建て主の要望と設計者のアイデアが詰まった事例をまとめました
いえズーム(iezoom)は、年間100件以上、家を建てた方のご自宅にお邪魔して、取材撮影をさせていただいております。その中で、設計・デザインの力が凄いな!と感じる事例も数多くあります。建築家が設計した家はもちろんですが、ハウスメーカー、工務店の社内の設計者がプランした住宅にも素晴らしいものは多々あります。お客様の夢をかなえたデザイン、お客様の暮らしに関する課題を解決した設計、設計者のさまざまな配慮が住み心地や、暮らしの満足度に大きく貢献した設計などを中心にご紹介します。
スゴい設計・デザイン事例/当別町 i-worksモデルハウス/辻野建設工業
辻野建設工業(当別町)の施工により、北海道初となるi-worksの家が2024年 9月に完成、10月7日から1年間限定で公開中です。
伊礼智氏が提案するi-worksの規格型住宅は、省エネでコンパクト、デザインはすっきりと洗練されており、周辺環境との調和も重視。地域性を反映した内外装で、辻野建設工業が建てる住宅と共通するコンセプトが多くあります。
例えばリビングのテラス窓は、内側から障子、網戸、ガラリ、サッシの4枚構造になっていて、それらすべてがキレイにおさまるように戸袋をつくっています。
全て木で作るため、こうした「おさめ」の作業が現場では特に苦労しましたが、自慢したくなるほど美しく仕上がったと思います。
また、積雪量の多い当別では、構造計算上、吹き抜けに構造梁を1本入れなくてはならなくなり、その梁を生かして提案したのがキャットウォークです。窓からの眺めを楽しんだり、リビングの家族とコミュニケーションをとったりと、色んな使い方をしていただけます。
スゴい設計・デザイン事例/S・建築製作所
住宅街の路地を進むと、ひときわ目を引く建物が現れます。斜めにカットされた部分は2階のテラスに光を届けるためのデザイン。1階の外壁は塗り壁で仕上げ、2階・3階部分は「コールテン鋼」風な色合いのガルバリウム鋼板を使用しました。
Yさん 家を建てるにあたって色々な住宅会社の施工例を見ていたのですが、その中で特に惹かれたのが柴嵜さんの設計した住宅でした。
クロスの張り合わせ部分など、細かな所の仕上がりが本当にキレイなことに驚きました。デザイン性だけでなく、確かな職人の技術が感じられる施工力にも惹かれて、柴嵜さんにお願いしようと決めました。
以前に住んでいた部屋がテラスハウス風の2階建て賃貸だったのですが、家族6人分の洗濯物を持って階段を登り降りするのが本当に大変で、1階で洗濯や身支度が完結する間取りにしてもらい、本当に使いやすく満足しています。
街中の限られた坪数だったので、夫婦の部屋やテラスは難しいのではないかと思っていたのですが、柴嵜さんが叶えてくれました。
テラスがあるおかげでLDKが明るくなって、子供たちものびのび過ごせていますし、猫も喜んでいると思います。自分たちでは考えつかないアイデアをたくさん提案してくださり、期待以上の住まいになりました。
スゴい設計・デザイン事例/アウラ建築設計事務所
2022年夏、デザイン性の高いバリアフリー住宅や介護住宅を数多く手がけるアウラ建築設計事務所の山下一寛さんと若手設計者との共同設計による新居が完成。
オーナーの松原健(たけし)さんは 25 歳の時、就業中の事故の後遺症で首から下が動かせない肢体まひとなり、24時間介助が必要です。車いすで不自由なく暮らせる機能と建物としての美しさを兼ね備えたマイホームを実現しました。
シンプルで美しい外観が印象的な松原邸。建物と一体化した車寄せと車2台分の専用駐車スペースを備えています。
松原さんはご自身の家づくりについて「いかにも介護住宅という感じではなく、人が集まるカッコイイ家にしたかった」と語ります。
ホームシアターがある全面吹き抜けのリビングは、お客さまと一緒に過ごすパブリックな空間です。
グレーの濃淡でコーディネートされたインテリアの中にナチュラルな木と黒のアイアン素材が入り、スタイリッシュで、居心地の良いデザインに仕上げています。床は車いすの歩行性に配慮し、コンクリートで仕上げています。
スゴい設計・デザイン事例/三五工務店
「木の温もりが感じられる、シックな雰囲気の家に暮らしたいという漠然としたイメージがあったので、そのような家づくりをしている会社のモデルハウスを中心に回りました。全国展開のハウスメーカーより、距離感が近くて、道産材を使っている、地元に根ざした工務店にお願いしたいという思いもありましたね」。こうした考えに最も合致したパートナーとして、Kさんがパートナーに選んだのは三五工務店でした。
さまざまな要望を組み合わせながらプランを練り上げていくなかで、とくに印象的だったことは?
