Column いえズーム コラム

札幌の中古住宅はいつ建ったかで大違い! 寒さ・目に見えない壁内の結露


編集部に、あるリノベーション現場の写真が届きました。

この家は、全盛期に北海道ナンバーワン棟数を建てていたこともあったという、地場大手ハウスメーカーが建てたものです(現在、この会社はありません)。

多い年で年間1000棟前後を手掛けた実績のある会社で、「北海道の家をあたたかく」という強い思いで省エネ・快適住宅を目指し、当時は技術開発力も優れていたと思います。
もしかしたら、ある時期、北海道の最先端技術だったかもしれません。

ところが壁の中を見てみると・・・


ピンボケですいません。芯材の状況を見ていただきたいのであえて掲載します。



外壁のサイディングをはがしてみました。
金属サイディングの裏側に吹き付けてある芯材、これはウレタン系の素材であることが多いのですが、その芯材が濡れていて、カビが生えています。



外壁材の下地になっていたベニヤ合板は、合板全体がぬれたあとが釘穴から黒く筋になって残っており、合板の表面にはカビが生えていました。写真はよくわかりませんが、土台も腐食していました。



ここまでで予想されるこの家の問題点

それは、壁内結露(内部結露)です。

冬の暖房によって温められた部屋の空気が壁の中に侵入し、その空気は温度の低い屋外側で冷やされて、空気が含んでいる水蒸気が水になって合板や芯材をぬらしたと想像されます。
もし、この予想が当たっていたら、断熱材が入っている壁の中も危険です。断熱性能の低下を招いているだけでなく、家を支える大切な柱が腐っているかもしれないからです。

部屋の中からではわかりませんが、カビによる健康被害、大切な柱などの傷みによる耐久性低下、断熱性能の低下が心配されます。

いよいよ室内側から壁をはがします



壁内結露が強く疑われるので、室内側からも確認することになりました。
壁のボードをはがすと防湿層(アルミフォイルのようなピカピカの材料)つきの断熱材があり、それをはがすとベニア合板の裏側が見えました。
やはり黒くカビています。柱も黒ずみ、腐食が心配です。



1984年ころから、産学が一体となって「あたたかく・長持ちして・暖房費がかからない」家の技術が開発されました。それが現在に至る木造住宅の高断熱・高気密工法です。いろいろな工法が誕生し、お互いが切磋琢磨することによって技術がさらに進化した一方、このハウスメーカーは技術の進歩がどこかの時点で止まっていたのかもしれません。
この建物は、平成に入ってから、1990年代の建物です。


オーナーさまのプライバシー保護のため、アフターの写真はご紹介できませんが、結局このおうちは、建てた会社ではなく、改築時に出会った住宅会社の頑張りによって、「あたたかく、長持ちする家」に生まれ変わりました。



断熱技術が不足していた-札幌の古い家が安心できない理由

住宅の断熱性能は、建てられた年がわかればだいたい予想がつきます。古ければ古いほど寒い。たとえ外観や室内などの見た目がどれほどキレイになっていたとしても。
なぜなら、1984年以前は木造住宅を暖かくする方法がまだ誰もわかっていなかったからです。



上の年表を見てください。
1975年ころから札幌・北海道の住宅でたくさんの断熱材が使われるようになり、その直後からナミダタケ事件と呼ばれる床が抜ける被害が多発します。

新築した家の床が数年で抜け落ちるのですから、それは衝撃的事件でした。
この事件が契機となり、北海道の住宅会社・研究者・有識者がそれぞれ住宅改善の研究に取り組みます。
その成果が、1984年以降、次々と発表になります。
そして、1985年ころから先進的な住宅会社によって新工法の採用が始まるのです。
ですから、1984年以前の住宅は、仮に暖かいとしても結露その他の課題を抱えている可能性が極めて高いと言えます。
唯一の例外を除いて。

心当たりがある方は、まず家の外に出て、壁をよく見てください。
黒ずみはありませんか? 明らかに色が変わっている部分はありませんか? サイディングが波を打っている部分はありませんか?
こういった変化があれば、お近くの工務店に相談してください。
iezoomで取材した会社の中にも、リフォームを行う会社、リフォームメインの会社があるので、チェックしてみてくださいね。
https://iezoom.jp/reform/r010/ 

最初は何事もなく、いい家づくりと思えても、あとからこういった問題が発覚してしまうという、非常に残念なことは、今でも新築で起きていますが、じつは中古住宅を購入した際によく起きています。もちろん住まい手が定期メンテナンスをきちんと行っているかどうかも重要ですが、メンテ不足ではなく、建築時における欠陥のほうが原因となっている場合も多いのです。
1990年以前の家については、技術と知識が不足しており、ほとんどの家が結露などの課題を抱えていると考えたほうが良いでしょう。



最後に、唯一の例外について触れますね。
2×4(ツーバイフォー)工法で建てられた家は、室内の換気が不足してカビが発生している場合もありますが、壁の中の結露は少なく、家は暖かいケースが多いと思います。
もし2×4住宅の購入を検討しているなら、1度プロに診断してもらい、購入して大丈夫かをジャッジしてもらうといいでしょう。

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