Column いえズーム コラム

バリアフリー住宅まとめ


バリアフリー住宅とは

バリアフリー住宅

バリアフリー住宅とは、年齢を問わず幅広い世代が安全で快適に過ごせる設計がなされた住宅を指します。

・バリアフリー=段差がない(障壁・バリアの除去)
・階段や廊下に手すりが付いている
・玄関までのアプローチに階段だけでなくスロープが付いている
・玄関にベンチや手すりなど座って靴の着脱ができる補助が付いている
・玄関かまちや階段の段差が低く、上り下りがしやすい
・トイレやユーティリティーが広く、車いすでも出入りができる
・廊下の幅が一般より広くとってあり、車いす移動が可能
・浴室やトイレなど立ち座りを補助する手すりがついている
・幅広の引き戸を採用しており、床面は車いす移動できるフラット仕様

など、基本的にフラットな床面で開放的な空間に、生活動線の補助となる設備を整えた住宅で、小さな子どもや高齢者、障害のある方や妊婦さんなどはもちろん、健常者の方であっても暮らしやすい住空間が叶います。



似た用語にユニバーサルデザインがある

バリアフリーが障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味で使われるのに対し、ユニバーサルデザインは障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインするという考えに成り立っていて、対象範囲が広くなっています。

バリアフリー住宅におすすめの間取りは

バリアフリー住宅では、ワンフロアで車いす移動がしやすい平屋建てが人気です。プランにおいては特に、キッチン、洗面、ユーティリティーなどの水回り動線が直線で配置されていたり、寝室とトイレが近く直線でつながっているなど、動線の良さと通路幅の確保が重要になってきます。

また、2階建ての場合は、階段壁面にイス式の昇降リフトを設置する階段昇降機や、スキップフロアなどの、ちょっとした段差なら車いすに乗ったまま対応できる段差解消機​を採用することで、快適な暮らしを叶えた実例も。予算が叶うならエレベーターの設置も一案です。

いえズーム編集部でもバリアフリー住宅を取材しています。今回はその中から厳選して実例を一挙にご紹介。暮らす人のハンディキャップや、可動域に合わせ、細部まで配慮や工夫が行き届いた設計プランの数々をご覧ください!

家族みんなが快適で自然に介護ができる家 札幌市北区川村邸/アウラ建築設計事務所

札幌市北区の自然豊かな住宅街に暮らす川村さん一家。写真は晴れた冬の日に家族で外出する場面です。バギーに乗って散歩するのが大好きだという次男のとびとくんは笑顔いっぱい。玄関からまっすぐ伸びたスロープには、手すりも付いています。



この家は、バリアフリー住宅の経験が豊富なアウラ建築設計事務所(札幌市南区)の山下一寛さんが設計・監理を手がけました。
iezoomでは過去にも山下さんがプランした住宅を取材していますが、今回は、手足にハンディキャップがあるとびとくんが快適に暮らせる工夫はもちろん、ご家族ものびのびと、アクティブに暮らせる仕掛けがたくさんあるそうです。



洋室から、トイレ、洗面・脱衣室、浴室が直線で繋がる動線。通路や引き戸は車いすにも対応できるゆったりサイズです。



浴室の三枚引き戸は左右どちらにも格納でき、車いすのまま入ることができます。

通常は鏡の右側に付けられるシャワー・スライドバーを左に配置。空いた鏡の右側壁面は、将来的に入浴用の介護リフトが設置できるよう、下地を補強してあります。
家族みんなが快適で自然に介護ができる家 札幌市北区/川村さん

車いすで明るく前向きに暮らす住まい 札幌市F邸/アウラ建築設計事務所

Fさんご夫妻はお子さまが生まれて毎日が忙しい中、奥さまが突然事故に遭い、車いす生活を送ることになりました。それまで住んでいたマンションでは車いす生活するには不便が多く、リフォームしても限界があります。そこで、戸建住宅を新築することにしました。



奥さまは車いす経験が浅いこともあり、まだ1人で外出することはありませんが、今後1人での外出もあると考え、家のアプローチ部分には気を使いました。山下さんによると、標準的な車いす対応スロープの勾配ではスロープに面積をとられて駐車スペースが制限されます。そこで、段差解消機(車いすを電動で昇降させるリフトのようなもの)を使うことで費用は少しかかりますがアプローチの勾配を緩く距離も短くできまました。

