Story 取材記事

江差を愛する大工さんが実現した断熱等級7+ZEH+道南杉の家  江差町・山本邸/辻久建設


民謡の王様と呼ばれる「江差追分」、明治維新の歴史舞台ともなった徳川幕府の軍艦「開陽丸」、歴史ある街並み「いにしえ街道」、北海道最古の祭り「姥神(うばがみ)大神宮御渡祭」など観光地としても有名な道南・江差町。



左が江差町の辻久建設社長の辻雄一郎さん、右が施主で大工の山本聖貴さん。

江差町をこよなく愛する大工・山本聖貴さんは、自身が勤める工務店、有限会社辻久建設社長の辻雄一郎さんとこだわりの家を実現させました。まだ道内でも建設実例が極めて少ない、国交省が定める断熱等性能基準の最高等級「断熱等級7」を達成した超省エネ住宅です。

また、太陽光発電を組み合わせたZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)で光熱費負担ゼロ、さらには地産地消と塩害対策も兼ねた道南杉の採用、地元の仲間と楽しく過ごせるリビングなど見どころ満載の家づくりになりました。では早速紹介していきます。

Q 自宅から「開陽丸」「かもめ島」が見える最高の立地ですね!



山本大工 私はこの江差という町が大好きです。江差町には町内の13の地域がそれぞれヤマ(山車)を引く姥神大神宮御渡祭という大きな夏の祭りがあります。子どもの頃から江差町内の「津花」地区のヤマを引いていたのでどうしても津花に住みたかったんです。建設地は、元は隣にイカの加工場があり、そのオーナーの家が建っていた土地を購入しました。

辻社長 江差は不動産取引が頻繁にはないので、土地の記録は明治時代に墨で書かれた測量図だったり、そもそも境界が確定していないケースも多く、またこの土地は傾斜地なので宅地造成工事も必要でした。家づくりが難航しそうな土地ですが本人の要望でもあったので、社員の家ですし、辻久建設のフラッグシップになるような性能の家を建てられるならと、こちらもせいいっぱい協力させてもらいました。

Q 隣に風格のある倉庫がありますね。



辻社長 明治時代から建っていたようです。屋根や外壁などが傷んでいたので一部補修も行いました。江差にはいにしえ街道だけでなくあちこちに歴史ある建物があります。

Q 住宅は、外壁が全面板張りで素敵です



辻社長 江差は海沿いで風も強いので塩害対策が非常に重要です。金属サイディング(ガルバリウム鋼板)や、標準的なサイディングなどではわりと短い期間で錆や劣化が生じます。私の自宅も外壁は道南杉の板張りですが、10年経過して経年変化しても、建物の機能、性能上は問題ありませんし、木材は既製品と違い、廃版にならないので何年経っても交換できます。外壁の色味は変わりますがそれも自然の風合いとして魅力に感じる人も多いと思います。約160年前に建てられた「横山家」など江差の文化財も木造ですが、メンテナンスすれば住み続けられます。江差の地に適した地場産材を使うというのは理にかなっています。

ちなみに、この目透かし(木材を隙間をあけて貼る)の裏側に、かすかにエアコンの室外機が見えますが、エアコンの室外機も塩害には弱いという問題があります。故障しやすく寿命も短くなるので今回、塗装屋さんにお願いして黒に塗装しました。塩害対策に加え、このように目立たなくなる意匠性向上の狙いもあります。

Q 国交省が定める断熱基準の最高等級「断熱等級7」に驚きました



辻社長 辻久建設は、住宅の断熱・気密などの基本性能向上や、太陽光発電など創エネを学ぶ道南エリアの家づくり勉強グループ「e-housing函館(イーハウジング函館)」のメンバーとして、住宅性能の向上に取り組んできました。

この山本邸も、外壁断熱は高性能グラスウール105ミリにネオマフォーム132ミリの付加断熱、窓は高性能トリプルガラス樹脂窓(YKK430)を採用し、断熱性能を表すUA値=0.16。断熱等級7をクリアしています。



また太陽光発電パネルを7.5kW(375W×20枚)搭載することで年間推定発電金額が約14.5万円となっています。この省エネ+創エネで環境性能が非常に高く、BELSという評価システムで、エネルギーをほぼ使わない住宅「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)」の評価も受けています。

さらに電気自動車やプラグインハイブリット車を住宅用蓄電池として活用できるV2H(Vehicle to Home)導入も見すえて電気配線などを準備してあります。太陽光発電で電力を生み出し、自動車のバッテリーに蓄電し、車の走行、そして家の電力として活用できることで、日常の省エネはもちろんですが災害時の備えにもなります。

Q  山本さんにうかがいます。住まいへの要望は?



山本大工 地元の友達、祭りの仲間、フットサルのメンバーなども遊びに来るので、リビングは広くしたかったのと、「姥神大神宮御渡祭」の際に家の前を山車が通り、若衆が掛ける網起こし音頭「切り声(きりごえ)」も披露してもらえるので、それを大きな窓のある土間から見えるようにしたいといった要望が第1でした。



山本大工 また、家から海、そしてかもめ島が見たいというのも要望でした。オーシャンビューを楽しめるようになって気分爽快ですが、最近、朝6時、電柱に必ずカモメがいるということに気付き、我が家ではそのカモメと友達のような気がしてきました。



来客が多いことを考慮し、家族が使う浴室・ランドリースペースと、トイレなどの空間は扉で仕切れるようにすることで、家族の快適さも重視しました。



奥さま 新居に住み始めて・・・快適過ぎますね。以前住んでいたアパートは狭くて不便でしたが、この家は格段に広いので嬉しいです。娘は、私が洗濯などをしているときに、私を見失って探しに来る甘えんぼさんになっていますがw。

Q 最後に…辻久建設の魅力はどこでしょうか



山本大工 私は震災復興で一時期江差を離れ東北で働いていたことがあります。その時、建設に関わる仕事が人の役に立てるという実感があり、また大好きな江差に戻りたいとも思っていたので、釣り仲間でもあった辻社長に「大工として雇って欲しい」と相談したんです。



社長は、江差のためにも、地元に帰ってくる若者を育成したいという思いがあったようで、快く入社させてもらい、大工の仕事を一から教わりました。腕の良い先輩大工もいますし、この自宅のように、家づくりでいろいろなチャレンジもできます。札幌の住宅会社の視察などにも積極的に参加させてもらい、知識や腕が磨けるのも魅力です。



記者の目



取材終了後、辻さんから「今日の午後、別の家の上棟式があるけど見に来る?」と誘われ、お邪魔しました。近所から友人知人がどんどん集まって上棟式が始まる前から江差町民同士の楽し気な交流が…。辻久建設の大工さんたちも総出でサポートしながら、神事をつかさどります。建て主のご挨拶からの盛大な餅まきと大歓声を聞いて、地元に家が建つということを地元総出でお祝いする江差のあたたかさ、そして地域密着工務店の良さを実感しました。


2023年11月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。