電気代、最近高いですよね。少しでも安く抑えるため、節電を心がけるようになった方も多いのでは。
ところで、「24時間換気システム」の電気代って、毎月どれくらいか気になりませんか?
スイッチを切らない限り、24時間動きっぱなしですから、ふつうに考えたらけっこうかかりそうですよね。
盲点になりがちな24時間換気システムの電気代。実態を探っていきましょう。
目次
はじめに:なぜ? 電気代が思いのほか高い
いま、電力会社から電気を買っている人たちの多くが、「電気の使用量は増えていないのに、電気代の請求額が上がっている」という不思議な現象に直面していると思います。
こんな現象が起こっている理由は、電気代の一部となっている「再エネ賦課金」と「燃料費調整額」が値上がりしているからです。
■再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)とは?
現在、電力会社は、国が2012年から始めた「再生可能エネルギーの固定買取価格制度」(FIT制度)に基づき、屋根に太陽光パネルを設置している一般家庭などから、再生可能エネルギーでつくった電気を買い取っています。徴収された再エネ賦課金は、この買取費用に充てられます。
ちなみに、買い取った再生可能エネルギーでつくった電気は、家庭や企業に供給され、私たちが使っている電気の一部になっています。
金額は全国一律で、2022年は3.45円/kWh。2012年に導入されて以来、ずっと上がり続けています。2021年は3.36円/kWhでした。
■燃料費調整額とは?
電気をつくりだすための燃料(原油・石炭・天然ガス等)のコストは時期によって変動します。燃料費調整額はその変動を電気代に反映するためのもの。例えば、燃料が安い時期は燃料費調整額がマイナスに設定され、電気代も安くなります。逆も然りです。金額は月ごとに調整されていて、2022年7月は3円23銭/kWhです。
北海道電力のホームページを参考に作成(金額は従量電灯A以外で契約の場合、https://www.hepco.co.jp/home/price/system/system03_list.html)
再エネ賦課金は、2012年に導入されて以来、毎年じりじりと上昇。
燃料費調整額も今年1月にプラスに転じてしまい、以来ずっと上がり続けています。
具体的には、どれくらいの影響が出ているのでしょうか。2021年7月と2022年7月の再エネ賦課金と燃料費調整額の合計を比較してみます。
計算例)1ヵ月の電気消費量が400kWh(※)の場合
※4人家族の平均くらい
<昨年7月>
燃料費調整額:-1.95円/kWh×400kWh=-780円…①
再エネ賦課金:3.36円/kWh×400kWh=1,344円…②
①+②=564円…(a)
<今年7月>
燃料費調整額:3.23円/kWh×400kWh=1,292円…①
再エネ賦課金:3.45円/kWh×400kWh=1,380円…②
①+②:2,584円…(b)
(a)と(b)の差額:2,020円
2021年7月と2022年7月で、約2,000円の差・・・。いろんな人が「節電してみようかな」と思うのも頷ける上がり幅ですね。
24時間換気システムの電気代
毎月、24時間換気システムの電気代はどれくらいかかっているのか?
また、24時間換気システムはいくつか種類があるが、種類によってどれくらいの差があるのか?
換気システムメーカーのホームページ・カタログ等に掲載されているサンプルプランや消費電力を参考に、種類別のおおよその電気代を計算してみました。
※24時間換気システムの種類別の概要や特徴などは、住宅の空気をきれいに~24時間換気を「性能・メンテ・価格」をチェック!
金額はあくまでも目安としてお考えください。製品や風量、家の広さなどによって前後します。延床面積が30坪台の平均的な戸建住宅だと、だいたい上記の金額になると思います。
4種類のうち、ダクトレス第1種熱交換・ダクト式第3種・ダクトレス第3種の電気代は、自動販売機の飲み物くらいの金額。1ヵ月でこれくらいなら、出費として気にならないレベルと言えるのではないでしょうか。一方、ダクト式第1種熱交換換気は他の24時間換気システムよりも消費電力が大きいため、電気代も比較的高めです。
24時間換気システムは止めても大丈夫?
