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函館で住宅の「断熱・気密・省エネ」といえば渋谷建設

「高断熱高気密」で全道の住宅業界に知られる渋谷建設


函館で、住宅性能や省エネで最も信頼できる工務店ってどこ?

函館で、住宅性能や省エネで最も信頼できる工務店ってどこ?


と北海道の住宅業界関係者に聞けば、おそらく函館市石川町にある「渋谷建設」の渋谷旭社長の名前、あるいは渋谷旭社長が中心メンバーとなって活動する高性能住宅の普及グループe-housing函館(イーハウジング函館)の名前が最も多くあがると思います。

北海道の住宅業界は、冬の寒さや光熱費負担を克服すべく高断熱高気密化に挑戦し、その後住宅の結露や寿命の短さなどの問題と闘ってきました。その中で、渋谷建設は、札幌や旭川、全道各地の先進的な住宅会社や、新住協など各種住宅団体の活動にも積極的に関わり、技術を学び、函館の住宅建設現場でどこよりも早く実践してきました。



太陽光で発電したエネルギーと、消費エネルギーをおおむね同じにできるZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)も道内の多くの住宅会社が採用に二の足を踏むなか、渋谷建設は積極的に導入しました。また、電気自動車に積む蓄電池から住宅へ電気を供給する「V2H(ヴイツーエッチ)」という仕組みも、自ら技術・ノウハウを高め実現させてきました。このように住宅の省エネや住環境改善を有言実行で貫き、現在も、そのノウハウを全道各地の住宅会社に惜しみなく情報提供しています。



そうした渋谷建設の姿勢は、道内の住宅業界に広く知られています。

函館の渋谷建設にインタビュー!

北海道・東北の優れた住宅会社を紹介するいえズーム(北海道住宅新聞社編集部)としては、函館エリアでは渋谷建設を紹介しないわけにはいきません。そこで今回は、函館市石川町、コープさっぽろいしかわ店の近くにある渋谷建設さんの事務所を尋ねました。住宅の省エネに関することももちろんいっぱい話していただけましたが、それだけでなく、



オーダーキッチンや庭でキャンプや焼肉も楽しめるバルコニーなど住まいの楽しさ、



災害による大停電(ブラックアウト)対策や、太陽光発電で発電した電気が高く売れなくなる時代の光熱費削減策として注目を集めている「蓄電池」、照明や暖房、施錠をコントロールし、室内温度環境や光熱費、防犯対策などを適正にコントロールする「IOT住宅」、そうしたノウハウがぎっしり詰まっているのに、価格の面でも魅力があるローコストZEH企画住宅【Semie-セミエ-】の話も聞けました。


目次

年間300棟のハウスメーカーでも現場に問題あり

いえズーム編集部:渋谷旭社長は大工出身で2代目社長ですね?


渋谷旭(しぶやあきら)社長:父は北斗市出身の大工でした。私は学校を卒業してまず、神奈川のハウスメーカーに現場監督として入社しました。年間300棟以上の家づくりをする大手でした。

驚いたのは現場監督が、監督しきれないほどの現場を担当しているので施工品質のチェック、現場の工程管理がちゃんとできていなかったことです。

なおかつ在庫管理もずさんで、発注ミスなどで余った建材などを土場に放置し、最後には捨てたり、足りなくなれば次の現場の予算で材料を調達して埋め合わせをしたりしていました。疑問も多く感じ1年で退職。函館に戻って大工の修行を開始しました。

ハウスメーカーでも工務店でも、現場の工程や在庫管理がしっかりしていないと、住宅の品質も、会社の経営もちゃんと維持できないということがよくわかりました。実際に数年後には倒産してしまいました。のちに工務店経営者になる私にとっては、ある意味では良くない住宅会社を学ぶ機会になりました。

「のんびりした」家づくりに衝撃

いえズーム編集部:北海道・函館に戻って大工さんになったんですね?


渋谷社長:はい。そうです。1990年ころです。

当時、北海道函館の住宅建設現場は、神奈川のハウスメーカーで忙しい現場を見てきた私にとって衝撃でした。

一緒に現場に入る大工さんたちは、まるで「時間が止まっている」かのようでした。

こんなにのんびり家づくりをしていていいのか?と焦りを感じました。

当時は大手ハウスメーカーが住宅商品と営業マンを揃えて家をセールスするような動きが出始めた頃でした。一方、地域の工務店は、地縁と信頼で家づくりを頼まれ、家を建てるという時代でした。父も、真面目な大工だったので、地域の信頼を得て家づくりの声がかかる、という仕事のスタイルでした。

当時の工務店は営業もほとんどしませんし、建材や住設機器なども、年に数回開かれる問屋さんの展示即売会でどさっと仕入れて、それを使って家を建てていました。現代のようにお客さまにキッチンや内装などを選んでいただくという姿勢もあまりありませんでした。

そんな時代だったので、私が大工を10年経験し、31歳の時に、渋谷建設を法人化し、私が社長になったときには、今までの工務店経営を承継するのではなく、新たな手法を見出さないとダメだと考えました。

住宅の高断熱高気密を学びたい

いえズーム編集部:工務店社長として、何に取り組みましたか?


