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北海道の樹脂サッシはトリプルガラスが当たり前!YKK AP「APW430」人気の理由

日本の住宅を変えた樹脂窓



高性能樹脂窓のAPW430という製品をご存じですか?

北海道では、壁や天井の断熱材がどんどん厚くなって高性能化した一方、長らく性能が変わらなかった窓の性能を劇的に強化したのが、2014年に発売されたYKK APの「APW430」というトリプルガラス専用樹脂窓です。

断熱気密を重視する北海道の住宅会社、暖かく省エネな家づくりを望む建て主の支持を得て、約8割の道内住宅会社がトリプルサッシを採用するようになり、そのうち約6割がAPW430を採用(北海道住宅新聞社調べ)しています。札幌版次世代住宅基準や北方型住宅などの高性能省エネ住宅に欠かせない大ヒット商品です。

iezoomでご紹介しているお客さまの家づくり体験談でも、APW430を採用した住宅がたくさん出てきます。


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民謡の王様と呼ばれる「江差追分」、明治維新の歴史舞台ともなった徳川幕府の軍艦「開陽丸」、歴史ある街並み「いにしえ...

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道南・江差町の辻久建設は、高性能住宅の研究グループ「e-housing(イーハウジング)函館」のメンバー。2023年に同社大工が建てた自邸は、断熱等級7と最高等級の性能のZEHです。住宅全体の断熱性能UA値が0.16Wと飛び抜けて高く、そういった住宅にふさわしい窓としてAPW430は選ばれました。


ネコファーストの回遊型平屋住宅/小樽市・K邸

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江田建設が2023年に設計施工した小樽市内のK邸を取材させていただきました。K邸の特徴は 1 高断熱高気密の省エネ住宅、パ...

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道央・小樽市の江田建設は高断熱とパッシブ換気を軸に高性能な家づくりに取り組んでいますが、2024年9月にご紹介したK邸でもAPW430を採用しています。


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十勝の南部に位置する大樹町。清流として名高い歴舟川からもほど近い住宅街の一角に暮らすのは、小さなお子さんをもつTさ...

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十勝の有限会社水野建設は、カラマツなどの地場産材、新住協で学んだ断熱性能、そして「小さく建てて大きく暮らす」ミニマムスタイルの家づくりに取り組んでいて、大樹町のT邸でYKKAP430を採用しました。


住宅会社勤務の経験を活かした要望満載の「家事楽」な農家住宅 帯広市N邸/イゼンホーム

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今回伺ったのは帯広市の郊外、刈り取り直前の金色の小麦畑に面したN邸です。暮らしているのは農家の4代目であるご主人と...

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帯広のイゼンホームは、高断熱高気密、パッシブ換気、自由設計の注文住宅が特徴の人気工務店ですが、YKKAP430を標準採用し、住宅性能向上に取り組んでいます。

IEZOOMには、他にもYKKAP430を採用している事例がたくさん出てきます。
札幌・シノザキ建築事務所 札幌・アシストホーム 札幌・リビングワーク 旭川・セルコホーム・小森工務店  帯広・ティーメイス 函館・渋谷建設 帯広・イゼンホーム 帯広・プラスワイド 石狩・丸三ホクシン建設

このAPW430が2024年10月にさらにブラッシュアップされてさらに魅力的な窓になったということで、メーカーであるYKK APや、APW430を採用している住宅会社、設計事務所にお話を聞いてきました。

住宅のプロが語るAPW430の魅力

大手メーカーの本気を大きく評価
(株)山本亜耕建築設計事務所 山本 亜耕氏



住宅性能もデザイン性も優れた住宅を手掛ける環境建築家の山本亜耕氏。APW430は発売当初から標準で採用しています。もともと、意匠設計が得意だった山本氏。北海道では高い断熱性能が必要だと感じながらもデザインとの両立に難しさを感じていました。そんな中、スウェーデンの建築家ハンス・エーク氏の講演をきっかけに、性能・デザインに加えて環境にも配慮した建築設計を志すようになりました。

