真っ白な雪に覆われた雪原に、大屋根が美しい、風格のある白い家が建っています。遠くに大雪山連峰を望む、東川町の農家住宅です。
オーナーのYさんは、夫婦と小学生の娘さん2人と、ご主人の両親の6人暮らし。代々続く農家の実家を、雅建築企画(旭川市)で建て替えました。iezoom編集部が訪れたのは入居からちょうど1年が過ぎた2026年2月のこと。
Yさん夫婦と雅建築企画の野上さんに、お話を伺いながら、お宅を拝見します。
農家の暮らしを快適にする「暖かい玄関」
玄関に入るとリビングまで直線で続くナラの無垢フローリングが迎えてくれます。
Yさんのお宅は、この表玄関と、農作業の際に利用する裏玄関があり、どちらも土間には床暖房が入っています。
引き戸で仕切られた家族用玄関には、靴やアウターの収納も付いています。
奥さま 表玄関は帰宅した時に、荷物を持って家族用玄関に入り、そこからキッチンに行けるのでとても便利です。
Yさん 農家は表玄関だけだと、汚れがひどくなるので、裏玄関が必要です。裏玄関も土間の床暖房のおかげで、水が溜まっていることがないし、作業で使う長靴もすぐに乾くので、とても助かっています。
3世代がくつろげるゆとりのあるLDK
広々と明るいリビング。室内に木の温もりを添える現しの梁は、野上さんが天然素材のオスモカラーで塗装。壁は塗壁材「ジョリパッド」で風合いよく仕上げています。
大きなリビング窓からは、以前からあった庭を眺めることができます。この庭に合わせて、家の向きや配置が決まりました。
リビング続きには和室が造られています。ダイニング・キッチンは床材もグレイッシュな色調で統一。色のゾーニングが、広い空間にリズムを生んでいます。
キッチンはクリナップのシステムキッチン・コルティ。ゆとりのあるワークトップで収納も豊富です。面材はコンクリートの質感を思わせる艶消しのグレー色で、アイアン調の手すりがアクセントになっています。
キッチンの壁に使われているのは名古屋モザイク。ショールームには野上さんが同行し、一緒にセレクトしたそう。
廊下を介して見えるのは家族玄関。直線でつながる動線は、家族みんなが重宝しています。
畑に向かって窓がとられたダイニング。窓際にも食器収納を備えています。こちらはリビングと調和する木目調の面材をチョイス。
カウンターの上にはお茶やコーヒーがセットされていて、農作業の合間の食事や休憩時間を過ごしやすいものにしています。
家族の歴史を受け継ぐ本格和室
リビング横の和室は、この家の象徴的な空間です。まず目に入るのは立派な床柱と仏壇です。
「農家と漁師くらいじゃないですかね、こうやって仏壇を置いているのは」と話すYさんにとって、この和室は単なる客間ではなく、先祖から受け継いだ家の歴史を守っていく現われでもあります。
床柱に使われているのは、材木店で長く眠っていたもの。高価なことと、仏間離れが進むご時世で出合った貴重な銘木です。
天井は野上さんと大工さんの手仕事によるもので、ヨシや萩などの自然素材を編み込んだヨシボードと、木や竹を薄く裂いて斜めに編み込んだ網代(あじろ)を使い、意匠性の高い仕上げになっています。
建て替えを機に、磨き直した仏壇も輝いています。
「本格的な和室まではいかないですが、ちゃんと”格“を出したかったんです」と野上さん。ふすまは建具屋さんによる造作です。
洗濯仕事がはかどる広いユーティリティー・両親の暮らしに配慮した生活動線
ダイニングから出入りできるユーティリティーには、作業着用と普段着用の2つの洗濯機が設置され、上部にはたくさんの洗濯物が干せる物干しが付いています。
洗面化粧台の横には、造作の収納を備え、タイルもあしらいました。この収納家具もenaoによるオリジナルです。
反対側からの眺め。通路の真っすぐ先に裏玄関があります。通路の左わきに見えるのは、奥さまが希望したオープンタイプの洗濯収納。収納の向こう側は脱衣室になっています。
脱衣室には下着を入れた収納ダンスがありました。
奥さま SNSで知って、自分ならこうしたいとお願いしました。使い方は、入浴前に脱いだ服をかごに入れ、そのかごから洗濯物を取り出して洗濯機に投入。乾いた洗濯物はユーティリティー側からこの棚に一時置きして、入浴など「ついでのタイミング」でタンスにしまいます。
洗濯仕事につきっきりにならずに済んで、家事がラクになったそう。
こちらは裏玄関からの眺め。まっすぐダイニングに続いているので、仕事の合間の休憩や食事の際も、動線上で手洗いを済ませて食卓に着くことができます。
廊下の左手には両親それぞれの個室とトイレがあります。浴室や洗面室へもアクセスしやすい配置です。
セカンドリビングと秘密基地のような納戸のある2階
2階に上がると、子世帯のセカンドリビングがあります。今は子どものプレイスペースとして活躍しているそう。
セカンドリビングの一角に、高さの低いドアを発見しました。中は下屋の小屋裏を活用した納戸になっています。
Yさん 天井高は高い所で140cmくらいかな。秘密基地みたいで居心地が良くて気に入っています。
2室用意した子ども部屋は、子どもたちが自分でアクセントクロスを選んだそう。こちらは蓄光性のある壁紙で、夜になると星空が広がります。
このほか2階は、主寝室と納戸、洗面台などで構成されています。
Yさん夫婦にお聞きします
Q 雅建築企画との出会いは?
Yさん 中学の同級生・宍戸くんが雅建築企画さんで大工をやっていたのがご縁です。家を建てるなら頼むって、昔から約束していました。「彼が信頼している野上さんなら」と、一切迷いはありませんでした。
野上さん 実際にYさんのお宅は、宍戸さんがメインで建てています。私としても頼りにしている腕のいい大工さんです。
Q 間取りの希望はありましたか?
Yさん 両親それぞれの個室、洗濯スペース、対面キッチン、和室、自分の仕事部屋、そしてトイレが2つ、そのくらいの大枠だけお伝えして、後はお任せしました。
Q 実際の住み心地はいかがですか?
Yさん 冬でもこれだけ暖かいのはやっぱりいいものですね。夏も涼しくて快適です。2階のセカンドリビングから山並みが見られるようになったのも良かった。
軒が深くてどっしりとした家の構えや、丁寧に造ってもらった和室も気に入っています。
奥さま 収納が充実して、家事動線も良く、とても暮らしやすいです。暖かく広々した空間で、子どもたちものびのびと過ごしています。
【記者の目】
仏壇を据えた和室には、代々続く農家の誇りが感じられました。一方で、現代の暮らしに合った設備や間取りの工夫も両立しています。東川町の「人のつながり」から生まれた家づくり。Y邸は家族の歴史と未来をつなぐ、唯一無二の一棟になりました。
写真 ホシノ映像舎 岩崎大
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