Story 取材記事

土間リビングから山並みを眺めるアウトドアな家 札幌市O邸


土間になったリビングダイニングから遠くに連なる山並みが眺められる抜群のロケーション――今回ご紹介するのは、南区のOさん夫妻の家です。

この家の特徴は
・山小屋を思わせる板張りの外観
・1階フロアは土間仕上げのリビングダイニングを最大限広く
・暖を取り、料理にも使う薪ストーブ
・機能的なステンレス・キッチン
・床材には希少な屋久島地杉を使用
・総ガラス張りの2階バスルーム
・太陽光発電+蓄電池で自家発電と災害時への備えも万全
・エコで省エネなラディアント・サーキュレーション・システムの家
と、とても充実しています。

そんな完成直後の新居にお邪魔し、ご夫妻にお話をうかがいました。

暖房は薪ストーブだけ。空気の流れを作り暖かさを循環



Oさん夫妻の家は自然豊かな周辺の環境になじむ総板張り。三角屋根の南側には、ご主人の希望で4.86kW分の太陽光発電パネルを設置しています。
この家を設計・施工したのはシノザキ建築事務所(札幌市西区)です。Oさん夫妻とは土地探しから二人三脚で家づくりに取り組んできました。



岩手県出身、職場で知り合ったという2人は、真冬でもキャンプやBBQを楽しむアウトドア派。山のそば、自然豊かな場所に家を建てたいと土地を探しましたが、なかなか巡り合えず、2年かけてようやく見つけたのが、山に近く、敷地の奥に自然が残るこの土地でした。



奥さまのいちばんの希望は「薪ストーブだけで暖を取って暮らすこと」。そして、2人とも「土間を最大限広く採った間取り」にしたかったと話します。アウトドア好きな2人は、家の中にいてもまるで屋外でキャンプをしているような感覚で過ごしたいと、内と外の境界をゆるやかにつなぐ空間として土間を希望しました。

そのため、1階フロアのほとんどを土間仕上げのリビングダイニングに。開口部も大きく採ったことで、周囲の豊かな自然がいっそう身近に感じられるようです。



土間はモルタルの金コテ仕上げ。夏はひんやりした感触で心地よく、冬は薪ストーブの輻射熱で暖かくと、一年中裸足で過ごせるのも魅力です。
この家の唯一の暖房となる薪ストーブはドイツのレダ社製。調理もできるタイプを選びました。



薪ストーブだけで冬も暖かく暮らせる家が実現したのは、シノザキ建築事務所が特許を取得した「ラディアント・サーキュレーション・システム」のおかげです。

「ラディアント・サーキュレーション・システム」とは、床下と小屋裏をつなぐ風道(ふうどう)と呼ばれる空気通路を作り、床下のひんやりした空気や薪ストーブで暖められた空気を家じゅうに効率よく巡らせる、シノザキ建築事務所の独自技術です。

薪ストーブで暖を取ると、大量の輻射熱と自然対流が発生します。これを利用し、家全体に暖かい空気を循環させることで、冬も快適な暖かさが得られます。


キッチンや寝室などの床材は屋久島地杉を使用


土間スペースを広く採りたかったため、寝室になる予定の予備室はコンパクトにしています。

ガス台もレンジフードもないシンプルなキッチン



キッチンは奥さまの希望でステンレスと天板のみのシンプルな造りに。右奥にあるのは給湯器のエコキュートです。できるだけ自家発電でまかなうため、2階ウォークインクローゼット内に蓄電池も備えています。


背面の収納棚は造作によるもの


じつはOさん夫妻、ガスも使わないことに決めたため、ビルトインコンロもレンジフードも付けていません。料理には遠赤外線調理ができるラジエントヒーターのコンロと薪ストーブを活用します。掃除もラクで空間もすっきり。ビルトインコンロを付けなかったことで、逆に特注品になってしまったとか。なんとも潔い決断です。
「でも後から付けられるよう、コンセントなどは入れ込んでもらっています」(Oさん)



キッチン奥にしつらえた小さな出入口は、愛犬・ボンナちゃん専用の通路です。扉の向こうは階段下の収納兼ボンナちゃんのスペースにつながっています。
ボンナちゃんは全盲で、雨や雷の音に敏感。狭いところに隠れようとすることがあり、どこにいても隠れ場所に向かえるよう、キッチンにこの出入口を作りました。



南側の窓のロールスクリーンを下ろせば、そこが大きなプロジェクタースクリーンに早変わり。気軽にホームシアターが楽しめます。



玄関からLDKに向かう壁には一面に収納棚を造作してもらっています。半分はシューズスペース、残りはキャンプ道具の収納場所になる予定です。



玄関を入ってすぐの場所にはトイレと洗面台を設けました。洗面台もキッチン同様、シンプルなステンレス製です。



プラン上、1階に設置するのが難しかった浴室は2階に設けました。全面ガラス張りにしたことで、開放感たっぷりです。




2階には洋室が2間あります。友人が大勢で泊まりに来ても十分な広さです。

Oさん夫妻にお話をうかがいました



なぜシノザキ建築事務所に?

奥さま 暖房は薪ストーブだけにしたいと最初から決めていて、10社ほどリストアップして話を聞きに行ったのですが、どこへ行っても「薪ストーブもいいですが、パネルヒーターを付けてください」と言われました。もともと実家の暖房が薪ストーブだけで、とても快適に暮らせることを実感していたので、そこは譲れませんでした。

最後に訪ねたシノザキ建築事務所で、篠崎社長は「いいですね」と即答してくださって。それまでは、会社さんの家づくりに私たちのほうが合わせてほしいというところが多かったのですが、篠崎社長からは私たちの考え方を家に取り入れてくれようとする姿勢が感じられて、お願いすることにしました。

ご主人 土地を見つける前に篠崎さんに出会って、先に「お願いします」となったんです。それから一緒に車で土地を見に行ったりしてもらいました。


山小屋の雰囲気も感じられる照明


土地探しは苦労しましたか?

ご主人 後ろがすぐ山だったり、自然に近い場所を探すと、どうしても傾斜地だったり旗竿地だったり…。この土地は休憩中にインターネットでたまたま見つけて、すぐに妻に電話して「現地を見てきて」とお願いしました。

奥さま 篠崎さんには最初から予算をお伝えしていましたが、土地整備にお金がかかってしまう場所ばかりで、なかなかちょうどよい土地が見つからなかったんです。でもこの場所を見て篠崎社長が「ようやく決まりましたね!」と言ってくださって。ここなら予算内で建てられるんだとホッとしました。


愛犬ボンナちゃんも新しい住まいに慣れてきた様子


家づくりを振り返っていかがですか?

奥さま 普段は開け放して使えるよう扉はすべて引き戸にしてもらったり、クロスが好きじゃなくて石膏ボードそのままの壁にしてもらったり。いろいろとこだわることができて気に入っています。

ご主人 シンプルに不要なものを付けない家づくりができましたが、大工さんには大変な思いをさせてしまったかもしれません(笑)。これからは平日も、自宅にいながらキャンプ気分を楽しみたいですね。


2023年10月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

シノザキ建築事務所株式会社の取材記事