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【熱交換換気or第3種換気】住宅の換気システム、どっちを選べばいい?


日本の住宅でもっともポピュラーな換気システムは『第3種換気』です。低コストで導入しやすく、地域も選ばないことから、例えば寒冷地・北海道でも広く採用されています。


また、『熱交換換気(第1種換気)』も「給気が寒くない換気システム」として近年注目を集めています。この記事では、換気システムごとの強みや選び方の解説を行うほか、換気や換気システムについておさらいできるページもご用意していますので、用途に合わせてご活用ください。


目次

『換気』の基礎知識



換気とは「外のきれいな空気を取り入れ、室内の汚れた空気を外に出すこと」で、健康な暮らしに欠かせない行為です。汚れた空気は、人体に様々な悪影響を及ぼします。

換気が必要な理由→室内の空気は外の空気より汚い!

この項目では、室内の空気の汚れについて見ていきます。排気ガスや黄砂、PM2.5などを含んだ外気より、普段吸っている家や職場の空気の方が汚れていることはご存じでしょうか。

(1)ハウスダスト
室内の空気中には、アレルギー反応の原因となる『ハウスダスト』が無数に漂っています。ハウスダストとは室内を漂う目に見えない大きさの埃で、人のフケ・垢、ダニ、カビ、繊維くず、ペットの毛などです。

(2)CO₂(二酸化炭素)
空気中に含まれるCO₂の量──『CO₂濃度』が一定以上に達し、その環境で長時間過ごすと、人体に様々な悪影響が出る恐れがあります。人は呼吸でCO₂を吐き出すため、密閉空間に何人も集まるとCO₂濃度は高まっていく一方です。ただちに影響が出るわけではありませんが、国では健康に暮らしやすい目安として1000ppm(ピーピーエム)以下の室内環境づくりを推奨しています。


消防庁の資料等を参考に作成


ちなみに屋外のCO₂濃度は、気象庁の観測データによると約400ppmです。

(3)VOC(揮発性有機化合物)
家や家具には、塗料や防腐剤として『VOC』と呼ばれる化学物質が使われており、気化して空気中を漂っています。VOCは『シックハウス症候群』という健康被害の原因で、症状は目がチカチカする、頭痛、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛みなど多岐にわたります。シックハウス症候群は新築やリフォームしたての家で起こりやすいです。

換気の役割。換気をすると何が良い?

一番の役割は、室内の空気環境をクリーンに保つことです。先ほど紹介した体調不良の原因を家から追い出し、健康に暮らしやすくなるほか、
・脱臭(ペット臭など)
・除湿(結露防止)
・温度調整
といった面でも換気は役立ちます。

また、国では「これくらいの換気をすれば安全」という換気量の目安として、『0.5回/h』を示しています。ちょっとわかりにくいですが、「1時間で家の中の空気の半分を、外のきれいな空気と入れ替えましょう」という意味です。

「0.5回/hの換気をするには、窓を何ヵ所、何分開けていたらいいの?」
そんな疑問を解消してくれるのが、今回のテーマである『換気システム』です。
換気システムを動かしていれば、窓を開けなくても0.5回/hの換気が実現します。詳しくは次項でご紹介します。



・換気はなぜ必要?→汚れた空気を外に出し、室内にきれいな空気を入れるため
・空気の汚れは「室内>屋外」
・汚れた空気の正体→ハウスダスト、高いCO₂濃度、VOCなど

『換気システム』の基礎知識

換気システムとは窓を開けずに空気の入れ替えを行う装置や仕組みで、2003年以降に建ったすべての建造物には建築基準法の定めで必ず導入されています。常時稼働させておくものなので、『24時間換気システム』と呼ばれています。装置の設置箇所は壁、床下、天井裏など様々です。

24時間換気システムの目的。「0.5回/h」の換気量を守る!


