山から木を切り倒すお誘い?
平成31年4月1日、元号が令和になると発表されたその瞬間。 私たちは、旭川駅から30キロ弱の距離にある、「江丹別の青いチーズ」で国内外でも有名な伊勢ファームさんの所有する森の中にいました。
この部分は、シラカバを切り出して長さ8.1mにカットした丸太です。15人くらいが一緒にこんな重たいものを500メートル以上運んだり・・・でっかいシラカバの木1本切り倒して人力で運ぶというのがどれだけ大変かw
まるで北海道の開拓時代の人たちのように?運んでおりました。なぜこんなことになったのか???お話しします。ぜひお読みください(笑)
それは1通のfacebookメッセージから始まった
2019年3月19日・・・私のスマホに、facebookメッセージで、気になる情報が飛び込んできました。旭川の住宅会社「アーケン」の藤原立人社長からでした。
「実は、今、旭川の江丹別で住宅を建てています。この家が凄くて、色々なプロジェクトが同時に動いています。その一つに、以前栗原さんにも話したシラカバプロジェクトがあります。テーブルや料理のお皿などに使う木材を、同じ江丹別の森にある白樺の木を伐採するところから作ろうという企画です。
シラカバの選定→倒木→製材→乾燥→部取り→家具屋で加工→現場でカウンターとして取付→シラカバ皿で料理と一緒に出して完成 こんな流れです。
そこで早速なのですが、4月1日(月)に江丹別の森できこりと一緒に木を倒木します! しかもその場でチェーンソーで製材して、乾燥工場まで運びます。 栗原さんも取材兼ねて一緒に体験しませんか? 道内の有名どころ設計士さんも数人来る可能性が出て来ました! どうですか! 面白そうでしょう?
旭川の住宅会社・アーケンの藤原社長とは?
このメッセージ!
内容もさることながら、送り主の嬉しそうな感じが伝わってきて、なんか確かに面白そうな予感がします。
メッセージの送り主。旭川の住宅会社・アーケンの藤原立人社長は元大工でハウスメーカーの設計・営業なども経験した住宅の専門家ですが、普通の住宅会社の社長とはちょっと違った面もある人です。
施工品質や住宅性能など、いわゆる住宅のスペックや箱のことばかりに目を向けるのではなくて、家を建てたい人が
「お総菜屋さんも併設した家にしたい」
「男の隠れ家的なカルフォルニア系ガレージが欲しい」
「おうちサロンで人を招待できるダイニングを作りたい」
「地下室や食品庫に家庭菜園で育てた野菜を保存して食の自給自足がしたい」
「ペットや熱帯魚との暮らしを満喫したい」
といった「施主が叶えたい夢や暮らし」があるなら、それを実現することにとても大きな喜びを感じるタイプです。
そしてそういう人柄や実行力に、周囲の人は惹きつけられ、気が付いたら山の中で一緒に木を切り倒したりしているわけです。
江丹別の森の中で現地集合!
正直、何が行われるのか半信半疑でしたが、朝7時。カーナビで旭川市江丹別町拓北の指定場所につきました。
天気最高!見渡す限り真っ白の雪、雪、雪。
春めいてきたとはいえ、朝ですからまだ少し肌寒いです。私は一番乗りでした。
続々とそれっぽい人が集まってきました。
スノーシューを装着した、本格的な装備の男性もいますが、ジーンズ姿の学生さんもいますし、女性もいます。私は旭川の人でもないし(小学生の頃は旭川に住んでいましたけど)、知っているのはこの真ん中で話している藤原社長とあと数人だけだなと思っていましたけど、あとでほかの人に聞いたら、みんな、この中の知り合いは2・3人くらいで、とりあえず集められた感が満載だったようですw 実は建築士、住宅会社、家具職人、家のオーナー、山のオーナー、きこり、メディア、学生さん、地域おこし協力隊のメンバーなど多彩な顔ぶれでした。
冒頭、みんなに挨拶しているのが中央の藤原社長です。
家づくりを地元の木材を自分たちで切り出して使うところから始めて、地元の人が地元の木材の魅力に気づき、発信もしていくのが白樺プロジェクトであること、そしてアーケンが進めている「食から創る家づくり」のプロジェクトの一つとしては、5.5メートルという長さのカウンターを作るうえで、そんな木材は売っていないので自分たちで調達する、という趣旨でもあることを説明されました。
左の若い男性は、本日のガイドでもあり、この森の「山守(やまもり」であり、木こりであり、youtuber(ユーチューバー)でもある清水省吾さんです。
なんか、朝1のあいさつから凄くうれしそうでテンションmaxです!どうやら清水さん的には、普段、自分が心を込めて手入れしている、たいていは一人で作業している「職場」にこんなにたくさんの人がやってきて一緒に作業できるってことで、ものすごくうれしいようです。
「今日は下見もしていません。今日収穫できる木がどこにあるかわかりません。向こうの林です。25センチ、30センチくらいの直径の白樺で、6メートルくらいでできるだけまっすぐな白樺を選びます。みんなで良いシラカバを探しましょう。普通の林業者から見ると何をやっているのか?と思われるような内容で前代未聞かもしれません。私自身、いつも木を森から運び出すときに重機は使わず担いだりして運び出しています。作業はその都度お話します。では行きましょう!」
ということで歩き出す皆さん。ここ、夏は伊勢ファームさんの牧草地です。途中、クマの足跡らしきものも見かけながら…しかもドローンも追跡してきます。
