災害・停電に強い家~国交省採択の防災型住宅30棟は2018北海道大停電をどう乗り越えたか

イーハウジング函館(e-houzing函館)が建てた防災型住宅30棟



防災型住宅をテーマに据えて、2014年度の省CO2先導事業(国土交通省)に採択された住宅が、道南・函館市を中心に30棟建っています。これらの住宅に暮らす30家族は、今回の北海道胆振東部地震と、その後およそ2日間にわたる大停電をどのように過ごしたのでしょうか。

この先導事業の提案し住宅を建築したイーハウジング函館の会員工務店の力を借りて、住まい手から聞き取りをしました。そこからは、期待以上の活躍を見せた住宅の姿と、これからの改善点などが見えてきました。

2018年9月6日北海道胆振東部地震で全道が大停電


〈北海道胆振東部地震の震度図.×印が震源(気象庁震度データベースから)〉


2018年9月6日(木)の朝3時に起きた北海道胆振東部地震。道南・函館は震度3~4で、幸い大きな被害は発生しませんでした。ただ、その後、全道一円が停電となり、信号の消えた電気のない朝を迎えました。
コンビニの照明が消え、会社のパソコンは使えず、頼みの携帯電話・スマホもバッテリーが続かず、通信状態も悪化しました。


〈停電の朝、ストアの開店を待つ人の列.信号が消えタワーパーキングは稼働できない(札幌)〉


もしこの大地震・停電が北海道の冬に起きていたら?

季節が暑くもなく寒くもない時期だったため、暖房も冷房も必要としない家が多かったと思いますが、北海道民が真っ先に頭をよぎったのは「真冬にこの停電が起きたらどうなるのだろう?」という不安だったと思います。

住宅の暖房・給湯器は、熱源が電気でも灯油でもガスでも、多くの機種が停電では動きません。電気は暮らしを支えるベースであることが、今回改めてわかったのですが、地震のとき、停電したとき、ガスが止まったときに、わが家で3日程度、暖房のある部屋でご飯を食べ、お湯が使えれば、生活の質を何とか保つことができます。避難所に行けば食べ物は何とかなるでしょうが、断熱され暖房設備が稼働している避難所は、残念ながら今のところ北海道内にほとんどありません。
外気温が7℃の時でも、夜眠ることができないほど寒いという実験結果が出ています。
こちらの動画を見てください。



『寒冷期の避難所での過ごし方』根本昌宏 日本赤十字北海道看護大学看護薬理学領域教授・災害対策教育センター長

イーハウジング函館が防災型住宅を国土交通省に提案した背景が、まさに冬の災害時にオーナー自らを助ける住宅を提案したいという思いでした。

地震で壊れない家。地震後も安心して暮らせる家を提供したい

2011年3月にさかのぼります。
函館・道南地域は、北海道内で東北と最もつながりの強い地域であり、東日本大震災においては、地震・津波被害とその後の避難所生活を、自分たちの問題と捉えました。
「まず、地震で壊れない住宅。次に、地震の後に安心して暮らせる暖かい住宅で、可能なら避難生活の拠点ともなる機能を地域工務店が手の届く価格で地域の人たちに提供したい」という思いがあったとイーハウジング函館のメンバーは振り返ります。

耐震等級3、超高断熱ZEHで光熱費ゼロも実現


〈壁のカットモデルとトリプルガラスサッシ〉


国交省に採択された防災型住宅30棟

国土交通省はイーハウジング函館の提案に対し、地域工務店がグループとして連携して省CO2型住宅建設に取り組む点を評価し、30戸に対して160万円の補助金を交付することを決めました。

住宅の基本仕様は、耐震性が法律の定める最高等級である耐震等級3、断熱性能はUA値0.25以下。これは函館市の省エネルギー基準であるUA値0.56の2倍以上の高断熱性能です。基本はこの耐震性と断熱性能で、地震が来ても真冬に停電しても凍えることのない家となっています。
加えて、住宅内で使用する暖房・給湯・電灯・調理のエネルギーを太陽光発電ですべてまかなうネットゼロエネルギー住宅(ZEHゼッチ)仕様になっています。再生可能エネルギーである太陽光発電で暮らしに必要なエネルギーをすべてまかなうので、気候変動や地球温暖化の原因となっているCO2の発生を最小限に抑えることができます。
これらの仕様をベースに、住宅の環境性能評価システム「CASBEE(キャスビー)」で最高ランクとなるSランクを取得しています。環境性能評価システムは、アメリカやヨーロッパで始まった建物の環境負荷がどれだけ抑えられるかを判定する仕組みで、日本ではCからSまでの5段階評価になっています。
詳しくはこちら

設計時に省エネルギー性能の計算と太陽光発電量の試算をしてZEH仕様を決めるのですが、これまで建てた多くの高断熱・省エネルギー性能+太陽光発電住宅が、ZEH、年間光熱費が実質ゼロ円になる光熱費ゼロ住宅が実現していることから、イーハウジング函館は今回のプロジェクトも自信を持って取り組みました。

体験談1 太陽光発電で日中は電気を使えた!