1時間で半分入れ替え。2時間でまるごと家の中の空気が入れ替わります。


建築基準法で規定されている、健康に暮らすための換気量「0.5回/h(室内の空気のうち、半分を1時間で外のきれいな空気と入れ替え)」を確保することが、24時間換気システムの目的です。



メンテナンス時などやむを得ないケースを除いて稼働を止めてはいけません。空気の入れ替えが滞り、汚れた空気が充満してしまいます。

種類は3つ。住宅では『第1種換気』と『第3種換気』が主流

24時間換気システムは第1種~第3種の3つに分類されます。



≪第1種換気≫
給排気どちらも機械で強制的に行う方式。熱交換器の取り付けが可能です。

≪第2種換気≫
給気は機械で強制的に行い、排気は自然に行う方式。手術室や無菌室といったクリーンルームで採用されます。きれいな空気を安定して取り込める一方、室内が正圧(外より気圧が高い状態)になり、湿気が壁の中に入りやすい=住宅の骨組みに悪影響を及ぼす『壁内結露』が起きる恐れがあるため、木造戸建住宅ではまず使われません。

≪第3種換気≫
給気は自然に行い、排気のみ機械で強制的に行う方式。室内が負圧(外より気圧が低い状態)になるため、壁内結露のリスクが低いです。

住宅で採用されるのは、第1種と第3種が大半です。ちなみに機械換気の月々の電気代はコンビニのおにぎり~文庫本くらいの範囲で、とてもリーズナブルです。



・24時間システム、常時稼働で0.5回/hの換気量を確保
・電源は基本切らない
・電気代は月々数百円(コンビニのおにぎり~文庫本くらい)

『熱交換換気』と『第3種換気』の比較


複数回答


これは、北海道住宅新聞の2021年1月5日号に掲載された住宅会社へのアンケート結果です。第3種換気の代表例『第3種ダクト式』は例年、この新年号アンケートで採用社数がもっとも多く、今回で7年連続最多となりました。全国的に見ても、住宅会社から一番選ばれているのは第3種換気です。



第3種換気の中でもっともポピュラーな第3種ダクト式のファン本体(ルフロ400、日本住環境

一方で今年は、近年の熱交換換気への注目の高まりを表すように『第1種ダクト式』が1位タイと健闘しました。さて、これから建てる家では、どちらの換気システムを選ぶのが良いのでしょうか。ここからは、換気システムごとの強みや向き・不向きを説明しつつ、北海道住宅新聞の記者が日頃の取材で聞いた、それぞれの換気システムに対する住宅関係者の声もご紹介します。

※ダクト式とは換気システムの一般的な方式で、家の中にダクト(空気の通り道)を巡らせ、給排気の確実性を上げます。ダクトレス式はダクトを使わない方式で、設置の手軽さが売りですが、換気の確実性という面ではダクト式に劣ると言われています。

「ハイテク好きならこれ」熱交換換気の仕組みやメリット・デメリット

~取材で聞いた、住宅関係者の声~



建築系学部(北海道札幌市)・講師
「外気が室温に近い温度で入ってくるため、がんがん暖房をたく必要がありません。極めて省エネで、環境にもやさしい換気システムです」



工務店(北海道千歳市)・設計
「給気・排気どちらにも機械を使うので、給気を自然に任せる第3種換気よりも、換気の確実性が高いですよね。ただ空気を滞りなく入れ替えるためには定期的なフィルター清掃が欠かせないので、お客様には口酸っぱく呼びかけます」

熱交換換気は給排気を換気扇で強制的に行う際、排気する空気から熱を奪い、その熱を給気する外気に与える方式です。このため、外の空気が室温に近い温度で入ってきます。ちなみに、この熱の受け渡しを行う部分を『熱交換素子』といいます。



メリットは、なんといっても入ってくる空気が寒くないことです。自然給気の第3種換気に比べて、寒い季節に室温が下がりにくいです。さらに、暖房の稼働を減らせる&設定温度を抑えられることから、暖房費を少なめにできることも大きな魅力。また、夏は逆に外気より涼しい空気が入ってくるので、冷房の稼働も少なく済みます。

このため、寒冷地向きなのはもちろんのこと、寒冷地で国が定める省エネ住宅『ZEH(ゼッチ/ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)』を目指すなら、一次エネルギーの削減にも若干有利です。

