Q&A いえズームQ&A

1 暖房 床暖房は必要?メリットとデメリット

床暖房に興味のある方。多いようです。

寒い家に住んだ経験のある人から「キッチンやお風呂などで、特に足元が冷え冷えするのはイヤだ」というお話を何度も聞いたことがあります。

足元が暖かい床暖房が良い!床暖房が得意な住宅会社に家づくりを頼みたい、と、住宅会社選びの基準に「床暖房」をあげる方も少なくありません。
暖房方式の1つである「床暖房」は果たして良い選択肢なのか。メリットとデメリット、導入時の留意点などをプロに伺います。


佐藤昭博社長

回答1伝導熱と輻射熱によるやんわりとした暖かさが魅力。送水温度の低さがポイントです。

札幌市 ブレイン札幌 佐藤昭博社長

当社は住宅に全室遠赤外線床暖房を積極的にご提案しています。遠赤外線によって、室内にある物体の表面温度があがります。その熱が輻射熱です。輻射熱は反射を繰り返したくさんの輻射熱をお部屋全体に作り出します。伝導熱と輻射熱のW効果で、床から天井の隅ずみまで均一な暖かさを発揮します。そうなるとやんわりした暖かさが部屋中に行き渡るのです。

また、ストーブのような空気を直接暖める温風式とは違って、お部屋の乾燥が少なく無風のため、ダニやホコリ・ペットの毛を巻き上げる事がありませんので、臭いや乾燥に敏感な方・アレルギーや喘息の方にもお勧めします。部屋に暖房機がないため家具のレイアウトがしやすくなりますし掃除も楽です。耐荷重は300キロあるので大丈夫です。

ブレイン札幌は高断熱・高気密の住宅を建てさせていただくので、年間の光熱費は当社のお客様の平均で18万円前後です。一般的な床暖房の送水温度は60℃前後で、足裏が温かすぎて不快に感じるほか、暖房費がかさむ傾向にあります。しかし、当社の床暖房は送水温度が28℃~ 40℃以下の省エネ設計です。断熱性能が高いので30℃程度の温度でも十分家が暖まるのです。

だからお財布にも優しく、床が暖かすぎることによる不快感や低温やけども生じません。お出かけの際にも外部にある室外機に安全装置がありますので異常な時には強制停止を行う安全構造となっています。ブレイン札幌の遠赤外線床暖房マットは、基本的にメンテナンスフリーです(循環不凍液が定期的な入れ替えが必要です)。


三好賢太 設計室長 設計プランナー

回答2各暖房方式のメリット・デメリットを比較検討しましょう

札幌圏 株式会社リビングワーク 三好賢太 設計室長 設計プランナー

断熱・気密性能を高めると、足元が寒い、光熱費負担が苦しい、寒い部屋がある、といった問題が解消するので床暖房の必要性が薄れます。暖房の方法はパネルヒーターでもエアコンでも、床暖房でも良くなります。そういう意味で当社(リビングワーク)は、暖房方式はお客様と相談した上で柔軟に対応しています。

家づくりは予算の配分も重要。肝心の断熱・気密性能にしっかり予算をかける、腕の良い大工さんがいる住宅会社に依頼するというのがいちばん大切で、その上で床暖房を導入するかどうか検討されると良いかと思います。

おすすめは、高断熱・高気密の家にして寒さの問題を解決した上で、床材をシートフロアから無垢材に変えることです。無垢の床材は熱源ではありませんが、シートフロアと異なり、足裏の感触が木のぬくもりで暖かく、実感として足元のひんやり感はなくなると思います。

お客様に「床暖房にしたい」とはっきり要望をいただくこともあります。当社でも床暖房を採用した実績はありますし可能です。当社の家づくりは、お客様の要望をしっかり理解することを前提にしています。「床暖房にしたい」と要望されたお客様の中には、明確な理由がある方と、そうではなくて、床暖房を売りにする会社で説明を受けてきて、何となく床暖房が良いかな?と思われている方がいらっしゃいます。その場合は断熱気密と暖房の関係をご説明し、その上で一緒に答えを導き出すように心がけています。

