積雪寒冷地北海道・札幌では、各家庭で冬の暖房・給湯エネルギーを大量に消費していますし、照明、調理、テレビやゲーム機など、さまざまな場面でエネルギーをたくさん消費しています。この記事は
1 北海道・札幌で断熱気密性能の低い家に住んでいて年間光熱費が30万円を超えている
2 省エネ、環境負荷の低減に取り組みたいが、根幹ともいえる住宅の性能に課題がある
3 家が寒い、結露、カビを解決するために省エネ性能の高い暖かい家に住みたい
4 脱衣所など寒い場所でのヒートショックを予防し家族の健康を守りたい
という方はもちろん、一歩進んで
5 光熱費の削減、さらには光熱費ゼロの住まい(ZEH・ネットゼロエネルギーハウス)に興味がある
6 消費エネルギーの自給(オフグリッド)を目指し化石エネルギーや原発に頼らない暮らしにしたい
7 災害時などの大停電でも家族を守る【省エネ+創エネ】の家を実現したい
8 家の性能を追求して、最新・高性能住宅に住みたい
という方にむけて、省エネ重視の暖かい家づくりを実現された方々をご紹介していきます。
「断熱等級7」の企画住宅・モデルハウス「DAN(ダン)」/協栄ハウス
板倉係長 断熱等級5の断熱性能と床暖房があれば暖かさは十分だと思います。床暖房は24時間稼働させるのが基本ですが等級5の断熱性能があれば、給湯器エコジョーズの7段階ある設定の中の一番低い設定温度で暖かく快適に過ごせます。
住まいは、断熱性能だけでなくデザインや設備、価格などのバランスが大切です。お客様のコスト負担を考え、バランスの良い断熱等級5を標準としてご提案してきました。もちろんより高性能な住宅をお求めの方には、断熱性能の高い家づくりもさせていただいております。
ですが、エネルギーコストの高騰や脱炭素化の流れを踏まえ、高断熱化の必要性は年々増しています。そこで、最高等級の断熱性能を規格住宅をご提案し、お客さまにさらに上の次元の暖かさをご体感いただこうと、今回のモデルハウスを企画しました。
断熱施工では、内側充填断熱にグラスウール40㎜とネオマフォーム50㎜、外側付加断熱にネオマフォーム100㎜、窓はトリプルサッシを採用しています。断熱性能を示すUA値は0.20w/㎡・Kの性能を実現しました。
板倉係長 当初は、等級7の断熱性能なので暖房設備を極力減らそうと、「エアコン1台」にする案もありました。ですが、協栄ハウスは床暖房の施工に習熟しており、性能・価格ともに他の暖房設備より優れた暖かさと設置コストでお客様に提案できるということで、今回も床暖房を標準としてご提案させていただいております。
住宅の断熱性能が極めて高くなると、わずかの暖房でも家は十分暖かくなります。このモデルハウスでは、暖房設定を最小にするだけでなく、10時頃から15時くらいまでは暖房を切ることで、暖かすぎる状態を回避しています。
23年1月も暖房はエアコン1台! 北広島市Y邸/リビングワーク
Yさんご夫婦の住宅づくりの大きなポイントは、エネルギーをムダにしないように、気密性と断熱性を高めることでした。そこで玄関ドアに選んだのが、YKK AP「イノベスト」。逃げる熱を大幅に減少させる超高断熱タイプです。
庭に面した南側の窓は、天井のすぐ下から床までの高さがある大開口スライディング窓です。窓の外部に縁側を造ることや、窓の開けやすさを考慮してYさんご夫妻が希望されたのが引き戸タイプにすることでした。
家が完成したあとにYさんが材料を買ってDIYした縁側(ベランダ)は、庭への出入りにも便利です。
一般的に、引き戸より開き窓の方が気密性は高くなりますが、リビングワークは気密性能が開き窓並みの高レベルを誇るトリプルガラス樹脂サッシを紹介。採用されたのが、「省エネ建材等級」で最高レベル、世界でもトップクラスの性能と言われるYKK APのAPW430シリーズでした。「軽く開け閉めできて、ピタッと吸い込まれるように閉まるんです」。奥さまも満足そうに話します。