「もともと畳のスペースは1階にしようと思っていたのですが、そうすると他の要素との兼ね合いで、どうしてもその部分が建物正面から突き出てしまい、2台分の駐車スペースが確保できなくなってしまったり、ウッドデッキの設置も難しくなると。そこで若林さんから、畳を2階のホールに持っていくという提案をいただきました」。
この“正解”によって、すべてのピースがピタッとハマるプランが生まれたとのこと。
「全体的に私たちの要望をうまく組み合わせてくれたのですが、特に畳の件は若林さんの熱意を感じましたし、結果的にとてもいい空間構成になりました。2階は日当たりもいいので、ポカポカしていて昼寝にも最適です(笑)」
スゴい設計・デザイン事例/(株)キクザワ
Kさん プランをつくる時に一番大切にしたのは、空間の余白です。家が完成した時に、20%くらいの余白を持たせたかった。ちょっと寂しいくらいがちょうど良くて、絵を飾ったり、季節の小物を飾ったりしたときに空間が華やかになるようにしたいと考えました。必要に応じて足したり引いたりしながら暮らしたいと考えています。
また、人と人との適度な距離感もほしいと考えていました。子どもたちが遊ぶ場所、自分や妻が集中して仕事や作業ができる場所、静かに眠る場所など、暮らしの場面に応じて使い分けができるゾーニングを希望しました。
テラスに面した幅の広い通路もその一つ。窓の外の景色も採りこみ、視覚的に広がりを感じさせる効果があります。LDKは21帖ほどの広さと聞いて驚くほど、スケールを感じる造りです。
スゴい設計・デザイン事例/札幌市・Oさん シノザキ建築事務所
設計を依頼したのはシノザキ建築事務所。 実現できる、できないは考慮せず、要望をなるべくたくさんリストアップして伝えたそうです。
リビングから見上げると、薪ストーブの煙突が気持ちよく吹抜けに延びています。リビングには腰掛けるところがいっぱいほしいと要望。 篠崎さんが提案したのは、キッチン&ダイニングの床から少し下がったステップフロアでした。段差の部分に腰掛けやすく、人がたくさん来ても座る場所に困りません。 玄関から薪の収納場所を通ってリビングの薪ストーブまでひと続きの土間になっていて、動線もスムーズです。キッチンは、高級感たっぷりのオールステンレス製。
キッチン収納の半分は造作にしたため、全体のナチュラルな雰囲気にうまく溶けこんでいます。分別ゴミBOXもカウンターの下にすっきり収納。ダイニングのテーブルは鉄板を埋め込んだオリジナル。 週に何度もホットプレートを使うので、煙を吸い込んで臭いと脂分をクリーンにできるLED照明「クーキレイ」をつけました。試しに使ったところ、みるみるうちに煙が吸い込まれて焼き肉の臭いもほとんどしなくなるそうです。
スゴい設計・デザイン事例/石狩市K邸/笠井啓介建築研究所
玄関ホールです。奥行き8メートル近くある長い土間と、高さ約5メートルの吹き抜け空間が広がります。友人・知人が訪れるとまずこの玄関ホールで驚かれるそう。スケルトン階段が空間をより解放感あるすっきりした印象にしていますが、階段の踏み面は無垢材で、空間を無機質過ぎないナチュラルな風合いにしています。
Kさん 建築学科の同級生にはもちろん、建築を真面目に学んでいる同級生もたくさんいましたが、もし私が将来家を建てるなら、笠井さんに頼みたい、と思える何かが彼にはありました。デザイン、建築のセンスが優れているし、人柄も良かったのかなと思います。
住宅を間取りから考えると利便性は良くてもデザイン的には冴えない家になりがち(お客様の要望第1に考える工務店に多いプランニング方法)
住宅を外観デザインから考えると見た目は良くても使い勝手の良くない家になりがち(外観やデザインを重視する設計事務所に多いプランニング方法)
と言われたりしますが、笠井さんの場合は、お客様の要望をまずしっかり聞いたうえで、住宅を間取りやデザインだけでなく、縦の断面など、できるだけ立体的な視点で考えるそうです。