なお、伊勢ファームさん、特に伊勢昇平さんの全面的なバックアップなしにはこのプロジェクトは成り立ちませんでした。 フィールドを提供してくれたのはもちろんですが、江丹別のブルーチーズがANAとJAL国際線ファーストクラス機内食に採用されたり、江丹別発でいろんなことを実現できるということを、自ら率先し実現している江丹別の若きリーダーです。
伊勢ファームのブルーチーズドリーマー 伊勢昇平さんの公式ブログはこちらです。
皆で、理想のシラカバを探し始めます。5.5メートル以上。太さ25センチ以上。できるだけまっすぐ。姿も美しいもの。そして何よりも、その木を伐採したときに、そこに風の通る道ができてしまって、弱い木が負けてしまったりする心配のない木を選ぶことなどのポイントを教えてくれました。
いくつか候補の木がありましたが最終決定したのはこの中央の立派なシラカバ。
木を伐採するために、根元の雪を掘っていきます。4月ですけど大人の身長くらいの深さがありました。交代しながらみんなで雪かきです。
当麻町の森で、木こりになることを目指している若い男性2人にも、そして参加者みんなにも、木の伐採の方法を説明する清水さん。
特にどちら側に倒すと安全か、無事ほかの木にひっかかることなく地面まで一発で倒せるか、ほかの木を傷つけないか、みんなに説明しつつ一緒に考え、今回は多数決で倒す方向を決定しました。
面白いトークを炸裂させていた清水さんも、いざ木の伐採になると眼光鋭く、細心の注意を払いながらの作業になりました。
実は伐採の決定的瞬間。私はレンズ交換していて、撮れませんでした。動画撮影、ドローン撮影のプロの方々がその模様はしっかり撮影してくれていたので、後日、ここでもその動画紹介できるかなと思います。
あーーーっという間にスムーズに倒れて、みんなも拍手!清水さんもほっと一安心でシラカバに抱きついていました。
シラカバ自体は長さ10メートル以上あったようです。どこをカウンター用に切り出すかを検討中。
きれいな断面。チェーンソーが切断できる丸太としては太すぎるくらいのシラカバでした。切るのも大変!
丸太のまま運ぶと、キロではなくトンのレベルなので、森の上で数枚にスライスというか、製材する必要がありました。半端じゃない重さだったんです。
チェーンソーを何度も給油しながらの製材作業
木を伐採する作業より、森の中での製材のほうが大変。
チェーンソーの刃も研ぎなおさないと、切れが悪くなるので、木こり見習いの若者2人に、やり方を教えてチェーンソー研ぎを担当してもらっています。こうみるとベテランと新人のウェアのオレンジ色がだいぶ違いますね。
でも本当に大変だったのは、これからでした。
北海道開拓の歴史?
多少でも地面に傾斜があるうちはこんな感じで勢いがついてみんなの顔にも笑顔が浮かびます!
でも水平、あるいはやや上り坂とかになると一気に減速し、苦渋の顔になります。私も足腰がパンパンになりました。雪原を歩いているのに暑くて
3往復くらいしたような気がしますがもはや記憶も曖昧です。オーナーさんも頑張っています。
最後まで木を運んだメンバーが、雪原でバテバテになって動けない状況の時に「せっかくだから集合写真撮りますか?」ということでの1枚です。いい笑顔!
別動隊は次のミッションに移動しているので全員ではないです。
木を山からおろしたらもうみんな腹ペコ。実はみんな楽しみにしていたことが・・・江丹別の青いチーズ入りの特別ピザが待っているのです。
アーケンさんがいつも家づくりで連携している旭川の塗装職人さんが、ピザ窯でピザづくりを担当。
伊勢ファームさんの江丹別の青いチーズ。うまそうだー!
ピザが焼きあがるそばからどんどん皆さん食べていきます
木を切る前は知らない人同士だったメンバーも、ハードな体験を共にクリアして、一緒においしいピザも食べて、なんか一体感が生まれました。
おいしいピザを食べながら
札幌の建築家さんが「チェーンソーが欲しくなった!」「私たちもお施主さんと森で木を切り倒して家に使ってみたい」
旭川の学生さんが「地元の木を生かすプロジェクトに感動した」
旭川の動画撮影会社さんも「今日の動画、ドローン映像も含め、このプロジェクト、情報出していくのでお楽しみに」
当麻町の地域おこし協力隊さんは「林業もハンターも経験あるので、町おこしも併せて今後も関わりたい」
清水さんに触発されて旭川に移住、この地で宿を開業しようと考えている方は「江丹別には面白い人がたくさんいる」
江丹別で、同じくチーズを製造・発売する荒川牧場さんも商品の魅力を語ったり、
清水さんのファンが、清水さんに会えた感動を語ったりと大いに盛り上がりました。
清水省吾さんは「伐り手と山主と、木を加工する人、使う人が、外国の木じゃなく裏山から木材を調達することをサポートできる、里山が地域の暮らしに浸透できるような木こりでありたいので今日の活動は理想です!私はオーダーがないと木は伐りません。今日は60歳近いシラカバでした。数年で寿命を迎える、一番良いタイミングで活用できたのでうれしかった。次は家具職人さんにバトンタッチ。最後には江丹別で、このシラカバのカウンターでみんなで乾杯したい」と話しました。
動画も完成しました。
最後に
このプロジェクト 始まったばかりです。木こりから木材乾燥、加工を担当する家具職人、大工さん、塗装職人さん、そしてオーナー、ほかにもいろんな関係者がかかわっていく見込みです。
アーケン公式サイトなど、いろんなメディアで続報していきますのでお楽しみに
続報! 白樺の木が、レストランchiraiでデビューしました。
2019年04月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。