断熱・気密性能が高いと、北海道でもエアコン一台でも家全体を暖房できます。弱い暖房エネルギーでも十分家を暖めることができるからです。私の自宅もエアコン一台です。私の家の実感では、十分快適に過ごせます。でもエアコンの送風が嫌いな人、室温を上げて、真冬でも半袖・短パン、裸足など薄着で過ごしたい人、家族に寒がりな人がいる場合などにはおすすめできないかなと思います。個人の感覚・好みも踏まえた暖房の計画が必要です。

エアコンは冷房にも使えますし、設置コストも安い。灯油セントラル暖房などのように、灯油タンクを敷地内に設置しなくてよいといったメリットもあります。暖房方式に限らず、納得・満足のできる注文住宅づくりは、このように、さまざまな選択肢のメリット・デメリットを一つひとつ検討し、選んでいくことで実現できると思います。


石井靖久代表

回答3高断熱・高気密の住宅であれば床暖房は必要ありません

帯広市 株式会社石井建設 石井靖久代表

断熱・気密性能が低い家の場合、足元の寒さが気になるということはあると思います。しかし、高断熱・高気密の住宅であれば、足元が冷えるという問題が生じません。石井建設の場合、外壁の断熱材は壁内に高性能グラスウールが140ミリ入ります。断熱性能をさらに追求したいお客様には付加断熱をご提案します。サッシはペアにするかトリプルを選ぶかはお客様とご相談です。床は300ミリの高性能グラスウール、天井はブローイングを400ミリ以上施工します。

そのため、床暖房を望まれる方には、まず「断熱性能が十分だと床暖房は付けなくても大丈夫」とお伝えします。また、床暖房の設置がコストアップになること、将来、故障した際などに、床暖房は床下の中にあるので修理が簡単にはできないというデメリットもあります。なので当社としては床暖房は推奨していません。でもご希望になる方には、こうした事情をお伝えした上で、ご要望にお応えして設置させていただきます。


佐藤博社長

回答4室内に暖房器具がないメリット

千歳市 協栄ハウス 佐藤博社長

北海道民の多くは、一年のうち半年以上、住宅で暖房機を使っています。寒い家で暮らした経験のある方、そして冷え性で特に足元の寒さを避けたいという方に「床暖房」は大変喜ばれます。ですが、暖房機を検討する前に、まず断熱・気密性能の高い家を建てて、家じゅうが暖かく、暖房費が安くなる家を実現する必要があります。その上で、どの暖房方式を選ぶか、ですが・・・

エアコンによる温風暖房は室温に温度ムラが生じやすい面があります。天井部の温度が高いと顔がほてったり、のぼせたりしやすくなります。一方、協栄ハウスの温水式床暖房は「低温水床暖房」。遠赤外線のふく射熱と、直接肌から伝わる伝導熱で足元からの心地良い暖かさが実感できますし、不快な風を感じることもありません。室内でものを燃やす暖房ではないので部屋の空気を汚さない、においや運転音もありません。協栄ハウスオリジナルの床暖房は、一階だけでなく二階も含め、家の延床面積の約95%をパイピングしています。しかも150mmピッチという狭い間隔で張り巡らせているので、床面についても温度ムラがほとんど生じません。床暖房の熱源も電気だけでなくガス・灯油を選択することもでき、光熱費負担も抑えることができます。

壁際や窓の下に設置する暖房機は、かなり場所をとります。掃除の手間もかかります。床暖房であれば、暖房機は室内にありませんので、家具や観葉植物などの設置が自由にできますし、暖房機についた埃などの掃除の手間も削減できます。やけどなどのリスクも減らせます。

