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旭川公園ゲストハウス~旭川を満喫できるホテル


「旭川公園ゲストハウス」という名の不思議なホテルが旭川市永山にあります。ネットの口コミを見ると

到着後、あっという間に「あれ?私ここ住んでいる?」と思うくらい居心地が良い!子どもはタイニーハウスにどハマり。少年らの心をくすぐる空間!

私はゲストハウス「森」に宿泊。一階にふかふかのベットがあり、二階はロフト。朝食はおいしいし。ご飯を食べる「島」には暖炉があって、持ってきたチーズを火に炙って食べるのがもう最高でした…。

至る所にオーナー家族のこだわりが詰まったとっても素敵なあったかいゲストハウスです。雑誌やガイドブックには載っていないような旭川、ローカルな魅力を教えてもらうことでその土地での滞在に大満足しました。

などコメントがいっぱい…何やら面白そうなホテルです。



私も、この「旭川公園ゲストハウス」に1泊し、オーナーの松本浩司さん、そして建築工事のコーディネートを担当した旭川の住宅会社・アーケンの藤原さん、太田さんに旭川公園ゲストハウスの「裏側?」を聞いてきました。まずは「施設」をご紹介します。


目次

旭川公園ゲストハウスの共同棟をご紹介



2019年秋にオープンした「旭川公園ゲストハウス」は北海道旭川市永山1条24丁目2の約480平方メートルの敷地内にあります。ホテルですが、日中はカフェとしても営業しています。右の建物がコモン棟で正面にある3棟の小さな小屋(タイニーハウス)が宿泊棟です。



敷地はかつて公園があった空き地で、その横には、旭川と稚内を結ぶ宗谷本線の線路があって、1時間に1~2回列車が通るのを宿から眺めることができます。



ゲストハウスの名前「旭川公園ゲストハウス」は、オーナーの松本さんが「旭川の普段着の魅力を発信したい」「公園のように、地域の人が気軽に交流できる公園のようでありたい」という思いを込めて命名。

そして空き地といえば思い浮かぶのは「ドラえもん」に登場する土管。旭川公園にもありました。解体される家から仲間の協力を得てここに運びこんだものです。



子どもたちと作った秘密基地もありました。実際に地域のお子さんたちが遊び場として活用しているそうです。



宿泊客が、裏メニュー:「前坂精肉店」の大雪ジンギスカンをディナーで食べたりもできる楽しい空間です。(松本さんのブログから画像拝借



共同スペースのコモン棟は平屋建て。



「旭川公園ゲストハウス」の近くにある裏山「突哨(とっしょう)山」の所有者で、山に負担をかけない、森を守り育てる「自伐型林業」を行っている旭川の木こり:清水省吾さんとの連携で「顔の見える」薪も確保。



ウッドデッキは芯材部分に油分含有量が多い屋久島の地杉を採用。耐久性を求められる屋外のウッドデッキに最適な建材で、CHANNEL ORIGINAL の取扱い商品です。この建物の建築工事のコーディネートを担当したアーケンさんが、北海道の白樺と鹿児島・屋久島の地杉を両方採用することを提案しました。



コモン棟のメインホールは天井の高い開放的なスペースでした。右手前にあるのは椅子じゃなくてソリ。なぜソリがここにあるのかと聞いてみたら「町内会長にいただいたんです」と松本さん。



コモン棟の玄関を開けると目の前に、何やらアンティークな木製の道具がありました。唐箕(とうみ)という農機具で、豆や稲など、穀物から、葉や藁くずなどを、風で飛ばして選別する機械です。旭川公園ではコーヒーを淹れたり、



料理の配膳準備のテーブルとして使われていました。年配のお客様には「懐かしいね!」「子どもの頃、農作業の手伝いをたくさんしたのを思い出した」と大好評です。



何やら風格漂うダイニングテーブルは、以前は小学校の作業台として使われていたもの。



突哨山で窯を構える工藤和彦さんによる陶器のコーヒーカップがとても似合います。



カフェやホテルの利用客が、薪ストーブの炎を眺めながら、長い時間を過ごせるのもここの魅力。



アンティークな家具やナチュラルな建具など、気になるものがいろいろあるのも松本さんの狙い。この写真は白樺をあしらった装飾棚。後述しますが「白樺」は重要キーワードです。



