ジョンソンホームズ徹底研究!創業最大の危機から250棟に大化けした秘密
北海道住宅新聞 2015年1月15日号8面
札幌のハウスメーカー、㈱ジョンソンホームズ(山地章夫社長)が快進撃を続けている。一時は年間24 棟まで落ちた受注が昨年は推定250 棟、独立系ビルダーで札幌圏ナンバーワンクラスに成長。その中心となっているのが企画住宅のCOZY(コーズィー)だ。同社では札幌以外の地域でCOZY を建てる工務店を募集している。
高級輸入住宅路線からの決別 ジョンソンホームズ徹底研究!
同社は2001 年に24 棟だった受注棟数は、2013年には235 棟と10 倍に増えた。当社が2006 年から調査している札幌市の戸建住宅確認申請ランキングでは、2006 年の49 件、第20 位から2014 年は
185 件、第2位(2013 年11 月~ 2014 年10 月まで)と大躍進。札幌圏全体での受注棟数は2014 年は250 棟以上を見込み、独立系地場ビルダーでは札幌圏ナンバーワンクラスだ。
稼ぎ頭が「自分サイズの家」をキャッチフレーズにした企画住宅・COZY(コーズィー)だ。営業社員1人で平均年間10 棟以上受注。1棟あたりの平均価格は1500 万円弱だが、粗利30%を稼ぎ、営業利益も
10%をたたき出すなど、収益面でも優秀だ。
最近は、日経新聞が発表した「2015 北海道就職希望企業ランキング」で親会社も含めた「ヤマチ・ユナイテッドグループ」として前年の17 位から急上昇し11 位にランクイン。建設・土木系企業では唯一ベスト20 入りを果たした。
道外からも「スゴイ住宅会社」として注目を集め、昨年春に札幌市内で開催されたジョンソンホームズの経営視察ツアーでは、6万円という高額な参加費にもかかわらず、全国から約100 名の地場ビルダーが参加。その人気ぶりが話題となった。
もっとも、ここに至るまでの道のりは平坦ではなかった。1987 年に北米の高級輸入注文住宅会社として創業した同社は、坪単価が高く、富裕層がターゲット。1995 年頃は年間80棟受注していた。
ところが、97 年に消費税増税と金融不況のダブルパンチで事態が一変した。北海道拓殖銀行の破たんもあって道内景気が冷え込み、高価格の住宅が売れなくなった。2001 年には受注棟数が24 棟まで落ち込んだ。そんな中、住宅事業部の立て直しのため、親会社の山地建材店(現・ヤマチコーポレーション)が立ち上げた輸入住宅FC「インターデコハウス」の札幌店として加盟。欧風のライフスタイルで売る体制
を確立し、FC 加盟店の模範となる年間100 棟体制まで業績をV字回復させる。
しかし、ここでまた伸び悩んだ。ちょうどリーマンショックによる世界不況のあおりを受けて住宅景気も急降下。受注棟数はなんとか維持したものの、初めて赤字を計上してしまう。この頃、同社はほとんどが「インターデコハウス」で占められており、輸入住宅会社というイメージは創業時と変わっていなかった。
この危機感をバネに方向転換し、同社はインターデコハウス以外にもさまざまなテイストの住宅を作るマルチブランド化の道を進めた。中でも大当たりしたのが2009 年暮れに誕生したCOZY だ。大半が30
坪以下のコンパクト住宅で、1棟単価は1500 万円弱。社内からも「これまでの会社イメージが崩れる」と批判が出て、わずか2人の社員での立ち上げとなった。
ところがすぐに売れ始め、10 ヵ月後には受注35 棟を達成。その後も順調に伸び続け、直近の2013 年11 月~ 2014 年10 月までの1年間で128 棟を受注した。同社受注の半分がCOZY ということになる。
この他にも自然素材をたっぷり使った「ナチュリエ」や、車庫を組み込んだ男性目線の「アメカジ工務店」、インテリアショップとのコラボ住宅など、次々に新ブランドを打ち出して顧客層を広げることに成功。同社全体で年間受注250 棟以上と、独立系ビルダーで札幌圏ナンバーワンクラスに上りつめた。
ジョンソンホームズのコンセプト
ライフスタイルとライフプラン重視の営業
幸せを届ける企業になれ
「住宅会社は家を売る(建てる)のが仕事」と考える人が多い中、「家を通じて幸せを届けよう」と考えたのが山地章夫社長。家を買うきっかけは、結婚、子供の進学、親との同居など人それぞれ違うが、共通しているのは「幸せな暮らしを実現したい」ということ。
高断熱・高気密住宅や、設備の高性能化は「幸せな暮らしを実現する」ために必要な1要素に過ぎないし、目的ではない。同社が重視しているのは、「何をしたいか」「どう暮らしたいか」「無理なく建てられるか」ということ。同社の中原本部長は、「お客さまの家づくりを肯定すること」と表現する。
たとえば、旧車いじりが趣味という人が、理想の家を求めて「アメカジ工務店」で車庫付き戸建を建てたとしても、予算がかさんでしまって後で車を手放すことになった、というのでは意味がない。だからそのような顧客であれば、事前に資金能力を把握した上で数百万円安く買える「COZY」を勧め、組込車庫の代わりに既製のガレージで車いじりをしてもらう。言い換えれば、顧客のライフスタイルとライフプランに合った家づくりを提案している。
この2つの要素をすり合わせ、整理することでCOZY を買う動機付けができる。それが同社営業の重要な仕事だ。顧客との付き合いは、家を建てて終わりではない。リフォーム、建て替え、住み替え、紹介受注などを想定し、長いお付き合いの中で新たな商機を獲得するという点で地場工務店と目指すところは変わりない。
そのためには仕掛けが必要だ。顧客との接点をなるべく増やすため、同社ではカルチャースクール「ライフスタイル倶楽部」を提供。また、アフターサービスは女性スタッフ「ジョンソンレディ」が定期的に訪問し、友達のような関係作りを通じて潜在的クレームなどを解決する。また、新規顧客にはライフプランに基づいた資金計画や家づくりの流れがわかる無料セミナーを定期的に開催している。
「ライフスタイル倶楽部」は、陶芸教室、羊毛フェルト体験、干し野菜の活用法など、生活に身近なテーマを扱って月に何回も開催している。家づくりの予算はほどほどに抑え、その分「ライフスタイル倶楽部」のような具体的な「暮らしの楽しみ方」を提供することで、ジョンソンホームズのファンになってもらい、次のリフォーム、建て替えとお付き合いできるような関係につなげる。
このほか、戸建・マンションリフォーム、インテリアショップ、カフェ、レストラン、ウエディング事業など、同社は人が楽しみ、幸せになる場面でサービスを提供している。
これだけの事業を展開するには、社員の意識改革も必要になる。幸せを届ける企業は、社員自身が幸せな必要がある。そこで「学校のクラス活動のような感覚で運営したい」と始めたのが委員会活動。若手社員を中心に8つの委員会が自主的に活動し、その成果はホームページでも発表している。たとえば「ライフスタイル委員会」では、市民農園体験やアウトドア活動など、社員自らが楽しみ、その経験をライフスタイル倶楽部に生かしている。また、オーナー感謝祭やOB客訪問の企画などを行う「顧客満足委員会」、会社内の情報開示や共有化などを進める「見える化委員会」など、ユニークな活動も。
2023年01月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。