今回の記事では、自分にぴったりな住宅の24時間換気システムを選ぶ方法をまとめました。もし、住宅の24時間換気システム選びで迷っているなら、まずは「重視するもの」を考えると良いです。住宅の24時間換気システムは主に4種類あり、電気代やメンテナンスのしやすさ、耐久性などに違いがあります。あなたは何を重視しますか? まずはニーズごとのオススメを簡単にご紹介します。
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<ケース2>
<ケース3>
<ケース4>
どのハウスメーカーや工務店も使っている定番品があれば、あれこれ考える必要がなく楽ですが、現状全てが揃った完璧な24時間換気システムは存在しないため、会社によって標準仕様はバラバラ。大手ハウスメーカーでは例えば、一条工務店・土屋ホームは第1種熱交換、ジョンソンホームズ・住友林業は第3種です。この記事を通じて、ぜひあなたにぴったりの24時間換気システムを見つけてください。
住宅の24時間換気システムは4種類
住宅の主な24時間換気システムは、ダクト式第3種、ダクトレス式第3種(パイプファン)、ダクト式第1種熱交換、ダクトレス式第1種熱交換の4種類です。それぞれの特徴を簡単にご紹介します。なお、第3種と第1種熱交換の違いは、前回記事で詳しく解説しています。
・ダクト式第3種
比較的設置コストが安価な上に、換気能力に定評があり、掃除やメンテナンスの負担も少ないという、コスパの優れた24時間換気システムです。北海道では最もポピュラーな24時間換気システムで、多くのハウスメーカーや工務店から支持を集めています(北海道住宅新聞の読者アンケートで7年連続採用率1位)。
・ダクトレス式第3種(パイプファン)
「パイプファン」の名称で知られています。最大の強みは設置費用の安さ。本体価格に加え、複雑な設置工事を必要としないため設置工費も安いです。さらに本体の消費電力も小さく、月々の電気代も比較的安く済みます。
・ダクト式第1種熱交換
室内に入ってくる空気が暖かいことで知られる「熱交換換気」といえば、この方式を指すことが多いです。熱交換換気を採用すると、換気による室温低下を緩和できるため、暖房に費やすエネルギー(ガス・灯油など)を節約でき、暖房費も第3種より抑えられると言われています。
・ダクトレス式第1種熱交換
省エネと暖房費の節約を手ごろな価格でできるのは第1種熱交換換気です。壁に設置するだけの取り付けなので、ダクト式第1種熱交換よりも設置費用が安く、導入しやすいメリットがあります。
ダクト式・ダクトレス式って?
24時間換気システムは、ダクトの有無で「ダクト式」「ダクトレス式」と種類が分かれます。ダクトとは空気を運ぶための管で、天井や壁の内部に通っています。
ダクト式では、天井裏などに設置した1台の大きな換気装置から室内の各所にダクトを巡らせています。つまり、1台の機械で家全体の空気の流れをコントロールしているのです。換気機能を1台に集約することで、家じゅうがファンだらけになることを防ぎます。
また、ダクト式は、ダクトレス式に比べてファンの空気を引っ張る力が強いため、家の隅々まで換気しやすいというメリットもあります。
設置・維持コストが安いのは第3種換気
ここからは、項目ごとに24時間換気システムを比較していきます。
まず、本体価格の値段は第3種の方が安価です。第1種熱交換は給気と排気の両方で機械を使うため、排気のみに機械を使う第3種よりも必然的に本体価格がかさみます。加えて、熱交換機能を搭載している点も費用が膨らむ大きな理由です。
また、ダクトレス式とダクト式では、ダクト配管の設置がない分、ダクトレス式の方が設置費用が安いです。
維持コストの安さも第3種が有利です。第1種熱交換は、室内の空気をきれいに保つために、給気フィルターの小まめな交換や専門業者による給気ダクトの清掃が必須になるので、第3種よりも維持管理にお金がかかります。
電気代+暖房費=トータルの光熱費は案外差なし?
換気システム自体の電気代は第3種の方が安いです。「排気も給気も機械を使う第1種熱交換」と「排気のみ機械を使う第3種」、消費する電力が少ないのは一目瞭然、後者です。
暖房費の安さは第1種熱交換が有利です。「入ってくる空気が暖かいから室温が下がりにくい」=「ストーブやエアコン暖房への負担が少ない」=「暖房のガス代や灯油代が安く済む」という図式が成り立ちます。
整理すると、
・第1種熱交換「暖房費は節約できる! ・・・でも電気代は高い」
・第3種「電気代は安い! ・・・でも暖房費は節約できない」
こんな一長一短なので、実はトータルの光熱費はあまり変わらないんじゃないか、と考えている人も住宅業界内には多いです。
第1種熱交換を採用するなら、C値0.5㎠/㎡は欲しい
北海道で40年以上にわたって高断熱住宅づくりの研究を行ってきた北海道科学大学名誉教授の福島明氏によると、第1種熱交換換気を採用する場合、住宅のC値(気密性能)は「0.5㎠/㎡以下」が望ましいといいます。
C値が悪い=家に隙間が多いと、室内の空気が外へ逃げる上、あちこちから外気が入り込んでくるため、熱交換換気以外の換気(空気漏れ)が増えてしまう冬は暖房に大きな負担がかかります。第1種熱交換は消費電力が大きいので、暖房費を節約できなければ、トータルの光熱費がかえって膨れ上がってしまいます。
冬でも快適な第1種熱交換。手入れがネック
「冬の給気の暖かさ」は第1種熱交換にしかない強みです。優れた機能を有する一方、設置コストが高く、予算に余裕がないと手を出しにくいです。また先ほども書きましたが、フィルターの清掃や業者に依頼するダクト内の清掃費用など手入れの負担が大きいため、マメに面倒を見ていく覚悟も必要です。
手入れは、第3種が断然楽です。
例えば同じダクト式でも、第3種のダクトは排気用なので、中に汚れが溜まっても室内の空気の質に悪影響は及びません。つまり、業者にダクト内の清掃を依頼する必要がないです。
給気フィルターも、第1種熱交換は機械のパワーで強制的に吸入するため、宙を舞う花粉や塵、あるいは虫も一緒に吸い寄せて目詰まりが起こりやすいですが、自然給気の第3種はそれと比べると汚れが溜まりにくく、第1種熱交換と比べてフィルターの清掃頻度が少なく済みます。
寿命は10年~15年で大差なし。壊れたらどうする?
