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前回の記事で、北海道大学の林教授は換気システムが正常に働いているかどうかの目安としてCO2濃度計(CO2モニター)が有効だと話しました。今回は、このCO2モニターについて詳しく取り上げます。
1.24時間換気が義務化されても換気不足?
換気は、人間が出すCO2を含んだ汚れた空気を外に出し、外の新鮮な空気を室内に取り入れることで室内の空気をきれいに保つ働きをしています。
国は今から20年以上前、「新築の家に入ると気分が悪くなったり目がチカチカする」といったシックハウス症候群を防ぐために建築基準法を改正し、住宅に24時間運転できる換気装置を義務づけました。設置する換気装置は、2時間で家の中の空気を全部入れ換えるだけの能力が必要です。この法律改正でシックハウス被害は徐々に減ってきたと言われています。
北海道の新築住宅は、20年前と比べると気密性能がグッと向上しています。換気不足が続くと、室内の空気がよどみやすくなり、シックハウス被害が再び起こりかねません。
しかも、法律を満たす性能を持つ24時間換気を設置したとしても、実際に2時間で家中の空気がまるごと入れ替わるかどうかは測ってみないとわかりません。なぜなら、法律では設置した後に設計通りの換気量が確保されているかは求めていないからです。
専用の測定機を使えば、実際の換気量を確認することができます。しかし、測定を依頼すると費用がかかりますし、測定できる人や会社の数は限られています。そのため実施しないことがほとんどです。
2.換気量が十分でも空気はキタナイ?
それでは、換気量を測って設計通りなら安心でしょうか? そうとは限りません。新鮮できれいなはずの給気が、何らかの理由できれいではない、というのがその理由です。
換気の善し悪しは、食べ物の味などとは異なり、体感しにくく、体調が悪くなってもその原因が換気不足であることに気づきにくい傾向があります。空気は汚れても目に見えませんし、匂いも案外気がつきません。人間の五感に頼ることができないのです。
では、どうすれば「室内の空気をきれいか、汚れているか」がわかるのでしょうか。
誰でも手軽にできる方法の1つとしては、二酸化炭素濃度の測定があります。ビル建築では、既に指針値が設けられており、1000ppm以下であることが室内の空気がキレイな目安として用いられています。これは、住宅内の目安としても大いに役立てることができます。
リビングなど人の集まるところに二酸化炭素測定機(CO2モニター)を設置すれば、人が集まった時、換気を止めた時、外出中などでCO2濃度がどう変動しているのかを知ることができます。
たとえば、道外から友だちが何人も家に遊びに来て「北海道に来てどこを観光したの?」など、リビングで話が弾んだりすると、リビングのCO2濃度が大きく上昇する可能性があります。
逆に朝から家族で出かけて夜に帰ってきたら、CO2濃度は大きく下がっているでしょう。
CO2モニターを使ってCO2濃度が1000ppmを大きく上回っているとわかったら、換気不足を疑うわけですが、対処法は2通りあります。1つめは、ふだんどおりの生活をして大きく上回ってしまう場合は、換気装置が本来の性能を発揮できていない可能性があります。そこで、換気ファン本体や給気口のフィルターの目詰まりをチェックし、清掃します。それでも改善されない場合は、施工した住宅会社に連絡し、専門的な対応を求めるのが良いでしょう。
2つめは、1000ppmを上回るのが来客時などに限られる場合です。この場合、来客時だけキッチンのレンジフードを回したり、24時間換気システムの換気量を一時的に増やしたり、窓を開けたりすることでCO2濃度を下げることができます。
CO2モニターを活用することで、適切な換気を行ってCO2濃度を大きく上げることなく部屋を快適な環境に保つことができます。
CO2濃度はきれいな空気かどうかを判断するバロメーターなのです。
3.CO2モニターって何を選べばいいの?
CO2モニターは、最近は安価な製品が多数販売されています。
たとえばAmazonなどのインターネット通販でも気軽に購入できます。
安いものは1000円台から、高いものは数万円台のものまであります。どんなものを選べばいいのでしょうか?
