Story 取材記事

シンプルを極めた心地よさ・美術館のような街中の3階建て住宅/札幌市

大きなビュー・ウィンドウから明るい光が差し込む2階のリビング。Yさんご夫婦は空間全体を見渡せるLDKがお気に入りです


以前は2階建ての賃貸住宅に住んでいたというYさん一家は、ご夫婦と小学生・中学生の4人のお子さんと、1匹の猫と暮らす6人家族です。ご夫婦の理想の住まいは、効率的に家事ができる動線で子供たちがのびのびと暮らせる家。

Yさんと設計・施工を担当したS・建築製作所 一級建築士・柴嵜雄次さんにお話をうかがいます。



住宅街の路地を進むと、ひときわ目を引く建物が現れます。斜めにカットされた部分は2階のテラスに光を届けるためのデザイン。1階の外壁は塗り壁で仕上げ、2階・3階部分は「コールテン鋼」風な色合いのガルバリウム鋼板を使用しました。

ファミリークローゼットとユーティリティー、家事楽を詰め込んだ1階スペース



(写真右)玄関ホールの左手に2階へ繋がる階段と夫婦の寝室があります。
(写真左)広々とした玄関土間には家族の趣味だというピアノが置かれていました。漆喰調の白い壁とフローリングのナラ材がマッチしてお店や美術館のような雰囲気です。玄関土間右手の引き戸を開けると、シューズクローゼットがあります。



シューズクローゼットの奥には洗面スペース、その奥にはランドリースペースが続きます。ホールからも出入りすることができる回遊式の配置で、帰宅後の手洗いがスムーズにできる動線です。



大人3人が並んで身支度ができる大きな洗面化粧台。



さらに奥に進むとランドリースペースが広がり、物干し用のアイアンポールが設置されています。浴室・脱衣所と直線で繋がり、お洗濯や着替えがしやすい配置に。それぞれ大容量の収納棚が造作されています。



ランドリースペースを抜けた先には驚きの空間が広がっていました!
約7.5帖の大きなファミリークローゼットは取材陣がこれまで見てきた中でも一番の広さです。

「ファミリークローゼットは居室の中で一番広く空間をとり、ランドリースペースとホールに抜けられる配置で回遊式の動線も実現しました」と柴嵜さん。

6人分に仕切られたハンガーラックの下には、奥さまが見つけたという可動式のボトムスハンガーがキレイに収まっていました。床に物を置かない収納で掃除がしやすくなっています。



ご夫婦の寝室は、落ち着いた色合いのクロスとダウンライトでリラックスできる空間に。ベッドのヘッドボードは階段下のスペースに納められ、ベッド奥には季節家電をしまっておける空間があります。随所に限られた空間を有効に使う工夫が凝らされています。

大きな窓とテラス、家族の様子を見守ることができる2階LDK



キッチンから見渡せるリビングダイニング。



ご夫婦こだわりのキッチンは、タカラスタンダードのセミオーダーです。手入れが楽なステンレストップで家族6人分の食器を並べても十分な広さがあります。

メキシコの家電ブランドmabe(マーべ)のアイスディスペンサー付き冷蔵庫は、家づくりの途中で設置が決まったのだそう。背面には給水栓が設置されています。

広くて使いやすいキッチンは子供たちもお手伝いがしやすく、家族全員で連携して食事の支度ができるようになりました。



カーテンで目隠しされているのは大容量のパントリー。



テラスから日差しが差し込むダイニング。木製ルーバーで緩やかに階段室と仕切られています。



ダイニングから出入りができる洗面室にはドアが設置され、左手の引き戸の先にあるトイレからの音漏れを防ぐ役割を果たしています。



家族のお気に入りスポットだという2階テラス。斜めにカットされた開口部からの採光で明るく、壁面が視線を遮るプライベートな空間になっています。「週末には家族でバーベキューを楽しんでいます」と奥さま。



家族が集まる2階LDKは通常よりも天井が高く設計されています。リビングはダイニングよりもさらに高さを出しゆったりとした空間に。
天井高に変化があることで視線が抜け、視覚の効果でより奥行きを感じられます。

プレイスペースと子供たちの寝室で構成された3階



遊びに来る友達にも大人気だというプレイスペース。2階リビングの天井高を確保した分、プレイスペース部分は天井が少し低くなっています。おこもり感があって遊びに熱中できそうです。



4部屋それぞれクロスの色が違う3階の居室。子供たちはリビングやプレイスペースで勉強やゲームをした後、プライベートな空間でそれぞれの時間を楽しんでいます。

Yさんにお聞きしました。

Q / S・建築製作所との出会いと選んだ決め手を教えてください。


ダイニングから見た階段室。考え抜かれた間取りや照明プランも依頼の決め手だった


家を建てるにあたって色々な住宅会社の施工例を見ていたのですが、その中で特に惹かれたのが柴嵜さんの設計した住宅でした。

クロスの張り合わせ部分など、細かな所の仕上がりが本当にキレイなことに驚きました。デザイン性だけでなく、確かな職人の技術が感じられる施工力にも惹かれて、柴嵜さんにお願いしようと決めました。

Q / 間取りの希望はどのようなものがありましたか?

家事が楽にできる間取りが一番の希望でした。
以前に住んでいた部屋がテラスハウス風の2階建て賃貸だったのですが、家族6人分の洗濯物を持って階段を登り降りするのが本当に大変で、1階で洗濯や身支度が完結する間取りにしてもらい、本当に使いやすく満足しています。

Q / 住み心地はいかがですか?



不便を感じることなく快適に暮らしています。街中の限られた坪数だったので、夫婦の部屋やテラスは難しいのではないかと思っていたのですが、柴嵜さんが叶えてくれました。

テラスがあるおかげでLDKが明るくなって、子供たちものびのび過ごせていますし、猫も喜んでいると思います。自分たちでは考えつかないアイデアをたくさん提案してくださり、期待以上の住まいになりました。


柴嵜さんの提案で設計されたテラス。人工芝はご主人自ら敷いたもの


奥さまと遊ぶスコティッシュフォールドのダリくん。毎日家の中を動き回って遊んでいます


柴嵜さんにお聞きする設計のポイント

制限がある中で、ご希望の要素をどのように落とし込めるかが勝負でしたが、街中のアーバンコートという形で提案ができました。

Yさんの希望や、住まいに対するビジョンが明確にあったので、最初の案をもとに数回の変更を重ねるだけで、比較的スムーズに進めることができたと思います。

記者の目

住まいの設計を手掛ける時、すぐに帰ってきたくなるような遊び心のある仕掛けをするようにしていると話す柴嵜さん。

他の住宅とは一線を画す意匠性と機能性を兼ね備えた住まいに「制限がある中で見事に形にしてくれて、予算内に収めてくれました」とご主人も大満足の様子でした。

「猫をもう1匹飼おうか悩んでいます」と話すYさん一家の暮らしは、快適な住まいと共にますます賑やかで楽しいものになりそうです。

ライター/佐藤華代子


2024年06月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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