24時間換気システムは長期にわたって使うものなので、どの種類も長寿命設計ですが、いつかは壊れてしまいます。一般的に、ダクトレス式は10年、ダクト式は15年が寿命と言われています。
いざ壊れても、交換サービス付きの製品を選んでおくなど事前に手を打っておくと安心ですよね。大手住宅設備メーカーでいうと、『ルフロ400』(ダクト式第3種換気)などの24時間換気システムを販売する日本住環境㈱では「出張換気ファン交換サービス」を行っており、壊れた24時間換気システムを有料で最新機種と交換可能です。
リフォームやリノベーションで既存の24時間換気システムから新しくするときも含めて、24時間換気システムを導入する際は後々のことを考えて交換サービスや保障付きの製品を選んでおくことを、強くオススメします。
換気の確実性はダクト式が有利
ここはちょっと専門的な話になります。
ダクト式は、ファンの空気を引っ張る力が強いため、家の隅々まで換気がしやすいという強みがあります。一方、ダクトレス式はダクト式よりもファンの力が弱いため、換気の確実性に若干不安があります。換気が不十分だと、室内に生活臭や湿気などがこもったままになります。
例えばダクトレス式第3種は、屋外の風が強いと空回りしてしまい、排気が上手くいかなくなる恐れがあります。
また、ダクトレス式第1種熱交換では、60~80秒ごとに給排気が切り替わる仕組み上、取り込んだばかりの新鮮な空気をすぐに排気してしまったり、逆に室内から追い出したばかりの空気をまた引き戻してしまったりする可能性があり、汚れた空気がいつまで経っても排気されないケースも有り得ます
なお、騒音に関してはダクトレス式第1種熱交換の運転音が少し気になると言われているくらいで、その他の換気システムは特に問題ありません。
まとめ
ここまでの内容をざっくりと表にまとめてみました。点数にしてみると、1位はダクト式第3種でした。バランスの良さが目立ちます。ただ、どの換気システムにも★3つの項目があり、それぞれに違った良さがあることが分かります。
24時間換気システム選びのヒント
・24時間換気システム選びは「自分が重視するポイント」を考えることから始める(掃除の楽さか? 快適性か?)
・光熱費は第1種熱交換と第3種で大差はないと言われている
・一般的な寿命はダクト式15年、ダクトレス10年。若干差はあるが、どれも長寿命
・第1種熱交換は手入れが大変で、しっかり面倒を見ていく覚悟が必要だが、冬の生活を快適にしてくれる
・第3種は設置・維持コストが安く、手入れも比較的楽
・ダクトレス式は換気がしっかり行われるか心配、ダクト式が確実
・交換サービス付きの製品やメーカーを選んでおくと、故障時に慌てなくて済む
※企画・編集協力:日本住環境株式会社 https://www.njkk.co.jp/
この記事は連載コラム「住宅用24時間換気システムを考える」の第2回です。
「住宅用24時間換気を考える」シリーズ
24時間換気を住宅に設置することが法律で義務づけられていますが、「どこにありますか?」と住んでいる人に聞いても、「えーっ?どこにあるんだっけ」となることも。それぐらい、わたしたちは24時間換気のことを意識せずに生活しています。ところが、コロナ渦をきっかけに、24時間換気の果たす大切な役割がクローズアップされてきました。
そこで、住宅用24時間換気システムの開発・販売を長年行っている日本住環境(株)の協力で、24時間換気の役割から北海道に適した換気システムの選び方、メンテナンスなどをわかりやすくまとめ、連載記事としてお届けしています。
シリーズ「住宅用24時間換気を考える」
第7回 空気の汚れが見える!CO2モニターをリビングに置こう!~24時間換気を使いこなす~
第6回 24時間換気のメンテ問題を解消する取り組み 林基哉教授に聞く(2)
第5回 新型コロナの感染拡大防止に役立つ24時間換気 林基哉教授に聞く(1)
第4回 10年以上使い続ける24時間換気システム。掃除のしやすさが超重要!
第3回 電気代が高い! 24時間換気システムを止めたら節約になる?
第1回 【熱交換換気or第3種換気】住宅の換気システム、どっちを選べばいい?
2021年09月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。