さらに、道路と縁石の段差も解消しました。山下さんは市とかけあい、この縁石の高さを2cmまで低くする許可をもらいました。さらに、微妙なつっかかりを防ぐためにアスファルト舗装でその2cmの段差も解消しました。

車庫内にある車いす通路は、車のドアを開けても壁との間に車いすが通れるほどの余裕があります。もちろん、車庫から室内へは段差なしに入ることができます。廊下の幅は、車いすがゆったり通れる1100mm。また、玄関からLDKまでは一直線の動線となっていて、ムダがありません。



キッチンは車いすに合わせた特注品です。使う時は車いすがカウンター下に入るため、収納はキッチン本体ではなく背面の棚が主となります。炊飯器などのキッチン家電は、スライド棚で手元に持ってこられる設計。

トイレ、洗面、お風呂、ユーティリティーはプライベートスペースの動線として直線的につながっています。トイレは寝室に隣接し、専用車いすのまま入っていける設計。このために、メーカーのショールームに通って便器を選びました。ユーティリティーは通常の2倍ほどの広さで、車いすで動きやすくなっています。
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車イス生活を想定した、セカンドライフを楽しむバリアフリー平屋住宅 札幌市H邸/瀧本ホーム



JR駅や幹線道路に近い住宅地に立つH邸は、60代の奥さまと70代のご主人が暮らす新居です。設計・施工したのは白石区の瀧本ホーム。ご夫婦が新築したのは、老後の「車イスの生活」を想定したバリアフリー住宅です。風除室の付いた玄関は、正面階段の付いた道路側と駐車スペースからアクセスしやすいスロープ専用の2か所を設けています。



LDKと寝室、水回りの動線は、車イスやシルバーカーで移動できる回遊式の間取りになっています。トイレ横の書斎を寝室として利用するなど、部屋の用途が変えられるうえ、水回りの扉を開け放てば車イスでも直線移動しやすい設計です。

「車イスで暮らす家に必要な要素を、すべて設計に反映しました」と瀧本社長が話すように、回遊動線のほかにも、最大で約130㎝とった開口部、2方向からアクセスできるトイレ・洗面所、玄関や水回りの手すりといった設計に、将来を考えた工夫が見られます。
記事はこちら 車イス生活を想定した、セカンドライフを楽しむバリアフリー平屋住宅  札幌市H邸

仲間が集まりアクティブに過ごせるスタイリッシュな車いす住宅 札幌市/アウラ建築設計事務所



2022年夏、デザイン性の高いバリアフリー住宅や介護住宅を数多く手がけるアウラ建築設計事務所の山下一寛さんと若手設計者との共同設計による新居が完成しました。

オーナーの松原健(たけし)さんは 25 歳の時、就業中の事故の後遺症で首から下が動かせない肢体まひとなり、24時間介助が必要です。

この家でヘルパーさんの介助を受けながら、自立した生活を送る松原さん。
ご自身の家づくりについて「いかにも介護住宅という感じではなく、人が集まるカッコイイ家にしたかった」と語ります。



常時、ヘルパーさんと生活する松原さんですが、リビングとワークスペースの間の引き戸やベッド脇のロールスクリーンを下げることで互いのプライバシーを確保した空間にすることが可能です。
リビングとベッドルームの中間に位置し、普段は車イスでPC作業を行うワークスペースは浴室とも直結しており、ベッドからストレッチャー・車いすへの移乗スペースとしての重要な役割も担っています。



入浴する時はベッドにストレッチャーを横付けし、電動式介護用リフトで移乗。そのままワークスペースの左側にある浴室へ最短距離で真っ直ぐ移動します。
ワークスペースのそばには介護用リフトの収納場所を兼ねたウォークインクローゼットがあり、引き戸を閉めれば、介護機器が人目につきません。

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障がいがあっても自立生活できる住まい 江別市N邸/拓友建設

江別市にお住まいのNさんは年齢50代の女性です。生後10ヵ月でポリオウイルスに感染して小児麻痺となり、それ以来両方の下肢に麻痺があります。なるべくなら杖や車いすに頼ることなく生活したいNさんでしたが、生活の不便だけでなく、足の力が入らなくなることで転倒してしまうことに大きな不安を感じるようになりました。ご両親が亡くなったことを契機に、それまで家族で同居していた住まいを安全で、障がいがあっても自立生活できる住まいに建て替えました。



