Column いえズーム コラム

大工の技能向上と交流を深める「第5回 北海道削ろう会交流大会」開催

今回は学生の参加が増えて100名以上が腕を競った


家づくりを支える大工さんの技能向上と交流を深める目的で、伝統的な大工道具・カンナを使い、木材の削りくずの薄さを競い合う「北海道削ろう会交流会」が今年も開催されました。プレカット工場で事前に製材された木材によって家づくりが行われる現代で、昔から引き継がれてきた大工技術を絶やさぬようにと、道内の工務店が加盟する(一社)北海道ビルダーズ協会が主催するイベントです。

透けてみえるほどの薄さで削られたカンナくずを出せるようになるには、弛まぬ研鑽が必要で、大工さんたちは仕事が終わった後や、休日を利用してカンナの使い方を身に付けた上でこの大会に臨んでいます。個人での参加も含め、全国各地から大工さんが集まりました。いえズームを運営する北海道住宅新聞社の新聞局が取材・記事化した内容を、WEB上でもご紹介します。

※北海道住宅新聞2024年7月15日号に掲載された記事です

大工の技能向上と交流を深める「第5回北海道削ろう会交流大会」

カンナによる木材の削り屑の薄さを競う「第5回 北海道削ろう会交流大会」が、去る6月29日に岩見沢市内のイベントホール赤レンガで開催された。主催は大工ネットワーク北海道(船田慎人代表、武部建設㈱棟梁)と(一社)北海道ビルダーズ協会(武部豊樹代表理事・武部建設社長、菊澤里志代表理事・㈱キクザワ社長)。

削ろう会は、大工や高等技術専門学院の生徒らが、カンナ(鉋)の削り屑をどれだけ薄くできるか、どれだけ美しくできるかを競い合うもの。鉋を使いこなす技術や、鉋の刃研ぎや台の調整に至るまで高いレベルが要求される。当日は旭川・札幌・釧路の高等技専、札幌と旭川の工業高校、岩見沢緑陵高校などの学生と、北建連、道内の大工をあわせて100名以上が参加した。


能登半島地震で仮設住宅の建設を行った道内の大工が現地の状況等を報告


冒頭、能登半島地震で4月以降、北海道ビルダーズ協会の会員として、現地で仮設住宅の建設を行った大工たちが活動を報告。㈱丸三ホクシン建設の膳亀充徳さんは「被災地は倒壊した建物や家の下敷きになった車などで、信じられない光景だった。輪島市門前町で4月25日から3週間ほど14棟・44世帯分の仮設住宅の建設を担当し、被災地支援ができる大工という仕事をしていて本当に良かった」と話した。武部建設・渡部佳生さんは「普段から削ろう会などで丸三ホクシン建設の大工さんたちと交流があったので、現地でもチームとして連携できた。災害はいつどこで起きるかわからない中、日頃から削ろう会などで他社の大工さんたちと交流することが大きな力になることを実感した」と述べた。


鵤工舎創設者・小川棟梁の技を学ぶ参加者ら


また、社寺建築専門の宮大工で鵤工舎創設者の小川三夫棟梁が、学生向けの講話で「鉋などの手道具は指の延長。使いこなせるようになると、電動工具の能力も120%発揮できる。良いものを作るより先に、自分にあった切れる道具を持つことが先。良い道具を持てばその道具に恥じない仕事がしたくなってくる」と、道具の重要性を説くとともに、「知識で出来ることは限られるが、知恵で考えれば限りなくできるようになる。法隆寺や薬師寺は知恵の塊。自分の技術が高くなってくると、1000年前の宮大工の声が聞こえてくる」と、大工として成長するための心構えなどについて語った。

鉋削り屑の薄さと美しさで順位決定


学生たち熱心に競い合う学生たち


競技は制限時間内に参加者の削り屑の薄さを最大3回まで測定し、薄さが同じであれば均一な薄さになっているかなど見た目の美しさで評価を行い、一般の部は上位6名、学生の部は上位3名を選出して決勝戦を実施。

学生の部は、3箇所の測定値合計が44㎛(マイクロメートル、1㎛=1000分の1㎜)の酒井元気さん(釧路高等技術専門学校)が1位、2位は53㎛で山崎脩介さん(旭川高等技術専門学院)、3位は59㎛で船田翔一朗さん(岩見沢緑陵高等学校)。


一般の部で優勝した(株)スキルの玉城一平さん


一般の部は、1位が47㎛の玉城一平さん(㈱スキル)、2位は49㎛の山口陽介さん(鉋塾)、3位が54㎛の井本輝正さん(鉋愛好会猫祭り)、4位が56㎛の小野建樹さん(㈱エーステック)となった。1位の玉城さんは「現在育休中なんですが、家族が応援してくれたおかげでしっかり練習ができました。全国大会の歴代優勝者や先輩の大工さんが、ノウハウや道具などを快く提供してくれて『優勝しろよ』と励ましてくれたことも大きな力になりました」と喜びを語った。

閉会式では川口泰弘氏が「交流会も5回目となり、参加者同士の交流が年々深まってきているのがとても良かった。11月9日には神奈川県秦野市で第40回全国削ろう会が開催されるので、ぜひ参加してほしい」と話し、大会を締めくくった。

2024年07月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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