが細部まで計算されていること。例えば、サッシの枠を隠すことでサッシ枠の持つ野暮ったさを消し去り、景色をそのまま切り取ったように見せる工夫もそのひとつ。



壁とフローリングの境目にある巾木(はばき)も省略し、壁を浮かすことで見た目すっきり。いずれもパッと見では分からないことですが、視界のじゃまになるようなものを極力なくすことで、重ねていく日々の暮らしが心地よく感じられます。



スベリ台の先には、空中に浮かんだような景色抜群のスペースが。息子さんたちがおもちゃで遊んだり、ご主人が夜景を眺めながら晩酌したりと楽しみ方はそれぞれ。左側の窓台は、お酒を置けるミニカウンターになっています。

間接照明が映える設計で、柔らかな灯りに心からくつろげる

2階ホールの壁上部に埋め込んだ間接照明は見た目もうつくしく、やわらかに空間を照らします。家のアクセントともいえるペンダントライトは、阿部さんが紹介した照明店のもの。「探してもなかなか見つからなかったので、これを見た時はまさに『ビンゴ!』だと感じました」と奥さま。




トイレは目にやさしい明かりを考慮して間接照明を採用。蛍光灯を縦方向に裸で取り付け、収納スペースが間接照明のカバーとして機能する合理的な設計。収納スペースの確保と、おしゃれな間接照明をリーズナブルな価格で実現しました。

手持ちの家具に合わせた造作、共働きに助かるたっぷり収納も



Y邸では、前の家から持ってきた家具も生かしています。例えば、手持ちのテーブルセットに合わせてキッチン前面に見せる収納を造ってもらいました。カウンターわきには、食器や調理器具、保存品などをドサッとまとめて入れられる収納も。こちらはロールスクリーンで隠すことができ、「隠す収納」としてメリハリをつけました。



後ろのカップボードも造作。ハイサイドライトの窓台には奥さまの好きな多肉植物を並べています。



カップボード横のドアを開ければ、小さなウッドデッキに出られます。車で買ってきた物をこのウッドデッキに置けば、すぐキッチンや収納スペースに運べるので便利。ガーデンでバーベキューをするときも、キッチンと直結しているので出し入れがラクです。

「建築が好き」が伝わってくる、週1の現場打ち合わせ



マイホームの建築中には、阿部さんと担当する工務店の現場監督、大工さんで行う週1回の現場打ち合わせに参加していたと語る奥さま。「楽しかったですよ。家の進行具合から、どのようなお仕事をしていらっしゃるかまで、いろいろお話ししました。皆さん、『建築が好き!』という感じが伝わってきて、とても頼もしかったです」。

ご主人も「大工さんの作業を見ていましたが、楽しんで仕事をしている感じがしましたね」。そんな様子に、施工を担当した工務店や業者さんたちにも信頼が置けたとお二人は話します。「それに、何よりも阿部さんが中立的な立場で、プラン通りのマイホームができるように業者さんのチェックをしてくれることに、とても安心感がありました」。



完成したマイホームにかかったお金は、予算をほんの少し出た程度で済みました。思い通りの我が家を手に入れたYさんファミリー。「住んで3年になりますが、“ウチってカッコいい!”って、いまも見ながら思います」。

1年前には「三男」のワンちゃんも迎えて「日中は誰もいないから、夜はベッドルームでわたしや子どもたちといっしょに寝ているんですよ」と話す奥さま。そんな優しさとあたたかさが、おうちのたたずまいにも現れているようでした。

取材を終えて



アメリカ発の家づくりサイト「houzz(ハウズ)」で、作品「奏でる家」が「北海道の美しい家44選」にも選ばれているアトリエカーサの阿部直人さん。常に住み手のイメージを、家の設計プランに生かしているといいます。
だからこそ、着心地の良い服のように、住まいがファミリーにとって愛着のある“うつわ”になっていることが、取材を通じて伝わってきました。

「設計事務所って敷居が高いイメージがあるけれど、これから建てる方にそういった先入観がなくなればいいなと思っています」と話してくれた奥さま。なかなか良い住宅会社が見つからないと感じている方は、一度アトリエカーサさんのサイトをのぞいてみてはいかがでしょうか。

2018年10月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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