奥さま エネルギーを効率的に使おうと、オール電化で給湯はエコキュートを選びました。光熱費は、23年の料金プランをエネとくスマートプランへ変更する前だったこともあり、さすがにピークの1月には5万円を超えましたが、2月分からは政府の補助が始まって、前の年よりも安くなり、3万円ちょっとで済みました。この金額は、暖房・給湯・一般電灯を含む光熱費すべてです。
エアコンは10月中旬頃から5月中旬頃まで常時暖房運転、夏の7月頃から9月初旬頃までは常時冷房運転していて、ON/OFFを繰り返すような使い方はしていません。
床暖房が効果を発揮する高い気密・断熱性 札幌市2ND STEP(セカンドステップ)モデル/協栄ハウス
取材当日、外は最高気温が氷点下という厳しい寒さでしたが、床暖房を入れている1階リビング床付近の室温は27.6℃。天井付近も27.9℃あり、測定時の温度はむしろ少し暖かすぎるくらいですが、足元と天井の温度差が非常に少ない点が特徴です。
こうした床暖房の効果が発揮できているのは、高い気密性・断熱性があってこそ。
協栄ハウスは、2006年に外壁に33センチの断熱材、木製三層ガラス窓、ヒートポンプシステムと熱交換換気など様々な省エネ技術を投入した「無暖房」への実験住宅に取り組んだり、省エネ・環境問題の延長線にあるZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)や、千歳科学技術大学と連携した室内環境の測定・検証など、住まいの省エネ・室内環境の改善などに住宅業界の中でも先進的に取り組んできた企業です。
リノベーションで暖かく快適な住宅を実現 網走市O邸/光輝建設
Oさんがリノベーションにあたって要望されたのは、それまで住んでいたアパートが寒かったことから、まずは“暖かい家”であること。そこで断熱施工は光輝建設の規格住宅『夢育の家』と同等の仕様を採用。外壁は柱の間に高性能グラスウール100mmを充てんし、その外側に高性能フェノールフォーム(ネオマフォーム)を外張りした付加断熱で、天井にはブローイング断熱材を400mm、床は高性能グラスウール150mmと現場発泡ウレタン30mmを施工しています。
もちろん断熱性能だけ高めても、気密性能が低ければ快適な暖かさを得ることはできません。そこで防湿・気密シートを新築同様に貼り直すとともに、壁の中を床下からの空気が通り抜けないよう、気流止めも施工。それによって気密性能を表す相当隙間面積=C値は0.5cm2/m2と、光輝建設の新築住宅と遜色ない数値を達成しました。
光熱費ができるだけかからない家に 斜里町田中邸 光輝建設
奥様が希望していたのは、「光熱費ができるだけかからない家にしたい」ということ。月々の住宅ローンの支払いや物価の上昇などを考えると、暖房費を始めとする光熱費は少なければ少ないほどいいのは、言うまでもありません。そしてそのためには、住宅に高い断熱・気密性能が必要になってきます。
ある日、田中さんがインターネットで住宅会社を探している時、目に留まったのが網走にある光輝建設のホームページ。そこに紹介されていたのは“4倍断熱の家”。外壁の断熱材の厚さが40cmと、一般的な住宅のほぼ4倍となる住まいです。
興味を持った田中さんは、話を聞いてみようと電話して事務所を訪問。光熱費はどれくらいかかるか、自分たちが好きなプラン・仕様で建てられるかといったことを聞き、応対した濱野学専務からの返答にも納得したことから、光輝建設に新築を頼むこととなりました。
お話しをうかがった2023年1月現在、田中さん一家は入居後2シーズン目の冬をを迎えていますが、光熱費に関して奥様は「おじいちゃんの家よりかかっていない」とのこと。入居して最初の冬の電気代はひと月3万円もかからず(2022年1〜3月)、同じオール電化住宅に暮らす回りの人が7万円、10万円などと話しているのを聞いて、光熱費がどれだけ少ないかを実感しているそうです。
省エネの家に8年住んで… 函館・ノースランドホーム
2012年に完成した函館のS邸。
