マイホームを建てようと札幌市内に土地を購入したHさん。それまでは賃貸住まいで、ストーブのある部屋以外は寒さを我慢していたご家族が望んだのは「絶対に寒くない家!」でした。
ご夫妻の願い通り、室内すべてが暖かい住まいが完成。新築後に生まれた3人目のお子さんは、足を放り出して床に座ってもまったくの寒さ知らず。
目次
日本でも一番厳しい!?札幌版次世代住宅基準の「トップランナー」をクリア!
しかも、このHさん邸は、5ランクある札幌版次世代住宅基準で一番厳しいランクであるトップランナーの認定を取得しています。
「トップランナー」は断熱性能が国の省エネ基準の2.5倍も高性能ですが、それだけ設計や施工が難しく、建築費用もかかります。札幌市は補助金を出して推進しようとしていますが、2019年度は3軒の募集に対して、申込があったのは1棟のみ。日本でもっとも厳しい公的な基準です。これをクリアすれば光熱費は大幅に下がり、維持費も安くなります。もちろん暖かくて快適な家になります。
日差しを効果的にコントロールする家
シンプルで端正なたたずまいのHさん邸。トップランナーレベルの断熱性を確保するために、壁には合計で約300ミリの断熱材を施工しました。1階リビングには、床から高さ2mもある大開口のトリプルガラス入り樹脂サッシを取り付けたので室内は明るさ抜群。
「高断熱だから窓は小さい」そんなイメージと正反対なのは、窓も断熱性と気密性に優れた高性能品を採用しているからです。ただし、道路から室内が丸見えにならないよう、写真右側のようにフェンスを設けています。フェンスの内側は3人のお子さんが安心して遊べる中庭にしました。
外壁から軒天まで連なった道南杉の羽目板は、庇(ひさし)部分の美しいカーブが魅力的。庇の出っ張り部分は約120cmもあります。そのおかげで、太陽が高い角度にある夏は、窓からの日差しが庇にさえぎられるため室内は涼しくなります。逆に太陽の角度が低くなる冬は、日差しがそのまま室内に入り、太陽熱を効率良く採り込むことができます。デザインと機能性を両立させた設計です。
「冬の日中は、リビングに光が入ってとても暖かいんですよ」とご主人。「逆に夏は暑さを感じなくて、遊びに来た友人に『冷房を入れてるの?』と聞かれるほど。建てる前に説明を受けてはいましたが、日差しのコントロールはすごく重要なんだなと実感しました」
国内トップクラスの断熱性能と開放的なテラス窓を両立
中庭に出入りできるリビングルームの窓。Hさんご夫妻の希望で、可能な限りの大きさを実現しました。
Hさん邸の施工を手掛けたのは、早くから省エネ基準を大幅に上回る高断熱・高気密の高性能住宅を手がけてきた拓友建設。設計は、ホリゾンアーキテクツの一原寿寛(いちはら・としひろ)さんです。
「家の断熱性を高めるためには、正直に言えばすべての窓を小さくするのが手っ取り早いんです」と妻沼社長は語ります。
「でも、それでは肝心の住み心地が悪くなってしまう。当社が設計事務所とタッグを組むのは、お客さまに合ったデザイン性と快適性を両立させた満足度の高い家をつくるためです」。
そのために、妻沼社長はオーナーさんと建築家を“お見合い”させる“仲人”としての役割も担っています。
「プランニングで良いおつきあいができれば、オーナーさんが住んでからの満足度もやはり高いんですよね。ですから、最初は“このオーナーさんはどの設計事務所と相性が合うだろうか”と、考えながらお話しをしています」
教会やクリニックなど様々な建物の設計を手掛けてきた一原さんは、建て主との対話や要望を大切にするスタンス。それは、妻沼社長のポリシーとも共通しています。「住んでから後悔はしたくないので、本当にたくさんの相談やリクエストをしました」と話すHさんご夫妻。希望や相談に寄り添いながらとことん対応してくれる一原さんと妻沼社長には絶大な信頼を置いていたといいます。