スゴい設計・デザイン事例/札幌市・Oさん/北渡建設
お子さんの誕生をきっかけにマイホーム購入を考えるようになったというOさん。実は他社のハウスメーカーと仮契約まで交わしていました。プランが進むにつれ何か希望を伝えるとひとつひとつがオプションという扱いになり、決まった枠組みの中で妥協したり、諦めたりする場面が続きました。「一体誰のために家づくりをするのか。一生に一度の大きな買い物なのだから、納得した家をつくりたい」と強く感じるようになったといいます。
そんな矢先、札幌良い住宅.jp(現在のIEZOOM)の中で北渡建設のホームページにたどり着き、和風建築の美しさに魅了されたOさん。早速公開中だったモデルハウスを訪れ、そこで担当の老川さんに出会います。
「この世の終わりみたいな顔で入って来たご主人にビックリしました。この人どうしたんだろうって。家づくりは楽しいはずなのに、すごく辛そうで。とても印象に残っています」と老川さん。ご主人はそのくらい家づくりに疲れ果て、希望を失っていました。
「気密・断熱・換気などの住性能の高さに加え、デザイン性も重視していました。もともと京都の町家などに興味があり、自宅にも和風モダンを採り入れたかった。おじいちゃんになってもカッコいい家が理想でした。担当の老川さんはイメージをその場でラフに描いてくれて、それがとても分かりやすく好印象でした」とご主人。ここなら希望する家が建てられる。契約していた会社と契約を解消し、北渡建設に依頼することを決めました。
「老川さんは私たちの24時間の行動をヒアリングした上でプランを出してくれ、コンセントやスイッチ、トイレットペーパーホルダーの高さなども一つひとつ実際に確認しながら決めてくれました。大変丁寧で思いやりのある対応でした」とOさん。
外観は京都の町家を連想させるようなモダンな造り。弾性塗り仕上げの外壁は2階が刷毛引き、1階はうずまきと凝った仕上げで、格子に見立てたルーバーはバルコニーの目隠しにもなっています。外観は京都の町家を連想させるようなモダンな造り。弾性塗り仕上げの外壁は2階が刷毛引き、1階はうずまきと凝った仕上げで、格子に見立てたルーバーはバルコニーの目隠しにもなっています。バルコニーは高い壁で囲われており、外からの視線を気にすることなくバーベキューや水遊びが楽しめます。開放感を出すために設けられた縦格子の一部は雪捨てのための扉も付いています。サッシは無機質な印象にならないよう無垢材でカバーされていて、細部まで丁寧な仕上がりです。畳スペースには京寺をイメージした円窓を提案。からし色の和紙を張った壁面によく映えています。窓越しに見える格子も良いアクセントになっています。
スゴい設計・デザイン事例/ 自然に優しい冷暖房システムの家・札幌市 シノザキ建築事務所
豊富なノウハウや高い住宅性能、洗練されたインテリアコーディネートなどで高い評価を得るシノザキ建築事務所が、新たな冷暖房システム「ラディアント・サーキュレーション・システム(RCS特許申請中)」を採用した、これまで以上にエコで省エネな住宅を発表しました。
2021年春、「環境に配慮した冷暖房システム」「居心地の良い室内環境」「地下水を利用した快適なエコハウス」という3つのコンセプトを組み合わせた注目の住宅を建設中と聞き、この挑戦を詳しく知ろうと、代表の篠崎廣和社長に現場でお話を伺いました。
篠崎社長 できる限りの低エネルギー、低CO2な暮らしを、低コストで実現できるのが「3LOWの家づくり」です。輸送コストをかけて運んだ大量のエネルギー資源を使う暮らしから脱却し、太陽光や地熱、薪など、身近な場所にあるエネルギーを自然から分けてもらって出来ることを考えました。
涼しい、暖かいという人間の感覚に直接働きかける輻射熱を加えた空気を家中に巡らせ、家そのものを大量の空気を動かす装置として設計したのがラディアント・サーキュレーション住宅です。夏には床下土間のひんやりとした涼しさを、冬には薪ストーブの暖かさを、家全体に効率よく広げ、家中で感じたい。そんな着眼点から開発が始まりました。冷暖房エネルギーには、雑木を伐採した時に出る薪や、夏には外気温よりも低くなる地熱を使い、地産地消で循環型のエネルギーを活用します。
