Story 取材記事

コンクリート製キッチンが映える大工さんの家/旭川市・K邸


今回、いえズーム編集部が取材にお邪魔したのは旭川のK邸です。建て主は日頃からアーケンの住宅施工現場で活躍する大工さん!K邸では建て主でもあり大工さんでもあるという立場で、奥さまの要望を第1に、設計担当のアーケン・太田さんとともにこだわりの注文住宅を実現しました。

見どころはいろいろありますが、コンクリート製のキッチンには特に驚きました。近年、住宅業界では、インダストリアル、ブルックリン風など、男前系インテリアが流行していて、キッチンも、仕上げ材で表面にコンクリート打放し風のシートを貼ったり、コンクリートの素材感に近い左官仕上げの塗料を塗るケースは多いのですが、このキッチンは、600軒以上の住宅を取材撮影しているいえズーム取材陣も初めて見たコンクリート製キッチンです。ほかにも見どころ満載のK邸、さっそくお邪魔します。



K邸は細長い敷地を生かしたレイアウトが特徴。大工さんらしく、住宅の手前には大工道具を入れる大きな物置があります。



外壁はシャープな印象のガルバリウム鋼板。玄関廻りは異素材の木と組み合わせています。



玄関ドアを開けて驚くのは土間の広さと、空間の抜けの良さ。来客の多くがしばらく玄関先で立ち止まり、驚きの表情になります。



玄関近くの長い収納棚には水槽や観葉植物が置かれ、趣味のスペースも兼ねています。写真奥のカウンターでは、大工仕事で必要な書類チェックなどが玄関先ですぐできます。

低め天井のキッチンと吹き抜けのリビングで、メリハリと開放感ある空間に



天井は奥さまがワックスを塗ったウェスタンレッドシダーを、ご主人が1枚ずつ貼りました。床は、奥様の好みに合わせて道産のナラ材をチョイスしました。



広々としたリビングでは、家族の団らんの声が聞こえてきそうです。2階の奥はお子さんの部屋。



コンクリート製キッチンは無骨で存在感たっぷりですが、



背面収納やダイニングテーブルなどは無垢材が使われ、優しく暖かい雰囲気にコーディネートされています。

床は、モールテックス(モルタル造形塗料)で仕上げました。ダイニングテーブルは、上川町で切り出したナラで造作。家電は黒で統一してスタイリッシュです。



棚や建具は、大工の腕を活かしてご主人が自ら造作しました。



キッチン・ダイニングの天井高さは2.1m。あえて低めにすることで、リビングの開放感を際立たせています。



キッチンから、リビングでくつろぐ家族の様子や薪ストーブの火を楽しむことができます。



観葉植物は奥さまの趣味。日々、丁寧に育てています。



階段を上がると、ロフトのようなスペースが。片流れの屋根を活かした秘密基地感も漂います。



ニッチ収納には、ご主人の出張用道具が入っています。



玄関からリビングに向かう途中に、洗面、トイレ、寝室が配置されています。木の温もりと硬質感が絶妙なバランスです。



キッチンの背面には、バスルームに続く、大きな整理収納スペースがありました。衣類などが収納ボックスに整然と収納されていました。



リビングの梁の上から顔をのぞかせるのは、プロジェクター。アニメ「鬼滅の刃」やゲームなどを家族で楽しんでいます。

住みたい地域を優先。当初は中古物件を検討も…

ご主人が大工とあって、自分で自分の家をつくるのは長年の夢だったに違いない―。そう思って聞いてみると、「持ち家願望は全然なくて。マンションでも十分で、欲もなくて…」と意外な答えが返ってきました。



以前の住まいを出ることになり、お子さんの小学校入学を数か月後に控えていたため、当初は中古物件を検討。住みたい地域を絞ったものの予算オーバーとなり、悩んでいました。そこでアーケンの太田貴洋さんに相談すると、新築が射程に入ることが分かりました。

土地が先に決まると、プランニングが本格化。「いざ家をつくれるとなると『ああしたい、これもできる』となりました」とご主人は笑います。理想やイメージが次々に沸いてきました。

ご主人は15年来の縁である太田さんの家づくりを大工として関わってきました。連れられてよく現場を見学に来ていた奥様も「木をたくさん使い、開放感もすごく好きで…」と虜でした。

「ほぼノリ」で決まったコンクリートキッチン

間取りは太田さんにお任せ。ご夫婦は壁の仕上げや無垢材の採用といった内装の希望を伝えました。インターネットで気に入った画像を全員で共有しました。



奥様は太田さんとご主人にキッチンのテイストを相談。話の弾みで「じゃあコンクリートでやってみよう」と決まりました。やり直しが利かない珍しい工事でしたが大のお気に入りです。



奥様は植物にもこだわり、「日がたくさん入って、とにかく開放的に」とオーダー。薪ストーブ効果もあり、初めての冬も葉をあまり落とさず元気でした。

薪ストーブは、新築住宅現場で何度もその魅力に触れてきたご主人の憧れ。高い断熱性能も手伝い、旭川の厳しい冬、床暖房オフでも十分暖まりました。

連日の現場通いをした奥様。新しい暮らしをイメージ

施工中は奥様もほぼ毎日現場に足を運び、雰囲気などを話し合いました。「自分たちの家が建っていく工程も見たかったですし、日の入り方や風の向きもよく分かりました。家具や植物の配置もイメージしやすく、準備もスムーズにできました」と振り返ります。

アーケンの現場では、大工さんも造作をする場面が多いといいます。ご主人は、今回も建築工事だけでなく建具や家具の造作まで手がけましたが、「自分の家という感覚はなかったですね」。またまた、意外な一言でした。あくまで職人として、目の前の仕事に打ち込むご主人の姿が浮かびました。

記事:松本 浩司
写真:村川翔健


2021年05月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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