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愛車と過ごす「男の城」。クルマ好きが建てた絶景ガレージハウス 札幌市・Kさん/アウラ建築設計事務所

旧車とバイクをこよなく愛するKさんが暮らす見晴らしの良いガレージハウス。愛車との時間を心ゆくまで楽しめる広々としたビルトインガレージ。夜景が美しい2階リビング。そして遠くの山々まで一望できる贅沢な屋上空間―。こだわり満載のマイホームで3度目の冬を迎えるKさんと設計者の山下一寛さん(アウラ建築設計事務所)にお話を伺いました。

眺め良いがデメリットもある山すその土地を設計力で解決

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市街地に向かって視界が開けた山のふもとの住宅街。急な坂を上り、細い砂利道に入ると、道路に面して間口の広いビルトインガレージと車2台分の駐車スペースを設けた外階段のあるお住まいが見えてきました。モノトーンでまとめたスタイリッシュな外観。前庭の真っ赤なモミジとのコントラストが鮮やかです。

「いくつかの候補地の中からロケーションの良いこの土地を選びました」。そう話すKさんは通勤用の車のほかに1960年代のヒストリックカー2台とバイク2台を所有。趣味の車イジリができる広くて使い勝手の良いビルトインガレージがある家という理想の住まいのイメージをお持ちでしたが、それにはいくつかの課題がありました。 P1020918_ccr_mail.jpg K邸の敷地は眺めが抜群な半面、車がすれ違うことができない細い道に面しています。しかもGL(敷地の高さ)が道路より1m高く、ビルトインガレージを設けるのがかなり厳しい環境でした。「方向転換もままならない場所にどうやってガレージハウスを造るかが1番の問題でした」と設計者の山下さん。 そこで、もとの地盤を掘り下げて道路との段差をなくし、1階にガレージ、2階に居住空間がある建物を、敷地の奥にはめ込むように配置。車が出入りしやすいよう車庫の前を広くあけ、車2台分の駐車場に。間口の大きいガレージを造る関係上、外階段に隠れて通りから見えない脇の方に玄関を置いたため、隠れ家っぽいの雰囲気になりました。 駐車スペースの両サイドは既存のGLを生かし、コンクリート塀で固めて前庭に。以前からあったモミジも残しました。「植栽の伐採や建物の高さ等に一定の制限が定められた風致地区なので可能な限り樹木を生かす方向で設計を進めました(山下さん)」。

エアコン付きのマイガレージ。仕上げはDIYで

P1020898_ccrr_mail.jpg 1階の大部分を占めるKさんご自慢のガレージ。愛用のカー用品が壁に機能的に掛けられ、ゆったりとしたスペースにお手入れが行き届いた愛車が大切に収められています。「車の部品を湿気から守るためエアコンを付けてもらいました(Kさん)」。 壁面のオープン収納はKさんが部材を購入し、4日がかりで取り付けたそうです。除雪道具までオシャレに見せてしまう収納テクニックもお見事。玄関との境のドアのそばには休憩用の小さなテーブルと椅子が置かれています。 PA206939_ccr_mail.jpg 「これまでは、賃貸マンションとは別に駐車場を借りていましたが、車の管理が大変。『いっそガレージ付きの家を建てたら?』という友人の一言で真剣にマイホームを考え始めました」。手塩にかけた愛車を愛おしそうに見つめながら家づくりの経緯を語るKさん。自らの手で完成させたマイガレージで大好きな車と触れ合う休日が多忙な毎日を送るKさんの1番幸せな時間です。

札幌の夜景を満喫。書斎スペースのある2階リビング

P1020919_ccrr2_mail.jpg 札幌市街を一望する高台のメリットを最大限に生かすため、居住空間は眺めの良い2階に。玄関を入って正面の透かし階段を上り、右に進むと書斎スペースを備えた開放的なリビングダイニングがあります。 ダークな色合いの木製家具で統一した大人の空間。造作のオーディオラックの後ろの壁にもワンポイントで同じトーンの木を用い、高級感を演出しています。オーディオコーナー手前の天井にセットしたスクリーンを下ろすとホームシアターに早変わり。「仕事柄、機材の扱いには慣れているのですべて自分で設置しました(Kさん)」。 モニターが2台取り付けられた書斎コーナーのデスクもKさんのお好みに合わせたオリジナルです。こんな素敵なお部屋で仕事や趣味に没頭してみたい男性諸氏も多いのでは。 P1020928_ccrr_mail.jpg 通りを見下ろすコーナー窓の外には美しい街並みが広がっています。「夜景もキレイです」。目の前の道路が行き止まりになっていて人も車もほとんど通らないため1日中、ブラインドを下ろさずに生活していても外からの視線が全く気にならない」といいます。 P1020913_ccrr_mail.jpg 既製品のシンクに長めのカウンターをジョイントして造ったスマートなオープンキッチン。ハードなイメージのリビングとはテイストの違うナチュラル系のコーディネートです。 家でお友達とグラスを傾ける時間がなかなか取れないKさんですが、外の景色を眺めながらキッチンに立つことも。「ごはんはガスの直火で炊いています。炊飯器で炊いた時とは味が全然違います。やってみたら意外と簡単ですよ」。 P1020920_ccr2_mail.jpg リビングの隣は縁側みたいなテラスのある来客用の和室。続いてコンパクトな寝室があります。通りに面して居室が横一列に連続する2LDKの機能的な間取り。寝室とユーティリティ・浴室も直線で結ばれています。「動線がまっすぐな家は暮らしやすいですね」。

ペントハウスのある屋上空間。

P1020943_ccr_mail.jpg 2階からさらに階段を上ると接客スペースとして造った屋上に出ます。10名近くでバーベキューやホームパーティが可能な広さ。澄み切った秋空の下に360度の大パノラマが広がる贅沢な「おもてなしの空間」にしばし圧倒されてしまいました。北海道ならではの雄大な景色と風の爽やかさが本州からのお客さまに大好評。「ここからなら豊平川の花火大会も見えますよ(Kさん)」。 P1020939_ccr_mail.jpg 「階段室の採光と屋上の雪下ろしのため絶対にあった方がいい」という山下さんのすすめで造った小さなペントハウス(塔屋)も。ちょっと気分転換を図ったり、読書をしたりするくつろぎのスペースとして活躍しています。こじんまりしていて陽だまりに包み込まれているような安心感がありますね。 PA206974_ccr_mail.jpg 家を建てると決心した時、真っ先にプライベートでお付き合いのあった山下さんに土地探しも含めて相談したKさん。「敷地のメリットとデメリットを見極めた上で最適なプランを提案していただきました。参考のため他の住宅会社からもプラン提案と見積もりを取りましたが、決まったパターンをアレンジするだけでした。きっと思い通りの住まいにならなかったと思います」。 新居に移ってから外にお酒を飲みに行く回数が減ったとも。「1年を通して暑くもなく、寒くもない快適な家。落ち葉の片付けや屋上のメンテナンスなど賃貸マンションで暮らしていた頃にはなかった"面倒なこと"を楽しんでいます(Kさん)」。

記者の目

道路との段差のある山際の土地のデメリットを克服しながら絶好のロケーションを生かし切り、眺望の良いガレージハウスを完成させたKさん。通りから見えないように工夫したプロパンガスのボンベ置き場など細部まで配慮が行き届いた家でした。多機能なペントハウスも印象的。雪下ろしが必要な豪雪地帯で屋上を造る場合は必須ですね。

2017年12月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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