冷房は、夏でも18~20度に保たれる床下の冷気を、省電力のDCモーターファン2台を使って風道を通して2階天井近くまで一気に上昇させ、家全体に循環させます(弱運転で1台3w、使用頻度の高い強運転で4.8wほど)。人が快適に過ごせる25~28度のちょうどよい室温が省電力で叶う、特許申請中の技術です。
暖房は1台の薪ストーブなどが発する大量の輻射熱と自然体流を利用して、家全体に暖かい空気を循環させ、輻射と対流でじんわりと快適な暖かさを得ることができるのです。
(輻射熱は人体も含めた物体の内部まで熱を浸透させる効果がある)
スゴい設計・デザイン事例/札幌市Hさん/SUDOホーム
市街地にありながら森の安らぎを感じさせる板貼りの家。お子様の学区内の利便性が高い環境で、プライバシーが確保された日当たりの良いリビングと建物で視線をさえぎったお庭が実現しました。「白を基調としたモダンなモデルハウスを見慣れていたのでインパクトがありました。新築に向けて心が動いたのもSUDOホームさんのオープンハウスと出会ってから。無垢のフローリングもそれまで訪れたモデルハウスのフロア材と肌触りがまるで違いました(ご主人)」。
敷地を取り囲むように3階建ての住宅があるので日当たりが悪くならないか心配だったそうですが、隣家との間に庭をつくり、吹き抜けの高所から光を取り入れることで採光とプライバシーの問題を解消しました。「リビングが奥まった位置にあり、道路側に窓もないせいか車の音もほとんど聞こえません(ご主人)」。「アンティークのタオル掛けなどビンテージ感のある小物をいろいろ探してもらいました。細かいところまで丁寧に対応して頂いたと思います(ご主人)」。
スゴい設計・デザイン事例/札幌市・Kさん/アウラ建築設計事務所
旧車とバイクをこよなく愛するKさんが暮らす見晴らしの良いガレージハウス。愛車との時間を心ゆくまで楽しめる広々としたビルトインガレージ。夜景が美しい2階リビング。そして遠くの山々まで一望できる贅沢な屋上空間―。こだわり満載のマイホームで3度目の冬を迎えるKさんと設計者の山下一寛さん(アウラ建築設計事務所)にお話を伺いました。
K邸の敷地は眺めが抜群な半面、車がすれ違うことができない細い道に面しています。しかもGL(敷地の高さ)が道路より1m高く、ビルトインガレージを設けるのがかなり厳しい環境でした。「方向転換もままならない場所にどうやってガレージハウスを造るかが1番の問題でした」と設計者の山下さん。 そこで、もとの地盤を掘り下げて道路との段差をなくし、1階にガレージ、2階に居住空間がある建物を、敷地の奥にはめ込むように配置。車が出入りしやすいよう車庫の前を広くあけ、車2台分の駐車場に。間口の大きいガレージを造る関係上、外階段に隠れて通りから見えない脇の方に玄関を置いたため、隠れ家っぽい雰囲気になりました。 駐車スペースの両サイドは既存のGLを生かし、コンクリート塀で固めて前庭に。以前からあったモミジも残しました。「植栽の伐採や建物の高さ等に一定の制限が定められた風致地区なので可能な限り樹木を生かす方向で設計を進めました(山下さん)」。
スゴい設計・デザイン事例/ニセコ町・Rさん 晃和住宅
2階リビングからは、蝦夷富士とも言われる優美な羊蹄山とニセコ連峰が見渡せるパノラマビューがR邸の自慢のひとつ。辺りには手付かずの緑がそのまま残されており、ウグイスの美しい鳴き声も聞こえてきます。みどり豊かなこの土地と出会ったRさんご夫妻は、ここの自然に溶け込むような家を建てたいと考えて住宅会社探しを始めたそうです。
ご主人のこだわりは天井を高くすること。三角屋根の形をそのまま生かし、野地板の現し天井にしたいと考えて、いくつか希望に合う住宅会社を探しました。その中でもインターネットで見つけた晃和住宅が建てる家を強く気に入って、ちょうどその頃真狩で進んでいた建築現場を見学。完成した家を見て「理想の家を建ててくれる会社だ」と感じたそうです。
