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北海道初、当別町に建つ伊礼智氏のi-worksは創作家具で地域性豊か【後編】


辻野建設工業(当別町)の施工により、北海道初となるi-worksの家が2024年 9月に完成、10月7日から1年間限定で公開中です。


外壁に道南スギの羽目板を採用したi-works1.0モデルハウス外観


日本を代表する建築家・伊礼智さんが推進するi-worksプロジェクトは、2012年にスタート。住宅の細かな部分を標準化することで、コストを抑えつつ高い品質を実現する家づくりをコンセプトにしており、プランは延床30坪ほどで、「ちいさくても豊かな暮らし」を提案する規格型住宅です。

辻野建設工業と伊礼さんの家づくりは、どんな風に進んだのでしょう。完成したモデルハウスを拝見しながら、同社の辻野浩社長と、現場管理を担当した高橋慧(さとる)さんにお話をうかがいます。

この記事は2024年4月に掲載した
北海道初i-worksの家づくり【前編】
の続編です。

JR当別駅近く・札幌へのアクセスも良好な場所で建てるi-worksの家

公開中のモデルハウスはJR当別駅から徒歩数分の便利な立地で、駅前公園の豊かな緑を借景したランドスケープも魅力です。


写真は同社提供 撮影/株式会社 西川公朗写真事務所 西川 公朗氏(以下西川氏)


公園側から見たモデルハウス。屋根には太陽光パネルを搭載、自家発電で日常をまかない、余剰分は売電できる省エネ住宅です。


撮影/西川氏


約140坪の広い敷地には造園家でOne&Nature(札幌市東区)代表の川出健太郎さんによる、北海道固有の植物を使った庭が提案されています。

i-works1.0をベースにした規格を風土に合わせてカスタマイズ



i-works1.0はコンパクトながら吹き抜けのおおらかな空間設計が魅力です。



大きなテラス窓からは庭の緑と、その先に続く公園が眺められます。



天然木の温かみあふれる室内。床には道産のナラを、巾木には道産のシラカバを使っています。薪ストーブはコンツーラ(C51ヤンソン)です。


シウリザクラの木を使ったダイニングテーブル。全てオリジナルの1点ものだ


キッチンやダイニングテーブルセット、ソファーや収納、建具類全般は、これまでも家具提携や設計からの共同プロジェクトなどの協業を重ねてきた家具工房・旅する木(当別町)が製作しています。



i-worksでは家具などを地元の工務店や家具工房に依頼。地域性や、住み手の個性が出てくる楽しさも魅力です。


ハーフユニットの浴室。壁にはヒノキが使われている


小屋裏のクーラー+パッシブ換気で快適な空気環境を実現



階段を上がったところにある居室。引き戸を開放するとオープンな空間として使えます。小屋裏に続く梯子を上ってみましょう。



小屋裏には1台のクーラーが設置されていました。そして、小屋裏の床には所々に開口部が見えます。



隣の居室をのぞいてみると、天井にさきほどの開口を発見しました。小屋裏クーラーの冷気はこの穴を通じて降りてくる仕組みです。



こちらは主寝室。主寝室も天袋の天井が開口になっていて、そこから冷気を採り入れます。

収納や建具は全て旅する木の製作です。柱や天袋を支える長押し(なげし)には道産のサクラを、引き戸にはシナベニヤを使っています。2階は床も巾木も木色に変化のある道産のシラカバを採用しています。



主寝室はキャットウォークにつながっています。


2階ホールからの眺め


クーラーの冷気は吹き抜けを介し、さらに1階に伝わります。これとは逆に、冬は薪ストーブの暖気が吹き抜けを通じて上階に上がっていく仕組み。さらにパッシブ換気システムが家中の空気の循環を促します。

始まりは1本の問い合わせ電話

伊礼智氏が提案するi-worksの規格型住宅は、省エネでコンパクト、デザインはすっきりと洗練されており、周辺環境との調和も重視。地域性を反映した内外装で、辻野建設工業が建てる住宅と共通するコンセプトが多くあります。

そんな同社にかかってきた「i-worksの家を建てることはできますか?」という一本の電話から、このプロジェクトは始まりました。


左・辻野社長、右・高橋さん


辻野社長 弊社の若い設計者の育成にもつながると考えて、このプロジェクトの参加を決めました。

伊礼さんとの家づくりはどのように?

辻野社長 伊礼さんはパッシブ換気システムの採用が初めてだったので、冷暖房も含めて効率の良い設計を一緒に考え、1階の薪ストーブのほか、小屋裏にクーラーを設置することにしました。全館空調をエコな仕組みで行うようなイメージです。


戸袋からガラリをひき出したテラス窓


高橋さん 今まで見たことがないくらいの図面の多さに驚きました。図面だけで現場の人間が作業できるよう、伊礼さんが用意してくれたものです。1つのアイテムに対して、4枚は図面がありました。

例えばリビングのテラス窓は、内側から障子、網戸、ガラリ、サッシの4枚構造になっていて、それらすべてがキレイにおさまるように戸袋をつくっています。

全て木で作るため、こうした「おさめ」の作業が現場では特に苦労しましたが、自慢したくなるほど美しく仕上がったと思います。


障子をひいたテラス窓。上部には頑丈な梁を渡したキャットウォークがある


また、積雪量の多い当別では、構造計算上、吹き抜けに構造梁を1本入れなくてはならなくなり、その梁を生かして提案したのがキャットウォークです。窓からの眺めを楽しんだり、リビングの家族とコミュニケーションをとったりと、色んな使い方をしていただけます。

北海道でi-worksが見れるのはこのモデルハウスだけ!


撮影/西川氏


高橋さん 季節のイベントや見学会をこのモデルハウスで開催します。i-worksのシンプルで機能的な間取りや、丁寧におさめた住空間を、ぜひ現地で見ていただきたいです。皆さまのご来場をお待ちしております。

【断熱・気密】



UA値 0.23
基礎 (外)スタイロフォーム100mm+(内)スタイロフォーム50mm
(内)ブローイング120mm+(外)ネオマフォーム60mm
屋根 (内)ブローイング120mm+(野路上)ネオマフォーム100mm

i-worksモデルハウス


撮影/西川氏


住所:北海道石狩郡当別町白樺町59‐51
お問い合わせ:0133-23-2408

写真提供 株式会社 西川公朗写真事務所 西川 公朗氏
取材写真 スタジオスーパーフライ 大道貴司
記事 iezoom編集部 松下綾

この記事は2024年4月に掲載した
北海道初i-worksの家づくり【前編】
の続編です。


2024年11月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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