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【前編】自然に優しい冷暖房システムの家 札幌・シノザキ建築事務所


シノザキ建築事務所が取り組むエコハウスへの新たな挑戦とは

内外装ともに自然素材を使った、人にも自然にもやさしい住まいづくりで人気のシノザキ建築事務所(札幌市西区)。過去たくさんのお客様に携わってきた設計経験から得たプランニングに関する豊富なノウハウや、標準でC値※0.3(cm2/m2)以下を出す高い住宅性能、洗練されたインテリアコーディネートなどで、高い評価を得ています。


【シノザキ建築事務所HPより】


2020年には新たな冷暖房システム「ラディアント・サーキュレーション・システム(RCS特許申請中)を採用した、これまで以上にエコで省エネな住宅を発表しました。

2021年春、「環境に配慮した冷暖房システム」「居心地の良い室内環境」「地下水を利用した快適なエコハウス」という3つのコンセプトを組み合わせた注目の住宅を建設中と聞き、この挑戦を詳しく知ろうと、代表の篠崎廣和社長に現場でお話を伺いました。

※相当隙間面積。建物の気密性の指標で、数値が小さいほど優れている。札幌版次世代省エネ基準の最上位・トップランナーとハイレベルがC値0.5(㎝2/m2)以下。


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大工さんの休憩の合間にお邪魔した現場は、外装はほぼ完成したものの、内部はまだ床の構造用合板が貼られたままで、クロス貼りもこれから、という段階。「住宅の構造や機能をご説明するには、こうした施工途中の様子を見てもらいたいと思いまして」と篠崎社長。

提唱している「3LOWの家づくり」とは?

できる限りの低エネルギー、低CO2な暮らしを、低コストで実現できるのが「3LOWの家づくり」です。輸送コストをかけて運んだ大量のエネルギー資源を使う暮らしから脱却し、太陽光や地熱、薪など、身近な場所にあるエネルギーを自然から分けてもらって出来ることを考えました。



「ラディアント・サーキュレーション」はどんな仕組みなのでしょう?

涼しい、暖かいという人間の感覚に直接働きかける輻射熱を加えた空気を家中に巡らせ、家そのものを大量の空気を動かす装置として設計したのがラディアント・サーキュレーション住宅です。

夏には床下土間のひんやりとした涼しさを、冬には薪ストーブの暖かさを、家全体に効率よく広げ、家中で感じたい。そんな着眼点から開発が始まりました。冷暖房エネルギーには、雑木を伐採した時に出るや、夏には外気温よりも低くなる地熱を使い、地産地消で循環型のエネルギーを活用します。

床下の冷気を循環させる冷房(涼房)


【図版1・冷房(涼房)の仕組み】


冷房は、夏でも18~20度に保たれる床下の冷気を、省電力のDCモーターファン2台を使って風道を通して2階天井近くまで一気に上昇させ、家全体に循環させます(弱運転で1台3w、使用頻度の高い強運転で4.8wほど)。人が快適に過ごせる25~28度のちょうどよい室温が省電力で叶う、特許申請中の技術です。



左/こちらはキッチン横のユーティリティー。コーナーに見えている円筒は床下の冷気を引き上げるダクト。
右/写真は熱反射に優れた高反射輻射熱シート。ダクトはボード系断熱材の高断熱フェノールフォームで囲い、高反射輻射熱シートを内部に貼った四角い筒(風道)の中に納まります。



DCモーターファンでダクトに送り込まれた床下の冷気は、2階の高い位置に設けたガラリから室内に供給されます。冷たい空気は下降する性質があるため、自然と冷気は階下まで行き渡ります(図版1を参照)。


【2階天井近くまで伸びるダクト】


薪ストーブの輻射熱で家全体を暖める暖房


【図版2・暖房の仕組み】


暖房は1台の薪ストーブなどが発する大量の輻射熱と自然体流を利用して、家全体に暖かい空気を循環させ、輻射と対流でじんわりと快適な暖かさを得ることができるのです。(輻射熱は人体も含めた物体の内部まで熱を浸透させる効果がある)



左/ペレットストーブを設置する吹き抜け上部の壁には、暖気の通り道となる開口部を作っています。
右/ペレットストーブの煙突を通す穴の開いた吹き抜け壁。



写真は2階。室内には空気の通り道となる開口部が至るところに設けられています。暖気はこうした開口部を通じて2階の各部屋へ行き渡ります。



2階に上がってきた暖気は、室内壁に設けたガラリを通って2つのDCモーターファンで、さきほどの風道に送り込まれ、一気に床下まで下降。床下にも暖気が巡り、さらにその空気は床面のガラリや土間まわりのスリットを通って再び室内に入ってくるという仕組みです(図版2を参照)。



風道を囲う高反射輻射熱シートによって、床下まで輻射を繰り返しながら暖気が下降するのです。


【篠崎社長 シノザキ建築事務所HPより】


人の暮らしは地球のあらゆる場所につながっており、一部の人だけが快適を享受する時代は終わりにしたい。

この家は、身近な自然の恵みを最大限活用し、3LOWを追求、プランを規格化することで、住宅品質を保ちながらもライフサイクルコスト(LCC)低減に成功しています。この家に住むだけで、無駄なく、健やかな暮らしが実現するのです。


【完成した第2棟目外観】


緻密な計算によって設けた開口部や空間デザインと、風道、電動モーターファンによって、家全体が空気の循環装置となるラディアント・サーキュレーション住宅。

エコで省エネなこの取り組みは、SDGs(持続可能な開発目標)にもかなっており、これからの時代にぴったりだと感じました。

なお、この住宅は「プラン決定型の提案型住宅」で、今年の7月にはその3棟目が着工する予定です。

中編 木の温もりと居心地の良い空間づくり では、完成した住宅を詳しくレポートします。併せてご覧ください!


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2021年06月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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