
みなさんこんにちは、iezoom編集部の松下です。私は住宅ライター・編集者として、約20年にわたり「北海道の注文住宅」を取材してきました。拝見した住宅の数は、2,000棟に迫る勢い。ずいぶんな数を見てきたものですね。この20年の間に、社会情勢や家族の在り方は変わりました。それとともに平成から令和にかけてのこの10年は、特に「子育て世代の間取り」が大きく変わったと感じています。
変化の要因としては
・共働き家庭の増加
・少子化
・男性の家事・育児協働
・コロナ以降のライフスタイルの変化
・建築費や地価の高騰
・長期間物価上昇が続いている(インフレ)
などがあげられそうです。
今回は、ここ10年ほどの住宅プランの変化についてや、2025年現在、子育て世代に人気のプランや設備仕様、参考にしたいアイデアについて、北海道住宅新聞のデータや、iezoomの実例を参考にしながら、詳しく紹介したいと思います。
北海道の新築住宅は坪単価が約1.4倍、広さは約6.4畳小さくなった
北海道の家の建物本体価格は坪単価15.5万円UP、1.4倍に上昇!
北海道住宅新聞社によると、2014年と2024年を比較してみると、2014年 60.6万円/坪 → 2024年 85万円/坪と、住宅価格(付帯工事や外構工事を含まない)は坪単価が15.5万円UPし、この10年で1.4倍になりました。
北海道の家の広さ(平均延床)は約6帖分小さくなった!
家の大きさを表す延床数は、平均で38.7坪 → 35.6坪と約3坪小さくなっています。3坪というと6帖なので、一部屋分小さくなった計算になります。
コンパクト化がもたらした「間取りの変化」
一般住宅全般でもこれだけの変化がありましたが、都市部やその近郊にマイホームを建てたファミリー層の住宅については、さらにコンパクト化した印象。25坪~30坪ほどの大きさも珍しくありません。こんな風に「箱」が小さくなった分、中を仕切る「間取り」にもさまざまな変化がありました。
リビング横の予備室がなくなった
昔ながらの茶の間横の客室がなくなり、1階を水回りとLDKで構成するプランが多くなりました。
子ども部屋も主寝室も小さくなった
以前は子ども部屋はクローゼット付で6帖大、主寝室はウォークインクローゼット付で8帖ほどが主流でしたが、ここ最近は、子ども部屋が4.5帖~5帖、主寝室は6帖ほどのプランを多く見かけます。また、各部屋にクローゼットを設けず、2階はほぼ就寝のためだけに備える人も多くなりました。
「ファミリークローゼット」が一般化した
各個室にクローゼットをつくらなくなった分、家族で使える「ファミリークローゼット」が一般化しました。ユーティリティーや乾燥室(ランドリールーム)のすぐ近くに配置するプランは、家事動線が短く大変人気があります。
さらに省スペースで使い勝手もよい「ウォークスルー・クローゼット」も
通路とクローゼットを兼用した省スペースなプランもあります。これを最初に見た時は、目からうろこが落ちました。写真の事例は寝室から廊下に出る通路にもなることで、回遊して使うことができるようになっています。さらに詳しく知りたい方はこちら▶ファミリークローゼット施工例
水回りを2階に配置するプランも
1階にLDKと玄関を配しただけでいっぱいになる場合は、2階にUTと風呂をもっていくプランもあります。2階に水回りを置くことで、狭小でも1階プランの自由度が大幅に増します。
家族共有の書斎スペースも人気

スキップフロアのスタディースペース 東神楽町/昭和木材
子ども部屋が小さくなったことで、子どもの学習場所を家族の共有スペースにプランする人も増えています。また、そこには子どもが個室に籠らないようにしたいというパパとママの子育て方針も反映されています。
もっと詳しく知りたい方はこちら▶子どものスタディスペースのアイデア
コロナ対策でリクエストが増えた要素
2020年に最初の感染者が出た新型コロナウィルス感染症は、暮らし方や働き方を大きく変えました。それに伴いコロナ以降の新築住宅には感染対策やテレワークに対応できるプランが増えました。
玄関のシューズクローゼットが一般化した
