
ここ北海道は、豊かな大地に恵まれ、農業に従事されている方も多くいらっしゃいます。IEZOOMでも農家さんの住宅(農家住宅)を数多くご紹介してきました。
農家住宅の特長とは?
1 勝手口設置と水回りの工夫 来客用玄関とは別に作業着のまま入れる裏玄関があり、汚れ物をすぐに洗える洗濯機やシンクが備え付けられていたり、農作業用の服や靴の収納があるなど、裏玄関と水回りの動線をまとめ、家をきれいに保つための工夫がなされています。

2 土埃による外壁の汚れや虫の侵入対策 畑の土埃対策として汚れ防止機能付きや、汚れが目立たない色味の外壁を選んだり、窓から室内に土埃やカメムシや蛾などの虫が入りにくいよう開閉窓を極力小さくし、大きな開口部はFIX窓を用いるなどの配慮もみられます。
3 農作業と家事動線を踏まえた動線設計 朝早くから始まる農作業のために、寝室を1階に配置して、朝の身支度がスムーズに行える動線を確保したり、畑のたい肥のにおいが洗濯物に付かないよう、物干し専用スペースを設ける、スーパーなどへの距離があるので大きな食品庫を備える。
4 高断熱高気密 これは農家住宅に限りませんが、北海道の厳しい寒さの中で、暖かく快適に過ごせる、光熱費を抑えられる、結露やカビなどに悩まされなくて済む住宅を建てることは大変重要なポイントです。
こうした配慮や工夫は農家さんだけでなく、アウトドアが趣味の方や小さなお子さんがいるお宅でも参考になりそう。今回は様々な工夫が魅力の農家住宅の事例をまとめてみました。
目次
北海道の農家住宅 納得の断熱性能と薪ストーブで冬も楽しむ農家住宅 十勝A邸/とかち工房

「薪ストーブ一台で家中が暖かいんです。パネルヒーターを使う機会がないくらい」
高窓から陽の注ぐリビングでそう話してくれたのは、畑作農家の三代目であるAさんご夫妻です。広大な畑に面した新居は吹き抜けのあるゆったりとした造り「昼間は窓から入る日差しだけで暖かい」といいます。
Aさん 家づくりを考え始めた頃、農家の家をたくさん回っている人に「とかち工房の家はいいよ」と教えてもらったんです。
私達の暮らしや好みをふまえたうえで「ゆったりとした家なのでそれを引き立てるインテリアに」などプロならではの提案をしてくれましたし、農家の住宅をたくさん手掛けているので、参考になる8事例もたくさん見せてもらえました。

この家には玄関と勝手口があり、勝手口には作業着がすぐ洗えるよう洗濯機を置いています。お風呂のお湯をそのまま使えるような造りにしてもらったんですよ。買い物は週末にまとめて買い出しするのでストック品が入る大きな収納も必須です。キッチンとリビングの間を仕切ったのも、とかち工房からの提案。食後、片付ける時間がまとまってとれなくてもお客さんの目に触れないようになっています。
北海道の農家住宅 牧草地の眺めが絶景!ナチュラルモダンの農家住宅 池田町O邸/赤坂建設

池田町の広々とした牧草地の中に建つO邸には、酪農家のご夫婦と3人のお子さんが暮らしています。
設計・施工は、同じ池田町で創業して今年で110年になる赤坂建設、担当は高山辰也さんです。


玄関は、正面玄関(写真上)と勝手口(写真下)を分けた農家住宅仕様です。
こちらは勝手口の玄関。ここで手を洗って作業着を脱ぎ、お風呂に直行できる間取りになっています。
「インテリアと並ぶ大きな要望のひとつが、暮らしやすい間取りでした。最初に決めたのが勝手口の位置。牛舎に近く、出入りしやすい場所に作ってあるので毎日活躍しています」(奥様)
北海道の農家住宅 照明・床・壁…細部まで選び抜いたインダストリアルスタイルの平屋 帯広市K邸/カントリーヴィレッジ

農家の3代目であるKさんは、2022年6月、帯広市郊外にインダストリアルスタイルの平屋住宅を建てました。
設計・施工は芽室町のカントリーヴィレッジ(朝日良昌社長)。「共有空間とプライベートな空間とを分けたい」という要望に応え、LDKと子ども部屋・書斎エリアを分けたL字型のプランを提案しました。
外壁はガルバリウム鋼板をメインに、正面には意匠と目隠しを兼ねたルーバーを取り付けました。
裏玄関にはスロップシンクと洗濯機が。農作業で衣類に着いた埃など汚れを落としてから家に入ります。
記事はこちら 照明・床・壁…細部まで選び抜いたインダストリアルスタイル/帯広市Kさん
北海道の農家住宅 酪農業を営む住宅の外観は傷・汚れに強い素材をチョイス 赤坂建設

