北海道内をはじめ、全国で新型コロナウイルスの感染者が増えつつある中、住宅業界でもその影響が避けられなくなってきている。中国で生産されている住設建材の納品遅延や受注停止を表明するメーカーが相次いでいるほか、完成見学会での集客などにも影を落としつつある。さらに今後は社内や現場での対策が必要という住宅会社も出てきている。【北海道住宅新聞2020年3月5日号】より転載
水回り設備の入手が困難に
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な中国では、工場の稼働停止や物流の混乱などによって工業製品等の生産・供給が滞っている。国内の住設建材も中国で生産している製品や部品が調達できず、2月中旬くらいから納期遅延や新規受注停止を住宅会社に通達したり、ホームページで告知するメーカーが相次いだ。
特に影響が大きいのが、システムキッチンやトイレ、洗面化粧台、ユニットバスなどの水回り設備。例えばシステムキッチンではIHクッキングヒーターや食器洗い乾燥機、ユニットバスでは手すりが調達できないため、納期未定・受注停止になっているケースが目立ち、「住設建材の生産への影響は予測できることだったので、2月になってすぐにトイレと照明は今年の受注分を確保し、ユニットバスも手を打った。これからは常に先手先手で発注することが重要になりそう」と話す住宅会社もある。
さらに住設建材の納期遅延・受注停止で深刻なのは、キッチンやトイレなどが付けられず、住宅の完了検査を受けることができないこと。検査済証が交付されなければオーナーが入居して暮らし始めることができない。道東のある工務店は「リフォームでシステムキッチンを交換したが、IHクッキングヒーターが納期未定となったため、価格が高くても別の品番の製品を何とか入手した。もし新築で設備を付けることができずに引き渡しができないとなれば大問題。行政側が何らかの特例措置を設けてくれればいいのだが」と不安の声を漏らす。
引き渡しができないとなれば、工事代金の回収も遅れ、資金繰りが悪化することも想定される。それだけに住設建材の納期に関しては、しばらく情報収集や取引先の建材店との密接な相互連絡が重要になりそう。
札幌の予約制見学会では集客に影響なし(2月の3連休)
完成見学会でも、地域差はあるが集客状況に変化が出てきている。集客に影響はないと言う住宅会社がある一方、国が不要不急の外出は控えるよう呼びかけていることに加え、道が2月28日に緊急事態宣言を出し、道内の感染者が3月1日現在で全国最多となる72人となっていることも背景に、今後の集客に不安を感じている住宅会社もある。
2月下旬の3連休に完成見学会を行った工務店数社に聞いたところ、札幌で予約制にして開催した工務店ではキャンセルもなく、集客への影響は感じられなかったという。ただ札幌の別の工務店では「来場者こそ多かったが、そのほとんどは当社で商談が進んでいるお客様や、他社で建設中のお客様。新聞の折込みチラシやホームページを見て来たという来場者はほとんどいなかった」と言う。また、同じ日程で完成見学会を行ったオホーツクの工務店は「この時期は1年で最も来場者が多いが、今回は例年より3割くらい少なかった。開催初日はまあまあの来場者数だったが、その日にこちらの地域で初の感染者が出たと報じられたことで、2日目は来場者がゼロ。3日目は多少の来場者があった」と話している。
ちなみに道が緊急事態宣言を出した直後の2月29日(土)・3月1日(日)は、感染の拡大防止ために完成見学会やモデルハウスの公開を中止する住宅会社も目に付いた。
なお、完成見学会では公開した住宅のオーナーに対する配慮がいつも以上に必要となるほか、オーナーが公開を断るケースも考えられる。不特定多数の来場者が室内を見て回ることに、感染の不安を覚えても不思議ではないからだ。完成見学会を行ったオホーツクの工務店も、「オーナーの方も神経質になっている。引き渡し前に再度美装を行うとともに、建具の把手など手が触れる部分は消毒した」という。
感染防止の取組みをホームページで公開も
社内や現場などでの感染対策については、マスクの着用や消毒液の使用、イベントの中止・延期、ユーザーや協力会社等への打ち合わせ・連絡における電話・FAX・メール・SNSの利用などの取組みをホームページで告知する工務店も出てきている。今後は夏季の熱中症対策と同様に、大工・社員の体調を現場の責任者がチェックし、作業中もお互い異変がないか目を配るとともに、様子がおかしいなど異変を感じたら休ませるという判断も求められるだろう。実際に人が集まるところに行くことを自粛するよう、社員に指示を出している住宅関連企業もあるようだ。
もっとも今回の新型コロナウイルスの感染拡大で最大の懸念は、消費増税で減速気味の住宅景気がさらに大きく後退すること。道東のある工務店は「住宅のように金額が大きい買い物は、世間の雰囲気や社会状況に左右されがち。新築を考えているお客様の購買意欲が萎縮しないかが心配だ。さらに住設建材の納期の混乱が長引けば、住宅業界が受けるダメージは相当大きくなるのでは」と警戒する。
なお、国土交通省では、住設建材の納期や工期の遅延による中小企業・小規模事業者の経営への影響を考慮して、支援相談窓口の開設と日本政策金融公庫等のセーフティネット貸付の要件緩和に関する情報提供を開始。道も中小企業向け相談窓口を開設し、資金支援の情報提供も行っている。詳しくはホームページを参照のこと。
●中小企業・小規模事業者支援に関する相談窓口開設
●日本政策金融公庫等のセーフティネット貸付の要件緩和
●道の中小企業向け相談窓口及び融資取扱
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