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連載コラムその1 時代とともに変わる『片付け』のカタチ

みなさんは『片付け』という言葉に、どんなイメージを持っていますか? 「整った部屋」「しまわれた収納物」「すっきりした空間」…そんな風景が思い浮かぶかもしれません。でもこの『片付け』は、時代とともにその中身が大きく変化してきています。同じ『片付け』でも、背景にある社会の豊かさや暮らしの価値観で大きく変わる―。このことを、今回はテーマとして取り上げたいと思います。




昔の日本の暮らしにおいて、モノというのは貴重なものであり、限られたモノをいかに大切に使うかが日常生活の基本となっていました。壊れたら直す、着なくなった服は雑巾にするなど、“もったいない”の精神が自然と根づいていたのです。

そして時代が進むにつれ、暮らしの中に『選択肢』が増えていきました。スーパーには品物があふれ、コンビニはいろんな商品を24時間営業で売るようになるなど、モノが足りなかった時代から、選びきれないほどモノがある時代へと、豊かさのカタチは大きく変化。そして現代では、「たくさん持つこと=豊かさ」ではなくなり、“持たないこと”や“手放すこと”に、以前とは違った価値が生まれてきているのです。

この変化は、『片付け』にも大きな影響を与えています。以前は「どうやってモノをしまうか」が主なテーマでしたが、今は「何を持つか」「何を手放すか」という“取捨選択”が必要な時代。単に空間を整えるだけでなく、「自分はどんな暮らしをしたいのか」「どんなモノに囲まれていたいのか」といった、内面的な問いかけに答えを出す必要もあります。情報が多く、選択肢が無限にある現代だからこそ、自分の価値観を知り、それに沿ってモノを選ぶ力が欠かせません。

今の『片付け』に求められるのは“選ぶ力”。自分の暮らしに本当に必要なモノを見極める力です。それは、子どもにとっても「自分で決める」「自分で選ぶ」力を育む大切な機会。たくさんの選択の積み重ねから成る家づくりの時にも必要なチカラになるでしょう。

片付けとは、暮らしを整えるだけでなく、自分らしさを問い直すことでもあります。時代が変われば『片付け』のカタチも変わる―。今の暮らしに合った、自分たちだけの『片付け』を見つけていきたいですね。

このコラムを書いた人



のんちさん:整理収納アドバイザー1級

2014年に資格取得後、4度の引越しを経て2021年から活動開始。訪問・オンラインでの片付けレッスンを行いつつ、手仕事のコミュニティも主宰。片付けなどに関する100軒以上のお悩みに触れ、サポート実績は300時間以上にのぼる。インスタアカウントでも楽しくためになる発信を続けている。

のんち|片付け×家事シェアの専門家  https://www.instagram.com/nonchi._.kurashi/?locale=ja_JP



※この記事は北海道住宅新聞 2025年6月5日号に掲載されたコラムです

2025年06月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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