熟練大工が引退し、若手大工は育っていない…人手不足や若手の育成不足に工務店の危機感はかつてないほど高まっています。1社単独では難しくとも、職業訓練校と連携したり、大工同士が触れあい腕を磨く機会をつくることから始めようと地元ビルダーが手を取り合い、若手の育成に取り組んでいます。そうした活動の1つで、今年第2回目となる「削ろう会in北海道」が6月に岩見沢市内のイベントホール「赤レンガ」で開催されました。
「削ろう会」は北海道ビルダーズ協会が主催、大工ネットワーク北海道と北海道職業能力開発協会の共催で行われています。
大工ネットワークは会社の枠を超え大工職人が情報交換できる横断的組織で、職場環境の改善や職人の地位向上を目指し2017年に創立され、昨年から大工同士の技術研さんや交流の場として「削ろう会」を企画・開催しています。
マイクロメートルの薄さを競う!
競技は切れ目なく削り出された削りくずを3か所計測し、マイクロメートル(1マイクロメートルは0.001mm)単位の薄さを競います。iezoom掲載工務店さんからも若手はもちろん、中堅・ベテランを含め、多くの大工さんが参加しました。
こちらは丸三ホクシン建設(石狩市)の大工さんたち。真剣なまなざしに取材者も息を殺して見守ります。一人ひとりに先輩大工が丁寧に指導する様子は微笑ましく頼もしく、大変印象に残りました。
こちらは渋谷建設(函館市)の大工さんたち。女性の若手大工さんも肩を並べて参加しています。最近の取材では、大工志望の女学生の姿を見かけることも多く、女性が職人として現場で働くことが珍しくない時代が来ているように思います。ベテランの方たちも腕を振るっています。
こちらは三五工務店(札幌市)の大工さんたち。(上)きれいに削り上がった削りくずが切れないようにもう1人が端を持ってサポートします。(下)鉋の調子を整えながら木と向き合う作業は集中力を要し、静かで凜とした時間が流れます。
こちらは須藤建設(伊達市・札幌市)の若手大工、山本純也さん(22歳)。「削ろう会」についてお話をうかがうと、「他社の大工さんにも技術を教わることが出来る貴重な機会。鉋という道具一つをとっても奥が深いということを実感しています。こうしたイベントを通じて、一般の人や子どもにも大工の世界を知って、興味を持ってもらいたい」と話してくれました。
鉋削りのレジェンドが集結!実演は大人気
大会には社寺建築専門の宮大工で鵤工舎創設者の小川三夫棟梁や、子息で鵤工舎代表の小川量一さんも駆け付けました。鉋名人として知られる川口康弘さんによる研ぎの実演や、削ろう会蔵王全国大会優勝者の久保正幸さんによる削りの実演が行われると多くの人だかりができ、息を呑むような技の披露に注目が集まりました。
一般市民が大工仕事に親しめるプログラムやブースも充実
一般の方が参加できるちびっこ大工のコーナーには北海道職業能力開発大学の女子学生の姿が。「授業の一環でやったことはありましたが、鉋を引くのに力が要るし、難しいです」と言いながらも、作業を楽しんでいる様子です。
会場には大工職人だけでなく、銘木を使った箸づくり、削りくずを使った削り花づくり、幼児用向けの削りくずプールと、一般市民や子どもを対象にした無料体験コーナーが設置されていて、参加者は楽しそうに作業に取り組んでいました。
屋台やキッチンカーなども出ていて、参加者は合間に小腹を満たしながらイベントを楽しんでいました。
今大会の優勝者は個人で参加していた山口博之さん。その記録は3か所とも6マイクロメートルの合計18マイクロメートル(0.018mm)でした!
今大会に向け仕事の空き時間に練習を重ねてきた参加者も多く、今後はますます個々人の記録更新が期待できそうです。
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2019年10月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。