この日は晃和住宅の担当者・杉林さんと、インテリアコーディネーターの井上さんにもお越しいただき、賑やかで楽しい取材となりました。井上さんは打ち合わせ当時のご主人の様子をこう話します。「Rさんの建築イメージはいつも明確で、全く迷いがありませんでした。奥様が何度もご主人に"Are you Happy?"と確認をとりながら打ち合わせを進めていたのが印象的です。」
スゴい設計・デザイン事例/札幌市K邸 丸三ホクシン建設
玄関を開けると見上げるほど高い天井。
玄関の広い土間に目を落とすと、クマの足跡やお花の形の石が...。
奥様の山の道具も土間床暖房で乾かせるように工夫されています。
「リビングからすべてのお部屋につながるほぼワンルームのような開放的な家」
が基本になりました。
以前は、家を建てる願望は全くなかったというK様夫婦。
知人から「いい家を作っている会社があるよ」と聞いたのが丸三ホクシン建設でした。
丸三ホクシン建設で手掛けた家の写真の数々も魅力的でした。
無垢の木などナチュラルな素材を・・・
年月を重ねるほど風合いが良くなるものを・・・
この点でご主人と丸三ホクシン建設の住まい作りは一致しました。
ご主人は車で探し回って見つけた住宅街の角地で台形の土地。
設計面はホクシン建設さんとしっかり話し合いました。
一方、「ホクシンさんの家はどこを見ても素敵」と惚れ込んだ奥様。
2カ月にわたって隔週ペースで打合せを行い、オープンハウスも見学し参考にしました。
最初の提案からご夫婦の希望にぴったり合っていたといいます。
「私たちの中にある感性が、ホクシンさんにあるという感じでした」と奥様は振り返ります。
住み始めて3年目。
「この家に住んでから、暮らしがシンプルになって余計なものは買わなくなった」と奥様。
「もう10年くらい住んでいる気分」と言うほど、ご夫婦が望んでいた生活スタイルに馴染んでいます。
スゴい設計・デザイン事例/札幌市A邸/白田建築事務所
白田建築事務所が手掛けるエコロジカルな住宅は、「暮らしの質」を大切にするオーナーたちから大きな支持を集めています。今回ご紹介するAさんのお宅は、互いに単身の親子が暮らす2世帯住宅。1つの建物の左右に、プライバシーを尊重した別空間が広がっています。
吹き抜け窓から入る光は、ホールや階段室のほか、ハイサイドライトから寝室にも届く設計。階段室の細長の窓など、デザインにもこだわっています。「出来るだけ高い位置に窓を付け、そこから全体に光が行き渡るようなイメージで設計していきました」と白田さん。作業部屋の上に位置する中2階は、読書やテレビ、音楽鑑賞を楽しむスペース。リラックスチェアにオットマンを添えた寛ぎの空間です。屋根勾配を活かした2階主寝室は、特にクロス選びにこだわった空間。飽きのこないよう、壁は無地にして、天井に柄をもってきました。植物を模したウィリアム・モリスの図案です。
Aさんのお宅は、どこを拝見しても、「Aさんらしさ」が感じられる住空間でした。まるで必要と感じるものだけを厳選して豊かに暮らす、北欧のヒュッゲスタイルのようです。「暮らしの質」について考えると、住宅会社の選び方は自ずと変わってきそうです。
スゴい設計・デザイン事例/札幌市・Tさん 拓友建設
本州の設計事務所と札幌のビルダーとのコラボによる、大きな吹抜けのある家。薪ストーブがある開放的なダイニングでオーナーのTさんご夫妻と設計者の宇津義和さん(茨城県・宇津建築設計事務所)、施工を担当した拓友建設(株)社長の妻沼澄夫さんにお話を伺いました。
北方型住宅や札幌版次世代住宅基準に早くから取り組んできた拓友建設の妻沼さんは、デザインや設計はその道のプロ=設計事務所 に任せても、「デザイン、プランに加え温熱環境の良いバランスのとれた家をお客さまに提供するという目標を共有できる設計者でなければ一緒に仕事できない」、と常々考えています。なぜなら、良い家はデザインだけでも性能だけでも成り立たないからです。
