2023年7月15日から秋田市を襲った記録的大雨。
「過去最悪」の水害を受け、住宅や様々な施設では浸水や冠水被害、そして大雨が止んだ後の復旧作業に追われました。「まさか秋田市でこんな大規模な水害が起こるなんて…」と、地元住民からすれば、予想だにしなかった大洪水。
そこで今回は、過去に秋田市で起きた洪水や被害状況、そして復旧作業の様子を紹介します。本記事を参考に、ご家庭でも自然災害について話し合うきっかけにしてもらえたら、と思います。
秋田市の洪水被害状況|①道路・河川
2023年7月29日時点、秋田市の住宅被害は3,648棟にまで及んだことが、秋田魁(さきがけ)新報にて発表されました。被害額は土木施設が県全体で181億円、農業関係は88億円を超えており、過去最多の被害であることが数字からも読み取れます。
こちらは、秋田市の中心であるJR秋田駅すぐそばの「明田地下道」。
市内各地へのアクセスに必要不可欠な地下道ですが、7月15日未明にはこのような事態に…。
自宅で各地のライブ映像をチェックしていた際に、あまりの惨状に衝撃を受けました。
画像には写っていませんが、翌朝には水に浸かった車がいくつも浮かんでいるところが報道され、被害の大きさを実感しました。
主要道路の閉鎖は明田地下道だけでなく、中央道や横山金足線など、人々の移動を繋ぐ道路にも多大な影響が出ました。
今回、JR秋田駅周辺で発生した水害については、下水道や水路から排水しきれない雨水があふれる「内水氾濫」だったとみられています。
内水氾濫は、行き場のない水が市街地や道路に溢れ出し、川から離れていたとしても、短時間で浸水に及ぶのが特徴です。
今回の大雨により太平川が氾濫しましたが、太平川から秋田駅は約1㎞と離れていることから、JR秋田駅周辺の冠水は内水氾濫との見方が強まっています。
また、氾濫した河川は太平川を含め12にまで及び、国道7号線沿いでは土砂崩れが発生。
幸いにも怪我人はおらず、秋田河川国道事務所が復旧作業を行いました。
筆者の自宅近くには川があり心配していましたが、幸い冠水被害は一切ありませんでした。
しかし、すぐ先の道路向かいの自宅には浸水の被害がみられ、家の立地がほんの少し違うだけで被害に差が出ることを実感したのでした。
大雨が強まってきた7月15日の午後からは“ザー”という雨音から“バタバタバタ”といった音に変化していきます。どこか薄暗く怪しい空色が、不安を増長させました。
この日は、幸いにも土曜日。もし平日だったら、電車の運休や道路の状況悪化などで、仕事を終えて家に帰ることができない方が多かったのではないでしょうか。
水害は日常生活にも影響|地元民の声
水害は床上・床下浸水や冠水、車の水没など、目に見える被害だけではありません。
今回の被害で日常生活に支障をきたしたり、不安な日々を送る地元民の声を集めました。
(これらは、筆者が被害を受けた方からのメッセージを、一部抜粋して紹介しております。)
かかりつけの医院が冠水により約1週間の休診。定期的に服用している薬を処方してもらう予定でしたが、受診が難しく、薬の服用ができない期間がありました。すぐに体調に影響するものではなくとも、いつ再開するのかと、不安な気持ちになりました。
自宅には幸い被害は及ばず、共働きの我が家は翌日から仕事へと向かう予定でした。しかし、子ども達の通う保育園が冠水被害で休園。なんとか力になりたいと園へと向かうと、とにかく泥・泥・泥…。下水を含む汚れた泥を目の前にして、何が正解か分からないまま、とにかくやれることを手伝いました。小さい子どもがいる家庭は保育園の休園により、仕事に行ける状態でない場合も多いと思います。
家の前が冠水してるから下水が流れていかないみたいで、トイレも流せないしお風呂も使えない。トイレは我慢できないから、コンビニまで向かおうと思って玄関の風除室を開けたら、すぐそこまで水が押し寄せてて…怖い。キッチンの水栓すら出せなくて、冷やご飯でおにぎりでも作って、今晩は乗り切るしかないよ。