Sさん オール電化なので暖房、照明、家電など全部が電気代に含まれますが、年間17万円程度です。以前はもっと安く済んでいましたが、子どもが成長するにつれ、家電の使用が増えてこの数字です。驚くほど安く家計も助かっています。8年前の家ですから、今、ノースランドホームが建てている家は断熱性能アップでもっと光熱費安いのかもしれませんね。
Sさん 当時はZEH(ネットゼロエネルギーハウス)という言葉もありませんでしたが、山野内社長は住宅の断熱・気密性能を高めて、太陽光で発電して、蓄電池や電気自動車に電力をためて、光熱費実質ゼロの家づくりを検討していました。
なのでこの家はある意味実験的な部分もあって、光熱費のデータ、太陽光発電の売電実績などを記録して山野内社長に報告していました。今、ノースランドホームが建てるZEH住宅はソーラーパネルを10KW近く搭載しているようですが、我が家は8年前の家なのでその半分くらいしか載せていないということを踏まえてみていただきたいのですが、
こんな実績になっています。ソーラーパネルを少なめにしか搭載していないので売電価格は物足りないかもしれませんが、光熱費(電気料金)が安いので、経済的にはとても楽です。太陽光発電の規模を倍にしていれば光熱費ゼロどころか、収入を生む家になっていたと思います。
Sさん 一階の床下に暖房機を設置しています。床下暖房なので室内には暖房機はありません。2階は暖房機もありませんが、リビングにある階段から2階の冷気が下りてくるという感じもありません。家じゅう暖かい断熱性能があるということだと思います。2階で寝ていても、寒くないので掛布団を思わずはだけてしまいます。
太陽光の売電価格が下がってくるので、蓄電池をいずれ設置することも必要かもしれません。日中は、太陽光発電の電力を使い、夜は蓄電池に貯めた電力を使えば、電力の自給に近づきますし災害時にも強くなりますよね。電気自動車を家の蓄電池がわりに使う件は、長距離の出張なども考えると、車自体の航続可能距離がもっと伸びてから、が現実的かもしれません。
2018年9月のブラックアウト(北海道全域の大停電)の際は、晴れていたのでテレビも見れましたしスマホやランタンの充電はできました。それだけでも大変助かりました。
高断熱&自家発電で家族を守る家 新得町S邸 赤坂建設
十勝・池田町の赤坂建設は、積雪寒冷地十勝の厳しい気候風土に対応するため、高断熱高気密住宅の研究、実践を続けてきました。近年では、木材の幅が、2×4(ツーバイフォー)材より約1.6倍厚い2×6(ツーバイシックス)材を使うことで、外壁の断熱材を従来の89ミリから140ミリ、更に付加断熱で強化することを提案しています。住宅の性能、デザイン、大きさ、価格など、全てにおいて建て主と話し合って決めていく自由設計の注文住宅なので、S邸でも断熱・気密性能も含め、建て主と相談して決めました。
S邸が完成したのは2019年12月。Sさんは「真冬に引越したので、最初の2日間は家全体がまだ冷えていて寒い感じがしましたが、それ以降、一度も家の中で寒さを感じたことはありません。暖房は自動運転で22℃前後に維持されています」と話してくれました。
なおS邸は2016年に十勝を襲った豪雨災害の経験も踏まえ「LPガス発電機による自家発電」設備も導入しています。
高断熱高気密住宅は、玄関や収納、お風呂など家じゅうの全ての部屋が均一な暖かさに保たれます。そのため涼しい場所が冷蔵庫の中だけしかなく、野菜や保存食、飲み物などを保管しやすい場所がありません。そこで、外気を直接取り入れて温度を下げることができる食品庫(パントリー)をキッチンの近くに設置すると大変便利です。十勝ワインも入っていました。食品庫内に温度センサーがついているので、適度に外気を取り入れて食品保存に適した温度を維持できます。保存食などをストックしやすいので、もし自然災害などが発生した場合も、あわてて買い出しに行く必要がなくなります。
UA値0.167Wの家 札幌市H邸 拓友建設
Hさん邸。トップランナーレベルの断熱性を確保するために、壁には合計で約300ミリの断熱材を施工しました。1階リビングには、床から高さ2mもある大開口のトリプルガラス入り樹脂サッシを取り付けたので室内は明るさ抜群。