「宇津さんとのやりとりで、目指す家の方向性が同じと感じました。建物の構造や温熱環境を第一に考えている設計事務所さんだったんです」と妻沼さんは宇津さんとベクトルが同じであることを確認し嬉しくなったと言います。そして今回初めてのタッグが実現したのです。
温暖な関西での暮らしに馴染んできたTさんにとって1番の問題は冬の寒さと雪対策。「まず暖かく、雪かきしなくても外出できるように」などのリクエストを最大限に盛り込んで完成したのがビルトインガレージを備えた現在の住まいです。
「熱損失を少なくするため、バルコニーや庇のような突起物のないシンプルなデザインを提案しました(宇津さん)」。敷地が広いので、屋根形状は雪を1ヵ所に落とす片流れ屋根に。落雪で壁面が傷まないよう雪が落ちる側の外壁を地面と垂直ではなく斜めにしており、個性的なフォルム。外装は明るいレンガ色のタイル貼り。
スゴい設計・デザイン事例/恵庭市T邸/エコットハウス(札幌)
Tさんの奥様は子ども時代から無類の小鳥好き。特にセキセイインコが大のお気に入りで、広い一室に11羽のインコを飼育しています。小鳥部屋にはゲージが置かれていますが、日中はゲージの外に放ち、小鳥たちは自由に部屋の中を飛び回っています。
野生のセキセイインコは、多くて10万羽もの群れを成す野鳥。群れの最小サイズが10羽ということから、群れで暮らすインコ本来の生育環境をつくるため、11羽の多頭飼育をしているそう。
「窓を開けたスキに小鳥たちが逃げないように、網戸を閉めっぱなしにできる引き違い窓にしてもらいました」と奥様。他の部屋と異なり、小鳥部屋は一定の室温を保つために、個別換気・個別暖房にもこだわりました。
小鳥部屋の床の一部は無垢材を使用し、奥様が小鳥と一緒にくつろげる専用スペースも設置。生き物がテーマのラジオ番組を聴きながら、小鳥とともに日々を生活しています。エコットハウスで建てる決め手となったのは、温度変化を嫌う小鳥たちにやさしい室内環境と、冬の停電時にも室温が下がりにくい高い断熱性能。機械換気を使わずファン音がない静かなパッシブ換気と、停電してもある程度自立した生活が送れる「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)※」が実現でき、北海道でもインコたちにとってほぼ理想の環境をつくることができたとTさん。「災害時や停電時にも自然の力で止まることなく動く’’パッシブ換気床下暖房システム‘’は、人より温度変化に弱い小鳥たちとって理想」とTさん。
さいごに
建て主のデザインや動線、性能、価格などに関する要望、そして土地や予算、家族構成などを踏まえ、自由設計の注文住宅で最善の住宅を建てるとなると、家づくりにおいて設計者の知識、経験、ヒアリング力、コーディネート力、さらには設計施工も踏まえた総合的な力が必要になります。
建築家はもちろんですが、工務店、ハウスメーカーの設計者でも、それぞれ力量や熱意、経験値に違いはありますし、建て主との相性も大いに影響すると思います。設計が良いだけでなく、現場監督や大工さん、塗装などの技能者の力があってこそ良い家が建つという面もあります。ぜひ、ご自身にあった設計者をじっくり探していただければと思います。(編集部)
おまけ
余談ですが、家づくりはご夫婦やご家族、設計者、施工者、営業マンなどさまざまな関係者による合作のような面があります。自分の思いだけで自由に作った家、というのは現実的にはなかなか難しいと思います。その点、住宅会社の社長が、自宅を設計し、現場監督し、施工した家などは、ある意味、本当の自由設計かもしれません。ということで、住宅会社社長や社員が建てた自邸まとめ ももしよければどうぞ
目次
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