20年ほど前までは、玄関には靴入れ用の扉付き収納が付いている形が一般的でしたが、この10年で玄関土間に続く形状でシューズ用ラックのほかにコート掛けのハンガーパイプを造りつけるシューズクローゼットが一般化しました。特にコロナ以降は、上着に付着したウィルスを室内に持ち込まないための対策にもなり、より普及した印象です。
詳しく知りたい方はこちら▶シューズクローゼットの施工例 20選
玄関ホールの一角に手洗いを設ける人が増えた
帰宅後すぐに手洗いをすることで、ウィルス対策につながります。もう一つの理由としてよくあげられるのが、来客用としての手洗いの用途。家族が使うプライベート空間であるユーティリティーに来客を通さない「おもてなし」の気持ちも反映されています。
テレワークができる小さな書斎が人気
コロナによって、在宅勤務が一気に広まり、家の中で快適に仕事ができる環境が求められるようになり、テレワーク用として、引き戸やドアの付いたクローズドな書斎も増えました。2~3畳ほどの小さなスペースが多く、防音対策を施している人もいます。
詳しく知りたい方はこちら▶テレワーク(在宅勤務)に適した施工例
プチアウトドアが叶うウッドデッキやテラス
巣篭りが余儀なくされていたコロナ期は、自宅にウッドデッキやテラスがあったら、気軽に焼き肉が楽しめるのに…と思った人も多かったのではないでしょうか。人目を気にせず寛げるインナーコートも人気です。
詳しく知りたい方はこちら
▶中庭・インナーテラスの施工例まとめ
▶焼肉やホームパーティを楽しむ家
▶ウッドデッキ・テラス・バルコニー・ポーチ事例
パーソナルな寛ぎスペースとして「ヌック」も人気
コロナ以降、特に最近よく見かけるようになったのが「ヌック」です。デッドスペースになりがちな階段下を活用したり、窓辺につくって読書スペースにしたり。リビングの一角につくると、家族とつかず離れずの距離感でパーソナルな時間を愉しめるのが魅力です。
詳しく知りたい方はこちら▶ヌックのある家づくり 5選
共働き世帯に人気の間取りと住宅設備
日本では1990年頃から、夫婦共働き家庭が増加の一途をたどっています。それに伴い、マイホーム建築では、夫婦、そして家族みんなが協力して料理や掃除・洗濯などの家事がしやすい間取りや機能がより求められるようになりました。間取りに限らず、採用される住宅設備にもそうした変化が表れています。
家族みんなが使えるオープン・キッチンと大型食洗機が人気
キッチンは夫婦が並んで使えるゆとりのある設計で、子どももお手伝いがしやすいオープンタイプが人気です。
ここ数年で日本製のキッチンにも海外製の大型食洗機が取り付けやすくなり、ドイツ製のミーレ(Miele)やボッシュ(BOSCH)、AEG(アーエーゲー)などが出しているフロント・オープンタイプをよく見かけるようになりました。家族4~5人分の食器に加え、鍋やフライパンなどが1日1回の洗浄で片付く大容量で、引き出し式で食器の出し入れがしやすいのが特徴です。
さらに詳しく知りたい方はこちら
▶フロントオープンタイプの食洗機まとめ
▶映える、おしゃれなキッチン施工実例
▶こだわりキッチン事例 総まとめ
▶アイランドキッチンの実例まとめ
備蓄用にパントリーや保冷庫を付ける人が増えた

キッチンに備えた下がり壁の可愛らしいパントリー 札幌市M邸/シノザキ建築事務所
夫婦がフルタイムで働く家庭では、週末にまとめ買いした大量の食品や生活雑貨をストックするためのパントリーや保冷庫を付ける人が増えています。どちらもキッチン近くの使いやすい場所にプランされていることが多いです。
さらに詳しく知りたい方はこちら▶パントリー(食品庫・キッチン収納)20選
洗濯が一か所で済むプラン・衣類乾燥機も
「洗う、干す、しまう」という洗濯仕事が一か所で済む間取りも一般化してきました。よく見かけるのが洗濯機と物干しのあるランドリールーム(洗濯室)と、乾いた洗濯物をしまうファミリークローゼットを直線に配置したプラン。個室のクローゼットにしまっていた頃に比べると、格段に家事効率が上がりました。
