Story 取材記事

安心できる住宅性能を手の届く価格で/イーハウジング函館(e-housing函館)に参加する工務店とは

「北方型住宅普及」に貢献し高橋はるみ北海道知事の感謝状を授与される 渋谷会長(当時)

イーハウジング函館(e-housing函館)は、

長年北海道函館・道南地区において家づくりに携わってきた工務店が、地元のお客様が安心して住める
【地域に合った】
【高性能な住宅】を
【適正な価格】で
提供しようという目的で、2003年(平成15年)に結成したグループです。  

現在16社の工務店及び住宅関連業者が、最新情報を勉強し、新しい技術・ノウハウを共有しながら、それぞれが刺激しあって家づくりを磨いています。

ハウスメーカーと分譲系が多く、いい地元工務店が少ない


函館は以前から全国大手・本州大手のハウスメーカーが強い地域です。地元の会社は、分譲地を販売する不動産系の住宅会社が多く、いい家を建てる工務店がこれまであまり育ってきませんでした。  

それにはいろいろな理由があったでしょうが、工務店が地域のユーザーの声をくみ取り、性能もデザインも価格も満足できる家を提供してこなかったことも大きな理由です。

家づくりの基本に「住宅性能」を据える


イーハウジング函館という工務店グループを形成する地元工務店は、マルサ佐藤建設のように創業100年を超す企業もあります。

ただ、経営規模の面では大きくはありません。特徴は、冬も暖房費の心配せずに快適に暮らせる、風の強い日も隙間風のない、窓の結露でカビが生える心配がない、そういったいわゆる「いい家」をつくる会社であることです。

建築基準の上で函館は、北海道では唯一、北東北と同じ地域エリアに区分され、少しだけ暖かいエリアとされています。全国大手のハウスメーカーも地元の住宅会社も、暖かさや省エネ性といった住宅性能と、デザイン、販売価格のバランスをとり、どこかに突き抜けた商品ではなく、函館エリアにとって、他社との比較の中でも見劣りしない品質を提供しています。


国土交通省の外郭団体である(一財)建築環境・省エネルギー機構のwebサイトから

一方、イーハウジング函館は、住宅に求められるものの基本が耐震・断熱といった住宅性能にあると考えています。少し暖かい地域とはいえ、函館は間違いなく寒冷地。

水道凍結が起きる地域ですから、結露による障害や屋根の雪害・凍結による事故があります。そういった面を重視し、基本性能を向上させた家づくりを標準仕様としています。このことは、イーハウジング函館に参加する工務店の特徴として、大きく際立つ点でしょう。

いい家の共同宣伝、省エネ住宅からゼロエネ住宅へ


優良工務店が少ない函館・道南エリアで、イーハウジング函館は会員の力を集めて地域のお客さまに家づくりを知ってもらうタウン開発や、合同住宅見学会などを函館市、北斗市、八雲町、江差町で展開しています。共同事業を展開できるのは、会の立ち上げからメンバーをまとめるリーダーシップをとっている渋谷建設の力量が大きいでしょう。

住宅性能に自信があるイーハウジング函館会員各社は、暖かくて暖房費がかからない家づくりからスタートし、現在は住宅1件分の暖房・給湯・調理・家電等のエネルギーをすべて自前の発電でまかなうネットゼロエネルギー住宅(ZEH・ゼッチ)を共同開発。

さらに災害で電力の供給が止まったときには、自宅に電気をためて自立して生活できる技術にも取り組んでいます。


いい家の共同宣伝、省エネ住宅からゼロエネ住宅へ


新築だけではありません。暖かい家を建てる技術を築30年、40年の古い家を再生するリノベーション事業に応用する新しい取組も始まっています。

お客様から「子育てが終わり、子どもたちは札幌や東京で所帯を持ち、もう地元には戻ってこない。子育てでにぎやかだった家も、夫婦2人には広すぎるし寒い。処分にも困る」
という相談を持ちかけられたイーハウジング函館のメンバー・ノースランドホーム(山野内建設)が、中古住宅の再生を開始しました。