協栄ハウスで家を建てて頂いているお客様の大半が床暖房を選んで頂いています。床暖房のパイピング工事を自社の職人が行っており、経験豊富なので、施工精度やコストの面でも床暖房をおすすめしやすいのです。またパイピングは部屋毎に分岐させているので、万が一故障が生じても部屋単位で修理ができます。


藤井光雄社長

回答5断熱気密性能が高ければ、暖房は簡素でも十分暖かく、省エネな住まいになる

旭川圏 株式会社藤井光雄工務店 藤井光雄社長

隙間風が入ってきて、足元が冷える、断熱気密性能に問題がある家の場合、床暖房を導入すると、住んでいる人にとって「足元が暖かくなった」という実感が強いという意味でとても効果があります。だから北海道でも以前、床暖房が流行しました。断熱気密性能が低い、根本的に寒い家を断熱気密性能の向上で解決するということではなく、床暖房で暖めることによって対処する、そのことによって家は暖かくなるわけです。

もちろん家の断熱気密性能が低いと、家を暖めるために多くのエネルギーが必要になるので、光熱費負担も増えますし、環境負荷も高くなってしまいます。

断熱性能が低い家は、壁や床の温度が低いから冷輻射(温度の低いものに身体の熱を奪われる)が発生します。なので床暖房で暖めてあげる必要があります。一方、断熱気密性能が高い家は壁も床も暖かいので、あえて直接床を暖めてあげる必要がありません。

床暖房のデメリットは、身体に触れる部分(足の裏)を直接暖めてしまうことにより、不快感や、身体のだるさを感じたりすることです。当社も300ミリ断熱を導入する以前は、各部屋に暖房機を置くような設備計画で家を建てていました。ですが300ミリ断熱にしてからは、家に1台の暖房機さえあれば家全体が十分に暖かくなると確信できましたので、リビングなどに床暖房を設置することはなくなりました。

●家の断熱気密性能が低いと暖房器具を強化しなければ家が暖まらない。

●家の断熱気密性能が高ければ、暖房器具はシンプルで簡単なものでも十分暖まる。

ということです。ただし、藤井光雄工務店でも、玄関の土間などは床暖房パイピングすることで、雪の付いた濡れた靴が乾きやすくなるといったメリットがあるので、部分的な床暖房は取り入れることもあります。

いえズーム編集部から一言

1980年代から、北海道の住宅の断熱・気密性能は劇的に進化しています。それまでの家は、断熱性能が低いため家じゅうが寒く、特にストーブを置いていない部屋、お風呂、トイレ、キッチンが寒いとか、冷気がたまる足元が寒い、という経験を多くの人がしています。その状況下で床暖房を導入し、足元を中心に暖房すると、少なくとも足元が暖かいという実感が強くなります。室内の寒さを解決する方法として、床暖房は大変人気になりました。

ですが、この問題の根本は、住宅の断熱・気密性能の低さにあります。断熱性能が低いから室内が冷えやすく、暖房への依存度が高まるのです。また床暖房の送水温度を高くしないと室内がなかなか暖まらないので、送水温度が高くなり、その結果足元が暖か過ぎて不快に感じたり、床に長時間寝転がったりすると低温やけどなどの問題も生じました。

つまり、この問題は、断熱・気密性能を高めることで暖房への依存を減らし、省エネ、そして室内の温度環境を改善することが大前提です。住宅の断熱・気密性能が一定レベルを超えてくると、冬でも室内の温度はなかなか下がらず、少ない暖房エネルギーで家全体が暖まります。その結果、暖房機は小型化・低出力化しても大丈夫になります。足元が冷えない住宅なら、床暖房が必須ということでもなくなります。

ただし、現代でも床暖房が根強い人気を得ているのは、室内に暖房機を設置しなくていいので家具のレイアウトの自由度があがる、パネルヒーターなど暖房機の掃除がいらない、エアコン暖房のように風を感じない、といった魅力があるためなのです。

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