納得のいくプラン図面に至るまで10回書き直すほどでしたが、「私はあまりスタイルを決めずに、お客さまとの会話から設計を始めていくタイプなので、どういった建物ができるかという面白さがありますね」と一原さん。Hさんご夫妻とすべてにわたって綿密に話し合い、納得できる家づくりができたことが快適に暮らせる家につながって良かったと話します。
吹き抜けはいらない、『私たち』仕様の家づくり
足ざわりの柔らかなカバ材のフローリングを使ったリビングルーム。小さなお子さんたちがのびのびと過ごせるように、また掃除がしやすいようにと室内はシンプルに。その分、隠せる収納を要所に設けています。
最初のプランで提案された吹き抜けは不要と伝え、1枚の窓の位置やサイズも一原さんと話し合いました。階段にも光が行き届くよう効果的に窓を設けています。建築模型も作ってもらい空間を確認したり、ライトで照らすなどして光の当たり方もチェックしました。
プライバシーを確保したい部分にはすりガラスを採用。建物の対面する位置の窓を開ければ風の通り道ができ、肌に触れる自然の心地よさが感じられます。
1階にはLDKにつながる和のスペースもつくりました。今はカーペットを敷いてキッズルームに。将来は個室にできるように、LDKとの境界に引戸用のレール(写真下側)を設けました。
2階にはウォークインクローゼットを備えた寝室と2つの個室を設けました。「私にとっては、吹き抜けの開放感よりも、2階の寝室で静かに過ごしたいという気持ちが大きかったんです」という奥さまのリクエストに、主寝室の壁には遮音効果のある断熱材で囲み、さらに遮音タイプのドアを採用しました。「おかげで静かに眠れています」と奥さまも笑顔に。
完成前に思い切ってキッチン移動をリクエスト
「私たち、完成ギリギリ前になって無理にお願いしたことがあるんです」と奥さまが話します。それは、キッチンカウンターとダイニングテーブルの位置を入れ替えたこと。
キッチンはユーティリティーに近いほうが動きやすく便利だからと、当初プランではキッチンカウンターをユーティリティー側に寄せ、リビングも見渡せる位置にしていました。ダイニングテーブルは、階段の前という位置でした。しかし、完成に近づく現場を見たとき、「ここ狭くない?」とHさんは感じました。
階段がダイニングテーブルのチェアのすぐ後ろになるためその間が通りにくい。そのことは、プラン時に一原さんから伝えられて、納得の上でゴーサインを出していましたが、「完成直前になってこんなことを言うなんて、と夫婦で悩みました」。
「でも、一生後悔することになるよりは」と思い切って変更できるかどうか聞いてみました。「それまでも、一原さんや妻沼社長がダメと言うときは、本当に手を尽くしてくれた結果、ダメと答えるのが分かっていました。だから、言わないで後悔するよりは、言って『ダメだったよ』と言われるほうが納得できると夫婦で決心したんです」
結果は、ご夫妻の願い通りに。
「言ってもらってよかったですよね」と一原さんと妻沼社長はうなずきます。
「図面上じゃなくて、建ってみないとイメージできない部分もありますから。タイミングが大丈夫であれば、我が社もできることはやりますと妻沼社長。
一原さんも、「オーナーさんにとって使いづらい部分があると、その先はずっと我慢する生活になって無理をしてしまう。そういった部分をなくしていくのが私の仕事でもありますから、Hさんご夫妻が気づいて決断されたのは本当に良かったと思っています」。
キッチンと水回りが少し離れたことに対しては「ストレスは感じません。洗濯、物干し、たたんで棚にしまう作業が一カ所で完結しているので何度も行き来する必要がないし、それほど離れているわけでもないので」。
マイホームはプランニングから楽しみたい!