「高断熱だから窓は小さい」そんなイメージと正反対なのは、窓も断熱性と気密性に優れた高性能品を採用しているからです。ただし、道路から室内が丸見えにならないよう、写真右側のようにフェンスを設けています。フェンスの内側は3人のお子さんが安心して遊べる中庭にしました。「冬の日中は、リビングに光が入ってとても暖かいんですよ」とご主人。「逆に夏は暑さを感じなくて、遊びに来た友人に『冷房を入れてるの?』と聞かれるほど。建てる前に説明を受けてはいましたが、日差しのコントロールはすごく重要なんだなと実感しました」
このHさん邸は、5ランクある札幌版次世代住宅基準で一番厳しいランクであるトップランナーの認定を取得しています。「トップランナー」は断熱性能が国の省エネ基準の2.5倍も高性能ですが、それだけ設計や施工が難しく、建築費用もかかります。札幌市は補助金を出して推進しようとしていますが、2019年度は3軒の募集に対して、申込があったのは1棟のみ。日本でもっとも厳しい公的な基準です。これをクリアすれば光熱費は大幅に下がり、維持費も安くなります。もちろん暖かくて快適な家になります。
完成したHさん邸はUA値(外皮平均熱貫流率)が0.167Wと国の省エネ基準よりも2.6倍高性能。相当隙間面積(C値)も0.21cm2/m2とトップランナー基準の0.5 cm2/m2以下を大幅に下回り、家じゅうのすき間を合わせても名刺大の半分というサイズです。
高断熱+ソーラー16k搭載 七飯町H邸 渋谷建設(函館)
七飯町のH邸は、太陽光発電のソーラーパネルが16キロも搭載されている片流れ屋根なので高い部分はほぼ2階分の高さがあります。大きな窓から日差しが入ってくるので、リビングはとても明るく、冬でも暖房を切ることもしばしば。トリプルLOW-Eの超高断熱サッシを採用しているので窓際がひんやりしないのも驚きでした。
断熱は外壁が105ミリ高性能グラスウールの外側にキューワンボード70ミリを施工。外皮平均熱貫流率(UA値)は0.22W/m2・Kと高断熱・高気密仕様です。
大きな窓から日差しが入ってくるので、リビングはとても明るく、冬でも暖房を切ることもしばしば。トリプルLOW-Eの超高断熱サッシを採用しているので窓際がひんやりしないのも驚きでした。断熱は外壁が105ミリ高性能グラスウールの外側にキューワンボード70ミリを施工。外皮平均熱貫流率(UA値)は0.22W/m2・Kと高断熱・高気密仕様です。
ご主人 2019年11月に引っ越して、冬も過ごしました。とにかく暖かくて快適です。
奥さま 冬の寒い日でも、リビングに日がさして、思わず暖房を切ってしまうほど暖かいですね。
ご主人 省エネで暖かい家、さらにZEHで太陽光発電ができるので、光熱費を発電でかなり賄えます。渋谷建設さんはこちらの要望をたくさん叶えてくれました。
VIVIDOでエコ&省エネ 十勝大樹町E邸 石井建設
2016年、大樹町内に平屋の注文住宅を建てたEさん。過去に大学で建築を学び、東京で現場監督の仕事を経験した経歴があります。十勝にUターン後、現在は町内で建築関係の業務に携わっています。
「以前住んでいた借家は築40年以上で、風呂場の床土間からツクシが生えてくるほど古く、隙間風も吹込みとにかく寒くて大変でした。妻も建築の知識があるし、子育て環境、家事動線など、理想の我が家を夫婦一緒に考え、図面を作成し、要望もあらかじめまとめて、それを実現してくれる住宅会社を探すことから開始しました」
暖房・給湯は、LPガスでお湯を沸かす際に出る高温の排気熱を捨てずに加温に使うエコジョーズを主熱源に、空気の中に含まれる熱を利用して電気で暖房するヒートポンプを併用するハイブリッド型給湯暖房システム「VIVIDO」(ヴィヴィッド)を採用。光熱費削減と環境負荷低減を目指しました。調理は料理を美味しく作りやすいLPガスを選びました。