工事費を抑えるために、間取り等はあまりいじらない。ただし、暖かさのレベルは新築並みに引き上げる。こういった工事は、本当に高い技術を持った設計者と大工のコンビネーションが必要です。地域に根ざして仕事をしてきたイーハウジング函館のメンバーにとっても、地域の住宅を再生し、町がにぎわいを取り戻すことは、ひとつの夢でもあります。

簡単にイーハウジング函館を紹介しましたが、会の取組について少し詳しく見ていきたいと思います。

高性能な住宅-ZEH・耐震・防災対応


函館市内でも、住宅建設価格が安い「ローコスト住宅」を提案する住宅会社が人気です。住宅価格がコミコミで坪50万円程度で、デザインも良いというのが人気の理由でしょう。しかし、安い家には理由もあります。建てたユーザーから『冬場の光熱費が予想以上に高額で、住宅ローンとあわせると大きな負担になっている』という話が聞こえてくる残念なケースも少なくありません。

イーハウジング函館の会員が建てる家は、光熱費負担を軽減し、快適な住環境を約束できるだけの断熱・気密性能確保が標準仕様になっています。高い断熱・気密性能を実現するための住宅仕様、そして精度の高い施工を行っていることが、家づくりの前提です。

その上で近年、経産省・国交省・環境省などが主導・推進している、ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH・ゼッチ)住宅についても、イーハウジング函館では、積極的に取り組んでいます。ZEH住宅は、高断熱・高気密住宅で省エネ化を進めた上で、太陽光発電などによる創エネを行うことで、照明・換気・給湯などの光熱費負担を年間で実質ゼロにする家のことです。住宅性能向上や創エネ機器の研究、ZEHの補助金活用など、住宅会社1社では検討や経験が不足しがちな部分でも、イーハウジング函館のメンバーは互いにノウハウを伝え合い、より良い手法を研究しお客様に還元しています。

補助金制度

国が将来的に理想とする住宅をつくるため、通常の家より負担となる手間暇や性能・技術に対して、コスト増となる建築費分を国が負担(補助)するというものです。  つまり補助金制度を活用できる工務店は、国が求める高いハードルの家を施工できる技術を持った工務店ということであり、お客様は補助金によって大きな負担をせずに、20年、30年後の住宅性能を持った住宅を、いまの住宅とあまり変わらない価格で手にすることができるということなのです。  

【e-housing函館】は、高性能な家に住んでいただき、一人でも多くのお客様に満足していただこうという思いで、補助金制度をいち早く活用しています。  また、北海道にある建築分野の公的研究機関(北方建築総合研究所)や団体とも頻繁に交流を行い、常に最新の技術や情報を勉強しています。  

簡単ではない、適正な価格での住宅提供


石川ニュータウン展示場に設置されていたleaf to home + PV(太陽光発電と組み合わせ、日産リーフを家庭の電源として使うシステム)

注文住宅の価格はどう決まると思いますか。

設計料を除く住宅工事費は、木材や建材、工事費や大工さんの人件費の合計に、20%~40%の経費を乗せて算出します。大きく分けると、工事費は工事原価と経費で構成されます。

イーハウジング函館の工務店は、経費の面で割安である一方、工事原価はやや高くなりがちです。会社規模が小さいために経費がかからない一方、仕入れの力が弱いこと、高い住宅性能を標準仕様としているため原価が上がってしまうからです。   イーハウジング函館は、こういったいわば当たり前の現実を前に、あきらめず『よい家を安くする方法』を探し、全員で現実を理想に近づけてきました。


考え方の基本は、COOP(生活協同組合)の共同購入と同じく、仕入れのルートと購入建材をできる限り統一することです。

数社の工務店が仕入れルートと購入建材・設備を統一すれば、仕入れが安くなることはわかっています。しかし、実際に実現しているケースは日本全国を探しても本当に少ないのです。それを実現したのは、メンバー全員の信頼関係とリーダーシップです。