耐震性・断熱性が高く、すべて太陽光発電が搭載された住宅に暮らす住まい手は、今回の地震で何を感じたのか、聞いてみました。

建物被害はありませんでした。「災害対応住宅と聞いて家を建てたので、揺れたときの安心感はあった」、という声もありました。寒い時期ではなかったことから、断熱性についての検証はできませんでした。
30棟すべてに太陽光発電が搭載されているので、停電した2日間の天気が良かったこともあり、太陽光発電でつくられた電気を売電せずに自家消費に回し、日中は普通に生活できたとの声が多く聞かれました。給湯機・エコキュートのタンク内残り湯でシャワーに入ることができたので、近所の方にもシャワーを使ってもらったおうちがあったそうです。

一方で、日が暮れると発電が終わるので、電気が使えなくなります。16時以降は冷蔵庫が使えなくなったという声もあり、冬場の地震を想定すると課題も残しました。この点は後半にまとめます。

体験談2 蓄電池+太陽光発電=停電時も普段通りの生活実現


日産自動車ホームページのスクリーンショット


大活躍したのが、蓄電池を装備した住宅と、電気自動車との連携装備を備えた家でした。日産自動車では「LEAF to Home」の名前でPRしており、一般には「V2H(ヴイツーエッチ)」と呼ばれています。自動車に積んでいる蓄電池から住宅へ電気を供給する仕組みです。


〈モデルハウスでV2Hを実演している様子.この日は雨のため太陽光発電が少なく、電気自動車から電力が供給されている〉


太陽光発電と蓄電池の組み合わせは、今回の大停電で最もうまく機能した例です。昼間に発電し、余剰分を蓄電池にためて夜間に使う。ふだんと変わらない生活が送れたと言います。

体験談3 電気自動車+太陽光発電=同じく停電時も普段通りの生活実現



日産・LEAFを所有するLEAF to Homeのお宅では、「日中は太陽光発電を使い、それ以外はLEAFから給電して生活した。停電がいつまで続くかわからないので、最小限の電気を使用した」と語っています。
またトヨタ・プリウスを発電機として使い、パソコンや冷蔵庫、照明など通常通りの生活ができた例も報告されています。

太陽光発電だけでは不十分。ソーラーパネルの壁設置もポイント

停電時対応の視点からみると、太陽光発電だけでは頼りないことが今回わかりました。もちろん、晴天なら10時から15時くらいの時間は問題なく電気が使えるのですが、曇天や雨天、さらに冬の積雪期を考えると、別の対策が必要になりそうです。
太陽光発電を壁に設置すると雪で覆われる心配がなく、冬でも雪面反射で安定して発電することがわかっています。

まとめ:太陽光発電+蓄電池or電気自動車が有効



今回の例から、太陽光発電とV2H(Vehicle to Home」の略で、クルマに蓄えた電気を家で使う仕組み)・蓄電池の組み合わせが有効であることがわかりました。また、発電機が役に立ったという声もあり、ガソリン式発電機や、自動車を発電機代わりに使って電気を供給できた例が報告されています。

地震だけでなく台風被害も心配

家は、まさかのときの家族の支え。気候変動によって北海道にも大型台風がやってくるようになり、台風による停電や風被害も増えています。じつは、地震の前日、9月5日は台風21号により道内8万戸以上で停電が起きていました。

災害に強い我が家づくり

東日本大震災や熊本地震など、大災害時には、多くの被災者が避難所に避難します。しかし北海道の冬に大災害が起きると、断熱の無い寒い体育館では寒さで夜を明かすこともできません。家族の身を守るには、停電した自宅でも数日過ごせるだけの備えが必要です。

住宅価格を大幅に引き上げることなく、災害による被災のリスクをできるだけ小さくする家づくりをすすめること、家族の暮らしの支えになり、緊急時には地域の支えにもなることを目指し、引き続きイーハウジング函館は、災害にも強い、省エネな住まいづくりを進める予定です。

2018年10月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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