デメリットは、設置コストの高さ。高性能ですし、給排気どちらにも機械を使うので、第3種換気より導入費用がかかります。

そして何より大変なのはメンテナンスです。小まめなフィルター清掃に加えダクトの清掃も必要で、後者は業者に依頼する必要があります。また、特にフィルター清掃はサボると悲惨です。

熱交換換気は機械のパワーで強制的に給気するがゆえ、虫や花粉、ホコリなども吸い寄せてしまいます。そのためフィルターに汚れが溜まりやすいです。「久しぶりにフィルター掃除しようとしたら、虫の死がいがいくつもくっついていてトラウマになった」というエピソードも珍しくありません。


汚れがびっしりついたフィルター(写真提供:三浦眞オフィス(北海道札幌市)


だからといって、フィルターを放置しておくわけにもいかないのが辛いところ。フィルター清掃から目を背け続けていたら、虫の死がいやほこりがベッタリとついているフィルターを通った空気が家中に広がることになってしまいます。ひどい場合はフィルターの目が汚れで詰まって、空気の入れ替えが滞ります。

換気が悪いと、当然ですが臭いがこもります。家の臭いは住んでいると気付きにくいですが、来客は敏感です。また、湿気を多く含んだ空気が室内に留まり続けるので、結露が起こりやすくなります。結露で怖いのはその二次被害で、発生した水滴によってカビが発生したり、家の骨組みの腐食が進んだりしてしまいます。

ですので、「マメにメンテナンスする自信がないな・・・」という方は、第3種換気を選ぶとよいでしょう。第3種換気はフィルターに汚れが溜まっても換気不良にはなりにくいです(もちろんフィルターの掃除は大切です)。逆に「掃除が好き!」「細かいメンテナンスも苦にしない!」という方は、熱交換換気を前向きに考えるとよいでしょう。フィルター清掃の頻度は、フィルターの目の細かさによりますが、熱交換換気が3~4回/年、第3種換気が1回/年くらいが目安です。
また、換気システムは本体もメンテナンスが必要ですが、日本住環境のルフロ400のように工具を使わず簡単に分解・掃除ができるものもあります。



工具なしで分解できるルフロ400本体。具体的なお手入れ方法は→https://www.njkk.co.jp/support/maintenance/luflow400-new/

「採用社数、北海道で7年連続1位」第3種換気の仕組みやメリット・デメリット

~取材で聞いた、住宅関係者の声~



全国大手ハウスメーカー(北海道札幌市)・営業
「設置コストが安いだけでなく、月々の電気代も数百円程度なので、うちは第3種換気が標準です。また、最近流行りの第1種ダクトレス式は、眠るときに音がうるさいという声をお客様からいただいております」



工務店(北海道恵庭市)・取締役
「“第3種換気は外気がそのまま室内に入ってくるから寒い”とよく言われますが、高断熱・高気密でそもそも暖かい家では、その影響は微々たるものです。寒い地域で家を建てるときでも、お客様からの要望がなければ第3種換気を使います」

第3種換気は排気のみ換気扇で行い、給気は給気口から自然に行う方式です。排気に特化した強力な換気扇が、パワフルに室内の空気を吸い込み外へ吐き出します。



メリットは、仕組みがシンプルで設置コストが安く、メンテナンスの負担も少ないことです。日本各地で採用されており、「換気システムはなるべく価格を抑えて、他のところにお金を回したい」という人には最適です。ランニングコスト(日常的にかかる電気代)も熱交換換気より安いです。また、家の骨組みの耐久性に悪影響を与える壁内結露が起こりにくい点も魅力となっています。

デメリットは、外気がそのままの温度で入ってくること。例えば、冬は冷気で室温が下がる分、熱交換換気の家よりも暖房費が多めになります。ただし、給気口の形状を工夫して冷気の影響を減らすなど、寒冷地仕様の製品が各メーカーから出ていることもあり、北海道のような寒い土地でも第3種換気は一般的に採用されています。


室内側のふた(手前)を上向きにし、入ってくる冷気を天井に向かって放出することで、足元を冷やさないよう工夫した自然給気口(スクウェアフロー、日本住環境)