「酪農業で土ぼこりや虫が多い環境なので、汚れが目立ちにくい色にしました」と落ち着いたデザインに仕上げた外観。設計・施工は隣町、池田町の赤坂建設です。
記事はこちら ゲストと楽しむおもてなしの家/本別町S邸 赤坂建設
北海道の農家住宅 住宅会社勤務の経験を活かした要望満載の「家事楽」な農家住宅 帯広市N邸/イゼンホーム

今回伺ったのは帯広市の郊外、刈り取り直前の金色の小麦畑に面したN邸です。暮らしているのは農家の4代目であるご主人と奥様、お子さんの3人家族。奥様は施工したイゼンホームの元社員です。
農作業の合間に作業着や長靴で出入りすることもあるのが農家さん。入り口は来客用と家族用のふたつを設けました。
イゼンホーム社員時代は現場や完成住宅見学会の会場で働くこともあったという奥様。農家のお客さんも多かったため、当時から”農家住宅の動線”についてはある程度イメージがあったそうです。
こちらは家族用の玄関(勝手口)。畑仕事を終え帰宅した際に、作業着や靴下などには土埃などがついています。そこで、勝手口に設置した洗濯機でまず衣類を洗い、SKシンクで手などを洗います。

勝手口から洗面、お風呂場までは一直線なので、お風呂に入って汚れと疲れをさっぱりオフにしてからリビングでくつろぐことができます。
北海道の農家住宅 小麦畑が似合う三角屋根と白壁の家 音更町 /ウッドライフ

空と畑だけの風景の中に明るい白壁が映えるN様邸。北海道、十勝・音更町で40代のご夫婦と2人のお子さんが暮らしています。ふたつの屋根からカーポートまで続くフォルムが美しく、西洋を思わせる十勝の風景によく馴染む外観です。

ご主人のお仕事は小麦農家。左はお客様も利用する通常の玄関、右は農作業後に利用する玄関と、用途別に使い分けられるよう緩やかに仕切りました。

底が深く汚れ物を洗いやすいスロップシンク(SK)。奥には農作業着などを洗う洗濯機もあり、汚れたものを家の奥に持ち込まないための工夫がされています。農家さんだけでなく、小さなお子さんがいるお宅でも役立ちそうなスペースです。
北海道の農家住宅 仕事とプライベートの空間を分けてリラックス 帯広市/イゼンホーム

帯広の郊外で農業を営むMさんご夫妻。「この冬、いちばん寒い時はマイナス28度。それでも家の中は、全部暖かかったんですよ」。そう話すお二人は、昨年12月にイゼンホームで家を建て替えてから、「とても暮らしがラクになった」と口をそろえます。老後も考えた平屋の住まい、Mさんご夫妻に家づくりのお話を伺いました。

Mさん邸は、玄関とは別に勝手口も設けています。農家住宅ならではのつくり。農作業用の服や靴はこちらに収納、汚れた服を洗うための洗濯機や洗面化粧台も備えました。また、保冷庫も設けているので食料品の保存に便利です。

こちらは玄関。左端のドアを開けると応接室につながる土間スペースへ。仕事関係や来客を応接室に通すことで、リビングはご夫婦専用のスペースとしてくつろげます。お客さんが来るたびに気を使うことがなくなりました。廊下側にも、応接室に入れるドアを設けたので、ご夫妻も入りやすくなっています。
北海道の農家住宅 開放感抜群!6.5m吹き抜けの家 中札内村/プラスワイド
帯広から車で約30分。今回伺ったのは、美しい山並みと畑が見渡せる中札内村で農業を営むご家族のお宅です。東京ドームおよそ10個分はあるという畑の中に建っているのは、やはりスケールの大きな開放感あふれるお家。「何より広々とした家に住みたい!」と希望したというお宅にお邪魔しました。

この家で暮らしているのは農家の3代目である30代のご夫妻と1歳のお子さん。家のほぼすべての窓からご自身の畑が見渡せる立地です。
施工したのは帯広を拠点として2×6工法の高性能住宅を手掛ける株式会社プラスワイド(PLUS WIDE)。こちらのK邸は長くフリーの大工(一人親方)として十勝の家づくりに関わり、現場の経験も豊富な清水社長が打ち合わせ、プランニング、現場管理まで担当しました。

