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勾配天井が生み出す開放感・性能も重視した24坪平屋住宅 札幌市北区


シノザキ建築事務所が大切にしているのは、家族が幸せに暮らす“しくみをデザイン”することです。“耐震や機能面などの住宅性能”を重視したご主人と、“スムーズな家事動線”を希望した奥さま。夫婦のこだわりを叶えてくれたのがシノザキ建築事務所でした。Tさん一家の新居を訪ねました。

理想の家を知るために、まずは住宅の勉強からスタート

Tさんは、直前まで家族3人で、ご両親が残したご主人の生家に暮らしていました。もうすぐ3歳になる娘さんが通う幼稚園も近く、子育てしやすい環境が気に入っており、実家の建て替えを考えるようになったそうです。

ご主人 家づくりを考え始めた当初は、5カ月くらいかけて「いえズーム」やネット動画のルームツアーを見たり、住宅に関する本を読んだりして勉強しました。私が重視していたのは、耐震や気密・断熱などの性能面です。壁量計算ではなく、構造計算によって裏付けのある家づくりをしている会社を探していたので、条件を満たす会社でなければ話を聞きに行くつもりはありませんでした。



T邸は、構造計算による耐震等級3。国の基準よりもさらに高い耐震性が確保されています。

奥さま 私は生活しやすい家事動線の家にしたかったので、ネットでさまざまな実例を見て、真似したいアイデアを探していました。例えば、「帰宅してすぐに食材が片付けられるように、冷蔵庫置き場は玄関の近くに」「階段掃除が必要ない平屋建て」「帰宅してからどこにも手を触れずに洗面所まで行ける動線」のように、間取りや使い勝手のよさを重視していました。性能重視の主人に「この会社はどう?」と訊ねても、却下されるばかり。でも、いえズーム(iezoom)で見たシノザキ建築事務所は、ふたりとも話を聞いてみたいと思える会社だったんです。



玄関を入ると斜め正面にキッチンがあり、買った食材を、すぐに冷蔵庫にしまえる距離感が魅力。玄関土間に造作したスノコのおかげで、宅配が届いた際も靴を履かずに玄関扉が開けられます。

東日本大震災を東北で経験されたご主人にとって、丈夫な家であることは最優先事項だったといいます。家づくりの相談ができる「しのカフェ」に足を運び、住宅見学会に参加する中でT夫妻の印象に残ったのは、それぞれの家から“家族らしさ”が感じられたこと。篠崎社長なら自分たちらしい家を造ってくれると確信し、家づくりを託したそうです。

コンパクトなのに伸びやか!ライフスタイルの変化に対応するフレキシブルな造りも魅力


玄関ホールから繋がるLDK。左手前からキッチン・ダイニング、右手前からタタミコーナー、リビングが配置されている。


室内に入って驚くのは、延べ床面積が24.87坪とは感じられない空間の広がりです。秘密は、勾配天井が創り出す天井高と、ゆるやかに繋がるゾーニング、回遊式の間取りにあります。また、寝室や子ども部屋には造作棚やクローゼットを設けずに、将来的に部屋の用途を変えたり、ロフトを造ったり、部屋を分けられる“可能性”を残した設計にしました。



クリナップ製のキッチンにミーレ社のビルトイン食洗機を付けた、おしゃれなキッチン。



タタミコーナーは、キッチンの目の前。子どもを見守りながら、食事の準備ができます。



スキップダウンフロアになったリビング。



座面の高さや奥行きをT夫妻の希望に合わせたL字型の造作ソファは、ゲーム機器を収納できるサイドテーブル付きです。



キッチンやタタミコーナーの腰壁は、道産シラカバ間伐材で作るエコシラ合板を採用。



リビングの大きな窓からは庭の緑が楽しめます。スキップ階段には、手すりを造作する気遣いも。



屋久島地杉の床に、澪工房のダイニングセットがよく似合います。



ダイニングから出入りできる子ども部屋は、壁で仕切れば2部屋に出来る造りです。



子ども部屋に隣接する寝室は、朝日が差し込むように、窓をL字に取り付けています。篠崎社長が現場の状況を見て、提案したアイデアです。

エコな冷暖房システムに太陽光発電と蓄電池もプラス


天井近くに設置された3つのDCモーターファンが空気の流れをつくり出す。壁の内部に風道がある。


T邸には、シノザキ建築事務所が特許を取った「ラディアント・サーキュレーション・システム」が導入されています。



室内に新鮮な外気を採りこみ、「風道」を使って家全体に適温の空気を巡らせる、エコで省エネな冷暖房システムです。
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また、屋根には最大出力9.79 kWの太陽光発電モジュールが設置されており、パワーコンディショナーと約7kWh蓄電池によって、自宅で使用する電気を賄えることも、T邸の大きな特長のひとつです。蓄電池は、大地震など災害時の備えにもなります。

夫婦それぞれの希望を伝えて、優先順位を明確にしながらプランづくり



娘さんが洗面台を使えるように、子ども用の踏み台を造作。洗面所から続くユーティリティーには物干し用ポールを取り付けました。ポールにカーテンを下げれば、脱衣所として仕切れます。



バスルームの壁はマグネットボードになっており、“浮かせる収納”が可能です。水垢が付きやすいので鏡は設置せず、脱衣所に鏡を取り付けました。
奥さまがネットで情報収集しつつ、理想の生活をイメージして篠崎社長に伝えたアイデアが、家の随所で実現していました。



ご主人 篠崎社長は、夫婦別々にヒアリングしてくださいました。

奥さま 篠崎社長は、ふたりの希望から“できること”と“できないこと”を絞り込み、優先順位を付けてくださいました。一つひとつ判断できたので、納得しながらプランづくりを進められました。「もっと希望はないの?もっとあるでしょ!」と言ってくださったので、全ての要望をお伝え出来ました。

篠崎社長 おふたりのご希望を取りまとめるのは私の役目です。希望を踏まえて、さらに工夫したプランをお出しするのが、この仕事のおもしろさですから。小さなことも遠慮なさらずに教えていただきたいと思っています。

【記者の目】



T夫妻が暮らしていた住まいに篠崎社長が足を運び、打ち合わせをしたこともあったそうです。その際に、家財道具の量を見極め、近隣住宅の配置も確認。クローゼットの適正量や、外からの視線を遮りながら太陽の光を取り込む窓の配置は、現地の状況を知っているからこその設計です。そうした丁寧なプロセスも、「家族らしさ」あふれる家づくりに繋がっていると実感しました。

写真 村川写真事務所
文章 布施さおり


2024年07月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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