積雪寒冷地の北海道で、特に冬場に、地震・停電などが発生すると、寒さで命の危険に直面します。また近年、過去に経験のない局地的な豪雨による水害も道内各地で発生しています。一般的に災害時には、地域の体育館など公共施設が避難所になり、そこで避難所生活を送ることが想定されていますが、北海道の体育館は断熱性能が低く、ジェットヒーターを焚き過ぎると一酸化炭素中毒の問題もあり、体育館などでの避難所生活にも大きな課題があります。
そういった意味で、家づくりの段階で「災害時に我が家で家族を守れるか?」という観点も大変大事ではないかと思います。ちなみに昭和初期の北海道では、薪ストーブで採暖、お風呂、料理などが賄えたので、停電が起きてもそれほど困らないという面もありました。しかし現代は、暖冷房に家電、スマホ充電に至るまで、機械に頼る生活をしており、住宅そのものの断熱性能、省エネ性能とエネルギー確保が重要なポイントです。そこで今回は、建て主、そして住宅会社が「防災」を重視した家づくりをご紹介します。
「省エネ」「防災」「デザイン」を両立した理容院と自宅 森町K邸/渋谷建設
菊池さん夫婦にとって、家づくりにはもうひとつ強い思いがありました。それは「災害に強い家づくり」。
2018 年に起きた胆振東部地震で森町も3日ほど停電が続いたそうです。「子どもたちに怖い思いをこれ以上させたくない。停電になっても電気が使え、ライフラインが止まらない家を作りたいと思うようになりました」(菊池さん)。
自宅には屋根付けのソーラーパネルと蓄電池を設置。太陽光発電は8.9Kw、蓄電池は7Kw。子育て世帯がZEHレベルを有する住宅を新築する際に受けられるこどもエコすまい支援事業の補助金も活用しました。
「省エネ」「防災」「デザイン」を両立した理容院と自宅・森町・K邸
もしもの時に備えた「スマートeチェンジ」 札幌市北区「iDEL(イーデル)屯田」/イネスホーム
工夫の凝らされた使いやすい間取りや造作提案だけでなく、安心して快適に暮らせる機能が採用されているところも「iDEL(イーデル)屯田」の魅力です。
岡野さん 「iDEL(イーデル)屯田」には、停電時給電システム「スマートeチェンジ」が採用されています。もしもの時に頼れる備えがあることで、いつもの暮らしをより快適に、安心に過ごしていただけます。
停電時には、外壁に設置されたコードボックスから給電コードを取り出し車に接続します。屋内の操作盤で切り替えをすることで、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などから電力を確保することができます。
最大で1500Wまで電力供給ができ、スマートフォンの充電のほか、電子レンジや冷蔵庫、冷暖房などの空調も作動させることができます。
突然の停電があった時も、こうした備えがあれば家族の生活を守ることができそうです。
ナチュラルヴィンテージに「安心」をプラス!「iDEL(イーデル)屯田」札幌市北区
停電時の寒さをしのぐ高耐震&高断熱の家 モデルハウス「DAN」/協栄ハウス
断熱施工では、内側充填断熱にグラスウール40㎜とネオマフォーム50㎜、外側付加断熱にネオマフォーム100㎜、窓はトリプルサッシを採用しています。これにより、国内最高クラスの断熱等級7を達成し、断熱性能を示すUA値は0.20w/㎡・Kの性能を実現しました。
板倉係長 住宅の断熱性能が極めて高くなると、わずかの暖房でも家は十分暖かくなります。このモデルハウスでは、暖房設定を最小にするだけでなく、10時頃から15時くらいまでは暖房を切ることで、暖かすぎる状態を回避しています。
また、能登半島地震以降、耐震等級3に関するご質問を多くいただくようになりました。耐震等級3は、災害時の拠点ともなる警察署・消防署などでも採用される耐震性能です。基礎や柱梁、耐力壁の強度を高める必要があり、このモデルハウスでもOSBを壁の内側と外側に2重貼りするなどの対策を行った上で構造計算(許容応力度計算)を行って耐震等級3に対応しています。
もし冬に震度6・7程度の大地震が発生しても耐震等級3の家なら、軽い補修程度で住み続けられるレベルの家ですし、断熱等級7の断熱性能なら、暖房を切っている時間帯でも室温がなかなか下がらないので、停電が長引いても寒さをしのげます。
「断熱等級7」と「耐震等級3」のモデルハウスを公開/千歳市・協栄ハウス
HV車+開閉器=災害・停電時も安心のガレージハウス/帯広市Fさん 赤坂建設
今回ご紹介するのは、ハイブリッド車(HV)を組み合わせた、災害時にも安心の家づくりを実現したFさんの新居です。
