今回ご紹介するのは、自然素材を使った心地よい住環境を生み出す機能的で美しい家づくりに定評のある、シノザキ建築事務所が手掛けたリノベーション住宅です。
マイホーム取得に際して1992年に建てられた中古物件を購入し、リノベーションをする選択をした30代のIさん夫妻。5歳の息子さん、2歳の娘さんとの暮らしに合わせて空間を再構築した住まいは、まるで新築のように生まれ変わりました。
出窓はなくし、和室は畳コーナーに変えて暮らしやすさを実現
Iさん夫妻が見つけた中古物件は、小樽市内の住宅地にありました。
Iさん 以前は小樽市内の賃貸アパートで暮らしていました。長男が2歳の時に長女が生まれ、家が手狭になったことから一戸建ての新築を考えるようになりました。
住宅の知識がなかったため、展示場を見学したりカタログ請求をしたりして情報を収集しましたが、建築資材の高騰もあり、どの会社に依頼しても想定していた予算より約1,000万円オーバーしてしまうことがわかりました。そこで、中古物件のリノベーションへと舵を切ったんです。
1階は、構造上必要な部分を残しながら壁を取り除き、LDKと畳コーナー、バスルームや洗面室などの水回りが回遊でつながる開放的な空間に変えました。
玄関正面の引き戸はリビングドアです。左手は洗面ユーティリティー、右手にはシューズクローゼットがありカーテンで目隠ししています。
引き戸の先に広がるLDKの吹き抜けは、伸びやかで明るい空間です。南面の全ての窓に、太陽の熱を取り込む日射取得型の窓ガラスを採用しています。
LDKはひと続きの大きな空間になりました。床材に採用したクルミの無垢材は、足裏に優しく、子どもも大人も裸足で過ごしているそうです。
ソファ正面の窓は、出窓から肘掛け窓に変更しました。窓際のラックは造作です。
リビング横にあった和室は垂れ壁を取り除き、フラットな畳コーナーに変更。国産イグサの半畳の畳を採用し、モダンな空間に様変わりしました。今はお子さんのプレイスペースとして活用しています。
畳コーナーの全周に施したなぐり床は、足触りのよさと、光によって変わるニュアンスの美しさが魅力です。
天井には、奥さまの希望で、室内物干しも取り付けました。
家族がコミュニケーションを取りやすいオープンな2列型キッチン
中でも大きく印象が変わったのはキッチンです。
垂れ壁や吊り収納を取り除き、片側だけが壁に接したペニンシュラキッチンを採用することで、明るくて開放的な空間に生まれ変わりました。
奥さまは、作業がしやすい広い天板が気に入っているそう。リビングダイニングで過ごす子どもたちの様子を、見渡すことができます。
コンロは壁側に配置。写真左手は洗面脱衣室につづく引き戸で、右手前にはパントリーにもなる大型の造作収納を備えました。
正面のテラス窓から庭に出られます。
洗面脱衣室とバスルーム、トイレは、玄関とキッチンから行き来できます。
0.7坪だったバスルームは、壁の位置をずらして1坪サイズに変更しました。
家全体の空気を循環させる「風道」を設置
I邸は、室内に空気の流れを作る「風道(ふうどう)」を新たに設置しています。リノベーション住宅では初の試みだそう。これは、新築住宅で同社が標準採用しているラディアント・サーキュレーション・システム(省エネと快適性を両立させる独自の冷暖房・換気システム)を活用したものです。
寒い季節は1階のストーブで暖まった空気が吹き抜けから2階に上ります。DCモーター付き換気扇によって空気を集めて温度を均一化。風道を通って1階の脱衣所へと送られます。
洗面脱衣所の開口部は、板をスライドさせて開閉できます。手をかざすと感じられる空気の流れは、室内で洗濯物を乾かす時にも役立ちます。
Iさん夫妻とシノザキ建築事務所の篠崎廣和社長に話を伺いました
Q シノザキ建築事務所との出会いは?
Iさん リノベーションを検討するにあたり、住宅の知識を身につけようと考え、情報収集を進めました。建築家のYouTuberが紹介していた暖冷房システムに興味を持ち、北海道内で省エネにこだわった設計を取り入れている会社を探して見つけたのが、室内の空気を循環させるシノザキ建築事務所の特許技術「ラディアント・サーキュレーション住宅」(特許第7287683号)でした。iezoomの記事も読み、連絡したことがご縁です。
Q 中古物件は、Iさん夫妻が見つけたそうですね。
篠崎社長 ご夫妻は、すでにこちらの中古物件を検討されていたので、建物の劣化状況や不具合を専門家が調査する「インスペクション」をお薦めしました。実際に壁を壊してみると、30年以上前の構造図面にあった耐力壁がないことが判明したのです。この場合、弊社では当然、補強が必要と判断します。
リノベーションにおいて最も重要なのは安全性です。次に断熱性能、その上にデザインがあると考えて設計に取り組みました。またI邸では、当社のリノベーションとしては初めて「風道」を採用しています。これは、ラディアント・サーキュレーション・システムの要です。風道を通して家中の空気を循環させることで、優れた低エネルギー・低CO2を叶えます。家の中に寒い場所がないのが特徴です。
Q 年末に引っ越しをされ、冬を過ごした印象は?
Iさん 希望どおりの暖かい住まいだと実感しています。実は引き渡し直後は室内が冷えているように感じたんです。篠崎社長から「暖房を入れたばかりなので冷たく感じますが、無垢材の水分が抜けてくるとむしろ暖かくなります」と教えていただいたのですが、その言葉どおりになりました。
篠崎社長 新建材ではなく無垢材を使用する場合は特に、最初は素材に含まれる水分の蒸発で熱が奪われやすくなります。暖房によってその水分が抜けていくと、体感温度も変わるんですよ。自然のぬくもりを感じる快適な家になるはずです。
【記者の目】
家の中を楽しそうに走り回る子どもたちをみて、「この時間のために、私たちは仕事していますから」と微笑む篠崎社長。高齢化が進む小樽市内の住宅地ですが、子育てする若い世代へと、ゆるやかな循環が始まっています。
写真 スタジオスーパーフライ 大道貴司
記事 布施さおり
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