渋谷社長: 1973年の第1次オイルショック以降、北海道では、住宅の光熱費削減に多くの人が関心を持ち始めました。

それまでは、暖房をたくさん炊いて家を暖めれば冬の寒さをしのげるという時代でしたが、灯油代の高騰がそれを許さなくなってきたのです。多くの住宅会社が、壁の断熱材を50㎜から100㎜に倍増させ、窓も木製の単板から、ペアガラス入りのプラスチックサッシに代えました。


スケルトン・インフィル→間取り可変型ZEH住宅/函館市K邸

スケルトン・インフィル→間取り可変型ZEH住宅/函館市K邸


それらは住宅の省エネ性能を高める目的でしたが、そのことが原因となって、壁や床の中の木材や断熱材が結露で濡れて、カビや腐れなどが発生し、住宅の寿命が短くなる、断熱材を厚くしても省エネ性能が改善されないといった問題が噴出していました。

住宅会社の経営者も、現場で施工する大工などの職人も、単に断熱材を厚くしただけで、断熱気密の理論や正しい施工方法を知らなかったのです。

大工として、住宅会社の後継者として、私はこんな勉強不足な状態で、家を建て続けるのは恐ろしいことだと感じました。とはいえ、函館市内で、当時、断熱・気密に関して、先進的な取組をしている住宅会社もおそらくいなかったと思います。

元大工だから正しい施工を指導できる

いえズーム編集部:函館エリアに限らず、全道各地の住宅業界が抱える大きな課題でした。1987年に、室蘭工業大学の鎌田紀彦助教授(当時)が、従来の在来木造工法では、なぜ断熱、気密性能が向上しないのか、なぜ木材が腐るのか、原因を究明し、新在来木造構法を発表しましたね。


自然素材重視の家づくり 函館市白鳥町S邸

自然素材重視の家づくり 函館市白鳥町S邸


渋谷社長:私は函館で工務店経営をしつつ、新在来木造構法を学ぶために、札幌、旭川などでの研修会に足繁く通いました。断熱材や気密シートの正しい施工法、水蒸気を逃がすための通気層工法の確保、換気の計画など、基礎からしっかり学び、函館の現場に戻って、実践し検証しました。

家を建てるのは大工をはじめ、左官、屋根、電気、断熱、基礎などさまざまな専門職の職人です。一般的に大工や職人は、慣れない仕事を押し付けられると拒否反応を示します。

いえズーム編集部:どうしてですか?

渋谷社長:施工の手間が増えることで手取りの金額が減りますし、今までのやり方を否定される気もするからだと思います。「できないです」というような反応が返ってきます。

ですが私は元大工で10年の大工経験があります。できないという声が現場であがったら、自分で実際にやってみせたり、解決策を考えて具体的な指示も出せます。

なお、当社は大工を社員として通年雇用しています。フリーの大工さんは、いろんな現場で、各社のルールを多少踏まえつつも、基本的には自分の技術・経験で家づくりを行います。


社員大工であれば、雇用主である私が、高断熱高気密の正確な技術を伝え、しっかりした施工をどの現場でも実践できるだけの技量を身に着けるまで徹底指導できます。

他の職種でも同じかもしれませんが、部下に舐められないだけの経験と技術を上司が持っているというのは大事なことです。

積雪寒冷地の住宅会社として、高断熱高気密の正しい施工方法は、たとえ他社がまだ取り組んでいなくても、現場の大工や職人が抵抗したとしても、これは絶対に身につけなければならないと考えました。

当社は私がまず現場で実践し、大工や職員にやり方を繰り返し教え定着させてきたから高断熱高気密の家づくりができるようになりました。

高断熱高気密を現場で浸透させる

いえズーム編集部:北海道の住宅会社なら、どの会社でも「高断熱高気密」はもはや常識、だと思っている消費者も多いように思いますが実際はどうですか?


渋谷社長:性能の良い断熱材、気密シートで施工すれば高断熱高気密になる、とは限らないのが難しいところです。

現代でも、どの住宅会社も高断熱高気密の家が建てられるというわけではありません。できる、と宣伝していても、本当にできているとは限らないのです。材料は良くても施工技術と知識が未熟なら高断熱高気密住宅になりません。

今でも、当社は、お客様に完成した住宅をお引渡しする前に、全棟気密測定を行い、気密性能をお施主様にお伝えしています。間違いなく良い住宅性能が出せるし、その確認をしてからお渡しすることがエビデンスとして、住宅会社の姿勢として大事だと考えています。

毎年のように札幌や旭川、東北などの住宅会社や住宅団体が当社の施工現場やモデルハウス、そして函館の住宅づくりを学ぶ工務店グループe-housing函館(イーハウジング函館)の取組を視察に来ます。