北海道・旭川の白樺を、ローカルベンチャーで自立を目指していることで有名な岡山県・西粟倉村の家具職人にお願いしてスツールにしてもらいました。座面にはわかさぎ釣りをしている人の絵が描かれていますが、長年使用して布が薄れていくと別の絵柄が見えてくる、そして座面を取り外すとちゃぶ台にもなるスツールです。



宿帳。旅の楽しい思い出がいっぱい書かれていました。



キッチンスペースには陶器が並ぶ収納棚も。



コモン棟はシャワールームやトイレ、洗濯機、洗面台などもあります。掃除が行き届いた、明るくて綺麗な空間でした。

タイニーハウスに宿泊できる



3棟の小さなタイニーハウスがホテル宿泊用の建物です。タイニーハウスはアメリカ発祥で「小さな家」の意味。2000年頃から、小さな家を建て、モノを持ちすぎずシンプルに暮らす生き方、価値観が評価されるようになり、世界的なブームになっています。

旭川公園では「森」「風」「土」という3つのタイニーハウスを建て、宿として提供しています。それぞれカタチも色、素材も異なるとっても可愛い建物です。



中央の白いタイニーハウスは「風」。2段ベッドがある2人部屋です。

左のタイニーハウスは「土」。外装はウッドロングエコという自然に優しい木材保護材を塗って仕上げています。



右の三角屋根のタイニーハウスは「森」。フロアの大半を大きなベッドが占めていて、外装は板張りで、木酢液仕上げです。

各部屋の料金やご予約はこちら https://asahikawakoen.com/stay/ 

泊まった感想その1 寝心地が良い!

私は「森」に泊まりました。明らかにビジネスホテルと違う寝心地でした。一番嬉しかったのは1棟の建物を貸し切っている楽しさです。自分の城というか隠れ家的な気分・・・。

そして静けさです。ビジネスホテルなら、廊下や隣の部屋から物音は多少なりともします。しかしここは閑静な住宅街の一角ですし、何よりも1棟の建物に自分だけ(ファミリーでの利用などなら2人ですが)なので、夜は本当に静寂でした。外は肌寒い季節でしたが、暖かい室内にふかふかのお布団で、気づいたら朝でした。

泊まった感想その2 松本さんの地元情報



コモン棟で薪ストーブの炎を眺めながら、地域の魅力的な人材、生産者の話などをいっぱい教えていただき、その後、晩御飯で、近所の串揚げがめちゃめちゃ美味しいお店に連れて行ってもらいました。



宿に到着してすぐのウェルカムドリンクが白樺の樹液だったり、近隣で体験できる、ガイドブックにも書かれていないような情報も教えてもらえます。松本さんは元新聞記者。情報収集力や聞く力、伝える力がずば抜けていて、旭川周辺の魅力をいろいろ教えてもらえます。

泊まった感想その3 食事が美味しい



朝食は、和食と洋食を選べます。こちらは、私が泊まった日の和食。上森米穀店の「旭川公園オリジナルブレンド米」。地元旭川周辺の生産者が育てた平飼いの卵や野菜、豆腐など、朝から、その地ならではの料理を美味しくいただけました。



こちらは洋食。地元の味噌をつかったオリジナルグラノーラや地場産のパンやチーズなど、とても美味しそうでした。

旭川公園ゲストハウスには、ビジネスホテルや旅館などのような温泉や露天風呂はないし、原則的に夕食もありません。トイレのない部屋もあります。

でも、近所の銭湯やスナックなどでの面白い経験、庭での美味しいジンギスカン、裏山探索など、いろんな体験のヒントを教えてもらえます。一般的な観光旅行、観光ツアーなら旭山動物園や富良野の丘などを訪れるのが定番でしょうが、それでは味わえない「普段着の旭川」「隠れた旭川の魅力」を体験できるヒントをもらえるのも旭川公園ゲストハウスの魅力のようです。

松本さんに伺いました!

