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ウッドボイラーで薪を有効利用 エコを楽しむ家/音更町山川邸 赤坂建設


十勝平野のほぼ中央に位置し、全国でも有数の畑作地帯として知られる音更町。今回ご紹介するお宅は、この地で農業を営んで三代目という農家の山川さんのお宅です。

広大な畑作風景の中に建てられたのは、リフレッシュ用途とゲストハウスとしての役割を兼ねた別邸です。ウッドボイラーに温室、ホームシアターなど、楽しみの詰まった一軒へお邪魔しました。

畑を広々と見渡す「辛夷(こぶし)庵」

自宅の隣に建てられたゲストハウスは名付けて「辛夷(こぶし)庵」。山川家を見守るようにして立つ大きなコブシの木から名前をとりました。南側には遮るものがなく、広々と畑を見渡せる立地です。



施工したのは池田町・帯広市の赤坂建設。109年の歴史があり、十勝で多くの木造建築を施工してきた工務店です。社長の赤坂正さんと建主の山川弘悦さんとは、帯広市の英会話学校ジョイ・イングリッシュ・アカデミーのかつての生徒仲間。建築は信頼関係の中でスムーズに進められました。



家の外には2台のピザ窯がありました。「山川さんはちょっとしたものならみんな自分で作ってしまうんですよ」と赤坂社長。庭でピザパーティーをするなど、忙しい農業の傍ら生活を楽しんでいる様子です。

この「辛夷(こぶし)庵」は家の中にも少し変わった楽しみを詰め込んだのだとか。さっそくお家の中を拝見してみましょう。

「薪を活用したかった」ウッドボイラーの使い心地は?




ポーチからドアを開けると、そこは玄関兼ボイラー室です。山川さんが「辛夷(こぶし)庵」を建てた動機のひとつが、このウッドボイラーを使ってみたかったということでした。

「温水暖房だから空気が乾燥しないし、柔らかいあたたかさが気持ちがいいね」と満足そうな山川さん。一般的な家庭用とは言い難い大きなボイラーですが、農家や各種施設、企業など、薪が自由に手に入ったり人が集まったりする場所では活躍しそうです。

北海道では導入例が少ないという薪ボイラーですが、性能や使い心地はどうなのでしょうか? 北海道住宅新聞2021年2月5日号から記事をご紹介します。



ワインで有名な東北海道・十勝地方の池田町に本社を構える(株)赤坂建設(赤坂正社長)は、十勝の中心都市・帯広オフィスでは一般住宅を受注するケースが多いが、本社は移住者住宅や農家住宅の比重が高い。

昨年 12月に引き渡した音更町の農家住宅には、施主の強い希望で薪ボイラーを設置。このボイラー 1台で給湯と温水暖房をまかなっている。今年は朝の最低気温がマイナス 20°Cを下回ることが多いが「寒さ知らずの冬を過ごしている」と施主は大喜びだ。


送風できるので火をつけるのも楽々。「メンテナンスも必要なく、薪を入れるだけ」と建主の山川さん

施主が薪ボイラーを希望したのは、間伐や倒木処理で、防風林や谷地から毎年一定程度の薪原料が手に入るからだ。「捨てれば処理費用がかかるが、利用すれば燃料費節約につながるだけでなくゼロカーボンに近づく」と施主。
この住宅を担当した社長の赤坂氏は当初、維持管理がたいへんになることが心配だったが、施主がそれも含めて楽しむ意志が強かったので、設計に専念することができたと語る。

冬の外気温が氷点下になる北海道では、ボイラーを屋外に置けない。かといって室内置きは煙の流入の心配がある。このため、ボイラーは玄関内に設置し、室内に入るにはもう1枚玄関ドアがある二重玄関の形を提案した。この空間は薪小屋も兼ねる。室温を保つための断熱層は内玄関の外壁ラインだが、外玄関にも断熱を施し、外玄関内部も防火サイディングを使った。

導入した機種は、エーテーオー(株)のウッドボイラーN-220NSBというタイプ。貯湯槽に給湯用と暖房用の2回路の熱交換器が入っており、給湯は水道直圧だ。

また、灯油バーナーが装備されているため、不在時や就寝時には灯油を使い安心して暖房できる。

外壁躯体はツーバイシックスで、暖房は基礎断熱した土間コンクリートにパイピングを埋め込む床暖房。断熱性と土間コンクリートの蓄熱効果で、暖房を停止しても室温を維持するという。施主によれば、ボイラーは夕方 5 時から 2 時間おきに 7 時、9 時の 3 回、薪を 2 ~ 3 本くべる。寝る前に灯油に切り替えて、朝になるとボイラーを切っているが、日中から夕方までまったく寒さを感じないそうだ。

赤坂氏は「ボイラーの手入れなどに理解が得られれば、おすすめしたい熱源だ。薪を使いにくいときに灯油でバックアップできるのもありがたい。住宅設計と工事面は今回の経験でポイントがつかめた」と手応えを語っている。
(北海道住宅新聞 2021年2月5日号より)

ふたりでも、大人数でも。ゆったりと時間を楽しめる家



さて、扉を開けるとそこは広々としたLDK。大人数がリラックスして会話を楽しめる造りになっています。ゆくゆくは土足で気軽に入れるようにして、応接室のように使いたいと考えているそうです。



