Column いえズーム コラム

リフォーム時の収納家具提案で急成長 札幌・キッチンワークス

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今回は2020年4月5日号8面から、興味深い記事をピックアップしてご紹介します。


(株)キッチンワークス 荒井俊吉社長


異業種参入などで過当競争が続くリフォーム業界において、独自性の高い施工技術で急成長を続ける会社がある。昨年、優れたビジネスモデルを表彰するジェルコリフォームコンテストの経済産業大臣賞を受賞した㈱キッチンワークス(札幌市、荒井俊吉社長)だ。

リフォーム時に収納家具提案をすることで、顧客が抱える収納の悩みを解決。顧客満足度の向上と、単価アップを同時に実現したことが高く評価された。このビジネススタイルはどのように確立されたのか。荒井社長に話を聞いた。

短工期と高くない価格で需要掘り起こし


こちらはコンピューター制御で正確な機械加工ができる工作機械。高級外車相当の高額品だ。


以前から水回りを中心としたリフォームで、丁寧な施工には定評があったが、収納家具の提案については外注しており、決してうまくいっていなかったという。事務所移転を考えていた折、協力工場の廃業報告を受け、木工機械と職員の引き受けを決断。現住所に事務所ごと移転し、1階に家具工場を構えた。


こちらは木材を正確に切断できるパネルソー。手作業では難しい1㎜単位の加工が可能になる。


赤字覚悟の拡大路線だったが、工場を持ったことで、リフォーム時に収納家具の提案・設計・制作・取付けまでを一貫して請け負うことができるようになり、顧客ニーズに対応した短期・高品質納品を実現。売り上げはこの3年で約2.4倍にまでアップした。

施工例


【BEFORE】I型キッチンのあるリフォーム前。収納は家電、食器ともに個別に既製品を使っていた(写真は同社HP施工例より)。


【AFTER】窓際からL字までが既製品で、向かって左手の吊収納や下部収納、U字の天板は同社の加工による。左手前にあるのは海外メーカーの食洗機。施工は容易ではなく、経験値が必要だ。


現場で採寸し、自社工場でカットや組立を事前に行うことで、現場での作業工程を大幅に省略化し、工期短縮にも成功。工事中の騒音や振動、粉塵などの発生が抑えられることで、顧客のストレス軽減や近隣への迷惑軽減にもつながった。キッチンは既製品を利用しており、既製品と造作家具の違和感ない仕上がりが強みだ。

注文家具は高いと思われがちだが、ケースバイケースだ。例えば、システムキッチンに新規でビルトイン食洗器を設置する場合、他社がキッチンを丸ごと入れ替えて、約40~50万円程度なのに比べ、同社では引き出しを工場で改造、扉のカットやキャビネット制作なども込みで、およそ20万円程度でできるという。

職人を正規雇用、ワンストップ体制で5年保証も



現在23名いる従業員は、職人も含め全て65歳定年の正規雇用。日曜は全休、土曜も月の半分は休みにしている。「我々の仕事は、何年先までも責任を持つもの。そのためには安定した環境整備が大前提と考えている」と荒井社長。正社員だからこそ、それぞれが積み重ねたスキルがそのまま会社の財産になっていくとも語る。


この日はイベント用の商品展示台を制作していた


8名いる営業担当は、住宅設備関係の経験者が揃っており、互いの得意分社を共有しながら高めあっている。現場では下見・打ち合わせ・工事管理・アフターまで1人の担当者が受け持つ。こうしたワンストップ体制に加え、商品・工事ともに5年保証を設けており、充実したアフターケアも人気の要因になっている。

ホームページによる集客が追い風に


(株)キッチンワークスのホームページ。テキストのほとんどを社長自らが書いており、自社で管理している。


また、同社のホームページは基礎構築のみ専門業者に任せ、テキストやブログ更新などは自社で管理している。荒井社長が「ホームページに魂を入れた」と話す通り、社長自らが書いたストレートな会社紹介がユーザーに伝わり、メール問合せは月に70~80件。概算などをやり取りし、下見に訪問した段階で、ほぼ成約に至り、成約率は3~4割にも達しているという。

営業スタイルはあくまで「御用聞き」で、決して仕掛けない。顧客ニーズに対応した独自性の高い仕事で、粗利益を確保できており、価格競争に巻き込まれる心配がないからだ。

工務店からの受注も開始

荒井社長は最後に、「水回りの市場はまだまだ可能性がある。他社で断られるような小さな仕事もうちは引き受ける。マンションリフォームについては1級、2級を持つ建築士を抱え、クロス貼りなどの一部を除き、設計から引き渡しまで、ほぼ全ての工事を自社で行っている。今後はますます需要が増えると予測している」。

また、エンドユーザーだけでなく、他のリフォーム業者などからの受注(B to B)も積極的に行っていきたいとし、同業他社に対して、「既製品加工、キャビネット改造、造作壁面収納、オーダーキッチンと、ニーズに合わせて対応したい。うちの工場をぜひ活用してほしい」と話している。

(株)キッチンワークス
問い合わせ 011-861-3900

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2020年04月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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