高断熱高気密施工の大切さなどを伝えている側としては、いい加減な家づくりはできません。私も札幌や旭川などの先進的な取組をしている住宅会社から教わったことがたくさんあります。真剣に高断熱高気密やZEH、工務店経営などを学びたい工務店がいれば、ノウハウ提供を惜しむつもりはありません。

現在は、住宅の性能・品質上の課題だけでなく、北海道内の大工育成を行う活動、そして災害時に応急仮設住宅を地元住宅会社が提供できる仕組みを道内工務店が行政と連携しながら進める活動を行っている一般社団法人北海道ビルダーズ協会の理事としての取組も行っています。


ZEHで光熱費削減の家づくり!江差町C邸

ZEHで光熱費削減の家づくり!江差町C邸


住宅業界内ばかりではありません。渋谷建設が高断熱高気密、あるいはzehの取組などを進めていることに気づいていただいた函館圏の一般の方が、当社に家づくりを相談してくれることも年々増えていきました。

住宅の断熱は、柱や梁、鉄骨などの部分は断熱材が薄くなり、結果として15%ほどは室内の熱を外に逃しやすい「熱橋」になるといわれます。その部分が断熱の弱点になる、省エネ性能が十分に向上しない、結露の原因にもなるわけです。

そこで当社は、新在来工法のスキルアップに加え、別の断熱工法として、住宅の外断熱(外張り断熱)にも取り組みました。住宅の構造躯体をすっぽり、ウレタンボードで囲むように断熱します。ここでも新たなノウハウ、技術を学べました。

e-housing函館(イーハウジング函館)が転機

いえズーム編集部: e-housing函館(イーハウジング函館)は2003年の創設以降、函館の勉強熱心な地場工務店や建材店などが集まって住宅の基本性能や生産性の向上、大工育成、モデルハウス展開、近年では住宅の光熱費負担を高断熱化と太陽光発電による創エネで大幅に減らせるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及や、省エネ関連の補助金の活用など、さまざまな取組で、函館圏だけでなく道内の住宅業界をけん引する取組をされてきましたね。


渋谷社長:当社にとってもe-housing函館(イーハウジング函館)の取組は重要でした。

きっかけは1996年。八雲町の工務店だった山野内建設(ノースランドホーム)の山野内辰男社長が北斗市(旧上磯町)で家を建て、オープンハウスを行うということで、新住協函館支部にご挨拶の連絡をくれたんです。

当時私は新住協函館支部の副支部長でした。家を見せていただくと断熱や耐震性能強化ができる金物工法を採用したり、当社と共通する部分もありました。

そこで話が盛り上がり、当社の現場も見てもらったり、道内各地の先進事例を一緒に視察に行ったり、道中、住宅の断熱気密の改善、工務店経営の課題などをたくさん話し合い、それがイーハウジング函館の創設につながっていきました。


愛犬のための通り土間&高断熱高気密の住宅/北海道上ノ国町I邸

愛犬のための通り土間&高断熱高気密の住宅/北海道上ノ国町I邸


山野内社長は、工務店が連携して計画・運営する住宅展示場、住宅の光熱費負担をゼロにするZEHや、それをリノベーションでも実践するなど、社会のニーズも踏まえた構想を考案し、それをみんなを巻き込んで実現させてしまう力があります。イーハウジング函館のメンバー同士で毎月のように集まり、最新の技術や、各社が抱えている課題を語り合う中で、渋谷建設も発展できました。



断熱・気密だけでなく暮らしの楽しさも大事

私も山野内社長と同じく、工務店の生き残りに向けて、挑戦していくことにためらいはありません。

断熱気密、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)、住宅補助金などの取組ももちろんですが、最近はそれだけでなく、VRで、お施主様にプラン中の家をできるだけリアルに理解してもらう取組や、ドローンの操縦資格を取り、空から住宅を撮影できるようにもなりました。


ドローンを操る渋谷社長

ドローンを操る渋谷社長


後述しますが、オーダーキッチンやウッドデッキによる「ベランピング」、薪ストーブ、住宅のIOT化などにも積極的に取り組んでいます。断熱・気密性能の向上は長年の取組ですが、暮らしを豊かに、快適にする提案も積極的に取り組んでいます。

いえズーム編集部:渋谷建設が長年取り組んできた高断熱高気密の家づくりがZEHにつながり、そこに住み心地や住まいの楽しさを加えた家づくりが2019年現在の渋谷建設の家づくりになったわけですね。

渋谷社長:はい。それが2019年春に発表した企画型提案住宅「Semie-セミエ-」です。魅力をいっぱい詰め込んだのに、費用も抑えた提案です。詳しくは…

続く 函館で住宅の性能・価格・楽しさを重視するなら[Semie-セミエ-]


【函館】注目の企画住宅 渋谷建設[Semie-セミエ-]

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