Eさん 「気になっていたところは全て解消できてから着工出来たので我が家への満足度、達成感はとても高いです。ツーバイシックスの充填断熱に加え、付加断熱、トリプルサッシを採用するなど断熱性能にはこだわったのでサイクルコストは軽減できていると感じています。併せて、ハイブリッド給湯暖房の効果も感じていて、1月の光熱費は2万円くらいでした。夏、冬を通じて快適さは申し分なく、夏場の室温上昇も抑えられているので、エアコンも設置していません」
光熱費の安さに感激 札幌市K邸/ブレイン札幌
Kさんのお宅におじゃましたのは3月初旬のこと。まだまだ冬仕様で暖房を使っている時期です。
ブレイン札幌の住宅は高断熱・高気密に加え、全室遠赤外線床暖房が特徴。遠赤外線の輻射熱が反射を繰り返し、まるで陽だまりのような温かさが部屋中に行き渡ります。また、床下に敷設するアルミシートの反射効果で、送水温度が28℃~40℃以下と一般的な温水床暖房と比べるとかなりの省エネ設計。床からの伝導熱は足裏に快適な体感で、部屋ごとに温度差が出ない均一な暖かさも魅力です。
暖房は強さを「最弱」に設定。朝は5時~8時半、夜は16時~17時くらいから2時間ほどつけているだけで、上下階で様子をみながらつけたり、消したりして使っているそう。
10月に入居されてからの光熱費を見せてもらうと…
【K邸ガス料金(暖房・給湯・調理含む)】
10月 63m3 /8503円
11月 167m3/16391円
12月 194m3/18305円
1月 242m3/21693円
2月 224m3/20216円
※K邸床面積
1階床面積 /53.8m3
2階床面積 /48.0m3
延床面積 /101.8m3
この床暖房は基本的にメンテナンスフリー(循環不凍液は入れ替えが必要)で、室内に暖房器具を置かないので、家具のレイアウトも自由度が増します。
Kさん「賃貸の時と光熱費が変わらないことに驚きました」。
奥さま「賃貸時代は、リビングに灯油ストーブがあるだけで、別の部屋はとても寒く、リビング以外の部屋に行くのが苦痛なくらいでした。新居に来てからはどの部屋も暖かく、冷え性がなくなったのがとても嬉しいです」。
佐藤社長「これまで電気熱源での実績はありましたが、ガス熱源は2棟目で、どんな結果になるか不安でしたが、電力よりも効率が良いくらい。安心しました」。
ZEHの家でエコ生活 東川町K邸 藤井光雄工務店
取材にお邪魔したのは寒風吹きすさぶ2月でしたが、室内に一歩入ると暖かい空間でした。
テラコッタタイルの玄関土間の上には、25℃前後が生育適温ともいわれるメダカが鉢の中で元気に泳いでいました。
テラコッタタイルの玄関土間の上には、25℃前後が生育適温ともいわれるメダカが鉢の中で元気に泳いでいました。
厳冬期に玄関でも安心してメダカを飼えるのは、断熱仕様の玄関ドアに加え、外壁は高性能グラスウール16kg105mm(充填)+200mm(付加)=合計305mmミリもの超高断熱仕様で、玄関をはじめバスルーム、2階など、全ての部屋が暖かい住宅だからです。
また、K邸はZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)の家です。
前述の断熱性能に加え、太陽光発電は6.62Kw搭載。住宅の光熱費を太陽光発電でほぼまかなう住まいになっています。
冬場の光熱費は、ペレットストーブのペレットを3日に1袋使っているので月間7000円ほど。ガスはお風呂や調理などに使っていて1万円ほど。照明や家電、暖房費などの光熱費トータルは、多い月でも25000円以下で収まるそう。
夏場の光熱費は暖房費がかからないので1万円を切ることもあり、年間の光熱費は、ソーラーパネルで発電した電力は自家消費分に使うほか、年間約18万円ほどの売電収入があり、それでほぼまかなうことができます。快晴の日なら1日で1000円以上の売電収入がある日もあるそうです。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)は、住宅の断熱性能等を大幅に向上させ、高効率な設備システムも導入、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロになることを目指した住宅です。