現在はさらに取組を進め、設備工事など専門工事業者への発注も、ある程度統一することができるようになっています。工務店同士、工務店と納材店、専門工事業者がイーハウジング函館という地域住宅改善活動を通じ、信頼を培ってきたことが一番の財産でしょう。 こういった原価見直しの活動の結果、一般的工事価格と比べ5~10%の費用削減に成功しています。

学びあいが地域の暮らしを豊かにする


イーハウジング函館は、函館と北斗、八雲、江差など道南広域にメンバーが広がっています。

メンバーには、日本全国に暖かい家づくり(FAS工法)を提供する福地建装(北斗)も加わっています。それぞれの地域において常に地域一番店であるため、地域一番店になるための努力を続けています。

函館西部地区や五稜郭に詳しいマルサ佐藤建設(函館)、農村住宅に強い鳴海建設(北斗)、地域活動に熱心な原田工務店(八雲)、日本トップクラスの住宅省エネルギー性能を誇るノースランドホーム(函館・八雲)、そして全員のリーダーである渋谷建設(函館)。


江差町の辻久建設は、歴史ある町並みになじむ暖かい家をめざし、北斗市の小西工務店は伝統和風の技術を生かした新築とリフォームに力を入れています。

いろいろなメンバーがいて、それぞれに相談し、高めあうことで、道南エリアの暮らしがさらに良くなっていくことを目指しています。

お互いに家づくりを磨くことは、以前から変わらずに続けています。デザインも得意分野も違うメンバーが、それぞれ家づくりを磨くことで、お互いのいい点を吸収しながら成長し、お客さまへ還元することができるようになります。

WORKS

■追分サスティナブルビレッジ(2007年)


道南・北斗市追分地区にて、何もない広大な土地5857㎡において21区画の分譲地を開発し、土地の仕入れ・宅地造成・施工・販売をイーハウジング函館のみで行った最初のプロジェクトです。余計な中間マージンの発生をなくし、土地価格を抑えることで、お客様に高性能な住宅を適正価格で提供することができました。
タウンに暮らす住まい手にとって楽しい思い出がいっぱいのふるさとになるように、街並みデザインの協定締結、全棟北海道が推奨する北方型住宅基準クリアなど、先進的でありながら、30年後も魅力的なタウンになりました。
お客さまの声はこちら>>

■美原エコタウン(2009年)


地球環境に負担をかけずに暮らす未来の住まいを提案し、2009年のゴールデンウィークに函館市美原に5棟のモデルハウスがオープンしました。

期間中は多くのユーザーが来場し、「高断熱・高気密で暖かい暮らし、高効率の暖房・給湯設備と太陽光発電によって光熱費負担の小さい暮らしを体験いただいたことが、その後の事業展開のベースになっている」とメンバーがプロジェクトの意義を振り返っています。




■石川ニュータウン展示場(2016年オープン)


石川ニュータウン展示場は、エネルギー自立とCO2 排出量を減らす全棟ZEH のモデル展示場として企画されました。

断熱性能の目安である平均熱貫流率・UA 値= 0.3W 以下で耐震等級2以上などを標準仕様とし、さらに電気自動車(EV)とセットで提案することで住宅ローンの支払い低減だけでなく、災害時にEV が蓄電池として機能し、自動車の維持費も低減でき、年収400 万円台の家庭でも災害に強い高性能住宅が無理なく買えることをアピールしました。

太陽光パネルからEV へ充電しながら、同時に家庭内へ電力も供給できます。また、自立運転時もEV 充電と家庭内電力供給が同時にできるなど、太陽光発電の自在な活用が可能となっています。 これらは、最先端の情報とグループ各社への展開、三菱電機や三菱自動車など他業種とのコラボレーションによって生まれました。

今後も、函館・道南地区のお客様が安心して住める 【地域に合った】 【高性能な住宅】を 【適正な価格】で 提供するという目的に沿った活動を続けていきます。

2018年09月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。