トヨタカローラ札内店の店長でもあるFさん。数年前の大規模停電の際に発電機を利用できた経験から、新居にはHVからの給電ができる設備を設置しました。
赤坂建設の家では、非常時に電源を自家発電へと切り替えるための「開閉器」の設置が標準仕様となっています。2023年3月に行われた住宅完成見学会ではこの給電システムを実演。2日間で35組もの見学者が訪れました。
HVからケーブルを繋いでスイッチを入れるだけと操作も簡単、いつも乗っている車が発電機代わりになってくれます。
「ガソリン満タンのハイブリッド車があれば、停電時でも、照明、暖房、調理器具などを使えます。数日は普段と同じように使用して過ごせるのは心強いですよね」(Fさん)
(写真右)階段下には防災グッズの収納スペースが。「住宅見学会を行う際には、サービスとして整理収納アドバイザーで防災士でもある徳本里栄さんの選んだ防災備蓄をプレゼントしています。決まった場所に分かりやすく収納されているので安心です」(赤坂社長)
HV車+開閉器=災害・停電時も安心のガレージハウス/帯広市Fさん 赤坂建設
三角屋根の憧れ実現と、災害から家族を守る家 更別村K邸/カントリーヴィレッジ
十勝平野のほぼ中央にある更別村。ここに住むKさんファミリーは、家づくりにあたって三角屋根、薪ストーブ、高断熱高気密、太陽光発電、そして家事動線の自由度を重視しました。
全国大手ハウスメーカー2社で検討を開始しましたが、熟慮の結果、最終的に選んだのは芽室町のカントリーヴィレッジでした。
リビングには、ご主人が重視した2つめのポイント、薪ストーブがありました。ハースストーン社製の薪ストーブで、素材は鋳鉄の約2倍の蓄熱性がある「ソープストーン」を黒に着色した珍しい一品。家自体が高断熱高気密である上に、蓄熱効果の高い石製の薪ストーブを使うことで、夕方に薪を焚くと、朝方まで家じゅうが暖かく、晴れた日ならそのまま夕方まで暖房ナシで十分暖かく暮らせます。
ご主人は消防署職員なので、震度4を超える地震など災害時には出動で家を留守にすることもあり、不在時に家族を自然災害から守るための設備についても重視しました。庭に10KWの太陽光発電を設置したのは、停電になっても、薪ストーブと太陽光発電があれば、暖房、調理など最低限の生活を確保できるからです。
三角屋根の憧れ実現と、災害から家族を守る家 更別村・K邸
家族を守る防災&快適なLCCM住宅 北斗市T邸/ノースランドホーム(山野内建設)
K邸は省エネ・創エネ性能が最大の特長です。太陽光発電も導入しています。
K邸の太陽光発電は試算で、年間9.3KW分、金額で約25万4千円分の発電額になります。
夏場は発電額が多く暖房しない、冬場は発電量が減るが暖房費がかかる、というムラはあるものの、年間で計算すると、一般的な家が30万円~50万円近くかかる中で、K邸は光熱費負担額が実質ゼロになる、ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)です。
なお、K邸は、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅関連事業に採択され、1,352,000円の補助金を受けています。LCCMとは、建設時、運用時、廃棄時において出来るだけ省CO2に取り組み、さらに太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出により、住宅建設時のCO2排出量も含めライフサイクルを通じてのCO2の収支をマイナスにする住宅です。
左側の写真はキッチンの手前に併設されたカウンター。ここで朝食を食べれば、洗い物の片づけもサッとできます。そしてキッチンの奥には食品庫(パントリー)があり、その中は右側の写真の通り。食材を十分に保管できる収納空間が広がっています。
この家の大きなテーマは、家族を守る「防災力」です。冒頭に住宅の省エネ性能や自然エネルギーでの電力自給能力などについて書きましたが、それに加え、災害時に、非常食や水、調理のために必要なカセットコンロなどの備蓄があれば、救援が届くまでに必要な食糧と燃料を節約できます。
ご主人 私の実家は宮城で、東日本大震災の際には1週間停電しました。この家は非常用のコンセントで太陽光発電した電力を使えます。売電価格が下がり、蓄電池や電気自動車が安くなれば、電気を貯めることも考えたいと思っています。
家族を守る防災&快適なLCCM住宅/北斗市T邸 ノースランドホーム(山野内建設)
家族の健康・安全を守る家 新得町S邸/赤坂建設
