裏庭"キャンプ場"とピアノ室
Kさんはアウトドア好きなご主人とピアノが得意な奥様、7歳と5歳の男の子の4人家族。昨年7月、2階に眺めの良い南向きのリビング、1階にグランドピアノが置ける防音室があるナチュラルモダンなマイホームを完成させました。
「1階リビングのプランも提案していただきましたが、自宅でピアノ教室を開く計画があるので2階にリビングと2人分の子供部屋、1階の玄関近くにピアノ室を造る現在の形に決めました(奥様)」。
建設地は地下鉄の駅から徒歩圏内など、通勤・通学に便利な場所にあり、しかもご主人の実家からも歩いて5分というこの土地を選んだそうですが、家を建てるにはやや制約の多い間口が狭くて奥行きがある形状です。
「建物がコンパクトなので奥の方に家を建ててしまうと道路までの距離が長くなって除雪が大変。打ち合わせの中でご主人がアウトドア好きなことを知ったので建物を公園がある南に向けて敷地の真ん中あたりに配置し、通りから見えない北側にバーベキューのための裏庭を確保するプランを提案しました(野際さん)」。
この裏庭、プレゼン用の図面では「キャンプ場」となっていたとか。野際さんのユーモアにご主人も奥様も大爆笑したそうです。
通り側には使い勝手が良く、デザイン的にもお洒落なカーポートと一体型の外物置を設置。「自転車を盗まれたことがあるので外に置きたくない」というご主人の要望で玄関内に自転車置き場を設けています。
「自転車置き場はご主人からの唯一のご希望だったので、ぜひ叶えて差し上げたいと思っていました。家事の大部分を取り仕切る奥様が使いやすい家にすることはもちろん大切ですが、家づくりはご夫婦が協力し合って行うもの。双方の意志がきちんと反映された住まいにすることを心がけています(野際さん))。
子育てしやすく開放的な2階リビング
インテリアは「シンプル」が基本。それでいて家族4人が心地よく暮らせる工夫がさりげなく盛り込まれています。
公園を見下ろす2階のリビングは、コストアップせずに天井を高くするため、梁や天井下地をあえて見せるデザインに。木のぬくもりも加わって開放的で個性的な空間になりました。「一般的な天井断熱では不可能です。小屋裏まで室内空間として利用できる外張断熱(屋根断熱)のメリットを生かした手法」と拓友建設の妻沼澄夫社長。テレビやミニコンポが置かれている幅3.6mのローボードは同社のオリジナル造作です。「このサイズだと既製品より造ってしまう方が経済的だと思います(妻沼社長)」。
優先順位を整理して予算を上手に割り振ることで希望通り、無垢のフローリングが実現しました。
キッチンカウンターは表面がガラス質の仕上げで水・脂分・湿気をはじき、お子様が落書きしてもすぐに拭き取れるというホーロー製を選択。背面のカップボードもお手入れしやすい素材で造作しました。「油汚れも簡単に落とせるので気に入っています。1階ユーティリティにある洗面台も同じ材料で造ってもらいました(奥様)」。
カウンターの側面は学習用ホワイトボード兼掲示板としてフル活用。取材に伺ったこの日は天気予報の英訳が解説付きでビッシリと書き込まれていました。リビングの座卓につくと、ちょうど目の高さ。これなら小さい頃から自然と英語に親しむことが出来そう。
子供部屋はホールを挟んでリビングの向かいに。「リビングで勉強を見てあげたいけど、学習机を置きたくないのでキッチンでお料理していても子供たちの様子がわかる位置に子供部屋を造りました(奥様)」。外から帰ったらすぐ手を洗えるよう出入り口のそばに小さな洗面台を設置しています。
「自分の部屋とは別に子供の居場所を造ってあげたい」という奥様の意向で本好きな兄弟のために階段の登り口に壁一面の大きな書棚を造作。小学生のお兄ちゃんは学校から帰ると、真っ先に本を取り出して子供部屋か階段に座って読書するのが日課です。
玄関とホールを仕切る幅広の引き戸を右にスライドさせると本棚の幅にピッタリと収まります。「冬は玄関との間仕切りに、夏は本に埃がかからないように書棚の方に寄せています(奥様)」。階段の1番下の段の蹴込み部分に並んだ丸い穴は床下暖房の暖気の吹き出し口。ドット柄みたいな可愛いデザインです。