(有)奈良建築環境設計室 では、行き止まりのない8の字に回遊できる動線を提案、また道路まで段差なく行き来できる基礎の高さと床の高さを考えました。Nさんと一緒にショールームに行き、相談しながら設備類の選択や手すりの取り付け方を考えていったそうです。「キッチンなどは介護を前提にした商品がほとんどで、障がい者の自立生活を前提にしたものは皆無に近かった」とNさん。

キッチンは(株)樋口(本社札幌市)の車いすでも使いやすいユニバーサルキッチンをL字型にアレンジしました。また、ダイニングテーブルをはじめとする家具類は、ソファなども含めNさんが使いやすいようオーダーしています。



トイレとユーティリティーを一体化して空間を確保すれば、車いすのままでも使いやすい。トイレの手すりは握る角度が様々に選べ、ひじなども使いながら体を支えられます。

生活動作には、ご本人が日々意識しているものだけでなく、無意識のうちに行っているものがあります。浴室の手すりはNさんがショールームに行き、実際にユニットバスに入りながら位置を決めていきました。そこまでしても不足な手すりがあったらしく、無意識の動作を理解し、それに応じて手すりや補助具を付けていくのは非常に難しいようです。今回はあらかじめ取り付けた手すりと、生活し始めてから取り付けたものがありました。

完成した住まいはNさんが想像していたより快適なようです。室内は杖での移動がメインになると想定したそうですが、車いすでどのスペースにもすんなり移動できるため、
「ここに住み始めてから、すっかり車いすばかり使っています」と笑っていました。
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車いすで自立した生活 u-h.o.u.s.e.@i 札幌市北区Aさん/アウラ建築設計事務所



車いすでほんとうに生活しやすい家とは?建築家と施主がとことん話しあって完成したのがこのu-h.o.u.s.e.@iです。直線と黒白のコントラストがシャープな外観。道路と玄関はわずか階段2段分の段差だが、長いスロープが必要なことがわかります。

車庫は道路から勾配つけて玄関と同じ高さまで上がっており、車いすはそのまま風除室→玄関と段差無しで進むことができます。



キッチン全景。シンク下はキャスター付きワゴンで邪魔なときは移動。食洗機はシンク左下、電子レンジはシンク右手にあるIH調理器の下にビルトイン。後片付けと調理の動線を分けました。水栓は通常シンク中央にあるが、右斜めに配置して45度傾けた。左半身麻痺の奥さまが体を回転させなくても使える。

画像右がユーティリティ全体。洗面台左側がSK流し。トイレの取り付け位置を工夫して車いす対応としました。
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車いす対応のバリアフリーレストラン 札幌市I邸/アウラ建築事務所



Iさん夫妻はどちらも医療職で、ご主人は作業療法士として働いています。奥さんは薬剤師でしたが、腎機能が低下した患者さんとの出会いにより、勉強をして栄養士の資格を取得しました。

結婚して家を建てようとなったとき、車いすの方や身体が不自由で外出しにくい方、赤ちゃん連れの方などが過ごしやすいお店ができたらと、自宅にレストランを併設することを計画。

レストランはどんな方でもくつろげるよう、細部にまで工夫が施されています。お店の入り口に向かってスロープがまっすぐに伸びており、引き戸を開ければ段差なしでスムーズに室内に入れる造りです。

室内には大きなテーブルが1つ、最大8名まで利用できます。車いすのアームレスト(肘置き)がテーブル下におさまるよう、テーブルの高さは75㎝と少し高めに。それに合わせて椅子もやや高めにしています。カンディハウスで作ってもらいました。トイレや洗面スペースも車いす対応になっています。まわりが住宅街ということもあり、往来からの視線が気にならない地窓を採用しました。地窓のすぐ外側に植栽を加えたことで、室内からも緑が感じられるよう配慮されています。
車いす対応のバリアフリーレストラン「石のうえ」/札幌市Iさん

建て替えで介護も可能な三角屋根の平屋に 清水町N邸/ソトシロ建設



当初は、奧さまのお母さまと同居予定だったNさん。プラン進行中にお母さまが体調を崩され、施設で療養することになったそうですが、泊りに来た時にも使えるようにと、リビング横の洋室には洗面・トイレを希望しました。

奧さま「プランは社長の息子さんで常務の征教さんに担当していただきました。回遊できて、直線でつながる家事動線はとても暮らしやすいです。

玄関ホールは車椅子で移動する父が旋回できるよう広さを確保し、玄関スロープも付けてもらいました。お風呂は泊りに来た母と一緒に入れる大きさにするなど、両親を迎えることを前提に図面を引いてもらいました」。
記事はこちら 建て替えで介護も可能な三角屋根の平屋に 清水町/ソトシロ建設

