Column いえズーム コラム

10年以上使い続ける24時間換気システム。掃除のしやすさが超重要!


24時間換気システムは定期的に掃除していますか?
おそらく、全くしていない人や、「えっ、あれって定期的に掃除するの?」という人も多いのではないでしょうか。
そもそも、「24時間換気システムって何?」という人もいるかもしれませんね。

24時間換気システムは室内の空気をきれいに保つための設備です。1年中24時間休みなく稼働し続け、2時間に1回以上のペースで屋内の汚れた空気を外の新鮮な空気と入れ替えます。2003年7月以降に建った住宅には必ず設置されています。


24時間換気システム(日本住環境(株)・ルフロ400)の風量を調節するコントローラー


具体的にはどんな仕組みでしょうか。
24時間換気システムの1つで、道内の戸建住宅で主流となっているダクト式第3種換気システムの仕組みを図にしてみました。



このダクト式第3種換気システムは、室内の汚れた空気を小屋裏等に設置した1台の強力なファンが排気する換気方式です。排気機能を1台に集約することで、室内がファンだらけになることを防ぎます。
また、室内の各所に設置された排気グリル(汚れた空気を吸い込むところ)から排気ファンまでは、汚れた空気の通り道=ダクトが通っています。ダクトは壁の中などに設置されているため、普段の生活で見かけることはありません。

24時間換気システムは稼働している間にファンの羽根やケース、給気フィルターなどに汚れがたまっていくので、定期的に掃除する必要があります。ただ、ほったらかしにしていると、思わず声が出そうになるほど汚れがたまってしまうことも・・・。

また、給気もファンで行う第1種熱交換換気の場合は、外気をファンで吸い込む際に一緒に小さな虫なども吸い寄せてしまうため、給気フィルターに虫の死骸が付着することがあります。

ただ、どの24時間換気システムもきちんと定期的に掃除をしていれば、気持ち悪い思いをしないで済みます!
さらに、24時間換気システムは長寿命で、15年ほど使い続けます。だからこそ、掃除のしやすさが大切です。

ここでは、24時間換気システムの掃除を怠るとどんな悪影響があるのかまとめ、続いて、掃除の手間が少ない24時間換気システムを紹介します。


目次

汚れがたまるとどんな悪影響がある?

24時間換気システムを掃除しないでいると何が起こるのでしょうか。

1つは換気機能の低下。ファンの羽根や給気フィルター、排気口のカバーなどに付着した埃等は、換気風量が落ちる原因となります。

実際、居住者が入居後1年半、掃除を行わなかったパイプファンは、風量が当初の半分以下に低下していたという実測データもあります。


掃除前後の風量の比較(日本住環境主催・セミナー資料より)


ちなみに、上記の実測データは主寝室(グラフの白部分)とLDK(黒部分)の換気風量が大きく回復している点が特徴です。人の滞在時間が長い部屋は埃が舞いやすく、ファンに汚れが溜まりやすいことを示しています。

換気が滞ると何が悪いのか? どんな悪影響が現れるのか?
以下に、いくつか例を挙げます。

▽イヤな(不快な)生活臭がこもる
▽湿気がこもるせいで結露が発生しやすくなり、窓まわりなどでカビの繁殖を招く
▽家具等に含まれるVOCという化学物質が原因のシックハウス症候群(頭痛、鼻づまり、くしゃみなどの健康被害)を引き起こす可能性が高まる
▽構造材を腐朽させ、住宅の耐久性を低下させる原因となる「壁内結露」の危険が高まる

また、給気フィルターが汚れていると、その汚れた空気を室内に取り込んでしまうことに・・・。
給気フィルターは放置すると汚れで真っ黒に染まってしまうこともしばしば。汚れた不潔な空気を吸って暮らすのは気持ち悪いですよね。

24時間換気システムの定期的な掃除は絶対に行わなくてはいけないものですが、たまった食器洗いやテスト勉強などと同じように、やらなきゃいけないけれど面倒なことはなかなか手がつけられませんよね。



しかし、24時間換気システムの中には掃除の手間が少なめで済むものもあります。
定期的に掃除を続けていくためには、掃除しやすい24時間換気システムを選ぶことも1つの方法です。

掃除の手間が少ない24時間換気システムは?