24時間換気システムの月々の電気代は、基本的に気にならないレベルだと分かりました。そのため、スイッチを切っても大して節約になりません。というか、24時間換気システムのスイッチを切るのはNG行為です。
正直、24時間換気システムの効果は実感しにくいです。スイッチを切っても酸欠で死に至るわけではありませんし、実際、冬に「寒いから」といってスイッチを切る人はけっこういます。ただ、室内の空気を良好に保ち、シックハウス症候群や結露による健康被害やカビの発生を防ぐためには絶対必要なものです。
また、近年の新築戸建住宅は高断熱・高気密が当たり前となりつつあるため、24時間換気システムを動かしていないと、湿気や生活臭、有害な化学物質などが室内にとどまったままになってしまいます。つまり、良好な空気環境を維持できません。
ですので、
電気代を節約したくても、24時間換気システムのスイッチを切るのはやめましょう!
24時間換気システムはどれを選べばいい?
このページを読んでいる方の中には、これから戸建住宅を新築する予定で、24時間換気システム選びで迷っている方もいると思います。24時間換気システムの選び方は、【熱交換換気or第3種換気】住宅の換気システム、どっちを選べばいい?で詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
簡単にアドバイスをすると、24時間換気システムは種類ごとに長所・短所があるものの、「長く付き合いやすいのはどれか?」という視点で考えると、お勧めはダクト式第3種換気です。
理由は、電気代の安さに加え・・・
■お手入れの負担が少ない
→ 例えば、機械給気の第1種熱交換換気だと、給気フィルターの小まめな交換が必要です。宙に舞う花粉・塵や虫も吸い込むため、汚れやすいからです。第3種換気は自然給気なので、比較的給気フィルターに汚れが溜まりにくいです。
■壊れにくい
→ 寿命は一般的に、ダクト式が約15年、ダクトレスが約10年と言われています。
といったメリットがあるからです。実際、道内にはこうしたメリットに着目して、標準の24時間換気システムにダクト式第3種換気を採用している住宅会社が多くあります。
ただ、ダクト式第3種換気といっても、製造しているメーカーや製品によって微妙に違いがあります。電気代を抑えたいなら、消費電力の少ないDCモーターを採用している製品を選ぶことが必須です。例えば、日本住環境の「ルフロ400」は、1ヵ月の電気代が107円前後です(同社調べ)。
また、定期的にメンテナンスをしながら長年使っていくものなので、掃除などがしやすいことや、メーカーのアフターサービス(修理・交換等)が充実していることなども重視した方が良いでしょう。
まとめ
・24時間換気システムの月々の電気代は、自動販売機の飲み物と同じくらい。スイッチを切っても大した節約にならないし、そもそも止めるのはNG。
・長く付き合っていくパートナーとしては、ダクト式第3種換気がオススメ。DCモーターの採用やメンテのしやすさ、アフターサービスの充実ぶりを基準にする。
※企画・編集協力:日本住環境株式会社 https://www.njkk.co.jp/
この記事は連載コラム「住宅用24時間換気システムを考える」の第3回です。
「住宅用24時間換気を考える」シリーズ
24時間換気を住宅に設置することが法律で義務づけられていますが、「どこにありますか?」と住んでいる人に聞いても、「えーっ?どこにあるんだっけ」となることも。それぐらい、わたしたちは24時間換気のことを意識せずに生活しています。ところが、コロナ渦をきっかけに、24時間換気の果たす大切な役割がクローズアップされてきました。
そこで、住宅用24時間換気システムの開発・販売を長年行っている日本住環境(株)の協力で、24時間換気の役割から北海道に適した換気システムの選び方、メンテナンスなどをわかりやすくまとめ、連載記事としてお届けしています。
シリーズ「住宅用24時間換気を考える」
第7回 空気の汚れが見える!CO2モニターをリビングに置こう!~24時間換気を使いこなす~
第6回 24時間換気のメンテ問題を解消する取り組み 林基哉教授に聞く(2)
第5回 新型コロナの感染拡大防止に役立つ24時間換気 林基哉教授に聞く(1)
第4回 10年以上使い続ける24時間換気システム。掃除のしやすさが超重要!
第2回 住宅の空気をきれいに~24時間換気を「性能・メンテ・価格」で比較~
第1回 【熱交換換気or第3種換気】住宅の換気システム、どっちを選べばいい?
2022年07月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。