2009年、小樽市銭函で初めて「300mm断熱の家」を手掛けましたが、建設時は苦労の連続でした。開口部はトリプルガラスサッシが必要でしたが、良い製品がなく、特注で木製のトリプルガラスサッシを作ってもらったところ、ガラスの重さが1窓100kgもあり、施工が大変だったそう。また、日射遮蔽対策で外部ブラインドも設置するなど、建設コストがかなり上がりました。その後、300mm断熱の家が「快適で暖房費も節約できる」と施主から高い評価を受けて受注が増えると施工の合理化・コストダウンを考えるようになりました。


札幌市中央区宮の森に建つ300mm断熱住宅


そんな中、樹脂サッシでトリプルガラス入りのAPW430が発売されました。「国内大手メーカーが寒冷地の事情を考慮した製品を作ってくれたことが本当に嬉しかった」(山本氏)。

山本氏がAPW430を使い続ける理由の一つが、作り手の目線が盛り込まれていることです。柱の中に納まりやすい寸法、かつ現場の大工が教科書通りに誰でも施工できる点もメリットだといいます。またデザイン面では柔軟性が大きな特徴。例えば、窓を連続施工してカーテンウォールのような設計にすることも可能になります。バリエーションの豊富さも大きな魅力であるほか、一般的な白、黒以外に落ち着いた雰囲気のプラチナステン色を通常価格で選べることも評価しています。「高断熱化した上でデザイン的な差別化もできる」と山本氏は絶賛します。山本氏は南幌町で「みどり野きた住まいるヴィレッジ」に参画した経験から、今後は街づくりにも注力していきたいといいます。「APW430の断熱技術はもちろん、南幌町での知見や経験も活かし、地域の活性化や災害後の復興などに役立てたい」。インタビューの最後、山本氏は今後の抱負をこう締めくくりました。

オーナーに支持される開放的な空間を演出

㈱キクザワ  専務 菊澤 章太郎氏



(株)キクザワ(恵庭市、菊澤里志社長)は、「住む人の健康や暮らしを守る」ことを信条に、住宅性能と暮らしやす いデザインを兼ね備えた家づくりを手掛ける住宅会社です。窓は「APW430」が標準仕様。中でも同シリーズの「APW431大開口スライディング」は同社の家づくりの要となっています。

「弊社では、『快』か『不快』かを家づくりの指標の一つにしています。お客さまが楽しく、住み心地よく暮らせる『快』を叶える上で、大開口スライディングは非常に重要なアイテムになっています」。菊澤専務はこう話します。魅力の一つが、家の中と外がシームレスにつながる空間を作れること。実際、採用したオーナーからは「開放感がすごくいい」と上々の評価を得ているといいます。

また、1m以上の開口幅があり、開閉操作もスムーズに行えます。例えば、庭でバーベキューをする時、食材を持ったままでも出入りがしやすくなっています。「外に出るちょっとしたひと手間がなくなるだけで、自然に外の空間も楽しめる生活が提案できます」(菊澤専務)。オープンハウスの来場者が気に入り、「自分の家もこの窓がいい」と、次の採用につながるケースも多いといいます。大開口スライディングは、居住者にとって大いに魅力的であることがうかがえます。


APW431大開口スライディングを採用した住宅


会社としての対応の良さも使い続けるポイントの1つ。菊澤専務は「工務店のニーズを汲み取り、どうすればより良い提案ができるか、要望が実現するかを一 緒になって考えてくれる」と話します。以前、1500mmサイズの大きなすべり出し窓をリクエストしたところ、後ほど製品化されて「自分たちの要望がかなった」と喜んだそうです。