ZEHは、国が省エネと地球環境保護の観点から推奨していて、住宅業界も、新築戸建て住宅に関して、2020年までにZEHを標準化させようとしています。北海道でZEHに対応するには、厳しい自然環境に対抗するために、断熱・気密性能がより高いレベルでなければならない上に、冬季の太陽光発電が積雪で稼働しにくい時期もあるなどの事情もあって、他の地域よりもZEHの普及率は低くなっています。しかし藤井光雄工務店は、住宅の光熱費、維持費を減らせる住宅がオーナーの将来的な経済的負担の削減、地球環境保護にもつながると考え、ZEHの家づくりを積極的に提案しています。
外が-28度でも暖かい!帯広市М邸 イゼンホーム
約8年前、同じ敷地内に息子さんが家を新築した際に、イゼンホームを紹介したのは親のMさんご夫妻でした。「じつは、その5年ぐらい前から私たちは帯広の住宅会社めぐりをしていたんです」。ハウスメーカーや工務店と、いろいろ回った中で奥さまが気に入ったのがイゼンホームでした。
「古い家の寒さに参っていましたから、まず住宅性能が大事。それに、イゼンホームの家は、中村さんが設計した女性ならではの優しさ、柔らかさが感じられるようなデザインがとても気に入りました。水回りの使い勝手を優先した動線も好みでしたね」
「中村さんが提案した床下暖房+パッシブ換気は、ストーブのように火が見えないので大丈夫かな、という気持ちが最初はありました」と話すMさん。
「でも、住んでみるとしっかり暖かい。それに、ストーブと違ってどこに行っても温度が同じなんだよね」。
取材で訪問した日は、まだ雪がちらつく寒さでしたが、「朝から暖房を切っているんですよ」と奥さまに言われて驚きました。中村さんが説明します。「床下のコンクリートに暖房熱が蓄えられていて、しかも無駄な熱が外に出ていきません。ですから、今の時期なら1日ぐらい暖房を切っていても大丈夫でしょうね」。
Mさん邸は、断熱仕様を一般的な家の約2倍に強化。イゼンホームさんの家としては標準的な仕様だそうですが、UA値は0.26Wと国が求める省エネ基準の0.46Wの2倍近い数値です。また、倉庫にソーラーパネルを設置していて、数年後の売電期間が終了したら、自家消費主体に切り替えるそうです。
もし、停電になっても高断熱仕様+自家発電でとても安心ですね。
「床下暖房ははじめてだったので、温度調整の仕方に最初戸惑いました。温度調整を高くしすぎたりしていたけど、3ヶ月目でようやく慣れました。熱源は、ハイブリッド給湯暖房ボイラーを使っていますが、慣れてからはガス代は月1万円程度で済んでいます」Mさん邸は平屋でも50坪ほどあるので、冬の暖房費でこの金額はちょっと驚きです。
大工に「暖かい家」を相談 札幌市 サンケイ建匠
暖房は2階と3階に設置したエアコンだけ。壁の中にエアコンの暖かい空気を循環させて、家全体の暖房を行う仕組み。
また、札幌市独自の省エネ住宅認定制度・札幌市次世代版住宅基準もクリアし、札幌市から建設費の一部補助を受けることができました。おかげで、真冬でも素足やTシャツで過ごせるほど暖かいのだそうです。
「中学時代の友人が大工なので、暖かい家にしたいと言ったら、サンケイ建匠さんを紹介してくれたんです。大工さんが『建ててる最中から暖かい』と言うなら間違いないかなと」とご主人。
Q1.0住宅で光熱費削減 芽室町K邸 水野建設
帯広の水野建設が加盟している地域工務店団体・新住協では、高断熱化と太陽エネルギーの利用、高効率設備の活用で、暖房などの光熱費を従来の半分に減らす「Q1.0運動」を十数年前から始めています。
標準仕様を従来の120mm断熱から200mm断熱に変え、トリプルガラス入りサッシの採用などで光熱費を大幅に低減。道産カラマツなど天然素材をたっぷり使う代わりに、ほんとうに必要な部屋の広さ、使い勝手をプロの目で見極めた企画住宅「プロトタイプ」を考え、家の面積を最小限に抑えました。性能面では、Q1.0住宅として光熱費を大幅に低減。住宅の性能や質が大幅に向上しながら、建築費用は従来の住宅並みに抑えることに成功しました。
