※このコラムは、新住協研修会から北海道へ戻る飛行機内でつくり、4ヵ月お蔵入りしていました。記載に変化もありますが補足にとどめて公開します!また、このコラムだけで3,000字近く、後編の「建築見て歩き」もあわせると5,000字を超える大作ですので、忙しい方はスルー推奨_(._.)_ by 白井康永
2024年10月2日から5日まで、『新住協』という住宅性能の向上を目指す民間の研究機関の全国総会・研修会に出席してきました。この団体と弊社および白井の関係を書き始めると、それだけでブログが終わってしまいます。が、きわめて簡単に説明してみます。
北海道住宅新聞社は新住協設立時の事務局を務め、ボクはいま、理事を拝命しております。
昨年の総会で代表理事が鎌田紀彦先生から久保田淳哉さんに交代しました。ボクの理事としての役割は、「メディアとして新住協に意見してほしい」というオモテの理由と、久保田さんの体制を支えてほしいという理由があると勝手に理解しております。
今年の総会開催地は、四国・香川県の琴平町。金比羅さんで有名な町ですが、ボクら北海道の人間にとってはそうそう行く機会がありません。その意味で、旅の行程をどう組むか、いろいろシミュレーションしました。
初日の10月2日(水)は、新千歳空港から神戸空港へ。そこから新幹線で岡山、さらに在来線で瀬戸大橋を渡り、四国・丸亀市に入って理事会でした。
6月末以来、およそ3ヵ月ぶりの理事メンバー集合です。新参者の白井は少し慣れてきました。
主議題は、翌日の総会議案です。そのほかにいろいろな話が出るのが理事会の勉強になるところで、今回は2025年4月以降の断熱リフォームについて、現状とこの先について心配の声が上がりました。この問題については白井も思いきりコミットしているので、理事会の議論を踏まえ、総会後の時間を利用して、北海道エリア理事3人(須藤建設・須藤さん、ホーム創建・阿部さん)で新たに取り組むことにしました。動きがあれば報告します!! 〈補足〉動きがありました。

うどんとラーメンがひとつの丼に共存する「ハーフ」。これが案外アリでした @つるや
理事会終了後は、いつものように懇親会が開かれます。ここでは総会の準備に奔走してくれた中四国支部のメンバーも加わり、家づくりの話や地域の話で大いに盛り上がりました。中四国支部は、島根・鳥取の裏日本、広島・岡山の山陽地区、四国全島というなかなか広範囲に及びます。島根から参加の「シジミ社長」こと勝部宏さんとは、はじめてリアルでお目にかかりました。シジミさんとダイシンビルド・清水さんとの掛け合いは、ボクら北海道人からしたらほとんど漫才でした。
せっかく丸亀に来たからということで、二次会には、骨付き鶏で有名な「一鶴(いっかく)」に寄らせてもらいました。塩コショーで味付けした骨付き鶏は、お酒の肴として最高です。ボクは岡山に住む叔父からいただく機会が多いですが、本場のお味は格別でした。
一鶴はこちら

翌日、10月3日(木)が本番の総会と全国研修会です。
地元の山の木を使ったムク柱・梁での家づくり、四寸材がウッドショックで使いにくくなっている現状、北海道よりかなり強い紫外線のためか透湿・防水シートには白のタイベックよりもシルバーや他素材を選ぶ有力工務店が少なくないこと、などを、会場までの車中で聞きました。
総会は、久保田さんが代表に就任したことから、議事進行と議案説明者がいままでと変更になり、久保田さんが議長を務めました。
その後の研修会は、トップバッターが鎌田先生。先生は昨年末から今年7月まで、全国10数会場を回って超省エネ・高断熱住宅「Q1.0住宅レベル3,4」を全棟クリアするための手法セミナーを実施。そのなかで、施工法の改良によるコストダウンとともに、プランニングによる価格のブレイクスルーが必要であると強く感じたそう。不肖、白井もまったく同じ考えでございます。
先生の発表のあとは、四国などの会員が、夏対策の住宅づくりを紹介しました。懇親会やそのあとの二次会でもお話を聞かせてもらいましたが、ボクも感じたルームエアコンを最適制御して運転することの難しさを、中四国の皆さんも当然感じていて、いろいろな方法を試していることがわかりました。
制御が難しいからいろいろな方法を試す、という点が、じつはすごく大切な部分です。北海道から見ているといろいろな方法を試す理由がわからないから、「なんでそんなにリスキーなことをいろいろやるんだろう?」と思うのですが、その理由は制御が難しいからなんですね。今回はかなり勉強になりました。青森県・十和田市在住の理事・平野さん(平野商事)とは「最近の夏の暑さのせいで真剣に聞けたよね」と話しました。
総会終了後は懇親会。畳敷きの会場での250人を超える大宴会は本当に久しぶりだと思います。圧巻でした。
そして二次会へ。ここでは北海道組といっしょでした。親子で参加している須藤さん、常務という役職を背負い初参加の武部さん(武部建設)に対し、息子を後継ぎに据えたい人が、そのノウハウを聞き出すという、いかにも二次会的ないい話を聞くことができました。まあボクも二代目なのですが、なにせ大学進学後に父が脱サラしたという遅いデビューだったため、彼らのように王道でバトンを引き継いだわけではありませんでした。
10月4日(金)は、見学が組まれていました。大型バス3台!! ボクら東北・北海道グループは最も早い朝8時30分の出発で、11時30分まで木製窓「佐藤の窓」工場とモデルハウス、そして断熱リノベーションの工事中現場を見学しました。
木製窓は40年近く前から北欧やドイツの技術を導入して北海道などでも作られてきました。ただ、ビジネス的にはなかなか成功しにくい分野でもあります。そういう状況の中で、事業再構築補助金を得て木製窓ビジネスに挑戦している佐藤大治社長に、心から敬意を表します。
この40年間の進歩とは何か。ひとつはガラスの性能向上です。同じトリプルガラス(3層ガラス)でも、性能は大きく向上しており、いまや9cm厚のグラスウール壁に匹敵するほどの性能があります。
ただ、木フレームの性能は、そうそうアップしません。そこで「佐藤の窓」は、木製窓の木のフレームが断熱材で被覆されることを前提とした納まりでサッシを作ることを考えました。断熱上の弱点となる木フレームは付加断熱材で覆われるため、熱性能が大幅に向上します。加えて木部の露出がなくなるので、耐候性が高まります。
もちろんいいことだけではなく、付加断熱材の外装をどうするかという問題もあります。それでも、新しい視点を持ったサッシは可能性を秘めています。
断熱リノベーションの現場は、目からうろこでした。外装材はそのまま、室内側に断熱材を付加しているのです。いま、いろんな理由で外側に断熱を付加する方法がとりにくくなっており、『やっぱり内側か』と考えさせられました。
断熱リフォームの場合、新築と違って「このやり方」という一通りではなく、いくつかの方法を準備しておく必要があります。その上で、家の状況によって適用する最適な断熱改修方法を選ぶのです。ただ、それは大工さんのスキルとともに断熱設計者の高いスキルも求められます。そうそう誰もができるものではありません。
大いに勉強になりました。中四国支部の皆さん、本当にお世話になりました。
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四国・金比羅、岡山・備中松山&高梁市の建築見て歩き
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