今後の家づくりについては、「これまで夏のオーバーヒート対策として遮熱メインで設計してきたが、燃料費の高騰で暖房費の削減が課題となる中、全館空調の導入でオーバーヒートのリスクも減ってきていることから、パッシブ的な設計の必要性を感じています」と菊澤専務は話す。そこで昨年発売された、日射取得型クリアガラス入りのAPW430を採用した住宅をこのほど初めて完成させました。同社では、今後もお客様目線で性能とデザインを両立させた家づくりを進めていきます。



APW430の普及とラインナップの拡大

このAPW430は、まだ大部分がペアガラスサッシだった2012年頃から開発が始まりました。どうやって住宅の専門家や建て主に支持されるようになったのでしょうか。


2014年にAPW430が発表されたときは大きな話題となった


第1回APWフォーラムは札幌会場が満席となった


2012年に札幌市が独自の住宅省エネ基準「札幌版次世代住宅基準」をスタートさせるなど、住宅の高性能化の流れが強まってきました。そこで2014年4月にYKK APは“トリプルガラス専用”樹脂窓「APW430」を発売しました。樹脂スペーサーの採用やチャンバー構造の見直しなどで窓全体の熱貫流率が向上。熱貫流率U値は0.91Wと1Wを大きく切り、日射熱取得率ηも0.46とバランスの取れた高性能を実現しました。また、付加断熱やガラスの重量化を考慮して施工しやすくしました。

このAPW430を普及させるため、工務店、設計者向けのイベント「APWフォーラム」をこの年から開催。東京大学准教授の前真之氏など有識者が登壇し、地球温暖化防止につながる家づくりとそれに最適なトリプルガラス樹脂窓の啓蒙・普及を狙ったこの催しは、多くの参加者を集めました。


APW430の製品情報ページ


APW431大開口スライディング


軽い開閉を実現した4連可傾戸車


こうしてAPW430は、発売当初からプロユーザーに高く評価され、多くの新規ユーザーを獲得していきました。北海道住宅新聞2015年1月5日号で、採用したことのあるトリプルガラスサッシのメーカーを住宅会社に尋ねたところ、約半数がAPW430と回答。最新の調査では約6割の住宅会社がAPW430を採用しています。東日本大震災後、原子力発電所の運転休止が長引くことで電気料金が大幅に値上がりし、原油価格の高止まりもあってエネルギーコストは全体的に高騰。そのことも 住宅のさらなる高断熱化を後押しし、APW430の採用へとつながっていきました。

YKK APはAPW430のラインナップ充実にも力を入れました。2016年には気密性と断熱性に優れた北国向けの大開口樹脂窓として「APW431大開口スライディング」を発売しました。引き違いテラス窓の約10分の1の軽い力で開閉できるこの窓は、「使いやすくて高性能」と高い評価を受けました。これまで道内の住宅デザインは、窓はなるべく小さく、テラス窓はダウンドラフト(冷気)が生じるのでもってのほか、とされていましたが、APW430シリーズの登場により、本州のように窓面積を広くとった開放的で明るいものに変わりました。



2019年には本州以南で要望の多かった引き違い窓を発売。2020年には、視界がクリアな透明なトリプル耐熱ガラスを使ったAPW430防火窓を発売。こうしてAPW430のラインナップは充実し、さまざまな条件の住宅に断熱性能の高いトリプルガラス樹脂サッシを採用できるようになりました。

2023年秋には、断熱性能と日射熱取得率を向上させた高性能トリプルガラス「日射取得型ダブルLow-Eトリプルガラス(クリア色)」仕様を追加しました。窓全体の 熱貫流率はU値0.89Wと従来と同等以上の断熱性能と日射熱取得率η値0.58を両立。北海道だけでなく、本州以南での販売量も急速に増えています。