24時間換気システムは、主に以下の4種類です。
・ダクト式第3種換気
・ダクトレス第3種換気(パイプファン)
・ダクト式第1種熱交換換気
・ダクトレス第1種熱交換換気(交互給排型)

それぞれの仕組みや特徴はこちらで説明しています。ここでは、複数の視点から掃除しやすい24時間換気システムを探ります。

(1)ファンの掃除


フタを開けた状態のルフロ400のファン


ダクトレス換気は複数個設置するため、1つ1つ掃除してまわる手間がネックです。
特に2台1セットで数分おきに給気・排気が入れ替わる交互給排型のダクトレス第1種熱交換換気は、ファンの設置数がダクトレス第3種換気の2倍になります。また、ダクトレス第1種換気のファンには給気フィルターがついているため、ファンの設置数が増える分、給気フィルターの数も同じく増えます。その掃除の手間もネックです。


交互給排型のダクトレス第1種熱交換換気のイメージ。ファンが2台1セットで、数分おきに給気・排気の役目が入れ替わる


(2)ダクトの掃除



ダクトを使用しない換気方式のダクトレス換気は、当然ながらダクト掃除の手間がかかりません。また、ダクト式第3種換気はダクト内が汚れていても室内の空気に影響はありません。それはダクト式第3種換気のダクトが汚れた空気の排気用だからです。

一方のダクト式第1種熱交換換気は、排気用に加えて給気用のダクトもあります。


ダクト式第1種熱交換換気は給気・排気両方にダクトを用いる


給気用のダクトは汚れたままにしておけません。定期的な掃除が必須です。なぜなら、給気ダクト内の汚れを放置しておくと、そこを通っていく空気まで汚れてしまうから。

この給気ダクトの掃除は専門の掃除会社に依頼しなければならないため、金銭的な負担もあります。

(3)給気フィルターの掃除

第1種換気の本体には給気フィルターがついています。第3種換気の給気口にもフィルターがついていますが、目詰まりしやすいのは第1種換気です。

その理由は、第1種換気が機械給気というところにあります。第1種換気は機械の力で強制的に吸い込んでいるため、自然給気の第3種換気よりも汚れを集めやすいからです。給気フィルターに虫の死骸がびっしりついている場合もあります。

(4)熱交換素子の掃除

熱交換素子は、第1種換気に組み込まれている熱交換を行うための部材です。定期的な掃除が必要なほか、汚れがひどくなってきた場合は交換します。一方、第3種換気には熱交換素子がそもそも存在しないため、掃除の必要がありません。

(1)~(4)の内容を表にまとめてみました。掃除の手間が比較的少ないのはダクト式第3種換気です。


◎:掃除不要、〇:掃除が簡単、▲掃除の負担が大きめ ※ダクト式第3種換気システムのダクトは、製造メーカー・機種によっては清掃の必要有


このほか、24時間換気システムの中には、掃除のしやすさに配慮した製品もあります。
例えば、比較的掃除の手間が少ないダクト式第3種換気だと、日本住環境の「ルフロ400」は手軽に掃除しやすいよう、ドライバーなどの工具なしで分解できる造りになっています。構造もシンプルなので、専門知識がない人でも4ステップで簡単に分解でき、パーツも洗いやすいことが特徴です。


工具なしで解体でき、掃除しやすいルフロ400


分解手順は4ステップ。1.電源を切る、2.蓋を回して外す、3.ナットを外す、4.羽根を外す


また、第1種熱交換換気は給気フィルターや熱交換素子が目詰まりしやすいため、年に複数回の掃除を含めたメンテナンスが必要になる一方、ルフロ400は羽根が汚れにくく、掃除頻度は年1回とお手軽です。

実際どうやって掃除する? 掃除現場を取材してみた

札幌市の設備会社・札幌ニップロ(株)にご協力をいただき、ダクト式第3種換気の掃除現場を取材しました。
お邪魔した物件は、築20年ほどの戸建住宅。24時間換気システムの掃除は、住み始めてから1度も行ったことがありませんでした。

掃除を始める前に、室内の換気量調査を実施。排気グリルに風量測定装置をあて、室内の空気をどれくらい吸い込んでいるか調べます。


排気グリルの換気量を測定


その結果、なんと4ヵ所中2ヵ所の排気グリルは機能しておらず、室内の空気を全く排気していないことが判明。ほぼ機能していない排気グリルも1ヵ所ありました。
原因は、ファンや排気グリルなどに蓄積した約20年分の汚れです。