・ハイテクな設備を導入したい→熱交換換気がおすすめ(ただしメンテナンスをきちんと小まめにできる方)
・換気システムの設置コストを抑えたい/メンテナンスをあまり考えたくない→第3種換気がおすすめ

基本は第3種換気でOK

一般的な家を建てるなら、換気システムは第3種でまったく問題ありません。北海道~沖縄の全国各地どこでも対応可能です。省エネ性の高い設備を導入して家全体の一次エネルギー消費量を少しでも削減したいなら、熱交換換気を選ぶとよいでしょう。また、熱交換換気を採用するときは、家の空気をきれいに保つため、小まめなメンテナンスを心がけてください。

次回は住宅換気システムの選び方ガイド! 第1種ダクト式、第1種ダクトレス式、第3種ダクト式、第3種ダクトレス式、主要な換気システム4つを取り上げて、強みの整理と比較と行います。

※企画・編集協力:日本住環境株式会社 

道内地域別の換気システム採用率

・道央(札幌、小樽、石狩、恵庭、千歳、北広島、岩見沢、滝川など)


第3種ダクト式 第1種ダクト式 第3種ダクトレス式 第1種ダクトレス式 パッシブ換気
20.5% 4.5% 25.0% 18.2% 2.3%

・道南(函館、北斗、室蘭、苫小牧、伊達、登別など)


第3種ダクト式 第1種ダクト式 第3種ダクトレス式 第1種ダクトレス式 パッシブ換気
37.5% 37.5% 12.5% 18.8% 0.0%

・道北(旭川、稚内、名寄、富良野、士別、上川など)


第3種ダクト式 第1種ダクト式 第3種ダクトレス式 第1種ダクトレス式 パッシブ換気
28/6% 42.9% 14.3% 7.1% 7.1%

・道東(北見、網走、紋別、帯広、釧路、根室など)


第3種ダクト式 第1種ダクト式 第3種ダクトレス式 第1種ダクトレス式 パッシブ換気
33.3% 25.0% 25.0% 16.7% 0.0%

※北海道住宅新聞調べ、2020年末に住宅会社に行ったアンケートの結果より(道内100社から回答)

コラムコーナー

【コラム1】寒い北海道でなぜ第3種ダクト式が主流なの?



北海道で第3種ダクト式の支持が厚い理由の一つに、換気が確実で結露被害が起こりにくいことがあります。

北海道は秋~冬などの寒い季節、室内外の寒暖差が全国でも特に大きく、結露が発生しやすい地域となっています。結露は窓のサッシやカーテンにカビを発生させたり、家の骨組みを腐らせたり、大切な住まいに色々な悪さをします。ですがしっかり換気を行い、湿気を外に追い出す=室内の湿度を低く保つことで結露とその被害を低減できます。

第3種換気の家では排気ファンに向かって空気の流れが生まれています。このため、湿気や臭気を含んだ古い空気があちこちの部屋に流れてしまうリスクが低いです。さらにダクトという空気を外へ運び出す道を設けることで、排気をより確実なものにします。このため第3種ダクト式は、結露が身近な北海道の家にもってこいなのです。

このほか、第3種ダクト式は掃除がしやすい、壊れにくい、騒音が低い、換気量が安定しているなど、長期間にわたって使う住宅設備としてほとんどの点で合格点に達しています。もちろん、導入コストの安さも選ばれている理由のひとつです。

【コラム2】みんなが汚い空気を外に・・・外の空気は大丈夫?



結論から言うと、大丈夫です。森林がある限り、人が住めなくなるほど空気の質が悪化することはありません。

森林の木々は光合成でCO₂を吸収し、酸素を吐き出しているだけでなく、宙を漂う見えないゴミを葉に吸着するなど様々な方法で大気を浄化しています。なので、私たちが呼吸でCO₂を延々吐き出しても、換気で汚れた空気を排出し続けても、外の空気は室内よりもきれいさを保てているのです。森の空気はきれいで美味しいとよく言いますが、あれは気のせいではありません。木々が周りの空気を浄化してくれているのです。

2021年07月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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