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東京から東川へ移住 夫婦でコンパクトに暮らす自然素材の家


北海道のほぼ中央に位置する大雪山連峰「十勝岳連峰」の麓には、美しい天然水と写真で知られる東川町があります。メインストリートを真っすぐ進むと、真っ白な雪景色の中に板張りの住宅が浮かんでいます。東京で活躍するフォトグラファーの萬田康文さん夫婦の邸宅です。釣り仲間でもある建築家のmonokraft・清水徹さんの住む東川町に新居を建て、移住を実現しました。施工は、自然素材を使った家づくりを得意とする旭川の雅建築企画さんです。

1 雅建築企画が施工した萬田さん邸

クリスマスイヴの日、萬田さんが東京から完成直後の新居を訪れると聞き、取材にお邪魔しました。外壁は全面、道産トドマツの板張り。北海道らしいモノクロームの世界によく似合います。



玄関前には、雪除けの屋根も設置。



薪を収納する小屋も併設。屋内の薪ストーブから伸びる煙突も見えます。



薪小屋の隣にある勝手口から入ると、広い天板とオーブン機能で調理もできる、イタリア・デマニンコア社のクッキングストーブ『ドミノ』がありました。壁には、耐熱用に江別レンガを採用しています。

トドマツが薫るLDKと洗面所

萬田邸は、夫婦二人の住まいなので、洗面・脱衣所やトイレなどは、極力コンパクトにまとめています。一方で、友人を招いて料理をふるまえるクッキングスペースや本格的なキッチンにはこだわりました。



LDKの床と天井は旭川産のトドマツ、塗り壁にはホタテ漆喰を採用しています。



壁付けのキッチンは家具工房enaoの遠藤さんが造作。



ホワイトベージュのメラミンの面材に無垢材の縁取りがアクセントになっています。下部は収納も充実しています。



窓際には、収納を兼ねたソファーベッドを造作。窓の向こうの桜の木は、暖かくなると春の訪れを知らせてくれます。晴れた日には旭岳も見られ、四季折々の景色を楽しめる空間です。



省スペース化を図るため、ユーティリティーにトイレを併設しました。



浴室の下半分は既製品のユニットバス(ハーフユニット)で、壁や扉、天井などは大工さんの造作です。自然素材をふんだんに使った家でも、お風呂は工業製品という家が大半ですが、萬田さん宅のお風呂は壁にヒバを採用しており、木の香りでほっとする空間に。自然素材だと掃除が大変そうですが、同じようにヒバを採用した清水さんのご自宅も「塗料を5年に一回くらい塗れば黒カビの発生を抑えられます」とのことでした。

無垢材の階段をのぼり秘密基地のような居住空間へ



階段も大工さんの造作です。ホタテ漆喰の壁のやさしい風合いを間近で感じられます。



片流れ屋根なので、2階の居室は天井が屋根なりに傾斜になっています。床材と同じくトドマツの板張りで、屋根裏部屋の楽しさを感じます。針葉樹の床材は柔らかく、足裏の感触が心地よいのが特徴です。



3つの部屋が並ぶ2階。「この2日間、それぞれの部屋で寝てみて、どこを寝室にするか考えるのも楽しい」とご主人が話します。



1階に戻ると、オーナーさんと設計者、家具職人、施工会社の皆さんが勢ぞろい。萬田さん夫婦が東川町に移住する前からプライベートで繋がっていた間柄です。家、釣り、スキーの話などで盛り上がっていました。

趣味の料理と写真を楽しむ空間も



仕事で料理を撮影することも多いというフォトグラファーの萬田さん。自分で作った料理の撮影も楽しみたい、ということで料理が引き立つグレーを基調としたお部屋も作りました。釣り道具などもどう飾ろうかと思案中です。



家族や友人を招いて、食事を楽しむカウンター。



プロ仕様のキッチンでは、本格的な料理を楽しめます。釣りや料理など趣味を楽しむ暮らしに、今からワクワクが止まらない様子です。

2 東川に移住し家を建てたきっかけは?



萬田さん
「3年前に清水さんが先に移住していたことが一番の決定打です。忠別川で一緒に釣りに行き、大変よく釣れるので驚きました。そして清水さんが家を建てるとなったら力を貸してくれることもわかっていました」

奥さまはグラフィックデザイナー。「東川でも仕事は可能です。清水さんの事務所から見る雪景色がすばらしくて、東川はいいなと思いました」

3 住まいへの要望は?

萬田さん
「清水さんのお宅に滞在することが多く、そのナチュラルな空間が良かったので、雰囲気はそのままでお願いしました。調理ができるイタリア製の薪ストーブと料理が映えるグレーの空間を要望として挙げた以外は、清水さんにすべてお任せしました」



奥さま
「リビングのソファーベッドは私の要望でした」

monokraft・清水さんと雅建築企画の野上さん、enao遠藤さんとは、移住前からの釣り仲間です。工務店と建築家、家具職人が揃っていたため、これまで築いてきた信頼のもと安心して家づくりを進められたのです。

清水さん
「当初の要望を全部盛り込むと、今より1.5倍大きな家になり予算もオーバーしました。そこで、小さくても快適な家にするために家の面積を小さくしたり、照明器具の選定や施工方法、無垢の床材を材料のロスが少ないように貼るなどの工夫をしました」



萬田さん
「清水さんや野上さんが近所に住んでいるので、家のことで困ったときすぐ駆けつけてくれます。釣りや雪かきなど、東川の自然を楽しみたいと思っています。

記者の目

木の薫りや柔らかな踏み心地、五感で自然素材を感じる住まいです。コンパクトにまとめながらも、友人を招いて楽しめるスペースが確保されている間取りが印象的でした。施主の想いやライフスタイルを受け止める設計力、断熱気密などの住宅性能、キッチンや洗面台などの造作なども含めて、手作りの居心地の良い住まいが実現しました。


2024年01月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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