Story 取材記事

断熱リフォームが安くできる理由.ムダ工事をしないから!-札幌・新琴似の家

「いま住んでいる家を暖かくしたい。でも大きなお金をかけるなら我慢する」
リフォームセミナーに参加してくださった人たちや、取材でおじゃました家では、こういった声をよく聞きます。

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「暖かい家を多くの札幌市民に」という思いを共有する研究者とリフォーム店(あったかリフォーム倶楽部)が、昨年2014年から2つの断熱リフォームの研究開発を進めてきました。
その1:外壁張り替えのタイミングで屋外側から行う断熱改修
その2:外部は一切工事せず室内側だけで行う断熱改修

その1の外壁張り替えといっしょの断熱改修の例は、こちらをご覧ください。
今回はその2の室内側だけで行う断熱改修を行った住宅を、工事後1年を過ぎてから取材しました。
お客さまのナマの声と、ポイントになる工事について整理したいと思います。

外壁や屋根に手をつけず断熱工事を行う!

2015_1011kawai02soto.jpg〈外観は手をつけていない。数年前に樹脂サッシに交換済〉

いちばんの特徴は、外壁や屋根に手をつけないため、工事費がとても割安になることです。
今回取材した札幌北区の遠藤邸は、キッチンやトイレの交換と内装工事を含めても300万円台で終わっているそう。

断熱リフォームに特化して『古い家を暖かく』をかかげてリフォーム・リノベーションの仕事をする、あったかハウス・河合建築事務所の河合良夫代表は「外壁サイディングが交換の時期を迎えていたり、屋根がスガモリで工事しなければならないなどの状況なら、『外壁張り替えといっしょの断熱改修』をおすすめします」と説明します。

2015_1011kawai07wa.jpg〈床の間を多目的収納に変更した〉

『室内側だけで行う断熱改修』はどんな家に向いているのでしょうか。
河合さんが続けます。
「札幌のお宅は、外壁の張り替えや屋根の葺き替え・再塗装を1回、2回していて、屋根も壁も劣化がない場合が多いです。また昔のモルタルがしっかりしていて、サイディングを張る必要のない家もあります。
遠藤さま邸はモルタルがしっかりしており、屋根はすでに葺き替え塗装もしていい状態でした。窓も樹脂サッシに変わっており、外部から工事する必要がなかったのです」

もうひとつ、この工法の特徴といえば、もう使わなくなった2階に手をつけず、1階だけ暖かくすることができるという点です。

ポイントは「気流止め」を室内から施工

2015_1011kawai03kiryu.jpg〈床下と天井の上に入れた気流止めの例.白枠部分が気流止め材〉

工事のポイントは、外壁から行う断熱改修と同じく「気流止め」です。
寒さの原因は、見えない壁の中を冷たい空気が床下から天井に抜けてしまうこと。これを止めない限り、壁の中に新しい断熱材を入れても、壁に断熱サイディングを張っても暖かくなりません。

ただ、室内側からの工事は屋外から行うよりもさらに難しく、難しいだけに手間がかかります。
壁クロスの下に張ってある石こうボードを床付近で切って、壁の中に気流止め材をつめていく。床下の断熱が効いていなければウレタン吹きつけや床を全部やり直して断熱床をつくります。
床の断熱は、とても重要になります。

2015_1011kawai06wc.jpg〈トイレは床をはがしたので断熱を全部やり直しピカピカに仕上がった〉

すると驚きの結果が!

遠藤さんに暖房費が改修前後でどう変わったかうかがいました。 すると驚きの結果が! 暖房と給湯の灯油料金が改修後に4割も減っていたのです。

2014年1月:16,000円、2月:26,000円、3月:25,000円、合計67,000円
2015年1月:11,000円、2月:16,000円、3月:13,000円、合計40,000円

どちらの年も給湯に15,000円程度使われているはず。
灯油価格の変動を考え合わせても暖房費は4割近い削減になっています。

「暖房止めても暖かい」

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暖房はストーブ1台。奥さまによると、ストーブのたき方が変わったといいます。
「ネコがいるので外出時もストーブはつけっぱなしだったんです。ところが改修後はすごく寒かった寝室が暖かくなり、夜は暖房を止めるようになりました。それでも以前より暖かい」と断熱効果を説明します。
「河合さんが工事する前に"気流止めが大切"とおっしゃっていたんですが、この冬、その意味がわかりました。壁は気流止めを入れただけ、床の断熱をやり直した部屋もありますが、それだけで暖かく変わったのですから」とご主人。

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遠藤邸は昭和45年(1970年)の建物で、工事した昨年は築44年でした。
木造モルタルで三角屋根の札幌の特徴的な住宅。「敷地に余裕があるので、落雪屋根でも問題ないし、ボクはこの家が気に入っている」と語るご主人。いまやアンティークデザインとなった札幌の三角屋根をそのまま生かして暖かくなり、ありきたりですが「ネコ大喜び!」

記者の目

リフォームすると、たいていはサイディング壁に無落雪屋根に変わってしまいます。 雪処理などに悩んでいる場合はそれがいい方法ですが、昔のデザインを生かす方法もいいと思います。 断熱技術で札幌の古い家を暖かく。 ボクは好きですね。

2015年10月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

あったかハウス河合建築事務所の取材記事