ゆったりとした造作洗面台がある1階・ユーティリティにはペットの亀くんたちのおうちが。「新しい家でもなるべく手持ちの家具を使いたかったので水槽を置く棚がピッタリ収まるように壁を造ってもらいました。リビングなどの窓の大きさも前のアパートで使っていたカーテンに合わせています」。
札幌良い住宅(現iezoom・いえズーム)を活用して夏も冬も快適な家に
断熱仕様は外張り断熱で、基礎が押出ポリスチレンフォームB3種75mm、屋根が同175mm、外壁が高性能グラスウール16kg100mm+押出ポリスチレンフォームB3種75mmと国の省エネ基準を大きく上回る性能。基礎断熱材は奥様のこだわりで「スタイロフォームAT」というシロアリ対策の防蟻剤が入った断熱材を採用。
「1番寒かった2月でも朝と夜、それぞれ3~4時間程度の暖房で十分快適」と奥様。暖房・給湯と調理も割高なLPガスを使っていますが「毎日家族が風呂に浸かったり、特別省エネを意識しなくてもガス料金は最大で2万7000円程度に収まっています。夏も風の通り道が確保されていて、バルコニーの上まで延びた庇が日差しを遮ってくれるので涼しく過ごせました(奥様)」。
当初はハウスメーカーにお願いすれば、すぐに家が建つと思っていたというご主人。「プランがパターン化されていて予算内で理想の住まいにするのは難しいと気づき、軌道修正しました。今思うと家づくりについて何も知らないまま走り出してしまったのですね。どんな住まいにしたいのかさえちゃんと考えていなかった気がします」。
奥様も断熱・気密性能など技術的なことも含めて猛勉強。インターネットで性能が確かなビルダーをピックアップし、その中から設計事務所との連携により住む人のニーズに沿った高性能な家づくりを提案する拓友建設を選びました。
「『札幌良い住宅』(現:いえズーム・iezoom)の記事を読み、施工した家を実際に見たいと思いました。いきなり社長室に通されてちょっとビックリしましたが、妻沼さんは私達の要望をしっかりと受け止めて下さる方でした。こちらの条件も聞かないうちに話を進めようとする営業マンが多い中、どんな質問にも丁寧に答えてくれる真摯な対応が胸に響きました」。
断熱材の製品名など専門的知識も学んでビルダー選びにのぞんだ奥様は、妻沼社長の説明を聞き、性能の違いがすぐにわかったといいます。「この会社なら任せられる!と...」。ハウスメーカーも含め15社のうち絞り込んだ5社から見積もりをとり、吟味を重ねた末の決断でした。
妻沼社長の紹介で野際さんに設計を依頼することに。「私達の話に親身に耳を傾けて下さる方でした」。営業担当者を介さずに設計者と直接やり取りできるので意思の疎通がスムーズ。言葉の行き違いもなく、安心して家づくりを進められたそうです。
「本物のオーダーメイド」
限られた予算と条件で何が出来るかを妻沼社長や野際さんととことん突き詰め、何度も図面を修正してもらった末、ようやく出来上がったマイホーム。「友人に『普通はここまで対応してくれない』と言われました。本当の意味で『注文住宅』だと思います」。そう語りながら納得の表情を浮かべるご主人。
奥様はアパートでは出来なかった家庭菜園に挑戦。「立派な大根とほうれん草が収穫できました。音を気にせず生活できるので子供たちものびのび。ストレスのない環境で家族4人がそれぞれに好きなことをしながら新しい生活を楽しんでいます」。
記者の目
約32坪のコンパクトな空間に家族のスペース、趣味を楽しむスペース、お子様のためのスペース、ピアノ教室のスペースを効率良く配置した多機能な家。子育てしやすさを考えた細やかなプランも女性建築士さんならでは。ピアノ教室開講の日が待ち遠しいですね。
2017年04月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。