昨年末に引っ越して約1ヵ月。「アパート暮らしの時は寒かったけど、この家はどこにいても暖かい」と言います。断熱の重要性は、水野建設のオープンハウスに行ったときにじっくり説明してもらって納得したとか。200mm断熱を採用して大正解だったようです。
南側の大きな窓からは、冬でも暖かい日射しが差し込みます。
「晴れた日は暖房がいらないと思うぐらいで、暖房費も思ったよりかからないし、ほんとうによかった」とKさん。
家の性能重視 北広島市Y邸 リビングワーク
Y邸の南側には、天井のすぐ下から床までの高さがある大きな窓が。トリプル樹脂サッシでも「省エネ建材等級」で最高レベル、世界でもトップクラスの性能と言われるYKK APのAPW430シリーズを採用しています。窓の外部に縁側を造ることや、窓の開けやすさから、Yさんが引き戸を希望。リビングワークさんから、気密性能が外開き並みの高レベルを誇る大開口スライディング窓を紹介され、採用を決めたそう。
断熱・気密には相当なこだわりを持っていたYさん。「なるべく、我が家から無駄なエネルギーを出したくないんです。そのためには、室内の熱を逃したくない、つまり断熱性と気密性はしっかりとしたいと思いました」。
暖房は、リビングワークさんがよく採用するエアコン1台だけ。「去年の3月、まだ雪が残る時期にリビングワークさんのオープンハウスへ行ったんですよ。そうしたら室内は暖かいのに、『いま、エアコンは切ってあるんです』と言われまして」。"エアコン1台で済むって本当かな?"と思っていたというYさんですが、ほかにもリビングワークさんの家を見て回るうちに、いけると確信したそうです。
断熱性能を表すUA値0.24(HEAT20 G2クリア)
気密性能を表すC値0.7
ZEH住宅で収入を生む家 北広島市S邸 キクザワ
カーポートの屋根と、建物の屋根には合わせて7.8KWという大容量太陽光パネルを設置。外壁はグラスウール(GW)に換算すると300㎜近い断熱厚にするなど、国の省エネ基準に対して2.5倍以上高断熱の佐久間邸です。
ZEH(=ZERO ENERGY HOUSE)とは、家で使う暖房、冷房、換気、調理などのエネルギーを家に付けた太陽光発電で全てまかなえる住宅のことです。実際は、夜や悪天候時は発電できませんので、電力会社から「買電」して電気を引いてますが、日中は家で使い切れない余剰電力を電力会社に「売電」しています。この「買電」よりも「売電」が上回れば、「お金を稼ぐ家」になるわけです。
もし、断熱厚が国の省エネ基準ぐらいの薄さだったら、家で使うエネルギーはたくさん必要です。ところが佐久間邸は、住宅の省エネレベルを国が細かく評価する「BELS」という制度で、省エネ基準住宅の約3分の1しかエネルギーを使わないという認定を受けました。
もともとエネルギーを使わない家なら、太陽光パネルの数も少なくて済みます。
それでも、この太陽光パネルの数は、多い方だそうです。
「キクザワの断熱性能であれば、吹き抜けをやめて窓も小さくすれば、もっと少ないパネル枚数でも十分にZEHになったと思います。ただ、暮らしの楽しさや生活しやすさを妥協したくありませんでした。このワガママのおかげで、キクザワらしいZEHモデルになったかなと思っています」(佐久間さん)
自らの家を実験台にキクザワの初めての試みにチャレンジする精神、佐久間さんの会社愛を深く感じます。
ご入居して約2ヵ月。実際に佐久間家の光熱費(買電)と売電記録を見せていただきました。
8月で見てみると、ガス(-4,568円)+使った電気(-6,303円)+売った電気(+24,156円)
合計は「13,283円の収入」です。冬は暖房費がかかるため、常にプラスではありませんが、1年間を通してゼロ円以下が十分達成できそうです。
断熱厚を厚くしたり、太陽光パネルを載せたりすると、普通の家よりもお値段は高くなりますが、太陽光発電の売電や、光熱費の大幅削減で、20年、30年と長い目で見れば「差額の分も元が取れてお釣りが来る」そうです。そして、国が目指している「地球に優しい上質な住まい」が完成する、と言う訳ですね。