Sさんファミリーが家を建てるにあたって、大きなテーマの一つは、家族の安全を守るための「防災」でした。というのも・・・
2016年8月30日に北海道に最接近した台風10号は、前後3日間に300ミリを超える豪雨で、空知川、札内川、芽室川などが氾濫。新得町内でも住宅への浸水、農地の冠水など甚大な被害をもたらしました。
奥さまも「川の水はここまで来ませんでしたが、近所の橋が崩落したり、避難所に向かう道路が崩れました。
2週間近く断水もしました。新得でも最近は2年に1回のペースでなにがしかの自然災害が起きています」と振り返ります。
そこでS邸で導入したのが「LPガス発電機による自家発電」です。停電が発生すると、住宅の外壁に設置してある「nito切り替え開閉器」で、電力会社からの電源ではなく、発電機による自家発電を使用するようにワンタッチで切り替えを行います。敷地内に設置したバルクタンク(普段は暖房給湯用のエコジョーズで使用)に入っているLPガスから専用ケーブルを使って、小型の発電機にガスを送り込み、発電機を稼働させることで、家じゅうのコンセントで電気を使えます。バルクタンクに満充電してあれば、住宅内で約1か月間使えるだけの発電が可能です。
ご主人「台風10号の時は停電、断水もあってお風呂に入れない経験もしました。災害は起きないに越したことはありませんけど、何か起きた時のための備えは必要だと思ったんです」
家族の健康・安全を守る家 新得町・S邸/赤坂建設(池田町・帯広市)
道産カラマツに包まれる、エネルギー自給型二世帯住宅 帯広市I邸/水野建設
家とカーポートの屋根には16キロのソーラーパネルを設置しました。EV車を購入した場合は、車を蓄電池として利用するV2Hにも対応できるよう電気配線などの備えもしてあります。
「災害への備えという意味でも、自分の家で使う分の電力は賄いたいなと。我が家はオール電化ですが、蓄電池を増やせば5人が暮らせるほどの発電量があります」
晴れた日なら午前10時には満タンになっているという5キロの蓄電池。現在は余った電力を売電していますが、いずれは蓄電池を増設して100%の電力を賄えるようにと計画しています。
道産カラマツに包まれる、エネルギー自給型二世帯住宅/帯広市Iさん
参考記事:災害・停電に強い家~国交省採択の防災型住宅30棟は2018北海道大停電をどう乗り越えたか
防災型住宅をテーマに据えて、2014年度の省CO2先導事業(国土交通省)に採択された住宅が、道南・函館市を中心に30棟建っています。これらの住宅に暮らす30家族は、今回の北海道胆振東部地震と、その後およそ2日間にわたる大停電をどのように過ごしたのでしょうか。
この先導事業の提案し住宅を建築したイーハウジング函館の会員工務店の力を借りて、住まい手から聞き取りをしました。そこからは、期待以上の活躍を見せた住宅の姿と、これからの改善点などが見えてきました。
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参考記事:被災者のための木造応急仮設住宅 北海道清水町で実証モデル建設中
道内で自然災害が発生した時に、地域の力を結集した木造応急仮設住宅を供給しようと、現在、道や道総研・北総研、全国木造建設事業協会北海道協会(北海道ビルダーズ協会及び全建総連北海道建設労働組合連合会)などが協力し、「2021年度木造応急仮設住宅モデル実証実験事業」として、十勝・清水町で実証モデルの建設を進めている。
先月24日には、現場見学会と意見交換会が行われ、全道各地からビルダーや行政の関係者など約50名が参加した。
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参考記事:秋田市で過去最悪の大洪水が発生!被害状況や地元民の声・復旧作業の様子
2023年7月15日から秋田市を襲った記録的大雨。
「過去最悪」の水害を受け、住宅や様々な施設では浸水や冠水被害、そして大雨が止んだ後の復旧作業に追われました。「まさか秋田市でこんな大規模な水害が起こるなんて…」と、地元住民からすれば、予想だにしなかった大洪水。
そこで今回は、過去に秋田市で起きた洪水や被害状況、そして復旧作業の様子を紹介します。本記事を参考に、ご家庭でも自然災害について話し合うきっかけにしてもらえたら、と思います。
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2023年12月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。