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見えない部分にも自然素材「羊毛断熱材」を初施工/下川町 キタ・クラフト

この記事はiezoom編集部(北海道住宅新聞社)が発行する住宅業界向け専門紙「北海道住宅新聞」2020年3月25日号3面に掲載された記事を転載したものです。



道内の自然素材を活かした家づくりを行っている道北・下川町のキタ・クラフト株式会社(加藤滋社長)では、壁体内など見えない部分も環境にやさしい自然素材にこだわりたいと考え、このほど名寄市内に完成した住宅で羊毛断熱材を外壁軸間と屋根たる木間に初施工。今後は外壁の付加断熱も羊毛断熱材で施工する計画だ。

キタ・クラフトでは、内外装や造作に下川産の木材や鉄平石、稚内産珪藻土など地場の自然素材を活かすとともに、道北の厳しい気候風土でも快適・省エネに暮らせる断熱・気密性能を重視した住まいを提案しているが、完成してからでは見えない部分も含めて、製造時エネルギーが少ないなど、より環境に負荷をかけない素材にこだわりたいと考え、羊毛断熱材に着目。昨年夏に名寄市内で着工した住宅で初めて採用した。

採用した羊毛断熱材は、ニュージーランドの羊から取れるウールを現地の工場でマット品に成型した『ウールブレス』(㈱アイティエヌジャパン製造販売)。ウールカーペット製造時に端材として出る短い繊維で作られたリサイクルタイプで、厚さは100㎜、熱伝導率は0.044W となる。外壁の軸間に100㎜、屋根のたる木間に300㎜充てんしており、外壁は耐力面材に横使いで取り付けた間柱材を下地として付加した高性能グラスウール16K100㎜と合わせ200㎜断熱となっている。

羊毛断熱材は撥水性に加えて吸放湿性もあるため、壁体内結露対策としても効果が期待できるが、さらに同社では防湿・気密シートとして、夏は壁体内の湿気を通し、冬は室内の湿気を通さない可変透湿気密シート・タイベックスマート(旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ㈱製造販売)を施工。外壁の耐力面材にも構造用合板などの木質系製品と比べて湿気の通しやすさが約12 倍のタイガーEX ボード(吉野石膏㈱製造販売)を施工することにより、夏季の逆転結露も含めて壁体内での結露防止を徹底している。

なお、羊毛断熱材の施工にあたっては、必要に応じて裁ちばさみで切ったり、大工が手で割き切って軸間にタッカーで留めるという手間がかかるものの、繊維がチクチクしないのは大きなメリットの一つだという。

同社の加藤社長は「自然素材にこだわる以上、見えない部分までこだわっていきたいという思いで羊毛断熱材に行き着いた。コスト的には他の繊維系断熱材の2倍ほどかかることになるが、㈲西方設計代表の建築家・西方里見氏の著書『最高の断熱・エコハウスをつくる方法(令和の大改訂版)』で、製造時エネルギーが他の断熱材より少ないとわかったことが、採用の決め手となった。次の施工物件では、お客様も羊毛断熱材を採用する理由を納得して頂き、付加断熱材としても施工することになっている」と話している。

2020年03月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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