モダンな意匠にしたいという希望のあった外観。畑に囲まれているため、土埃の汚れが気にならない色味を選びました。ポーチと玄関が二つある農家住宅仕様のお家です。
農作業着や長靴のまま入れる裏玄関には、専用の洗濯機と汚れ物を洗えるシンクを設置、帰宅後はすぐに脱衣・手洗いができるようにしました。家の中を清潔に保てるのはもちろん、玄関でON/OFFを切り替えてリラックスできるという効果もあるようです。

間取りは農家さん向けの住居を研究して決めたのだそう。キッチン・洗濯スペース・洗面脱衣室・風呂場と水回りは一直線になっており、農作業着用洗濯機やシンクのある裏玄関へもスムーズに移動できる造りです。
右に見えるのはウォークインのファミリークローゼット。脱衣所にも玄関にも近い場所に設置したことで、お風呂から出た後にTシャツを着たり、お出かけ前にコートを羽織ったりと便利に使えています。
北海道の農家住宅 断熱・気密重視 モダン×ナチュラル2世帯住宅 仁木町/イゼッチハウス北海道
果樹園が広がる仁木町の一角に、2016年に完成した総2階のガルバリウム外装の2世帯住宅、細川邸はありました。早速お邪魔します。

シンプルで明るく清潔感のある玄関ホール。
2世帯住宅の中でも、細川邸は玄関は1つ、LDKは2つ、浴室は2つという玄関共有型といわれるプランです。このタイプは、生活リズムなどが異なる別世帯が適度にプライバシーを保ちつつ、1階と2階で行き来できるつながりもあるバランス型の2世帯住宅です。

細川邸は、1階は祖父母が、2階は息子さんファミリーが暮らしています。ビニールハウスは40棟もあり、2代にわたってミニトマト栽培に取り組んでいます。本業が充実するなかで、次は生活環境の整備ということで、暖かく省エネな住宅、そしてお姉ちゃんと双子の弟という3人の子育て環境も整えたいと、イゼッチハウス北海道に注文住宅を依頼しました。
奥さま 以前住んでいた家はお風呂などは床が冷たいのでつま先立ちして歩くほどでした。何よりも困ったのが、カメムシがいっぱいだったことです。朝起きたら、枕元にカメムシが歩いていた時は衝撃でした。
ご主人 山に隣接した農業地帯なので、カメムシが多いんです。外壁がクリーム色で、そこにカメムシが貼り付いて外壁がまだら色に変わるほどでした。私たちが気密断熱にこだわったのは、もちろん寒さ、省エネが一番ですが、虫が侵入しない家にしたいというのもありました。

ご主人 外観だけでもいろいろ工夫があります。日射が多く入るように、南向きの窓が多くなる間取り、カメムシがあまり寄りつかない色の濃い外壁(ガルバリウム)、雪の多い地域なので、イゼッチハウスの鏡原社長の提案で基礎を高くしていただいたこと、フラット屋根にして雪下ろしの負担を削減したことなどです。
北海道の農家住宅 ウッドボイラーで薪を有効利用 音更町/赤坂建設
十勝平野のほぼ中央に位置し、全国でも有数の畑作地帯として知られる音更町。今回ご紹介するお宅は、この地で農業を営んで三代目という農家の山川さんのお宅です。
広大な畑作風景の中に建てられたのは、リフレッシュ用途とゲストハウスとしての役割を兼ねた別邸です。自宅の隣に建てられたゲストハウスは名付けて「辛夷(こぶし)庵」。ウッドボイラーに温室、ホームシアターなど、楽しみの詰まった一軒へお邪魔しました。

ポーチからドアを開けると、そこは玄関兼ボイラー室です。山川さんが「辛夷(こぶし)庵」を建てた動機のひとつが、このウッドボイラーを使ってみたかったということでした。

「温水暖房だから空気が乾燥しないし、柔らかいあたたかさが気持ちがいいね」と満足そうな山川さん。一般的な家庭用とは言い難い大きなボイラーですが、農家や各種施設、企業など、薪が自由に手に入ったり人が集まったりする場所では活躍しそうです。
北海道の農家住宅 小さいからこそ豊かな暮らし―道産カラマツの家 音更町/水野建設

音更町の畑の中に建っているこちらのお家。住まわれているのは農家の三代目である40代のご夫婦と小学生低学年のお子さんです。建主であるY様が選ばれたのは、同じ音更町の有限会社水野建設。十勝産カラマツを始めとする「地産地消」の家造りにこだわり、十勝の気候に合った高断熱高気密住宅を数多く手掛けています。