植物のお世話をしているのは、農業のかたわら英会話講師としても活躍している奥様の真幸子さん。温室には明るい日差しが差し込み、暖房を切っていてもあたたかです。



キッチンは、お手入れのしやすいシンプルなものを選びました。窓からは「辛夷(こぶし)庵」の由来となった大きなコブシの木を見ることができます。



「落ち着いたら親戚や友人などのほか、修学旅行の子ども達やアメリカのインターン生達を招きたい」と考えている山川夫妻。普段は主にリフレッシュのために利用しているのだそうです。主な生活の場である母屋から離れ、「旅行気分を味わえるんだよね」とゆったりした時間を楽しんでいます。

壁面スクリーンでは映画を、バルコニーでは花火を。楽しみの詰まった2階部分



2階との間には明るい吹き抜けがあります。東側の壁上部はスクリーンとして利用するためにあえて窓をつけずに残しました。



2階のフリースペースは、景色を眺めながらヨガをすることもできる気持ちの良いスペース。お客様が泊まりに来たときには寝室になります。



「みんなの家だから、壁一面に大きく映して映画会なんかをしても面白いよね」と、フリースペースはホームシアターも兼ねた空間に。プロジェクターを設置し、スクリーン用の壁紙を使用しました。



広々としたデッキからは山川農場の畑が見渡せます。夏には十勝川の河川敷で行われる花火大会もよく見えるそうです。「四方を見られるのは本当に気持ちがいいよね。夜はビアガーデンができるよ」(山川さん)



2階の洗面・お手洗い部分。お手洗いの窓から屋根の上に出ることができます。



写真右はウッドボイラーの煙突のメンテナンスに使える屋根上の通路です。写真左は遠くへと続く景色を眺めながら入れるお風呂。90代のお母様にも「温泉に来たみたい」と喜ばれているそうです。

内装は畑や農作物をイメージ



内装は主に真幸子さんが選びました。フリースペースのじゅうたんは窓から見える風景に合わせ、青々と伸びる小麦の色に。収納には寝具がたっぷり入り、来客が多くても安心です。



フリースペースの照明。十勝平野を思わせるみずみずしいグリーンが爽やかです。



こちらの壁紙の色は、地元音更町で栽培される「音更大袖(音更大袖振大豆)」という大豆の色をイメージしました。甘みが強く香りのある音更大袖は「すごく美味しい豆だよ」と山川さん。やさしい色合いに心和みます。



壁紙の下にはタイガーハイクリンボードという石膏ボードを使用。ホルムアルデヒドを吸収・分解する機能があり健康面も安心です。赤坂建設ではこちらの石膏ボードを標準採用しています。やわらかな星型の照明もあたたかな印象です。

人とのつながりが生んだ「みんなの家」



実はこの「辛夷(こぶし)庵」は、赤坂社長との深いご縁から生まれた家。「若い頃、当時カナダの設計事務所に籍を置いていた赤坂さんのところでお世話になったことがあって、『いつか絶対に赤坂建設で家を建てるからね』って約束していたんだよ」と山川さん。なんと30年越しの約束を果たしました。薪ボイラーの導入も「他の建築会社さんだったら止められていたかもね」と、赤坂社長や施工を管理した五十嵐さんの真摯な姿勢あってこそ満足の一軒が生まれたようです。



「自分も家づくりを手伝いたくてたまらなかった」と笑う山川さんと、そんな山川さんの要望と好奇心とを満たす家を建てようと奮闘した赤坂社長。人とのつながりが生んだ「みんなの家」です。


温室にある耐荷重棚はホームセンターで購入したもの



カーリングのインストラクターでもある山川さん、奥様の真幸子さんとの出会いもカーリングでした。英会話という共通の趣味もあるおふたりは取材時も息がぴったり。家を建てたきっかけについて「薪ボイラーを使ってみたかった。新しいものが好きなのかもね」とふり返る山川さんの話に続けて、真幸子さんが「赤坂さん(赤坂正社長)と5分くらい立ち話をしていたと思ったら、『家、建てることにしたから』と帰ってきたの」と微笑みます。

「あの立ち話がなかったら、家じゃなくてコンバイン(刈取りを行う農業機械)になっていたかも」(山川さん)と、そんなサプライズもふたりで楽しんでいる様子でした。



敷地内には野菜の保管に使用している氷室が。氷を溜めて温度が下がりすぎないよう調節しています。低温で保管され少しずつ甘くなってゆくじゃがいもは、ご友人や親戚の皆さんに喜ばれているのだそうです。



ある時は農家、ある時はカーリングの選手や英会話講師。ピザ窯や薪ボイラーなど、手間がかかるともいえる薪の活用も楽しみに変えてしまう山川夫妻は、とても好奇心旺盛でアクティブ、そして懐の深さを感じさせるご夫婦でした。
その型にはまらない生き方と人とのつながりから生まれた「辛夷(こぶし)庵」。ここから素敵な出会いや楽しみがたくさん生まれそうな予感にワクワクしながら帰路につきました。


2021年02月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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