CO2モニターは、CO2の検知方式によってNDIR(Non Dispersive InfraRed:非分散型赤外線吸収)方式、光音響方式(Photoacoustic)、接触式、eCO2方式などに分かれますが、どの方式であれば精度が良いかははっきりとした見解がありませんでした。
そこで経済産業省は、コロナ渦最中の2021年11月に、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策として換気が十分に行われているかどうかを確認することを目的に、CO2測定器(CO2モニター)選定のガイドラインを公表しました。
https://www.meti.go.jp/press/2021/11/20211101002/20211101002.html
それによると、測定器には光学式(NDIRや光音響方式を指す)を採用したものや、測定値の補正用機能が付いていることを求めています。
測定値の補正機能は、自動または手動で測定の基準値を補正(メーカーによっては校正と呼ぶ場合も)する機能を指します。これらの機能を備えたCO2モニターを買うことがまず第一です。
ガイドラインでは、購入してから正しく動作するかも確認することを求めています。動作確認は以下の3つを実行してみてください。
1.屋外の二酸化炭素濃度を測定したとき、測定値が外気の二酸化炭素濃度(415ppm~450ppm程度)に近いこと
2.測定器に呼気を吹きかけると、測定値が大きく増加すること
※呼気の二酸化炭素濃度は非常に高く、正常な測定器であれば二酸化炭素濃度の高い測定値が表示されます
3.消毒用アルコールを塗布した手や布等を測定器に近づけても、二酸化炭素濃度の測定値が大きく変化しないこと
※光学式の機器であれば、アルコールにはほとんど反応しません
4.信頼性の高いCO2モニターを日本住環境がネット販売
CO2モニターを選ぶ基準を国が明確に示していることがわかりました。とはいえ、インターネット通販で数あるCO2モニターの中から価格が手頃で信頼性の高い製品を選ぶのはなかなか大変です。
たとえば、住宅用換気システムを販売する日本住環境(株)では、経済産業省のガイドラインに沿った、信頼性が高くて使いやすいCO2モニター「CO2デュアルビームモニター」のインターネット販売を始めました。
https://www.njkk.co.jp/support/shop/detail.html?pdid1=14
CO2デュアルビームモニターには、以下の特徴があります。
○ 経産省が推奨するNDIR方式
○ 測定値補正機能付き
○ CO2濃度に応じてバックライト表示が3色に変わり、換気不良が一目でわかる
○ 過去24時間のCO2濃度変化をグラフ表示
○ 室内環境チェックに欠かせない温度・湿度もリアルタイム表示
○ USB電源があればどこでも利用できる
リビングなど、人が集まるところに1つ置いておけば、CO2濃度に加え、温度と湿度や時刻を1台で確認できます。
使い方は簡単。CO2デュアルビームモニターを付属のUSBケーブルでコンセントに接続します。電源につなげればすぐに画面が表示されます。説明書に従って、現在時刻をセットすれば、あとは24時間CO2濃度や温度・湿度を表示できます。
本体の大きさは、幅10.5×高さ5.5cmとスマホよりも小型なので場所を取りません。モニター画面が緑、黄、赤の信号色で光るため、離れたところからでも安全な状態かどうかがすぐにわかります。
CO2濃度が800ppm以下の場合は、液晶画面全体が緑色に光ります。次に800ppmを超え、1400ppm以下の場合は換気量を増やした方がいいと注意を促す黄色に光ります。これが1400ppmを超えると換気量不足で健康被害の恐れがあるとして赤色に光るだけでなくアラームも鳴り、視覚と聴覚に働きかけて危険を訴えます。デジタル数値よりも、この緑・黄・赤の色分けで換気が必要かどうかを判断する方がお手軽だし、それで十分です。目安がわかればいいのですから。
測定値補正は、屋外で10分間放置し、10分後に測定した二酸化炭素濃度を基準値として本体に登録します。
https://www.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/co2_trend.html
大気中の二酸化炭素濃度は、全国どこでもほとんど同じです。本州では綾里(岩手県大船渡市)でCO2濃度を継続的に観測しています。現在は平均420ppmぐらいですので、これを基準値にすると良いでしょう。
このデュアルビームモニターを、お施主様への入居時にプレゼントとして活用する工務店もあります。これまでは新築祝いとして温湿度計を贈呈していたそうですが、空気の質を温度・湿度・CO2濃度と多方面からモニターできる同製品が目にとまったそうです。
5.空気はおいしい食べ物以上に大事
わたしたちは、1分あたり20回、1日に28800回も呼吸しています。1回の呼吸で0.5Lの空気を取り入れているので、1日で14400Lもの空気を取り入れる計算です。これは重さに換算すると約20kg。お茶碗のご飯100杯分以上あり、食べ物や水よりもずっとたくさんの量を体内に取り入れているのです。その空気がきれいかどうかはとても重要です。おいしい空気が供給できているかどうか、CO2モニターを使ってみんなでチェックしてみませんか?
※企画・編集協力:日本住環境株式会社
この記事は連載コラム「住宅用24時間換気システムを考える」の第7回です。
「住宅用24時間換気を考える」シリーズ
24時間換気を住宅に設置することが法律で義務づけられていますが、「どこにありますか?」と住んでいる人に聞いても、「えーっ?どこにあるんだっけ」となることも。それぐらい、わたしたちは24時間換気のことを意識せずに生活しています。ところが、コロナ渦をきっかけに、24時間換気の果たす大切な役割がクローズアップされてきました。
そこで、住宅用24時間換気システムの開発・販売を長年行っている日本住環境(株)の協力で、24時間換気の役割から北海道に適した換気システムの選び方、メンテナンスなどをわかりやすくまとめ、連載記事としてお届けしています。
シリーズ「住宅用24時間換気を考える」
第6回 24時間換気のメンテ問題を解消する取り組み 林基哉教授に聞く(2)
第5回 新型コロナの感染拡大防止に役立つ24時間換気 林基哉教授に聞く(1)
第4回 10年以上使い続ける24時間換気システム。掃除のしやすさが超重要!
第3回 電気代が高い! 24時間換気システムを止めたら節約になる?
第2回 住宅の空気をきれいに~24時間換気を「性能・メンテ・価格」で比較~
第1回 【熱交換換気or第3種換気】住宅の換気システム、どっちを選べばいい?
2024年05月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。