元中日新聞の記者だった松本浩司さんが、2018年に家族とともに旭川に移住し、ゲストハウスを開業した経緯や思いをご本人に伺いました。

ゲストハウスのオーナーになったきっかけは?



松本 私が通っていた高校は、生徒の自由自主自律を重んじる方針でした。私自身が旅行好きだったこともあって、修学旅行の企画を考える役になり、北海道で楽しい体験を探したり、安くてオーナーと交流できるユースホステルを選ぶなど、一からいろいろ考えて先生に提出したんです。

でも結果は、旅行代理店が用意した一般的な教育旅行が採用されました。私の案のほうが面白く、しかも費用も半額以下で実施できる自信があったので、却下されたことで「大人の世界」「教育旅行の限界」を垣間見た思いでした。

参照 旭川にゲストハウスをつくる3つの理由① 原体験としての卒業旅行

修学旅行では私の企画は通らなかったので、リベンジしようと卒業旅行を企画。同級生32人を率いて北海道旅行を実施しました。北海道の魅力を楽しみ、地域の人と触れ合う体験ができたこと、そして自分が企画運営できたことが、私の人生の中で一番シビれる、最高の経験だったのです。

一般的なツアーなどにはない旅の面白さ、そして北海道の魅力も実感。「いつか北海道へ」という思いを抱きました。

その後新聞記者として、里山の保全と子育て、高齢者福祉、まちおこしなどに取り組む吉田一平さん(現・愛知県長久手市長)や、豪華観光列車「ななつ星in 九州」や水俣駅をデザインした水戸岡鋭治氏など、地域のために奮闘する方々をたくさん取材しました。

でも、地域の現場でプレイヤーである本人たちが体験できる感動と、取材する記者としての感動とでは、感動の量が違うのではないか、いつかプレイヤーになって何かやってみたいという思いも沸いてきました。

そんななかで、新聞記者として10年目の2018年1月25日、北海道で自分がゲストハウスを運営している夢を見たんです。それがきっかけです。

北海道移住、ゲストハウス開業への道のりは?

松本 北海道でゲストハウスをやりたい、と浜松のデザイナー・鈴木裕矢さん(空色デザイン)やフォルム建築設計室、デットストック工務店などの数名に相談し設計をお願いしたり、北海道内の候補地選びも進めました。

2018年春には家族と一緒に今ゲストハウスがあるこの地にも訪れました。北海道内に候補地はほかにもあったのですが、自然環境などの魅力だけでなく、子育て環境や、地域で出会った人たちの魅力が、旭川市永山を選んだ決め手でした。

「旭川公園ゲストハウスができるまで」という公式動画をyoutubeで公開しました。



旭川近隣の生産者さんたちとの出会いが、宿の朝食の食材などに活かされていること、建設工事を担った大工さん、職人さんたちをはじめ、多くの人が関わっていることを紹介しました。



旭川市永山には魅力的な人がいたんですね?



松本 旭川圏で自伐型林業を展開する木こりの清水省吾さんとの出会いは私にとって大きなポイントでした。「旭川公園ゲストハウス」から車で10分ほどの「突哨(とっしょう)山」の一部4.7haを、「里山部」のフィールドとして管理。co2排出と多額の税金投入につながる大型の重機を一切使わない〝漢気(おとこぎ)〟にこだわり、「北海道一、環境にやさしい木こり」を自任している方です。

清水省吾さん ///持続可能な森づくりへ、ぜんぶ自分で。時には「切らない」も選ぶ、会いに行ける木こり。

松本 旭川公園ゲストハウスから徒歩5分の距離、旭川市永山3条23丁目に旭川大学があります。私は旭川移住前から、旭川家具を活かした地域経済の発展を研究されている横田宏樹准教授(現在は静岡大学に在籍)の取り組みに関心があって、横田ゼミなどにも顔を出させていただいておりました。



横田宏樹さん ///森から始まる『家具づくり』を売ろう」。旭川と静岡を往復して呼びかける、木こり経済学者

横田先生や清水さんは、白樺プロジェクトのメンバーとして、森を守りながら、森の恵みを生かした生活、そして持続可能な林業と六次産業化の取り組みをしています。その活動にも参加させていただくことで、旭川との関わりはまた一段深くなりました。

ゲストハウス建設はどのように?