農作業着のまま入れる裏玄関(左)とカウンターの設置された表玄関(右)。玄関はそのまま広々とした土間に続いています。大容量の棚に収納されているのは、キャンプ用品やヘルメットなどアウトドア好きというご主人の趣味のアイテムたちです。居室部分から緩やかに区切られた土間に設置したことで、単なる収納ではなく“基地”感のある趣味のコーナーとなりました。

「昔の、土間や囲炉裏があるような家の雰囲気が好きで」とご主人がこだわったのがこちらの土間です。一見居住スペースを圧迫しそうですが、玄関・収納・趣味・来客対応・そして安らぎの空間といった多種類の役割を果たしています。
農作業の合間に着替えないまま休憩できる、同じ農作業着のお客様にも気兼ねなく入っていただけるなど、農家さんだからこその使い勝手のよさも感じているそうです。

こちらのY邸は水野建設の提案する「ミニマムスタイルの家」を元に建てられた、延床面積26坪というコンパクトな住居。土地には余裕があり、もっと大きな家を建てることも可能でしたが、あえて小さな住居を選びました。
繁忙期は昼夜を問わないのが農家のお仕事。だからこそ、家で過ごす時間は家族とのコミュニケーションや趣味に使いたかったのだといいます。希望したのは「小さくて造りのしっかりとした家」。木の雰囲気が気に入ったという水野建設で「ミニマムスタイルの家」に出会い、求めていたものを感じたのだそうです。
小さな家だからこそ大切にしたかったのが開放感。仕切りのない玄関や壁のほぼ一面に広がる窓からの景色もあり、LDKは面積以上の広がりを感じられる空間になりました。
北海道の農家住宅 設計・大工・職人が心を込めた注文住宅 東川町/アーケン株式会社

旭川の隣。東川町の農業地帯に、鉛筆のような?それともムーミンハウスのようにも見える塔の姿が印象的な注文住宅が2018年2月に完成しました。
この写真は日没直後に撮影。濃いブルーの空、ダークブラウンの壁、ホワイトの雪と窓枠、オレンジの灯りが雪にも映っています。

Yさんは東川町の農業者です。米を主体にトマトやトウモロコシなどを生産しています。毎日の仕事が終われば、今まで住んでいた家では玄関から室内に入りましたが、よほど注意しないと、服や靴に付いた泥汚れや埃を玄関、そして室内に持ち込んでしまっていました。
そこでこの家では、玄関のほかに勝手口を設け、そこで衣類や靴を脱ぎ、勝手口の隣にある浴室でシャワーを浴びて、衣類も勝手口の向かいにある洗面脱衣室にある洗濯機そばにある洗い物入れに入れてから室内に入ることができる動線設計にしました。
北海道の農家住宅 プランもデザインも望み通りの農家住宅で新婚生活 音更町/とかち工房
Oさん夫婦は、十勝・音更町に住む新婚のカップル。結婚と同時に新居を完成させ、幸せな日々を送っています。酪農を営む父親の後を継ぐため、毎日忙しく働いているOさんにとって、家のデザインや性能はもちろんですが、間取りと動線はとても大事でした。

「基本となる動線や希望するプランは決めていました。たとえば仕事柄、早朝に出かけることが多いので寝室は1階にあった方がバタバタしなくて済むと思いました。だから、どの住宅会社にお願いしてもプランはそう変わらないはずなのですが、1階に寝室を設けると1階面積が広くなるので、2階もそれに合わせるかのように広くしてしまい、『自分たちには大きすぎる』と思える広さになっていました」とOさん。

こちらは勝手口の写真。仕事を終えたら、洗面台で手を洗い、左手に見えるユーティリティーへ。
そこでシャワーを浴びてすっきりしてからリビングで体を休めます。
北海道の農家住宅 北海道の農業に合う家づくりとは?士別市で新規就農したSさんにインタビュー/キタ・クラフト
今回、お施主様のご厚意で、この動画を制作させていただきました。自然に優しい農業を目指し、士別市に移住、養鶏をスタートされ、その後、住環境の改善を目指し当社で家づくりを担当させていただきました。
北海道の農家住宅 地場産材、生活導線重視、耐震等級3クリアの家づくりとは/キタ・クラフト
今回、お施主様のご厚意で、この動画を制作させていただきました。北海道の雄大な景観の中で農業がしたいと考え、美深町に移住、新規就農されたKさま。自然素材を活かした造作などに共感いただき、キタ・クラフトで家づくりを担当させていただきました。
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