黒ずんだファン


汚れが付着した排気グリル


落ち込んだ換気性能を回復させるべく、掃除スタートです。取り外したファンと排気グリルは、バケツに張った洗剤に浸けながら洗います。


洗剤に浸けながらファンを洗う


また、ファンケースの内部やダクト内もブラシでこすったり、掃除機で埃を吸ったりしながらきれいにします。ちなみに、ルフロ400の場合、標準使用期間内(15年間)であれば大幅な換気量減少が認められないため、ダクト内の掃除は必ずしも行う必要はありません。


ファンケースの内部の汚れを除去


汚れが床に落ちないよう、カバー付きの掃除機で吸いながらダクト内を掃除


開始から約2時間。すべての掃除が終了しました。


掃除前後のファン


掃除前後の排気グリル


掃除前後のダクト内


きれいになった状態で、最後に換気量測定を実施。
その結果、機能していなかった排気グリルが復活し、家全体の換気量が掃除前の2.5倍になりました。


家全体の換気量が51㎥/hから124㎥/hへ向上


最後に札幌ニップロ様からご依頼主に、ファンの状態や掃除頻度について、
「ファンは問題なく動いているものの、20年以上経っているため、そろそろ入れ替えを考える時期」
「ファンから異音が聞こえてくると、問題が起こっている証。ちなみに、ダクト式換気だとダクトを通じてその音が家じゅうに響いたりするので異変が分かりやすい」
「掃除は可能ならメーカーの推奨頻度で、最低でも1~2年に1回は行ってほしい」
などの説明がありました。

また、依頼主様は「空気がちゃんと流れている感じがする」と早くも効果を実感。そして、「周りの知り合いも24時間換気システムを掃除していなかった。想像以上に汚れていることを教えてあげたい」と話していました。


ファンや排気グリルに付着していた汚れで真っ黒に染まった洗剤


ダクト式第3種換気システムは自力で掃除できるものが多いですが、長年掃除をしておらず汚れがたまっていることが予想できたり、掃除方法が難しい機種などでいまいち掃除方法が分からない場合は、札幌ニップロ様のような清掃のスペシャリストに力を借りるのも1つの方法です。

札幌ニップロ様、依頼主様、取材へのご協力ありがとうございました。

※札幌ニップロ・ホームページ https://www.s-nippro.co.jp/

最後に

24時間換気システムの掃除は室内の空気を良好に保つため、定期的に行う必要がありますが、少なからず手間がかかるのも事実・・・。
ただ、手間が少ない種類や、掃除のしやすさに配慮した製品を選ぶことで、負担を軽くすることができます。
新築・リフォームや買い替えで新しい24時間換気システムを選ぶ際は、ぜひ掃除のしやすさを基準の1つにしてみてください。

※企画・編集協力:日本住環境株式会社 https://www.njkk.co.jp/

この記事は連載コラム「住宅用24時間換気システムを考える」の第4回です。

「住宅用24時間換気を考える」シリーズ
24時間換気を住宅に設置することが法律で義務づけられていますが、「どこにありますか?」と住んでいる人に聞いても、「えーっ?どこにあるんだっけ」となることも。それぐらい、わたしたちは24時間換気のことを意識せずに生活しています。ところが、コロナ渦をきっかけに、24時間換気の果たす大切な役割がクローズアップされてきました。

そこで、住宅用24時間換気システムの開発・販売を長年行っている日本住環境(株)の協力で、24時間換気の役割から北海道に適した換気システムの選び方、メンテナンスなどをわかりやすくまとめ、連載記事としてお届けしています。

シリーズ「住宅用24時間換気を考える」
第7回 空気の汚れが見える!CO2モニターをリビングに置こう!~24時間換気を使いこなす~

第6回 24時間換気のメンテ問題を解消する取り組み 林基哉教授に聞く(2)

第5回 新型コロナの感染拡大防止に役立つ24時間換気 林基哉教授に聞く(1)

第3回 電気代が高い! 24時間換気システムを止めたら節約になる?

第2回 住宅の空気をきれいに~24時間換気を「性能・メンテ・価格」で比較~

第1回 【熱交換換気or第3種換気】住宅の換気システム、どっちを選べばいい?

2022年11月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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