松本 移住前から浜松のメンバーに力を借りて、ゲストハウスのコンセプトや基本設計はできていました。

また建設工事は、タイニーハウスなどを得意とする長沼町の「yomogiya」 代表で、大工さんの中村直弘さんも中心になって取り組んでいただきました。

プロジェクトごとに発足して建材に不要物を使う、浜松のメンバーも加わる全国規模の建築ユニット「デッドストック工務店」など、他にもいろいろな人に、関わっていただきました。

各分野のエキスパートの力を借りられたのは素晴らしかったのですが、本州の方、多忙な方も多く、金融機関との調整にも時間を要し、プロジェクトのスムーズな進行や、全体のコーディネートという面では悩みもあり、進行も遅れ気味でした。

全体をとりまとめ調整する人、寒さや雪など気象条件が厳しい旭川の事情を踏まえた施工面での配慮ができる存在が必要だということで、最初は、旭川の建築会社に相談に行きました。しかしタイニーハウスでゲストハウスを運営するといった方向性や、私が望んだ点などで一致できず見積もり金額や進行スピードで歩調が合わず、その会社にはお願いしませんでした。

そんな中で、白樺プロジェクトのメンバーでもあったアーケンの藤原立人社長に旭川公園ゲストハウスの構想について相談したところ、その場で「アーケンは住宅だけでなく、宿泊施設や飲食店など、多彩な建築にチャレンジする会社だから喜んで」という返事をしていただいて、なんと1週間で、別の会社より1000万円ほど安い見積もりを提出してくれました。

アーケンさんはどんな役割を?

松本 アーケンの藤原社長は、旭川市江丹別のレストラン「Chirai」(チライ)に、皆で山から伐り出した白樺のカウンターを設置するというプロジェクトをたくさんの人を巻き込んで実現したり、


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そのレストラン「Chirai」(チライ)と白樺プロジェクトをつなげて、飲食店の立ち上がりを応援する人を増やしたり、といった人と人とを結びつける親分のような人です。


「江丹別」(旭川)の レストラン「Chirai」の魅力

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設計の調整や施工も含むプロジェクトでの現地コーディネーターとして、滞りなくプロジェクトを進行させる親方として藤原社長が加わってからの現場はサクサク進みました。



参照 松本さんのブログ 着工すれば、はやいはやい

ある意味、各分野のエキスパートで個性的な人が複数関わる、船頭の多いプロジェクトだったので、アーケンさんにすれば、調整の難しい現場だったと思います。

ところがアーケンの藤原社長と太田貴洋さんが、タイニーハウスでゲストハウスを運営する、解体した家から土管や板などを持ってきて再利用する、地元の自然素材を活用する、薪ストーブなどを使った居心地の良い空間づくりといった点を面白がってくれて、積極的に関わってくれたのです。

アーケンさんのコーディネートなしには旭川公園ゲストハウスは実現しなかったかもしれません。

2019年夏にオープンできましたね

松本 宿泊施設の経営面を考えれば、稼働率を上げていかないとならない事情はありますが、宣伝広告に費用をかけて強力にプッシュしたり、体験パッケージを商品化したりといったビジネス的な動きを進める気はあまりありません。

タイニーハウス3棟=一日に最大3組しか受け入れられないゲストハウスを作ったのも、宿泊される方に、旭川の知られざる魅力を直接お伝えできるのは3組が限度だろうと思ったからですし、旭川・永山の方々とも個人対個人でのお付き合いを大事にしたいと思っています。

本州から北海道に旅行に来られる方や出張の方が宿泊に利用いただけることも多いのと、近所のお子さんが遊びに来たり、地域の市民活動を行っている方々などが、会合の場所としてカフェを利用いただいたりといった形で少しずつご利用いただける方が増えていることもあって、手応えを感じています。



旭川の普段着の魅力を伝えるために、じっくり取り組んでいきたいと思っています。

ゲストハウス旭川公園公式サイトはこちら


2020年04月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

アーケン株式会社の取材記事