また、自然乾燥に任せるのではなく、衣類乾燥機で仕上げまで行う人も増えています。ガス式衣類乾燥機「乾太くん」が人気で、採用にあたってはプラン段階からUTに専用台やガス栓を用意しています。
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▶共働き家族が暮らしやすい家まとめ
▶「ランドリールーム」事例20選
▶「乾太くん」を導入した住宅まとめ
ロボット掃除機が一般的になった
ロボット掃除機はかなり普及した感があり、取材時には必ずといってよいほど見かけるようになりました。充電ができる専用基地を階段下などに確保している場合も多いです。
宅配ボックスを付ける人が増えた
留守中の宅急便や、共同購入など食品の宅配サービスに備えて、宅配ボックスを備える人も増えています。保冷タイプのものは夏の暑い時期でも安心。ネットショッピングが好きな人も重宝しているようです。
生活志向の変化がもたらした要素
大量消費やモノを多く持つことに豊かさを見出していた価値観から脱却し、好きな物や価値の高いものを厳選して、長く愛用しながら暮らす「ミニマムな暮らし」や、地球環境に配慮した「エコで省エネな暮らし」を求める人が増えたことで、人気の住宅プランにも変化が見られました。また、ライフスタイルの変化に対応したフレキシブルで無駄のないプランを求める賢いオーナーも多くなっています。
平屋が人気になった
子育て世帯では、夫婦の主寝室と子ども部屋で構成された2階のある、2階建て住宅が一般的でしたが、将来子どもが巣立った後に子ども部屋は使われなくなり、老後は階段の上り下りが大変ということから、この10年で平屋建ての人気が急増しています。同じ床面積でも、平屋建ては2階建てに比べて基礎部分が増えるので、建築価格を抑えるためにはコンパクトにする必要があり、自ずと小さな平屋に人気が集まっています。
もっと詳しく知りたい方はこちら▶平屋住宅の施工例まとめ
ミニマル派が増えシンプルで小ぶりな家も人気
最小限のモノで豊かに暮らすミニマリストの住まいは、間取りにも無駄がありません。常に使われない部屋をつくらないよう、ライフステージに合わせて部屋の用途を変えながら暮らしたり、人が通るためだけに必要な「廊下」を極力つくらない間取りにするなど、シンプルで効率良く、結果として小さくまとまった住まいを多く見かけます。
もっと詳しく知りたい方はこちら▶小さな家づくり~ミニマム・狭小・無駄を省いた家
エコで省エネ・創エネな住宅が増えた

太陽光発電+蓄電池で自家発電と災害時への備えも万全 札幌市O邸/シノザキ建築事務所
2000年代から住宅の高断熱・高気密化が一気に進み、北海道ではどの住宅も一定以上の高性能を発揮できるようになりました。さらにSDGsや環境保護の観点から、太陽光による自家発電や、自然な空気の対流を使った換気システムを採用するなど、エコで省エネな住宅が増えています。2018年に起こった北海道胆振東部地震以降、自家発電システムを積極的に提案する住宅会社も増えており、採用率も高まりました。
エアコン暖房の採用も増加中
暖房機器は2000年から2020年頃までは、灯油ストーブに代わりセントラルヒーティングが主流でしたが、メインにエアコン暖房を使い、足りない時だけ補助暖房を使うスタイルも増えつつあります。暖房機を置かないことで家具のレイアウトに自由度が増します。夏の暑さが厳しくなった北海道では、冷房や除湿対策も必要になったので、四季を通じて使える設備としても人気です。
子育て世代に人気のプランについて、この10年ほどの変化とともに振り返ってきました。社会や家族の在り方の変化によって、「住宅」に求められる要素も大きく変わっていったことが分かります。「家事ラク」や「時短」を叶えるプランが増え、住宅設備も充実しました。これから家づくりを考えている人たちは、記事リンクからより詳しい実例を参考にしてみてくださいね。iezoomでは今後も、「最新の北海道の家づくり」が分かる記事を発信していきます。ぜひご覧ください。
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