Column いえズーム コラム

被災者のための木造応急仮設住宅 北海道清水町で実証モデル建設中 


この記事は、住宅業界向け専門紙「北海道住宅新聞」2021年12月5日号に掲載された記事を転載しています。

道内で自然災害が発生した時に、地域の力を結集した木造応急仮設住宅を供給しようと、現在、道や道総研・北総研、全国木造建設事業協会北海道協会(北海道ビルダーズ協会及び全建総連北海道建設労働組合連合会)などが協力し、「2021年度木造応急仮設住宅モデル実証実験事業」として、十勝・清水町で実証モデルの建設を進めている。

先月24日には、現場見学会と意見交換会が行われ、全道各地からビルダーや行政の関係者など約50名が参加した。

地元の復興に貢献する応急仮設を 基礎打設、2年経過後も居住可能に

「2021年度木造応急仮設住宅モデル実証実験事業」は、道が北総研・清水町・全木協北海道協会と協力して進めているもの。

災害で自宅を失った人などに提供される応急仮設住宅は、短い工期で建設することが求められるため、鉄鋼系プレハブが主流だ。木造の応急仮設住宅(以下、木造仮設)は2011年の東日本大震災の際に初めて建設され、以降2016年の熊本地震などでも導入された。道内ではまだ供給実績はない。

道が木造仮設づくりに取り組む理由は大きく2つある。1つ目は、応急仮設住宅の選択肢を増やすためだ。国内の応急仮設住宅はプレハブが主流だが、大規模な自然災害時には供給不足が懸念される。実際に2011年の東日本大震災ではプレハブ仮設を建てるための資材が足りなくなったため、木造仮設が初めて建設された。

2つ目は、被災者により長く暮らせる応急仮設住宅を提供するためだ。応急仮設住宅は災害救助法の定めで原則2年間しか住めない。道によると、2018年の北海道胆振東部地震で被災し、応急仮設住宅での暮らしを余儀なくされた人たちから、「再出発の準備期間として2年間は短すぎる」といった声が寄せられたという。そこで、2016年の熊本地震で被災者向けの公営住宅への転用を見据えて、初めて導入されたRC基礎の木造仮設に注目した。木杭ではなくRC基礎で木造仮設をつくれば、2年経過後に建築確認をとり、通常の木造戸建てに転用できる。

このほか、木造戸建てと同じ手順で建設する木造仮設を整備すれば、災害発生時に地元工務店や大工の力を活かすことができる点や、地元のヒト・モノを使って建てることで地域経済の復興にもつながる点も、道が木造仮設づくりを推進する理由の一つだ。

なお、今回の実証モデル事業における各団体の大まかな役割は、北総研が設計から改修までの監修、清水町が建設用地の提供と完成後の運用協力、全木協北海道協会が建設及び改修となっている。


断熱・気密施工まで終了した木造仮設の内部(2DKタイプ)。
配管・コンセント回りも一般住宅同様、しっかり気密化されている


標準は1棟2戸、断熱等級3 工期は5週間がメド

道の木造仮設は災害発生から20日以内に着工し、施工は約5週間以内に完了することを基本方針としている。前者は災害救助法による定めで、後者はプレハブ仮設の工期(約4週間)を参考にした。性能は断熱等性能等級3以上を標準としている。なお、今回の実証モデルの断熱仕様は、外壁がグラスウール16K100㎜充てん、天井がグラスウール吹込み300㎜、基礎が押出スチレンフォームB3種外側50㎜+内側50㎜。窓は樹脂サッシのLow-Eペアガラスとなっている。

仕様は木杭による応急仕様と布基礎による恒久仕様の2種類を検討しており、実証モデルは恒久仕様で建設が進められている。恒久仕様では在来木造1階建ての建物に単身世帯向けの1DK(約6坪)と2人世帯向けの2DK(約9坪)の2戸が入る。また、2年経過後に住戸を隔てる間仕切りを撤去し、1戸の3LDKに改修する。さらに、その改修時に外壁に押出スチレンフォームB3種25㎜を付加断熱することで、性能を断熱等性能等級4以上に引き上げる。

実証モデルは10月中旬にJR十勝清水駅近くの町有地で建設が始まった。災害発生時を想定した工程を組んでおり、実働35日間での完成を目指している。竣工は年内の見通しで、完成後は応急仮設住宅の供与期間と同じ2年間、移住体験などの施設として運用。その後、2024年に改修を行い町営住宅に転用する。

プランは、プライベートを守りながら生活ができるよう、キッチン・トイレ・ユニットバスといった水回り設備をそれぞれの住戸に配備。また、他県の木造仮設で界壁の遮音に関する不満が多かったことから、界壁は石こうボード12.5㎜を二重張りするほか、木下地を千鳥状に配置してグラスウール50㎜を充てんする仕様とし、遮音効果を高めている。

このほか、壁面積が小さく間口側に窓を設けられない代わりとして、玄関の横にガラリをつくり、夏季の室内の通風経路を確保している点も特徴だ。


木造仮設の平面図


臨機応変な対応が鍵

意見交換会では道ビルダーズ協会の会員で、実証モデルの建設を行っている紺野建設㈱(清水町)の紺野将社長が、参加者に現場の状況を報告。「現場はかなり大変で、多いときには10人くらいの職人が同時に入っていることもあった。工期を守るため、設計図と異なる対応をとったところが多々あった」と、現場の状況に応じて臨機応変に対応したことを施工のポイントの一つに挙げた。

また、工期を短縮するため、捨てコンを取りやめるなどして基礎を実働6日間で仕上げたほか、屋根断熱から天井断熱に切り替えたといい、「雨が多いという時期の問題や、大工の慣れの問題もあり、現場の判断で変更させてもらった」と話している。

さらに、今後の課題として建物の形状のシンプル化をあげ、「庇や風除室など削れる部分は多いのでは。例えば風除室だけで2~3日余計にかかっている。アパートのように安く、早くできる建物から学べるものは多そう」と語り、道の関係者らが深くうなずいていた。

このほか、参加者からは「大工が減っている中で、非常時にどのように人を集めるのか」「立地の選定はどうするのか」「性能は最初から断熱等性能等級4にできないのか」「在来木造だけではなく、2×4工法による木造仮設も検討しては」など様々な意見があがった。道の木造仮設の取り組みはまだ動き始めたばかりで課題は多い。本紙では今後も引き続きその動向を注視していきたい。

※この記事は北海道住宅新聞の2021年12月5日号の記事を転載しています。北海道住宅新聞はこちら


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