在宅介護のしやすい住宅 東川町鶴岡邸/小岩組

移住前の自宅は神奈川県鎌倉市の住宅街にありました。ご両親が病気になり、在宅介護が必要でしたが、家の通路は車いすなどが通りにくく、入浴などのサポートも困難。病院や介護施設などに向かうにも長い階段が多い街で大変でした。この家をバリアフリー改修するのは困難でした。

東川町は、町内の介護施設が充実、町も高齢者福祉に積極的でした。鎌倉の自宅を売却し東川に新居を建て、両親とともに移住することにしたのです。



広々とした一階の廊下。ご両親の在宅介護をしやすいように幅広の廊下など、バリアフリーへの配慮も。腰壁には木を使い、落ち着きのある雰囲気です。階段も幅が広く、上り下りがしやすい段差になっています。
記事はこちら 【北海道・東川移住】小岩さんは家づくり&移住の良き相談相手・鶴岡邸

完全バリアフリーの1階と2階に予備室のある住宅 千歳市S邸/中村よしあき建築研究所



「年をとった時に階段を上がらなくてよい平屋を」「車椅子での生活になっても支障がないようにバリアフリーに」などの希望にも、中村さんは親身になってアドバイスをくれたそうです。

今は元気なお母様と将来的には同居することになるかもしれない、そんなことも考えた中村さんが最終的に提案したのは、平屋ではなく、"2階に予備室を用意した薪ストーブのある家"。

玄関からゆったりとした幅の導線が続く1階は完全バリアフリーで、書斎や寝室など各部屋の間仕切り扉(引き戸)を開け放つと、階段を中心にぐるりとフロア全体がまるでワンルームのようになります。
お風呂場と廊下の仕切り扉も引き戸ですが、換気システムがあるため室内へ湿気が流れることもないそうです。
記事はこちら ライフスタイルを設計した千歳の家/中村よしあき建築研究所

車椅子のお客さまにも対応できる女性用トイレのあるカフェ 長沼町S邸/白田建築事務所



白田建築事務所で念願のカフェ兼住宅を新築したSさん。札幌から車で60分、のどかな田園風景が広がる長沼町でご夫婦が営むのは、そば粉をクレープのように焼き様々な野菜や肉類、ソースなどを添えていただく“ガレット”をメインにした「カフェ コフェル」です。

女性用トイレは広々・バリアフリーで、跳ね上げ式手すりも付いています。「特にこだわった場所で、車椅子対応のお客さまにも使っていただける仕様になっています」と奥さま。
記事はこちら 札幌近郊でスローライフ!田園風景広がるカフェ併設の家/白田建築事務所

老後も考えた平屋の住まい 帯広市M邸/イゼンホーム



帯広の郊外で農業を営むMさんご夫妻。昨年12月にイゼンホームで家を建て替えてから、「とても暮らしがラクになった」と口をそろえます。老後も考えた平屋の住まい、Mさんご夫妻に家づくりのお話を伺いました。

寝室の廊下を隔てた向かいには、中村さんのアドバイスでトイレルームを配置しました。「寝室からすぐトイレに行けるのは、実にありがたい」とMさん。バリアフリーも考え、広めにして握りバーなどももうけました。
記事はこちら 外が-28度でも部屋は暖かい!パッシブ換気で快適に暮らす 帯広市 イゼンホーム

バリアフリーも意識した自分だけの家 夕張郡T邸/シノザキ建築事務所



ご主人が若くてして亡くなり、その後は子どもを育てるため、必死で働いてきたTさん。お子さんたちも立派に成人し、仕事も生活にもゆとりができました。そこで自分の時間を大切にし、孫の顔も間近に見えるマイホームを建てました。

この家はバリアフリーも意識して作られています。段差が家中ほとんどなく、開放的なプランなので大規模な改修をすることなく長く住めそうです。
記事はこちら 1人で楽しむ上質でコンパクトな暮らし 夕張郡・Tさん

それぞれの暮らしに合わせたバリアフリー住宅を

いかがでしたか?バリアフリーの住宅とひと口に言っても、住む人の身体状況や暮らし方の希望によって、プランは千差万別です。個性を反映した唯一無二のマイホームをバリアフリーで叶えるには、設計・施工経験が豊富で柔軟性のある設計士や住宅会社さんにお願いすることが安心につながりそうです。


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2021年07月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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