「APW430」を今年10月にリニューアルし、基本性能を向上


性能がさらにアップしたAPW430の断熱性能


APW430とAPW430+の違い


今年10月からAPW430は発売10年を機に大きなリニューアルを実施しました。ガラスをはめ込み式から障子との接着に切り替える(※一部を除く)ことで強度や気密性がさらに向上。また、解体時に室内側の接着剤をカッターで切れる構造とし、特殊な工具を使うことなく取り外ししやすい造りとしています。製造時のCO2排出量も従来より11%削減できます(※1)。また、トリプルガラスの空気層をこれまでよりも2㎜厚い18mm厚のアルゴンガス入りとすることで窓全体のU値が0.89Wから0.82Wに向上。特にフレーム内に断熱材を入れた APW430+は0.84Wから0.78Wに向上するなど、基本性能が一段と強化されました。

現在、APW430のラインナップは広がり、ほとんどの窓種に対応できます。
ツーアクション窓、たてすべり出し窓、すべり出し窓、高所すべり出し窓(電動開閉タイプ含む)、FIX窓、引違い窓、引違いテラス戸、大開口スライディング、勝手口ドアなど選べる種類が多くなっています。

また、窓の外観色もホワイト、プラチナステン、ブラウン、ブラックの4色あり、内観色もホワイト、ブラックの2色から選べます。

※1たてすべり出し窓0611サイズでの試算


内観色、外観色を自由に選べる


YKK AP製品を見るならショールーム札幌へ

札幌市内には、YKK AP製品を実際に見たり、性能の高さを体感できる「ショールーム札幌」があります。このショールームは、水回り製品のTOTO、内装建材や音響建材の大建工業とのTDYコラボレーションショールームとなっており、センスの良いキッチンやデザインコーディネートされた床材と収納など、家づくりに必要なさまざまな設備・建材を見て確かめることができます。入館者用の駐車場も完備している。サッポロファクトリーのすぐ近くなので、休日の買い物ついでに訪問してみてはいかがでしょうか?

ショールーム札幌 概要



YKK AP ショールーム札幌 〒060-0033 札幌市中央区北3条東4丁目1-10 TOTO DAIKEN YKK AP 札幌コラボレーションショールーム内
電話番号 0120-4134-55
開館時間 10:00~17:00 休館日 毎週水曜日(祝日は開館、お盆時期と年末年始休館)
アクセス JR札幌駅より徒歩12分 札幌市営地下鉄東西線バスセンター前駅より徒歩5分
駐 車 場 お客様用約60台分
※ご来館の際は、事前にご予約いただくとスムーズに見学いただけます
APW430製品ページ  
YKK AP ショールーム札幌 

プロユーザーの声を地道に拾って「APW430」を開発

「APW430」の開発に携わった北海道商品開発室の倉島淳一室長に話を聞きました。



2012年札幌市が「札幌版次世代住宅基準」を策定した頃、北海道支社より「他社製品と圧倒的に差がつく性能の樹脂窓を作ろう」との方針が打ち出され、北海道支社、北海道工場で新規商品開発プロジェクトを立ち上げました。

開発にあたって倉島室長が大切にしたのが、現場の声を聞くこと。「次に製品を発売するならどんな製品がいいか、改善するための仮説をたてて開発に活かしました」。工務店や設計事務所などに話を聞いて回る中、高性能住宅に必要な納まり、現場に合わせた施工方法など、北海道の高性能住宅に導入する上での改善ポイントを見つけていきました。例えば、壁厚が厚くなる付加断熱住宅にも施工しやすく、美しい納まりで施工できるAPW430の特徴はその一例。また、札幌版次世代住宅基準への対応については、札幌市が新築住宅の目標とするスタンダードレベル(現在のシルバー相当)に対応するため、窓全体の熱貫流率U値1W以下を目指しました。



「既存製品の直すべきポイントを集め、改善しながらバージョンアップをしていけば、ユーザーに受け入れられる商品は必ずできる」。こう確信しながら開発を進めてきた倉島室長。APW430を開発した経験から、「後進の開発者には成功事例よりも失敗事例を受け継ぎ、それを糧にしてより完成度の高い製品作りを目指してほしい」と話してます。一見革新的な製品に見える APW430も、現場の小さな声を少しずつ積み重ねて開発された製品です。

2024年09月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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