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食材も家具も「地場産」 ガレット&クレープの「くれぴえ」(旭川市)


旭川市神楽岡に、幌加内産そば粉、比布産たまご「かっぱの健卵」、自家製ハム、地元の野菜など、地元の食材をふんだんに使ったガレットや、美瑛産小麦を使用したクレープを提供する大人気のお店があります。

オーナーの加野さん、そして店舗兼住宅の設計・施工を担当した旭川の住宅会社・アーケンの藤原社長、テーブルやカウンターなどを担当した家具職人・木工作家のAISUproject(アイスプロジェクト)・小助川泰介さんに「くれぴえ」誕生への経緯を伺いました。

加野さん夫妻がガレット&クレープのお店を2022年4月にオープンしたきっかけは?


店舗側外観は道南杉板張り。テラス席の床は、雨に強い屋久島の地杉


加野さん 私はもともと料理が好きで、フランスのブルターニュ地方の郷土料理「ガレット」を食べて、そのおいしさに衝撃を受けたのがガレットのお店をオープンしたきっかけです。

思えば旭川は、幌加内なども含め蕎麦の名産地なのに、旭川市内にはそば粉を使ったガレットのお店は見当たりませんでした。



8年ほど前から、妻にはガレットのお店を出したいと話していました。幌加内の方と知り合い、蕎麦粉を仕入れられるようになり、2018年には旭川の食べマルシェという食の大イベントに出店。ガレットを提供しました。

実は妻もクレープ屋さんをやるのが夢でもあり。ガレットもクレープもフランスがルーツで丸く薄焼きにした生地を使います。ガレットは蕎麦粉、クレープは小麦粉が原料です。夜はバーテンダー、日中はキッチンカーでガレットとクレープを販売する日々が始まりました。

店舗兼住宅づくりは何から始めましたか?


左からアーケンの藤原社長。オーナーの加野さん。


加野さん もともと知り合いがアーケンさんで家を建てていて良い評判を聞いていたんです。縁あって、5年ほど前に、バーに藤原社長が来店いただいた時には、家づくり、店づくりの話はしなかったのですが、お話しているうちに藤原社長の人柄に惚れこんでしまって自宅兼店舗を建てるならアーケンさんと決めていました。

後日、クレープとガレットの店兼自宅を建てたいという相談をして、中古住宅を買ってリノベーションをするか新築にするか、利便性や駐車場、店舗運営を踏まえた適地の選定、間取りやデザインなどのプランニング、北海道産の木材を使った建築、さらには自然素材や無添加の食材を使った料理の話なども詳しくディスカッションできて、店舗兼住宅づくりがスタートしました。思いを一つひとつ実現してくれるアーケンさんでなければ、自宅もお店もまだできていなかったと思います。

食材のこだわりは?

加野さん 旭川近郊をはじめ北海道には素晴らしい食材があります。地場食材の魅力を活かすのが当店の第1のコンセプトです。加えて、もともと添加物の少ないガレットを作ってきましたが、藤原社長とのつながりで無添加、化学調味料を使わない、地元の食材を活かしているお店を紹介する「美食&情報マガジンkutta」の尾崎満範編集長と出会い、無添加の食材へのこだわりが強くなりました。

地場の優れた食材を探して、信頼できる生産者を自ら見つけて手に入れることができれば、食材そのものの美味しさと鮮度の高さで、美味しくて健康な料理をつくることができます。

牛5頭で牧場を家族経営されている地元の酪農家にお願いして生クリームを入手したり、幌加内の蕎麦粉、比布産の卵、美瑛産の小麦粉、旭川の季節野菜など、生産者のこだわりを直接伺ったりしながら、こだわりの食材を厳選し、使わせていただいております。

食材だけでなく、木材にもこだわりが?

アーケン・藤原社長 店舗づくりのお手伝いをさせていただく際、私はそのお店が人気になるように、お店のコンセプトをしっかり伺い、良い提案ができないか考えます。

今回は、加野さんが地場の食材にこだわったお店づくりを考えられていたので、食材の面では無添加という新たな魅力をご提案し、建物の方では、旭川家具工業協同組合さんが進めている「ここの木の家具・北海道プロジェクト」と連携することで、旭川近郊の木の魅力を体感できるお店にする提案をさせていただき、組合のメンバーでもある家具職人・木工作家のAISUproject(アイスプロジェクト)・小助川泰介さんとの連携をさせていただくことになったのです。


左が家具職人・木工作家
アイスプロジェクト・小助川泰介さん


小助川さん まず外壁は道南杉。テイクアウト用の窓下にあるカウンターは、家具材として評価の高いミズナラを採用しました。



くれぴえは19時以降、バーとしても営業しています。この4メートルを超えるバーカウンターはセンの一枚板です。家具材として流通する木材は最長3メートルですが、この材は函館の木材屋さんから直接声がかかった際に、非常に魅力的な材だったので、アーケンさんなど数社と共同で仕入れました。4メートルもの長さで、木目が通った1枚板をカウンターに使えるのは大変美しく魅力的です。



加野さん 「バー」という言葉には「とまり木」という意味があり、お客様をお迎えするカウンターテーブルにはぜひ良い木材を使いたいと思っていました。テーブルなどに使う候補の木材は、板の状態で事前に見せてもらい、どの材を選ぶか決められたのも良かったですね。



小助川さん 奥のテーブルは、旭川の永山神社の御神木(ニレ)を譲っていただいたものです。樹齢は定かではありませんが200歳以上ではないかと思います。木らしい優しい表情が魅力です。中央のテーブルは経年により色味が濃くなり味わいが増す山桜。手前のテーブルはカバです。特徴は、木目が緻密で赤みの強い比較的硬い材です。

テーブルの端はいわいる「耳付き」を下側に見せることですっきりしたデザインにしています。オーガニックの亜麻仁油で仕上げています。ベンチも山桜を使いました。入り口横の小さいカウンターにはブナを使っています。



加野さん 木の肌触りを喜んでいただいたお客様もいますし、先日来店いただいたお客様は、テーブルなどの材を全て言い当てられて。お話を伺うと家具屋さんでした。



自宅も併設していますが、家のプランはほぼ妻の要望を元に藤原社長がプランしてくれました。家の方の私の要望は調香師をしている父の仕事を手伝うための部屋を作ってもらった部分くらいです。住み始めて3か月経ちますが、非常に快適で驚いています。

2022年4月にオープンして以来、宣伝広告はほとんどしていませんが、多くの方が来ていただき、大変ありがたいです。クレープ、ガレット、バーの店ですからお客様の年齢層が広いのも特徴です。藤原社長とは、店舗の立地もマーケティングの側面からも話し合って決めました。食材、建材、プランニングに至るまで丁寧に検討していただける住宅会社は珍しいと思います。

https://www.aisuproject-mori.com/
AISUproject(アイスプロジェクト)・小助川泰介さん 

https://www.asahikawa-kagu.or.jp/kokonoki/  
旭川の家具組合主催のここのきの家具・北海道プロジェクト 

https://www.crepier-asahikawa.com/
くれぴえ 公式サイト

写真:森口鉄郎


2023年04月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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