Hさん邸は、最初からトップランナーの超高性能を目指していたわけではありません。冒頭にあるように、お二人が望んでいたのは「寒さのストレスが無い家」でした。そこに、拓友建設の妻沼社長からの提案でトップランナーの家をつくることになったそうです。
それ以前にも、たくさんのモデルハウスや住宅を見て回ったご夫妻でしたが、注文住宅なのに制約がある会社ばかりで疑問を感じていました。良いと思う会社に巡りあえず次第に疲れを感じてきたお二人、要望があまり通らないと感じたものの、「こんなもんかな」と、ある住宅会社に決めようとしましたが、設計担当との「打ち合わせでストレスを感じるようなところはイヤ」と、奥さまがネットで検索して探し当てたのが拓友建設だったそうです。
「もう、これで最後にしよう」と決めて電話をかけ、妻沼社長から会社のこだわりや家づくりの話を聞いてはじめて共感を覚えたというお二人。その日のうちに見学した住宅は、札幌版次世代住宅基準のトップランナーの次に高性能なハイレベル仕様。「外は雪が積もっているのに暖かい!」「木のデザインも素敵!」とすっかり気に入ってしまいました。「このような家がつくれる拓友建設さんなら、建てる側の希望を聞いてもらえるし、暖かいマイホームがつくれると思いました」
Hさんご夫妻が感謝しているのは、プラン変更で図面を書き直すたびに見積もり金額も出してくれることでした。一原さんが変更プランを作成するとすぐに拓友建設さんが修正見積を出すという流れで「どれぐらい金額が上がるのか比較できますし、欲しいものが本当に必要かどうかを、予算面からも絞り込めました」といいます。
「プラン提案の段階から、きちんと細かく計算して提案します」と妻沼社長。
光熱費の見込みについても、拓友建設はこれまでの建てたオーナー様にも協力してもらい、住宅性能や床面積の広さによってだいたいどれくらい光熱費がかかるかを把握しており、それらの実績データを元に光熱費シミュレーションを作成して、説明しているそうです。
超高気密!家のすき間は名刺の半分サイズ
拓友建設では、札幌版次世代住宅基準のハイレベル相当を標準仕様として提案しています。性能だけなら、実現できる大手ハウスメーカーはあります。しかし、これだけの性能を標準仕様とし、設計事務所とのコラボでデザインもプランも自由にできる住宅会社は、札幌市内ではまずありません。
またハイレベル住宅では、断熱性を高めるだけでなく、家のすき間を極力少なくする気密性の向上がとても重要になってきます。
拓友建設では技能に優れた専属大工が施工するのはもちろん、妻沼社長が施工図上に気密層のラインを赤で示すなど大工に注意点を伝えるほか、作業の要所ごとに現場チェックも行っているそうです。
また、壁に穴を開ける作業工程のある電気工事会社や設備工事会社が現場に入るときには、気密性を損なわないために施工上の注意を直接伝えることも欠かしません。「現場で気密性を保つ上で施工の甘い箇所を見つけたら、すぐに電話して直してもらいます」。Hさん邸では、このような注意喚起やチェックの回数を増やすことで気密性をいっそう高めました。
完成したHさん邸はUA値(外皮平均熱貫流率)が0.167Wと国の省エネ基準よりも2.6倍高性能。相当隙間面積(C値)も0.21cm2/m2とトップランナー基準の0.5 cm2/m2以下を大幅に下回り、家じゅうのすき間を合わせても名刺大の半分というサイズです。「寒冷地住宅の特性を知り尽くした拓友建設さんとタッグを組ませていただいて、私も非常に勉強になりました」と一原さん。「大工さんや業者さんの間に妻沼社長がしっかりと入ったおかげで、完成度の高い住宅が出来たと思います」
暮らしはじめて1年近くになるHさんファミリーですが、「一原さんと妻沼社長がここまで私たちに寄り添ってくれたおかげで、すべてを納得するまで決めることができました。打ち合わせの間も楽しかったし、暮らしていても本当にストレスフリーの家です」お二人で、そう話してくれました。
記者の目
家づくりの要望に設計でこたえる建築家の一原寿寛さん、コスト計算と調整、施工は拓友建設さんと、お互いの能力を生かし合って密にタッグを組んだことが、国内でもトップレベルの断熱・気密性能を持つ家の完成、そしてHさんご夫妻が話す“我が家仕様”の満足感に表れていました。当初の予算からほぼ変わらずに済んだというのも大きなポイントです。
2019年11月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。