断熱性能重視の暖かい家 幕別町 カントリーヴィレッジ
「以前は借家住まいで、結露も凄くて結露とりが毎日の日課でした。結露が凍ったり、カビも発生するので大変でした。寝室も寒く、寒さで目が覚めたこともあるほど。冬場の光熱費も大きな負担でした。実家も寒かったので、新居は暖かくて省エネの家にしたいというのが一番の願いでした」と奥様。
そこでT邸は、外壁は高性能グラスウール140ミリに加え、押出発泡ポリスチレン35ミリの付加断熱。小屋裏には500ミリのブローイングウール。サッシも断熱性能を高めるためトリプルガラス(南面は日射取得を優先してペアガラス)。UA値(外皮平均熱貫流率)で0.3W/m2Kと高気密高断熱仕様にしました。設計・施工を担当したカントリーヴィレッジは十勝2×4協会の会員で、大工の施工力をフレーミング検定で技術員からチェックされるほか、定期的な気密測定も義務づけられています。断熱仕様の高さだけでなく、施工精度の高さも住宅性能の裏付けになっています。
この日も外は厳しい寒さでしたが、リビングにこんなに大きな窓と吹き抜け空間を設けても、全く寒さを感じません。むしろ、姉弟で仲良く遊んでいると、真冬ですが汗をかくほどです。
「冬なのに、暖房なしで日中リビングに居ても全く寒くないですね。外もよく見えるので開放感も十分です」とご主人。
奥様は「家を建てた方の話を伺うと、新居でも思った以上に寒くて光熱費がかかるという話も聞きますが、この家は本当に暖かくてキッチンもお風呂も、家全体がどこも暖かくて驚いています。寒さや結露の悩みが解消して、暖房の設定温度を下げても大丈夫でした。良かった・・・ほんとうに良かった。カントリーヴィレッジさんのお陰です」と話してくれました。
ラディアント・サーキュレーション・システムを利用した冷暖房の家 石狩市 シノザキ建築事務所
断熱・気密が高く、冬暖かいのはもちろん、自然の恵みを利用した夏も涼しく快適なエコハウスがあります。
札幌・シノザキ建築事務所が取り組む、「環境に配慮した冷暖房システム」「居心地の良い室内環境」「地下水を利用した快適なエコハウス」という3つのコンセプトを組み合わせた家づくりを追った連載シリーズです。併せてご覧ください。
耐震・断熱改修工事で快適に住み継ぐ家 札幌市 瀧本ホーム
マイホームは新築という選択肢だけではありません。自分が育った愛着のある実家を住み継ぎ、リフォームやリノベーションを選択される方も多くいます。今回ご紹介する札幌市西区のSさんもその一人です。
Sさん 30年の間に、屋根と外壁の塗り直しを一度やっていますが、ここ数年はモルタル外壁の塗装劣化(チョーキングや浮き)、クラックや剥離などがひどくなっていました。
羽アリが出ている場所があったので、柱が腐っているかもしれないという心配も。何より、すき間風が入って、とても寒い。そんな訳で、改修は必然でした。
夫婦2人とも60代を超えているので、今さら新築するという考えには及ばず、数十年を快適に過ごせればいいという思いから、外壁と屋根の張替えに加え、断熱改修をしっかりやろうと決断しました。
50坪近い住宅の断熱改修ともなると、費用も大きくなります。そんな大工事になるなら、信頼できる知り合いに任せたいと考え、旧知の中で信頼のおける友人だった瀧本さんに依頼しました。
参考記事
今回は、建て主さんと住宅会社が、真剣に住宅の省エネ性能や暖かさなどに取り組んだ事例を中心にご紹介しました。
現代でも、新築住宅はどれも省エネで暖かい・・・とは言い切れないという現実があります。
北海道の住宅会社の中でも、断熱気密に関する意識、施工技術、知識、経験はかなり違いがあります。これまで、どのような取り組みがなされて今があるか・・・ 住宅の高断熱高気密総まとめ ももしよければご覧ください。
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