Column いえズーム コラム

札幌は震度7も想定内!防災の研究者、定池祐季さんに会ってきた

「3.11東日本大震災3県4紙合同プロジェクト」による震災翌日の紙面復刻版


「3.11東日本大震災3県4紙合同プロジェクト」による震災翌日の紙面復刻版

地震火山研究観測センター助教(社会防災学、防災教育)の定池祐季さん


地震火山研究観測センター助教(社会防災学、防災教育)の定池祐季さん

浦安市の交番前で起こった液状化現象(2011.3.20撮影「災害写真データベース」より)


浦安市の交番前で起こった液状化現象(2011.3.20撮影「災害写真データベース」より)

印刷して持っておきたい非常持ち出し品チェックリスト(「人と防災未来センター」HPより)


印刷して持っておきたい非常持ち出し品チェックリスト(「人と防災未来センター」HPより)

定池さんはゴスペルの指揮者としても活躍している


定池さんはゴスペルの指揮者としても活躍している

奥尻島で被災した体験から「少しでも被災者を減らしたい」と精力的に研究活動を続ける定池さん。応援しています!


奥尻島で被災した体験から「少しでも被災者を減らしたい」と精力的に研究活動を続ける定池さん。応援しています!

そうだ北大に行ってみよう

東日本大震災から約1年。復興へ向けてのニュースも聞かれますが、日本全国、まだまだ地震には油断のならぬ様子。私も、前のブログでは地震防災マップで震度7想定に恐れをなし「勝手に1人会社から避難シミュレーション」をしていました(寒かった・・・)。

そこで、やはり専門家に聞いてみよう!と北海道大学へ。地震火山研究観測センター助教の定池祐季(さだいけ・ゆき)さんに、ご多忙ながらお会いすることができました。

震度5強でも道路が沈む、建物が傾く!

(タカハシ質問)私が周囲の人と話していても、札幌で震度7レベルの地震はあまり想像できないというのが実感です。
でも、例えば2010年12月には北広島市でスポット的に震度5弱の地震が起こりましたよね。ある小学校では窓ガラスにひびが入ったとか。だから震度5ぐらいの地震は想像できるような気がするのですが。

「はい、震度5どころか、最近の被害想定では震度7の可能性も示されていますよ」

(ギクッ)やっぱり・・・ですか?

「それに、震度5強でも液状化で建物が傾く、道路が陥没するなどの被害はありますね」

ちなみに、右側の画像をご参照ください。これは東日本大震災で震度5強を記録した浦安市の写真で、交番前の道路が陥没して水たまり(もしくは池)になっています。(㈶消防科学総合センターの「災害写真データベース」より)。さらに同市では住宅が傾いて訴訟が起こされていますよね・・・

「さらに災害としては、地震だけでなく洪水や大雨による地すべりなども考えられます。ですから、普段から備えをしておくことはやはり大切ですね」(定池さん)

非常品に自分なりのプラスアルファを

ちなみに、定池さんが「非常品持ち出しリスト」として挙げてくれたのが右側の表(写真)。かつてご自身が在籍されていた「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」のHP、「お役立ち情報」http://www.dri.ne.jp/oyakudachi/index.htmlの中にあります。

これは、文字がびっしり詰まっているだけの表ですが非常に役立ちます。品名・数量のほか備考には品物を選ぶ際の目安や、生理用品は「傷の手当て等ガーゼの代用としても重宝」、ベビーカーは「荷物運搬用としても役立つ」など、実際に被災を経験された生の声が凝縮されています。「1次持ち出し品」と「2次持ち出し品」に分かれているのもありがたい。

そこにプラスアルファとして、定池さんが話します。「自分の大切なもの、支えとなるものも必要でしょう。家族の写真、お子さんだったらお気に入りのぬいぐるみなどでしょうか。ある女子高校生は『手鏡を持っていると安心する』と言っていました」。非常時にこそ気持ちをやわらげるものって、実は何よりも必要なのかもしれませんね。

いざというときには、普段やっていることしかできない

さて、私が「勝手にちょこっと避難シミュレーション」で、気になっていたことを聞いてみます。札幌の収容避難場所って、自家発電機はあまり置いていないんですね。ということは、停電時は真っ暗で寒さにブルブル・・・

「私は特別に"防災"だけということではなく、生活と結びつけて考えることを提案しています。例えば町内会で防災のために発電機を買う、これはお金がかかることですから反対もあるでしょう。しかし、花見やバーベキュー、またお祭りなどで使うことで考えてみたらどうでしょうか?それに普段から使っていれば、災害だけに用意しておいて、いざとなったら使い方が分からないということにもなりませんよね」。

さらに自宅の大掃除をして危険箇所を見つけるなど、生活の中で防災も行っていくことを無理なく行えるアドバイスをいただきました。
そんな定池さんが何度も強調していたのが、「いざという時には、普段やっていることしかできない」ということ。やはり自治会などでまとまりの強い地区は、災害時にも強いチームワークを発揮するそうです。しかし大都市の札幌では「隣に誰が住んでいるのか分からない」状況もある。やはり、いざとなったら助け合えるようなご近所づきあいを普段から意識しておきたいですね。

被災地を支援する人たちにもストレスが・・・

多数の被災地への現地入りや聞き取り調査を重ねてきた定池さん。今回の震災で訪れた調査のお話も伺っていて、ふと引っかかった言葉がありました。

「災害支援に行った方々のストレスにも気をつけた方がいいですよ」

それは、具体的にはどういうことでしょうか?

「被災地で支援のため懸命に活動をして、そこから平和で穏やかな我が家に帰ってくる。すると、そのギャップに何が現実なのか、わからなくなってしまうことがあります。例えば、行きは飛行機でも帰りは列車や船を使うなど、時間をかけて帰ってくるだけでも違います。少しずつ日常に戻っていくことで、自分にも平静さを取り戻すことができるからです。私も、できるなら被災地から、見聞きしたことを自分の中に落とし込みながらゆっくり帰ってきたいです」

そうなんですか・・・ご自身も奥尻島で被災し、少しでも被災者を減らしたいと防災への道を貫いてきた定池さん。淡々とした語り口には「いつも引いたところで物事を見ている子どもだった」という性格もあると思いますが、このような精神面のコントロールとともに、ご自身に対する強い使命感のようなものが伺えました。


2012年04月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。