中央道の封鎖のせいで、朝の渋滞がとんでもないことになっている!いつもより30分早く出発したのに…会社に到着するのはギリギリになりそうだ。
このように、水害により日常生活が送れない状態が続きました。
各地で行われている復旧作業の動き
大雨が落ち着き、ほっとするのは束の間。
その後に待ち受けるのは、元の生活に戻すための復旧作業です。
住宅・事業所・教育施設、そして思わぬところで被害を受けた場所での、復旧作業の様子を紹介します。
住宅・事業所
一般住宅は、泥水や土砂で溢れた一階部分の清掃や片づけに追われています。
秋田市では災害ごみの処理方法として、災害によるごみを自己搬入・集積所へ搬出・訪問による収集として対応しています。
とはいえ、被害が深刻であった広面(ひろおもて)、中通、東通り地区では復旧作業に疲弊の色を浮かべる方も多くいました。
特に事業所やお店関係では公的な支援がないこともあり、費用もかさんでしまい不安な日々を余儀なくされています。
教育施設
浸水の影響で使えなくなったおもちゃやおむつの片づけや、カビが発生した壁や床の修繕、設備の修理の対応に職員が追われ続けています。
被害の少ない2階以上のフロアで保育を行う予定も、環境が変わることへのストレスも考慮しながらの運営は、決して簡単なことではありません。
安全確保や受け入れ体制の整備など、まだ課題の残る施設が多く残っています。
その他
8月3日からは、東北三大祭りとして有名な「秋田竿燈まつり」が実施されます。
しかし、一部の竿燈会の倉庫が浸水してしまい、メインである見せ物のちょうちんや太鼓が水に浸かってしまう事態に。
祭りで使用する多くのちょうちんを持ち帰り、扇風機で乾かす作業に追われました。
※8月3日現在、竿燈まつりは無事開催され、被害のあった竿燈会も参加を果たしました。
秋田市は洪水被害を受けにくい?過去の水害まとめ
秋田市のホームページを参照したところ、最も古い水害の記録は昭和30年に遡(さかのぼ)ります。住宅・公共施設の床上・床下浸水のほか、農作物にも大きな被害を受けるのは、農業に適した環境である秋田ならではの被害です。以降、数年に一度の頻度で浸水被害は起きていますが、住宅の全壊や死者は少ない状態です。そこで、2010年以降に起きた水害を下記にまとめました。
大雨発生年 | 2010年 | 2011年 | 2017年 | 2018年 |
---|---|---|---|---|
日時 | 8/14~15 | 6/23~24 | 7/22~23 | 5/18~19 |
総雨量 | 山王:85㎜ | 山王:78㎜ | 雄和観測点で348㎜(観測史上最大) | 168㎜ |
被害内容 | 床上浸水:6棟 床下浸水:56棟 |
床上浸水:2棟 床下浸水:13棟 |
床上浸水:154棟 床下浸水:357棟 道路冠水:128箇所 土砂崩れ:213箇所など |
床上浸水:146棟 床下浸水:232棟 |
被害額 | 5,426万円 | 1,579万円 | 20億円以上 | - |
備考 | 下新城地区169世帯、雄和碇田地区47世帯に避難勧告 | 雄和碇田地区46世帯、下浜楢田植野地区33世帯、雄和一部地域324世帯に避難勧告 | 17,412世帯、39,304人に避難勧告 | 13,082世帯、28,941任に避難勧告 |
参照:秋田市ホームページ 秋田市で起きた主な水害
総雨量や避難勧告数でみると、2017年に起きた大雨による洪水が、近年で最も大きな水害だったのが分かりますね。
まとめ
史上最悪といわれる2023年7月の大洪水は、秋田市は大丈夫だと思い込んでいたものの、その被害は予想以上に深刻なものでした。
いつ、どこで起こるか分からない自然災害。
気象情報や河川の水位情報、避難情報を継続的に集め、時間に余裕をもった避難が必要です。
避難経路やハザードマップの確認を行い、安全確保のために知っておくべきことを、この洪水を教訓に家庭で話し合っておきましょう。
秋田市洪水ハザードマップはこちらからどうぞ
記事/りぶにこる
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